Mistral Large 4は、フランスのMistral AIが2026年10月6日にパブリックプレビューを始めた大規模言語モデルです。総パラメータ1.05T・1トークンあたり52B活性のMixture-of-Experts(MoE)で、画像入力と100万トークンの文脈を扱います。プレビュー期間中はMistral StudioのAPIで使え、オープンウェイトの重みは同月末までに公開される予定です。この記事では、モデルカードとAPIリファレンスで確定できる仕様、APIの呼び出し方とreasoning_effortの切り替え、料金と前世代Large 3との月額比較、重み公開後に自社で動かす場合のVRAMの見積もりを、実装者の目線で整理します。数値は2026年10月12日時点の公開情報です。
まとめ:Mistral Large 4はAPIで精度を測り、重みとライセンスの公開を待って運用を決める段階
Mistral Large 4は、前世代Mistral Large 3(総675B・活性41B・文脈256K)から規模と文脈長を大きく伸ばしたオープンウェイト系の旗艦モデルです。APIのモデル名はmistral-large-4で、推論の深さをreasoning_effortで切り替えられます。
実装判断としては、いまはAPIで自社データに対する正答率と出力トークン数を測る時期です。定価は100万トークンあたり入力1.36ドル・出力4.18ドルで、Large 3の約2.7倍にあたります。重みのライセンスはまだ発表されていません。自社ホスティングを前提にした設計は、重みとライセンスが出てから固めるのが安全です。
Mistral Large 4の仕様:1.05T MoEと1Mトークン文脈
1.05T MoEの構成と1Mトークン文脈の仕様はモデルカードで確認できる項目です。発表直後の報道では数値に揺れがあります。ここでは公式のモデルカードと発表記事に書かれた値だけを採り、揺れている箇所はどちらが公式かを示します。
総1.05T・活性52Bと1.6B視覚エンコーダの構成をLarge 3と並べた比較表
| 項目 | Mistral Large 4 | Mistral Large 3 |
|---|---|---|
| APIモデル名 | mistral-large-4 | mistral-large-2512 |
| 公開日・状態 | 2026年10月6日・パブリックプレビュー | 2025年12月2日・一般提供 |
| 総パラメータ/活性 | 1.05T/52B(MoE) | 675B/41B(MoE) |
| 文脈長 | 1M | 256K |
| 重みのライセンス | 未発表(月末までに重み公開予定) | Apache 2.0 |
| 定価(100万トークン) | 入力1.36ドル・出力4.18ドル | 入力0.5ドル・出力1.5ドル |
Large 4の値はMistral Large 4のモデルカード、Large 3の値はMistral Large 3のモデルカードから取っています。Large 4のモデルカードは、粒度の細かいMoEに1.6Bの視覚エンコーダを組み合わせた構成と説明しています。対応機能はStructured Outputs、Function Calling、Document QnA、Batching、Agents & Conversationsなどで、Large 3と同じ並びです。
報道の「活性49B」と重み公開日の揺れを公式の記載で照合した結果
国内外の速報記事には、活性パラメータを490億、重み公開日を10月27日と書いたものがあります。Mistral AIの発表記事は総パラメータ1兆・活性52Bと書き、重みの公開時期は「月末までに」とだけ記しています。モデルカードも活性52B・総1.05Tです。この記事では公式の52Bを採り、重みの公開日は確定していない扱いにします。
APIモデル名も確認が要る点です。公式のchangelogは「Mistral Large 4(mistral-large-4)がパブリックプレビューで利用可能」と記載しています。モデルカードのURLや推論機能の説明ページには版付きのmistral-large-4-0も出てきます。本番で挙動を固定したい場合は、プレビュー終了後に版付き名の扱いが確定してから指定を決めてください。
公式ベンチマークの数値と、ベンダー公表値として読むときの注意点
発表記事に載っている数値は、コーディング系でDeepSWE v1.1が61.7%、Terminal-Bench 4が28.3%、エージェント系でAutomationBenchが59.9%です。セキュリティ系ではCybenchで93%と、脆弱性の再現とパッチ作成のタスクで82%を挙げています。Surge AIによるコーディング品質の人手評価(5点満点)では3.74で、Claude Opus 5の4.22に次ぐ2位、Kimi K3は3.59でした。
いずれもMistral AI自身が公表した値です。Mistral AIは、コーディングの一部領域では最先端のクローズドモデルに届いていないとも書いています。同じ1T級のオープンウェイトで比較するなら、Kimi K3の性能と料金の整理が比較の起点になります。採否は公表値ではなく、自社の業務データで測った結果で決めるべきです。
Mistral Large 4のAPI実装:呼び出し手順と推論設定
プレビュー期間の利用経路はMistral StudioのAPIです。ここではMistral Large 4の呼び出し手順とreasoning_effortの設定を、curlとPythonの実装例で示します。エンドポイントは既存のMistralモデルと共通なので、Large 3を使っているコードならモデル名の差し替えで呼べます。
APIキーの発行からcurlで最初の応答を得るまでの手順と確認点
Chat CompletionsのAPIリファレンスに沿った手順は次のとおりです。
- Mistral StudioにログインしてAPIキーを発行し、環境変数
MISTRAL_API_KEYに設定する POST https://api.mistral.ai/v1/chat/completionsへ、modelをmistral-large-4にしたリクエストを送る- 応答の
usageで入力・出力トークン数を確認し、料金試算の材料として記録する
curl https://api.mistral.ai/v1/chat/completions \
-H "Content-Type: application/json" \
-H "Authorization: Bearer $MISTRAL_API_KEY" \
-d '{
"model": "mistral-large-4",
"reasoning_effort": "none",
"max_tokens": 512,
"messages": [
{"role": "user", "content": "次の問い合わせ文を「請求」「障害」「その他」のどれかに分類して: 先月分の請求書が届いていません"}
]
}'
max_tokensは入力トークンとの合計がモデルの文脈長を超えられない仕様です。1Mトークンの文脈を使い切る長文を投げる場合は、出力側の上限も含めて計算してください。
Pythonでのhigh・none切り替え実装と応答形式の違い
推論機能の説明ページは、Large 4をreasoning_effortで推論の深さを調整できるモデルとして挙げています。"high"では回答の前に思考過程のチャンクが付き、"none"では思考を最小限にして通常の文字列で返します。APIリファレンスが受け付ける値はnone・minimal・low・medium・high・xhighの6段階です。
import os
from mistralai import Mistral
client = Mistral(api_key=os.environ["MISTRAL_API_KEY"])
def ask(prompt: str, effort: str) -> None:
res = client.chat.complete(
model="mistral-large-4",
reasoning_effort=effort,
messages=[{"role": "user", "content": prompt}],
)
content = res.choices[0].message.content
# high では content がチャンクのリスト、none では文字列で返る
if isinstance(content, list):
for chunk in content:
print(chunk.type, ":", chunk)
else:
print(content)
print("tokens:", res.usage.prompt_tokens, res.usage.completion_tokens)
ask("この仕様変更で影響を受けるテーブルを洗い出して", "high")
ask("この住所から都道府県名だけを抜き出して: 大阪府大阪市北区", "none")
応答の型が設定値で変わる点が落とし穴です。"high"に切り替えた途端、文字列を前提にした後段の処理が壊れます。分類や抽出のような定型処理は"none"、設計判断や複数手順のエージェント処理だけ"high"と、呼び出し側で分けておくと出力トークンも抑えられます。
Mistral Large 4の料金:プレビュー割引期限とLarge 3との単価差
単価はLarge 3から大きく上がりました。プレビュー期間の割引価格だけを見て見積もると、割引終了後に予算を超えます。
定価は入力1.36ドル・出力4.18ドル、半額は公開から2週間に限る条件
モデルカードの料金欄は、100万トークンあたり入力1.36ドル・キャッシュ入力0.14ドル・出力4.18ドルを定価とし、半額の入力0.68ドル・キャッシュ入力0.07ドル・出力2.09ドルを併記しています。changelogはこれを「ローンチ価格として2週間50%オフ」と説明しています。10月6日の公開から数えると、割引は10月下旬に終わる計算です。
見積もりには定価を使ってください。キャッシュ入力は定価でも0.14ドルと入力の約10分の1なので、同じシステムプロンプトや参照文書を繰り返し送る構成では、ここが月額を左右します。
月に入力1,000万・出力200万トークンを処理したときのLarge 3との月額比較
社内問い合わせの分類や文書要約で、月に入力1,000万トークン・出力200万トークンを処理する場合で比べます。
| モデル・価格区分 | 入力 | 出力 | 月額 |
|---|---|---|---|
| Large 4(定価) | 13.60ドル | 8.36ドル | 21.96ドル |
| Large 4(ローンチ半額) | 6.80ドル | 4.18ドル | 10.98ドル |
| Large 3(定価) | 5.00ドル | 3.00ドル | 8.00ドル |
金額の桁は小さく、多くの企業では予算上の問題になりません。効いてくるのはreasoning_effortを"high"にしたときの出力増です。思考過程で出力が3倍の600万トークンになれば、Large 4の定価は38.68ドルまで上がります。Large 3で精度が足りている処理まで一律にLarge 4へ移す理由はありません。
重み公開後のMistral Large 4自社ホスティング:VRAM試算と確認手順
重みが公開されれば、自社のGPUサーバーで動かす選択肢が生まれます。ここでは公開前の段階で決められることと、公開を待つべきことを分けます。
1.05Tパラメータの重みだけでFP8約1.05TB・BF16約2.1TBになる計算
MoEは1トークンあたりの計算が活性52B分で済みますが、VRAMには全エキスパートの重みを載せる必要があります。重みだけで、FP8(1パラメータ1バイト)なら約1.05TB、BF16(2バイト)なら約2.1TBです。いずれも1.05T×バイト数の計算値で、KVキャッシュや実行時のバッファは含みません。
H200(141GB)8基の合計は1,128GBで、FP8でも重みを載せた残りはごくわずかです。1Mトークン文脈のKVキャッシュまで考えると、16基構成か4ビット量子化(重み約0.53TB)が必要になる見込みです(いずれも計算上の推定)。同じ1T級MoEを手元で動かす際の考え方はKimi K2.6のローカル運用の解説でも扱っています。重みの格納形式と推奨GPU構成は、公開時のモデルカードで必ず確かめてください。
vLLMの対応状況と商用利用のライセンスを重み公開当日に確かめる順序
重み公開後に最初に見るべきはライセンスです。Large 3はApache 2.0でしたが、Large 4の条件は未発表です。商用利用・改変・再配布の可否と、売上規模などによる利用制限の有無をHugging FaceのMistral AI組織ページに置かれるモデルカードで確認してから、社内の利用申請に進みます。
次が推論サーバーの対応です。Mistral AIはvLLMによる自社デプロイ手順を公式に案内しています。新アーキテクチャのモデルは、vLLMの特定の版以上でないと読み込めないことがあります。必要な版とパーサー指定を公式手順で確かめてから検証環境を組んでください。vLLM自体の仕組みはvLLMの解説記事にまとめています。
Mistral Large 4を採用する条件と、現時点では本番に組み込まない業務の線引き
ここまでの仕様と料金を踏まえ、Large 4を選ぶ条件と、いまは選ばない場面を言い切ります。
欧州内処理や閉域網での重みの手元保持が要件になる案件で採用する条件
Large 4を候補の先頭に置くのは、次のどれかに当てはまる案件です。欧州の顧客データを扱い、処理を欧州内で完結させる必要がある業務。発表記事によると、Mistral AIは欧州内で一貫して運用するデプロイを含む複数リージョンでの提供を予定しています。もう1つは、将来的に重みを手元に置き、閉域網で動かす前提でモデルを選びたい基盤用途です。APIで先に精度を確かめておけば、重み公開後に同じモデルを自社環境へ移せます。
どの処理を外部APIに出し、どこを閉域に残すかの線引きは、モデルの性能より先に決めておく項目です。私たちの生成AI導入支援では、データ区分の整理からモデル選定、検証環境の構築までを受託で進めています。
プレビュー版を基幹処理に組み込まない理由と、Large 3を使い続ける場面
プレビュー版を、止まると業務が止まる処理に組み込むのは見送るべきです。プレビュー中は仕様と価格が変わり得ます。Mistral AIは過去にもDevstral 2などのAPI提供を終了しており、その経緯はDevstral 2のAPI提供終了後の入手経路で整理しています。一般提供に移り、版付きモデル名の扱いが確定するまでは、検証用途にとどめるのが妥当です。
Large 3で要件を満たしている処理も、移行を急ぐ理由はありません。文脈が256Kで足り、Apache 2.0の重みを使えるLarge 3は、単価が約3分の1で済みます。移行の対象は、1Mトークン文脈が要る長文処理か、Large 3で正答率が足りなかった処理に絞ってください。
よくある質問
Mistral Large 4の検討段階で出やすい質問に、2026年10月12日時点の公開情報をもとに答えます。
Mistral Large 4は無料で使えますか?
APIは従量課金で、無料枠の記載はモデルカードにありません。定価は100万トークンあたり入力1.36ドル・出力4.18ドルで、公開から2週間は半額のローンチ価格が設定されています。重みは10月末までに公開予定とされていますが、ライセンス条件は未発表です。重みが無償で入手できても、動かすためのGPU費用は自社負担になります。
Mistral Large 4はオープンソースですか?
Mistral AIは「オープンウェイト」のモデルと説明しており、重みは月末までに公開する予定です。ただし2026年10月12日時点でライセンスは示されていません。前世代のLarge 3はApache 2.0でしたが、Large 4に同じ条件が付くとは限りません。商用の自社運用を予定している場合は、重み公開時のライセンス表記を確認してから判断してください。
Mistral Large 4は日本語に対応していますか?
発表記事によると、学習データの多くは多言語で、EUの全公用語を含む160以上の言語をカバーしています。日本語単独のベンチマークは公表されていません。日本語の業務文書で使う場合は、分類や要約など実際の処理を数十件のサンプルで流し、Large 3や他社モデルと正答率を比べてから採否を決めるのが確実です。
Mistral Large 3からモデル名を変えるだけで移行できますか?
エンドポイントは共通なので、modelをmistral-large-2512からmistral-large-4に変えれば呼び出せます。注意点はreasoning_effortです。"high"を指定すると応答のcontentが文字列からチャンクのリストに変わるため、後段のパース処理を合わせて直す必要があります。単価も約2.7倍になるので、移行対象は処理ごとに選んでください。
Mistral Document AIなど同社の他製品とはどう使い分けますか?
Large 4は文章生成や推論、ツール呼び出しを担う汎用モデルです。請求書や帳票を読み取って構造化する用途なら、OCRに特化した同社の製品のほうが単価と精度の両面で向きます。その違いはMistral Document AI 2512の解説で整理しています。読み取りは専用製品、読み取った結果の判断や要約はLarge 4、と役割を分ける構成が組みやすいはずです。
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