Amazon Titan(アマゾン タイタン)は、AWSが自社で学習させ、Amazon BedrockのAPIから呼び出して使う基盤モデルのシリーズです。2023年に登場し、文章生成・埋め込み・画像生成へと展開しましたが、2026年10月時点で現役なのは埋め込みモデルだけです。画像生成のTitan Image Generator G1 v2は2026年6月30日に終了日を迎え、文章生成のTitan Text Premierも提供を終えています。この記事では、モデルごとの状態、東京リージョンで使えるか、単価、埋め込みの呼び出し方を、AWS公式ドキュメントと料金データで確かめた内容に沿って整理します。
まとめ:2026年10月時点のAmazon Titan
- 現役(Active)はTitan Text Embeddings V2、Titan Embeddings G1 – Text、Titan Multimodal Embeddings G1などの埋め込みモデルだけ。
- Titan Image Generator G1 v2は終了。モデルカードの状態はLegacy、モデル終了日は2026年6月30日。Titanの概要ページには今も名前が残っているが、リージョン別の提供表には載っていない。
- Titan Text Premierは2026年7月に提供を終えたとAWSが告知済み。文章生成はAmazon Nova 2などへ移る。
- 新しく使うならTitan Text Embeddings V2。東京リージョン内で呼べ、単価は東京で入力1,000トークンあたり0.000029ドル。
- V2は英語に最適化されたモデルで、日本語を含む100以上の言語はプレビュー扱い。日本語の検索精度は自社データで比べてから決める。
Amazon Titanの位置づけ:Bedrock専用のAWS製モデル
Titanは、AWSが大規模データで事前学習した基盤モデルの総称です。ChatGPTのような単独のアプリはなく、BedrockのInvokeModelなどのAPIで呼び出し、使った分だけ課金されます。AWSはTitanの概要ページで、そのまま使うことも自社データでカスタマイズすることもできる汎用モデルと説明しています。
TitanとAmazon Novaの世代関係
TitanはAWS自社モデルの第1世代で、2024年末に後継のAmazon Novaが登場し、2025年12月からはNova 2が現行世代です。文章生成と画像生成はNovaへ移り、Titanに残ったのは埋め込みです。ただし画像生成はNova側も第1世代のNova Canvasが2026年9月30日に終了しており、AWS自社の画像生成モデルで一般提供中のものは2026年10月時点でありません。
Titanモデル一覧:状態と東京リージョンでの可否
Bedrockのモデル別のリージョン提供表とモデルカードを2026年10月28日に確かめた結果が次の表です。東京の列はリージョン内(In-Region)で呼べるかを示します。
| モデル | モデルID | 状態 | 東京 |
|---|---|---|---|
| Titan Text Embeddings V2 | amazon.titan-embed-text-v2:0 |
Active | 可 |
| Titan Embeddings G1 – Text | amazon.titan-embed-text-v1 |
Active | 可 |
| Titan Embeddings G1 – Text v2 | amazon.titan-embed-g1-text-02 |
Active | 不可 |
| Titan Multimodal Embeddings G1 | amazon.titan-embed-image-v1 |
Active | 不可 |
| Titan Image Generator G1 v2 | amazon.titan-image-generator-v2:0 |
終了(2026-06-30) | ― |
| Titan Text Premier | ― | 終了(2026年7月告知) | ― |
| Titan Text Express/Lite | ― | モデルカード無し | ― |
Titan Embeddings G1 – Text v2は、モデルカードの説明欄が「coming soon」のままで、提供はバージニア北部とオレゴンだけです。新規に選ぶ理由は見当たらないので、テキスト埋め込みはV2を前提にしてかまいません。
公式ページどうしの食い違い:概要ページはImage Generatorを掲載したまま
検索でTitanを調べると、AWSの概要ページに「Titan Image Generator G1 v2」が埋め込みモデルと並んで載っているため、まだ使えるように読めます。しかし日本語版のモデルカードはモデルライフサイクルを「レガシー」、モデル終了日を「2026年6月30日」と記載しており、英語版のモデルカードは目次から外れ、リージョン提供表にも行がありません。AWSはモデルライフサイクルのページで、Bedrockでの利用にはこのライフサイクルの日付が適用されると述べています。概要ページより、モデルカードとリージョン提供表を正として判断します。
もう一つ紛らわしいのが料金データです。AWS Price List APIのBedrockの料金表(2026年10月16日公開版)には、Titan Image GeneratorやTitan Text Expressの単価が今も残っています。単価が載っていることは、提供中である根拠になりません。
Titan Text Embeddings V2:東京リージョンでの仕様・実装・料金
東京リージョンでテキスト検索を新規に構築するなら、まず比較候補に入れたいモデルです。RAG(検索拡張生成)や社内文書の意味検索で、文章をベクトルに変換する役を担います。
Titan Text Embeddings V2:入力上限・次元・日本語対応
AWSの仕様ページによると、入力は最大8,192トークンまたは50,000文字、出力は既定1,024次元で512・256次元も選べます。次元を下げるとベクトルの保存量や距離計算の負荷を減らせますが、検索精度とのトレードオフがあります。リクエストの仕様では、normalize(既定true)と、embeddingTypesでfloatのほかにbinaryを返す指定もできます。
注意したいのは言語です。言語欄は「English (100+ languages in preview)」で、日本語は100以上の言語の一覧に入ってはいるものの、英語に最適化されていると明記されています。韓国語の文書をドイツ語で検索するような言語をまたぐ検索は精度が落ちるとも書かれています。日本語の文書を日本語で検索する用途なら使えますが、英語の質問で日本語の文書を引く設計は避けます。
Titan Text Embeddings V2:boto3による呼び出し例
東京リージョン(ap-northeast-1)から呼び出す最小のコードです。AWS認証情報とBedrockの呼び出し権限がある前提です。
import json
import boto3
client = boto3.client("bedrock-runtime", region_name="ap-northeast-1")
def embed(text, dimensions=1024):
body = json.dumps({
"inputText": text,
"dimensions": dimensions, # 1024 / 512 / 256 のいずれか
"normalize": True,
})
resp = client.invoke_model(
modelId="amazon.titan-embed-text-v2:0",
body=body,
contentType="application/json",
accept="application/json",
)
payload = json.loads(resp["body"].read())
return payload["embedding"], payload["inputTextTokenCount"]
if __name__ == "__main__":
vec, tokens = embed("東京リージョンでTitanの埋め込みを作る", dimensions=512)
print(len(vec), tokens)
レスポンスのinputTextTokenCountが課金対象のトークン数です。このコードの引数はboto3 1.42.97のStubberで、invoke_modelの受け付ける形と一致することを確認しています。Bedrockの埋め込みモデルの呼び出し上限はトークン数ではなく1分あたりのリクエスト数(RPM)で決まるため、大量の文書を一度に投入するときは同期呼び出しを並べるよりバッチ推論のほうが向いています。
Titanテキスト埋め込み:東京とバージニア北部の料金比較
AWS Price List APIの料金表(2026年10月16日公開版)から引いた入力単価です。埋め込みは出力に課金されません。
| モデル | リージョン | オンデマンド | バッチ |
|---|---|---|---|
| Text Embeddings V2 | 東京 | $0.000029/1Kトークン | $0.0000121/1Kトークン |
| Text Embeddings V2 | バージニア北部 | $0.00002/1Kトークン | $0.00001/1Kトークン |
| Embeddings G1 – Text | 東京 | $0.0002/1Kトークン | ― |
| Embeddings G1 – Text | バージニア北部 | $0.0001/1Kトークン | ― |
東京のV2は100万トークンで約0.029ドルです。旧世代のG1 – Textは東京でV2の約6.9倍、バージニア北部で5倍の単価です。新規の検索基盤ではV2を優先し、既存のG1 – Textのベクトルと互換性を保つ必要がある場合は継続利用を検討します。最新の単価はBedrockの料金ページで確認してください。
Titan Multimodal Embeddings G1:画像・テキスト検索の仕様と提供地域
画像とテキストを同じ空間のベクトルに変換し、「テキストで画像を探す」「似た商品画像を探す」検索に使うモデルです。仕様ページの上限は、テキストが256トークン、画像が25MB・2,048×2,048ピクセル、出力は既定1,024次元で384・256次元も選べます。言語は英語だけです。
実務で効くのは、東京リージョンで提供されていない点です。提供はバージニア北部、オレゴン、フランクフルトなど10リージョンで、日本からはデータを国外のリージョンへ送ることになります。バージニア北部の単価はテキスト入力1,000トークンあたり0.0008ドル、画像1枚0.00006ドルです。動画や音声まで扱うなら後継のAmazon Nova Multimodal Embeddingsがありますが、こちらもバージニア北部とGovCloudだけの提供です。図表や画像を含む文書を検索させる構成の選び方はマルチモーダルRAGの実装方式で扱っています。
Titan Image Generator G1 v2の終了と移行先
Titan Image Generator G1 v2は、テキストからの画像生成、インペインティング、アウトペインティング、画像バリエーション、参照画像に沿わせる画像コンディショニング、1〜10色のカラーパレット指定、背景除去を備え、生成画像に不可視の電子透かしとC2PAの来歴情報を付けるモデルでした。モデル終了日は2026年6月30日で、Bedrockのライフサイクル規定では終了日を過ぎたモデルへのリクエストは失敗し、別モデルへの自動移行もありません。
移行先は限られます。AWS自社の後継格だったNova Canvasも2026年9月30日に終了しました。Bedrockに残る画像生成はStability AIのモデルで、生成系(Stable Image Ultra、Stable Image Core、Stable Diffusion 3.5 Large)はオレゴンのリージョン内だけ、インペイント・アウトペイント・背景除去・構図を保つControl系の編集操作は米国のクロスリージョン推論だけで提供されています。東京リージョンでは画像生成モデルを1つも呼べないので、プロンプトや画像の推論処理まで国内で完結させる要件があるなら、国内処理に対応する別サービスや国内環境でのモデル運用を検討します。Nova Canvasからの移行で起きるエラーと操作の対応表はNova Canvasの終了と移行先、Bedrock以外の画像生成AIの比較はMidjourneyとStable Diffusionの違いにまとめています。
Titan Textの終了と文章生成の移行先
文章生成のTitan Textは、Lite・Express・Premierの3モデルがありました。AWSはTitan Text Premierを紹介した公式ブログの冒頭に「End of support notice, July 2026: Amazon Titan Text Premier is no longer available」と追記し、記事内のサンプルの使用モデルをNova 2 Liteに差し替えています。ExpressとLiteはモデルカードもリージョン提供表の行もなく、Titanの概要ページの一覧からも外れています。
文章生成を新しく組むなら、AWS自社モデルの現行はNova 2 Liteです。性能と単価はAmazon Novaの比較記事で扱っています。Bedrockでは他社のモデルも同じAPIで呼べるので、用途に合わせて選びます。
Titanの埋め込みを採用するかの判断基準
東京リージョンで完結させたい日本語テキストのRAGなら、Text Embeddings V2を第一候補にしてよい。リージョン内で呼べ、単価は最も安い部類で、Bedrockのナレッジベースが対応する埋め込みモデルにも東京リージョンで入っています。社内文書を検索させる構成とboto3の実装はBedrockでRAGを実装する手順で説明しています。
避けたほうがよいのは次の場面です。
- 日本語の検索精度が評価の中心になる案件で、比較せずにV2に決めること。V2の日本語はプレビュー扱いです。東京ではCohereのEmbed v4もリージョン内で呼べるので、自社の質問と文書で検索の当たり方を並べてから選びます。埋め込みモデルの比べ方は埋め込みモデルの選び方を参照してください。
- 英語の質問で日本語の文書を引くなど、言語をまたいで検索する設計。AWS自身が精度が落ちると書いています。
- 画像検索のためにMultimodal Embeddings G1を東京のシステムへ組み込むこと。呼び出しのたびに国外リージョンへデータが出ます。
もう一つ、埋め込みモデルは後から替えにくい部品です。モデルが違えばベクトルどうしを比べられないので、モデルを替えるときは蓄積した文書を全件埋め込み直す必要があります。V2のモデルカードにある「EOL no sooner than: Apr 30, 2025」は終了予定日ではなく、「この日より前には終了させない」という下限で、すでに過ぎています。2026年10月時点で終了日は告知されていませんが、Legacyに入れば少なくとも6か月後に終了するので、モデルIDを設定値として外に出し、文書を再投入する手順を用意しておくと移行が軽くなります。RAGの設計から評価まで任せたい場合は、RAG構築支援で相談を受けています。
よくある質問
Amazon Titanは無料で使えますか?
無料ではありません。Bedrockの従量課金で、Text Embeddings V2は東京で入力1,000トークンあたり0.000029ドルです。AWSの無料利用枠やクレジットの扱いは契約や時期で変わるため、料金ページで確認してください。
Titan Image Generatorはまだ使えますか?
使えません。Titan Image Generator G1 v2はモデルカードでモデル終了日が2026年6月30日とされ、リージョン提供表からも外れています。AWSの概要ページには名前が残っていますが、状態はモデルカードの記載が正です。
Titan Text Embeddings V2は日本語に対応していますか?
日本語の文書を埋め込むことはできますが、英語に最適化されたモデルで、日本語を含む100以上の言語はプレビュー扱いです。言語をまたぐ検索は精度が落ちるとAWSが説明しているため、日本語の文書は日本語の質問で検索する前提で使います。
Amazon TitanとAmazon Novaの違いは何ですか?
どちらもAWS自社の基盤モデルで、Titanが2023年からの第1世代、Novaが2024年末からの新世代です。文章生成や音声はNovaが担い、Titanで残っているのは埋め込みモデルです。
Titan Text Expressはまだ使えますか?
新しく使う前提にはできません。Titan Text PremierはAWSが2026年7月の提供終了を告知しており、ExpressとLiteもモデルカードとリージョン提供表から消えています。文章生成はNova 2 Liteなど現行のモデルへ移します。
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