mistral-document-ai-2512は、Microsoft Foundryで提供されているMistral AIの文書処理モデルのIDです。OCRエンジンにはmistral-ocr-2512(2025年12月17日発表のMistral OCR 3)を使い、PDFや画像をMarkdownに変換し、指定したJSONスキーマの形で項目を抜き出します。末尾の「2512」は2025年12月版を示す番号です。
後継として2026年6月にOCR 4、7月にOCR 4.1が出ており、2512はもう最新版ではありません。この記事では、2512の構成、Mistral APIとFoundryそれぞれの料金と上限、Pythonでの呼び出し方、2512を使い続けるかOCR 4.1へ移るかの判断材料を、2026年10月時点の公式ドキュメントで確認した内容に絞って説明します。
まとめ:mistral-document-ai-2512の要点と使い続ける条件
- 正体:FoundryのモデルID。中身はOCR 3(
mistral-ocr-2512)とアノテーション(構造化抽出)機能です。Mistral API側では同じエンジンをmistral-ocr-2512として呼びます。 - 料金:Mistral APIのOCR 3は1,000ページあたり2ドル(Batchなら1ドル)、アノテーション付きは3ドル。FoundryのDocument AI 2512は1,000ページあたり3.0ドル(Data Zoneは3.3ドル)です。
- 上限:Mistral APIは50MB・1,000ページまで。Foundryのmistral-document-ai-2512は1リクエスト30ページ・PDF 30MBまでです。
- 現在の位置づけ:Mistralの最新OCRはOCR 4.1(
mistral-ocr-4-1)。OCR 3は既存の連携向けに提供が続いていて、Foundryでも2512はGAのまま退役日が決まっていません。 - 判断:文字とMarkdownの表があれば足りる用途なら、単価が半分の2512を版固定で使い続けて構いません。段落ごとの座標や、ブロック単位の信頼度スコアが必要なら、OCR 4.1への移行を選びます。
mistral-document-ai-2512の構成:FoundryのモデルIDとOCR 3の関係
同じエンジンが提供経路によって別の名前で呼ばれるため、「Document AI」「OCR 3」「2512」は混同されがちです。Foundryのモデルカタログには「Mistral Document AI comes with an improved Document OCR processor, powered by our latest OCR model, mistral-ocr-2512」とあり、2512のOCR部分がOCR 3であることが明記されています。
| 名前 | 提供経路 | 中身 |
|---|---|---|
| mistral-document-ai-2512 | Microsoft Foundry | OCR 3+アノテーション |
| mistral-ocr-2512 | Mistral API(/v1/ocr) |
OCR 3 |
| Document AI | Mistral Studio | OCRとアノテーションを使う画面・機能群 |
| mistral-ocr-latest | Mistral API | その時点の最新OCR(現在はOCR 4.1) |
Mistralの発表によると、OCR 3はOCR 2に対して、フォーム・スキャン文書・複雑な表・手書きの社内評価で74%の勝率でした。結合セルを含む表はcolspan・rowspan付きのHTMLテーブルで復元します。OCR 2との後方互換も保たれていて、リクエストの形を変えずにモデル名だけ差し替えられます。
旧版のこの記事では「mistral-small-2506と組み合わせた複合システム」と書いていましたが、MistralとMicrosoftの公式ページには、どのLLMを使っているかの記述がありません。Mistral APIのmistral-small-2506は2026年7月31日に提供を終えています。なお、同社の汎用LLMの旗艦は2026年10月にプレビューが始まったMistral Large 4で、仕様と料金はMistral Large 4の仕様・API呼び出し手順・料金の解説で整理しています。
旧版にあったGPT-4o・Gemini 1.5 Proとの精度比較も、OCR 3の数値ではありません。出典にあたるのは2025年3月6日の初代Mistral OCR(mistral-ocr-2503)の発表で、社内のテキスト限定テストセットでの総合スコアは、2503が94.89、GPT-4o(2024-11-20)が89.77、Gemini 1.5 Pro(002)が89.92でした。2503は2025年12月31日に提供を終えているので、この数字は2512の評価に使えません。
OCRモデルの版の系譜と提供状況
MistralのOCRは、この1年あまりで版が4回入れ替わりました。下表はMistralのモデル一覧(Legacy models表を含む)と、Foundryのモデルライフサイクル表(2026年9月21日更新)から作ったものです。
| 版 | API識別子 | 公開 | Mistral APIの状況 |
|---|---|---|---|
| OCR | mistral-ocr-2503 | 2025年3月 | 2025-12-31に提供終了 |
| OCR 2 | mistral-ocr-2505 | 2025年5月 | 2026-05-31に提供終了 |
| OCR 3 | mistral-ocr-2512 | 2025年12月 | 提供中(既存連携向け) |
| OCR 4.0 | mistral-ocr-4-0 | 2026年6月 | 2026-09-30に提供終了 |
| OCR 4.1 | mistral-ocr-4-1 | 2026年7月(8月31日GA) | 提供中(最新) |
Foundry側では、旧版のmistral-document-ai-2505が2026年7月20日に退役しています。2512はGAのまま退役日が決まっていません。ただし後継欄にはmistral-ocr-4-0が載っていて、Mistral APIでは9月30日に提供を終えたOCR 4.0が、Foundryではまだ移行先として案内されています。OCR 4.0はAPIでの提供が約3か月で終わったので、Mistral系のOCRは版を固定し、ライフサイクル表の定期確認に加えて、変更履歴や提供元からの退役通知を受け取れる運用にします。
OCRとアノテーションの2段構成:document_annotationとbbox_annotation
2512で項目抽出をするとき、処理は2段に分かれます。1段目でOCRがページをMarkdownに変換し、2段目で視覚対応のLLMがその結果を、指定したJSONスキーマに合わせて整えます。Mistralのアノテーション解説には、2種類のアノテーションの処理の流れが次のように書かれています。
- bbox_annotation:OCRの後、抽出した図・画像の領域(bbox)ごとに視覚LLMを呼び、キャプションや図表の読み取り結果をスキーマどおりに返します。
- document_annotation:OCRのMarkdown全体と、先頭8個の画像bboxを視覚LLMに渡し、文書全体から項目を抜き出します。1回のアノテーションで扱える画像bboxは最大8個です。
この8個という上限は、図や画像が多い文書では効いてきます。9個目以降の画像bboxは画像として渡されません。ただし、その内容がOCRのMarkdownに抽出されていれば、テキストとして渡されます。Mistralも「テキスト中心の文書にはdocument annotationを推奨」としています。図面や写真が多い帳票では、bbox_annotationで画像ごとに読ませるか、pagesでページを分けて送ります。スキーマの指定方法はjson_schema形式だけが有効です。
料金:Mistral APIとFoundryの1,000ページ単価
料金はトークン単位ではなくページ単位で決まります。下表のMistral API分はOCR 3とOCR 4.1のモデルカードと発表記事、Foundry分はAzureの価格API(prices.azure.com)で米国東部(eastus)を引いた値です(2026年10月8日時点)。
| 経路・モデル | 通常 | Batch | アノテーション付き |
|---|---|---|---|
| Mistral API OCR 3(2512) | 2ドル | 1ドル | 3ドル |
| Mistral API OCR 4.1 | 4ドル | 50%割引 | 5ドル |
| Foundry Document AI 2512(Global) | 3.0ドル | – | – |
| Foundry Document AI 2512(Data Zone) | 3.3ドル | – | – |
| Foundry OCR 4(Global) | 4.0ドル | – | 5.0ドル |
※いずれも1,000ページあたりの米ドル単価。OCR 4のBatch単価は、発表時点で通常の半額の2ドルです。
月1万ページを処理する場合の試算
月1万ページで計算すると、Mistral APIのOCR 3は20ドル、Batchなら10ドル、アノテーション付きなら30ドルです。FoundryのDocument AI 2512は30ドル、米国東部で取得したData Zoneの単価では33ドルです。OCR 4.1は40ドル、アノテーション付きで50ドルになります。Data Zoneで選べる圏域(米国・EU・アジア太平洋)が2512で使えるかは、デプロイ前にポータルで確認します。
差が出るのは、急がない一括処理です。翌日の出力で足りる過去文書の電子化なら、上の表の中ではOCR 3のBatch処理が最安で、OCR 4.1の通常処理の4分の1、Batch同士で比べても半額です。Foundryを選ぶ理由は単価ではなく、Azureの請求とガバナンスに一本化できることです。
入力上限と対応形式:Mistral APIとFoundryで違う上限
同じOCR 3でも、Mistral APIのOCRドキュメントとFoundryのモデル一覧では、1回に送れる量が違います。ページ数の多い文書を移行するときに、最初にぶつかるのがここです。
| 項目 | Mistral API | Foundry(2512) |
|---|---|---|
| ファイルサイズ | 50MBまで | PDF 30MBまで |
| ページ数 | 1,000ページまで | 30ページまで |
| 入力形式 | PDF・PPTX・DOCX・画像 | PDF・画像 |
| 出力形式 | Markdown・JSON | Text・JSON・Markdown |
Foundryで30ページを超えるPDFを処理するときは、送る前にページを分割します。Mistral APIなら1回で送れる200ページの契約書も、Foundryでは7回に分けることになります。アノテーションを使う場合は、分割の境目をまたぐ項目(ページをまたぐ明細表など)を後で結合する処理も必要です。
Pythonでの呼び出し方:版固定とFoundry経由の2パターン
以下のコードは、Mistral公式SDKのmistralai 3.1.0(2026年10月6日公開・Python 3.10以上)向けです。2本とも、ローカルに立てたモックサーバーに対して実行し、送信されるパスとJSON本文がドキュメントどおりであることを確認しました。実際のAPIキーでの応答は確認していません。実行前にpip install mistralai==3.1.0でSDKを用意し、各コードで参照する環境変数を設定してください。1本目のexample.comのPDF URLは取得可能な実ファイルのURLに置き換え、2本目では作業ディレクトリにinvoice.pdfを用意します。
Mistral API:mistral-ocr-2512の版固定呼び出し
公式サンプルはmodel="mistral-ocr-latest"を使っていますが、このエイリアスは最新のOCRを指します。2026年7月16日からはOCR 4.1を指している(mistral-ocr-4も同じ)ので、2512の単価と挙動で運用するなら版を明示します。
import os
from mistralai.client import Mistral
client = Mistral(api_key=os.environ["MISTRAL_API_KEY"])
res = client.ocr.process(
model="mistral-ocr-2512",
document={"type": "document_url", "document_url": "https://example.com/invoice.pdf"},
table_format="html",
extract_header=True,
extract_footer=True,
)
for page in res.pages:
print(page.index, page.header, page.markdown[:40])
print("pages_processed:", res.usage_info.pages_processed)
table_formatを"html"にすると表がページ本文から分かれ、tablesに入ります。extract_header・extract_footerを有効にすると、ページ番号や社名などのヘッダー・フッターがheader・footerに分かれ、本文に混ざりません。どちらの機能も「OCR 2512以降のみ」とドキュメントに注記があり、2505以前では使えませんでした。
モックで送信内容を見ると、SDK 3.1.0は指定しなくても"include_blocks": trueを付けて送ります。ドキュメントでは、ブロック抽出(段落ごとの座標と種別)は「OCR 4以降のみ」です。2512を使うコードでは、応答のblocksを前提にした処理を書かないようにします。
Foundryのmistral-document-ai-2512による請求書の構造化
Foundryにデプロイした2512は、SDKのMistralAzureクライアントで呼びます。SDKはエンドポイントの後ろに/providers/mistral/azure/ocrを付け、api-version=2024-05-01-previewをクエリに自動で入れます。server_urlには、デプロイ詳細に表示されるエンドポイントのホスト部分までを渡します。
import base64
import json
import os
from pydantic import BaseModel
from mistralai.azure.client import MistralAzure
from mistralai.extra import response_format_from_pydantic_model
class Invoice(BaseModel):
invoice_number: str
issue_date: str
total_amount: int
with open("invoice.pdf", "rb") as f:
b64 = base64.b64encode(f.read()).decode()
client = MistralAzure(
server_url=os.environ["AZUREAI_ENDPOINT"],
api_key=os.environ["AZUREAI_API_KEY"],
)
res = client.ocr.process(
model="mistral-document-ai-2512",
document={"type": "document_url", "document_url": f"data:application/pdf;base64,{b64}"},
document_annotation_format=response_format_from_pydantic_model(Invoice),
)
print(json.loads(res.document_annotation))
response_format_from_pydantic_modelはPydanticのモデルをjson_schema形式(strict: true)に変換します。document_annotationはJSON文字列で返るので、json.loadsで辞書に戻します。SDK 3.1.0のAzure用クライアントにはinclude_blocksの引数がなく、ブロック抽出はMistral API側でOCR 4以降を使うときだけの機能です。
2512で使える主なパラメータ
| パラメータ | 役割 | 2512で |
|---|---|---|
| pages | 処理するページ(0始まり) | 使える |
| table_format | 表の出力(null・markdown・html) | 使える |
| extract_header / extract_footer | ヘッダー・フッターの分離 | 使える |
| include_image_base64 | 抽出画像をBase64で返す | 使える |
| document_annotation_format | 文書全体の構造化抽出 | 使える |
| document_annotation_prompt | 抽出の指示文 | 使える |
| include_blocks | 段落ごとの座標と種別 | OCR 4以降のみ |
pagesを指定すると、課金対象を必要なページに絞れます。表紙と目次を除外した場合、削減額は除外ページ数とページ単価の積です。文書全体が長くても、除外ページ数が同じなら削減額は変わりません。
日本語帳票:対応言語の表記差と精度評価
日本語文書に2512を使うなら、公式の記述が経路によって食い違っている点を先に押さえておきます。Mistralの対応言語ページでは、OCRの「East Asian」にJapaneseが入っています。一方、FoundryのDirect from Azureモデル一覧では、mistral-document-ai-2512の言語欄がenだけです。FoundryでSLAやサポートの前提として日本語を扱うなら、この表記をMicrosoftに確認してから採用する必要があります。
精度の面では、OCR 3の日本語スコアは公開されていません。OCR 4の発表では、170言語・10言語グループへの対応と、日本語を含む「特殊言語」カテゴリでの改善が示されていますが、これも社内評価のCrawl Multilingualによる比較です。請求書や納品書に使うなら、自社の実帳票を数十枚選び、項目単位の一致率を2512とOCR 4.1で比べてから決めます。縦書き・印影の重なり・手書きの数字は誤読が業務に直結するので、評価サンプルに必ず含めます。
Mistralの外部APIに帳票を出せない場合は、ローカルで動くOCRも候補になります。公開モデルの例として、dots.mocrとは?83.9点の実力と日本語精度・導入手順【2026年9月】やGLM-OCRとは?0.9Bの実体と日本語精度・vLLM/Ollama導入手順とAPI料金で、日本語の精度と導入手順を整理しています。
OCR 4.1への移行判断:2512を使い続ける条件
新しく作るシステムなら、OCR 4.1から始めます。Mistral自身がOCR 3を「既存の連携と本番ワークロード向けに提供を続ける」と位置づけており、新機能はOCR 4系にしか入らないためです。既に2512で動いているシステムは、次の条件で判断します。
- 2512を使い続けてよい:出力をRAGの取り込みや全文検索に使っていて、Markdownと表があれば足りる場合。月10万ページなら、OCR 3は200ドル、OCR 4.1は400ドルです。
- OCR 4.1へ移るべき:抽出した値の位置を画面上でハイライトしたい、読み取りに自信がない箇所だけを人の確認に回したい、という要件がある場合。段落ごとの座標・ブロック種別はOCR 4以降の機能です。OCR 4.1ではブロック単位の信頼度スコアも取得できます。
- Foundryで使っている:Foundryの後継欄はmistral-ocr-4-0のままで、4.1の案内はまだありません。2512に退役日がついていない今は、急いで移る理由はありません。
移行するときに見落としやすいのがmistral-ocr-latestです。このエイリアスを指定していたコードは、OCR 4の公開時点で、何も変更しないまま単価が倍(2ドルから4ドル)のモデルに切り替わっています。請求額が急に増えたときは、まずリクエストのmodelと、応答のmodelフィールドを確認します。
クラウド事業者の文書解析サービスと比べたいなら、Azure AI Document Intelligenceの料金・使い方・精度|文書解析AIを実務目線で解説やGoogle Document AIとは|プロセッサの選び方・料金・Pythonでの使い方【2026年9月】に、日本語帳票での制約をまとめています。
よくある質問
mistral-document-ai-2512とmistral-ocr-2512の違いは何ですか?
mistral-ocr-2512はOCRモデル(OCR 3)そのもので、Mistral APIの/v1/ocrで呼びます。mistral-document-ai-2512は、Microsoft Foundryでそのモデルとアノテーション機能をまとめて提供するときのモデルIDです。Foundryでは、1リクエスト30ページ・PDF 30MBという上限があります。
Mistral OCRの料金はいくらですか?
Mistral APIのOCR 3(2512)は1,000ページあたり2ドル、Batch APIで1ドル、アノテーション付きで3ドルです。最新のOCR 4.1は4ドル(アノテーション付き5ドル)。FoundryのDocument AI 2512は1,000ページあたり3.0ドルです(2026年10月時点)。
Mistral OCRで日本語は読めますか?
Mistralの対応言語ページでは、OCRの対応言語にJapaneseが含まれています。ただし、OCR 3の日本語スコアは公開されておらず、Foundryのmistral-document-ai-2512の言語欄はenだけです。業務で使う前に、自社の帳票で項目単位の精度を測ってください。
mistral-ocr-latestを指定すると、どのモデルが動きますか?
その時点の最新のOCRが動きます。2026年10月時点ではOCR 4.1(mistral-ocr-4-1)です。2512の単価と挙動を保ちたい場合は、model="mistral-ocr-2512"のように版を固定します。
mistral-document-ai-2512はいつまで使えますか?
2026年10月時点で、Foundryのライフサイクル表ではGAのまま退役日が決まっていません。Mistral APIのOCR 3も、既存の連携向けに提供が続いています。ただし、OCR 4.0はAPIでの提供が約3か月で終わっているので、MistralのモデルライフサイクルページとFoundryのライフサイクル表は定期的に確認してください。