Android Studioは、GoogleがAndroidアプリ開発用に無料で配布している公式の統合開発環境(IDE)です。2026年10月時点の最新安定版は、10月1日に公開された「Android Studio Rabbit 1 | 2026.2.1」です。この記事では、何ができるのか、自分のPCで動くのか、インストールから最初のアプリのビルドまでに何をするのかを、公式ドキュメントの記載に沿って順に説明します。
まとめ:Android Studioでできることと始める前に確認すること
- 何か:IntelliJ IDEAをベースにした、Google公式のAndroid開発用IDE。ダウンロードと利用は無料です。
- できること:コード編集、ComposeのUIプレビュー、Gradleビルド、エミュレータ実行、デバッグ、公開用App Bundleの作成まで1本で完結します。
- AI:Gemini in Android Studioが標準で入っています。次のRabbit 2では、Claude AgentやCodexなど外部のコーディングエージェントもつなげるようになります。
- 必要なPC:エミュレータも使うならRAM 16GB・空き容量16GBが最低ライン。公式の推奨はRAM 32GBです。ARM版WindowsとARM版Linuxは非対応。
- 始め方:インストーラーを入れてウィザードでSDKを導入し、「Empty Activity」とKotlinで新規プロジェクトを作ります。
- 版の注意:GeminiやCrashlyticsとの連携は、最新安定版と過去10か月以内のメジャー版でしか使えません。
Android Studioの位置づけとIntelliJ IDEAとの関係
公式ドキュメントはAndroid Studioを「Android アプリ開発用の公式の統合開発環境(IDE)」と定義し、「IntelliJ IDEA の強力なコードエディタとデベロッパー ツールをベース」にしていると説明しています。コード補完やリファクタリングはJetBrainsのIntelliJ IDEAの機能をそのまま使い、そこへGoogleがAndroid固有のビルド、エミュレータ、レイアウト検査、プロファイラを載せた構成です。
ベースの版は今も追随しています。Rabbit 1のビルド番号はIntelliJ Platformの262系(2026.2)で、版番号の「2026.2.1」もこのプラットフォーム版にそろえた表記です。
2013年の発表からEclipse ADT終了までの経緯
Android Studioは2013年5月15日のGoogle I/Oでプレビュー版として発表されました。当時の発表ではJetBrainsと協力し、IntelliJ IDEA Community Editionをベースにしたことが明記されています。正式版の1.0は2014年12月8日に公開されました。
それまでの標準だったEclipse向けのプラグイン「Android Developer Tools(ADT)」について、Googleは2015年6月26日に「年末で開発と公式サポートを終える」と告知しました。以降、Android開発の標準IDEはAndroid Studioだけです。古い入門書やブログでEclipseの画面が出てきたら、その手順は現在は使えないと考えてください。
無料で使える範囲とライセンスの条件
Android Studio本体とAndroid SDKは無料です。ダウンロード時に同意するAndroid SDKライセンス契約は、SDKの利用をロイヤリティフリー(使用料なし)で許諾しています。ただし契約3.1条・3.2条により、SDKを使って開発できるのはAndroid対応デバイス向けのアプリに限られ、SDKを使って別のSDKを作ることも禁止されています。
費用が発生するのは周辺サービスです。Google Playでアプリを公開するには別途デベロッパー登録が必要で、Gemini in Android Studioも上位の使い方は有料になります(後述)。
Android Studioでできること:設計からリリースまでの機能
公式サイトが挙げる機能を開発の流れに沿って並べます。エディタと周辺ツールを自分で組み合わせる必要がない点が、汎用エディタとの一番の違いです。
- コード編集:Kotlin、Java、C/C++のコード補完とリファクタリング。C/C++はNDKと組み合わせて使います。
- UI設計:Jetpack Composeのプレビュー、任意の画面サイズでの表示確認、ライブ編集で実行中のアプリへ変更を即時反映。
- ビルド:Gradleと公式のAndroid Gradleプラグイン(AGP)。無料版と有料版など、1つのプロジェクトから複数のビルドバリアントを作れます。
- テストと実行:Android Emulatorでスマートフォン、タブレット、折りたたみ端末、Wear OS、テレビ、車載(Android Automotive OS)を再現。Android Device Streamingを使えば、Googleのデータセンターなどに置かれた実機へADB経由で接続してテストできます(Firebaseプロジェクトに紐づけて使い、月ごとの無料枠を超えると課金されます)。
- 検査と改善:Layout Inspectorでの再コンポーズ回数の確認、CPUとメモリのプロファイラ、lintによる潜在バグの検出、Logcatでのログ確認。
- 公開準備:Android App Bundleの作成と、APK Analyzerによるサイズの比較。
新しく作るアプリのUIは、後述のEmpty ActivityテンプレートのとおりJetpack Composeで作るのが公式の推奨です(従来のViewベースのUIも引き続き使えます)。宣言的UIの仕組みはJetpack Composeの解説記事で扱っています。
Gemini in Android StudioとAgent Modeの提供区分
Android StudioにはAIアシスタント「Gemini in Android Studio」が組み込まれています。コード生成に加え、Gradleビルドエラーの修正、Logcatやクラッシュ情報(App Quality Insights)と連携した原因分析ができます。大まかな目標を伝えるとプランを立て、複数ファイルの変更とバグ修正を繰り返すAgent Modeもあり、ビルドから端末への配置、アプリの状態確認までエージェントに任せられます。公式の提供区分の比較表では、個人向けがFree、APIキー、Google One AI Pro、Google One AI Ultraの4区分で、別にビジネス向けがあります。下表ではAI ProとAI Ultraを1行にまとめています。
| 区分 | 対象 | 費用と特徴 |
|---|---|---|
| Free | 個人・学生 | 無料。レート上限とコンテキストが小さい |
| APIキー | 個人 | Gemini APIのトークン従量課金 |
| Google One AI Pro / Ultra | 個人 | 加入者は追加料金なし。レート上限が上がる |
| ビジネス | 企業・チーム | Gemini Enterprise(Standard/Plus)またはGoogle Developer Program |
Agent Mode、MCPサーバーの追加、Composeプレビューの生成、Journeysによるテストといった中核機能は、Freeを含む個人向け4区分すべてで使えます。主な違いはレート上限、コンテキストウィンドウ、学習への利用です。Free版ではチャットに入力したコードがGeminiの学習に使われる場合があり、APIキー、Google One、Gemini Enterpriseでは学習に使われません。個人アカウントのFree版で業務コードを扱う前に、社内の方針がどの区分を許しているかを確認してください。
企業向けでは、Rabbit 1でAndroid StudioがGemini Enterpriseのサブスクリプションに含まれるようになりました。組織のGoogle Cloudプロジェクトにつなぐと、プロンプトやコードをVPC Service Controlsの内側と選んだリージョンにとどめ、料金はGoogle Cloudの請求にまとまります。ソースコードを外部へ一切出せない現場では、Quail 4から使えるGemma 4のローカル実行(「Settings > Tools > AI > Model Providers」から取得)が選択肢です。
ClaudeやCodexをつなぐBring Your Own Agent(Rabbit 2)
次の版のRabbit 2では、「Bring Your Own Agent(BYOA)」が加わります。プレビュー版のリリースノートによると、Rabbit 2 Canary 2から、オープン仕様のAgent Client Protocol(ACP)に準拠したコーディングエージェントをAndroid Studioに接続できます。標準で選べるのはAnthropicのClaude Agent、OpenAIのCodex、GoogleのAntigravityの3つで、ほかのACP準拠エージェントは「Settings > Tools > AI > Agents」のレジストリから追加します。
APIキーで外部モデルを呼ぶだけの方式と違い、BYOAではプロジェクトの構成、ビルド診断、Android SDKツール、エミュレータ操作をエージェントへ直接渡します。各エージェントには個人のAPIキーか自分のサブスクリプションでサインインし、内蔵のGeminiエージェントは追加料金なしで残ります。Claude CodeやCodexを普段から契約しているなら、Rabbit 2の安定版を待ってから切り替えるのが安全です。2026年10月24日時点でRabbit 2はRC 1(10月21日)の段階で、安定版のRabbit 1には含まれていません。
必要なPCスペックと「重い」と感じる原因への対処
Android Studioは「重い」とよく言われます。エミュレータとGradleデーモンはIDE本体とは別のプロセスで動き、それぞれがメモリを使います。重さを感じたら、どのプロセスがメモリを使っているかに加え、IDEのインデックス作成中かビルド中かを確認します。公式のシステム要件は、IDEだけを動かす場合と、エミュレータも動かす場合を分けて示しています。
| 項目 | 最小(IDEのみ) | 最小(IDE+エミュレータ) | 推奨 |
|---|---|---|---|
| OS(Windows) | 64ビット Windows 10 | 最新の64ビット版 | |
| OS(Mac) | macOS 12 | 最新の64ビット版 | |
| OS(Linux) | 64ビット・glibc 2.31以降 | 最新の64ビット版 | |
| RAM | 8GB | 16GB | 32GB |
| 空き容量 | 8GB | 16GB | SSD 32GB以上 |
| GPU(Win・Linux) | 不要 | VRAM 4GB | VRAM 8GB |
| 画面解像度 | 1,280×800 | 1,920×1,080 | |
CPUはWindowsとLinuxで仮想化支援(Intel VT-xまたはAMD-V)がBIOSで有効になっていることが必須で、2017年以降の世代(Intel第8世代Core i5やRyzen 1000番台)が最低ラインです。公式はIntel Core NシリーズとUシリーズを「パフォーマンスが十分でない」として推奨していません。MacはApple M1以降、またはIntelの第6世代Core以降ですが、Intel Macのサポートは段階的に終了すると明記されています。これからMacを買うならApple シリコン機一択です。
見落としやすいのが仮想端末(AVD)の分です。AVDは1台ごとに最大6GBのストレージを使い、同時に動かすと1台あたり約4GBのメモリを消費します。RAM 16GBのPCで2台のエミュレータを並べるとIDEとGradleの分が足りなくなるので、16GBのPCでは同時起動を1台に絞り、8GBのPCでは実機デバッグを基本にしてください。
メモリ16GB以下のPCで軽くする設定
Android Studioの最大ヒープサイズは既定で1,280MBで、「Settings」の「Appearance & Behavior > System Settings > Memory Settings」から変更できます(変更後は再起動が必要)。推奨スペックに届かないPC向けに、公式は次の対処を挙げています。
- IDEの最大ヒープを512MBまで下げる
- 「File > Power Save Mode」で省電力モードにし、裏で走るインスペクションを止める
- エミュレータではなく実機でデバッグする(エミュレータの方がメモリを多く使う)
- Gradleの最大ヒープを既定の1,536MBから少しずつ下げる
- 「Compile independent modules in parallel」をオフのままにする
Gradleのヒープはプロジェクト直下の gradle.properties で指定します。既存のプロジェクトでは org.gradle.jvmargs が既に書かれていることが多いので、行ごと置き換えずに -Xmx の値だけを変えます。一度に大きく下げるとビルドが遅くなるので、公式ドキュメントも少しずつ下げて変化を見るよう注意しています。
# gradle.properties(-Xmxの値だけを書き換え、ほかのオプションは残す)
org.gradle.jvmargs=-Xmx1024m -Dfile.encoding=UTF-8
見落としがちなのが、Gradleデーモンの重複です。Android StudioのボタンからビルドしたときとターミナルからビルドしたときでJDKが違うと、Gradleは別のデーモンを起動し、そのぶんCPUとメモリを余計に使います。JDKのそろえ方は後述の「ビルドが失敗したときに見る場所」で説明します。
Android Studioのインストール手順(Windows・Mac・Linux・ChromeOS)
インストーラーは公式のダウンロードページから入手します。Rabbit 1の配布サイズは、Windows用exeとMac用dmgが約1.5GB、Linux用tar.gzが約1.6GB、ChromeOS用debが約1.2GBです。初回起動後のセットアップウィザードがAndroid SDKなどを追加でダウンロードするので、回線に余裕がある状態で始めてください。
初回起動のセットアップウィザードで選ぶ項目
どのOSでも、初回起動時のウィザードの流れは同じです。公式の入門Codelabの手順を要約すると次のとおりで、迷ったら既定値のまま進めて問題ありません。
- 以前の設定を読み込むか聞かれたら、初めてなら「Do not import settings」を選ぶ
- 使用状況データをGoogleと共有するかを選ぶ
- インストールの種類は「Standard」のままにする
- テーマ(ライトまたはダーク)を選ぶ
- SDKなどのライセンスに同意し、コンポーネントのダウンロードが終わるのを待つ
Windowsでは途中で「Windows コマンド プロセッサ」のユーザーアカウント制御と、adb.exe の通信を許可するかを尋ねるセキュリティ警告が出ることがあります。どちらも許可しないとSDKの導入や実機接続が止まります。
Windows:exeインストーラーとWHPXの有効化
Windowsでは、推奨されているexe版をダブルクリックして起動し、インストーラーの既定値のまま進めます。zip版を使う場合は展開したフォルダを「Program Files」に置き、bin フォルダの studio64.exe を起動します。
インストール後に必ず確認したいのが、エミュレータを高速化するハイパーバイザーです。公式はMicrosoftの「Windows ハイパーバイザー プラットフォーム(WHPX)」を推奨しており、Googleが配布してきたAndroid Emulator ハイパーバイザ ドライバ(AEHD)は2026年12月31日で廃止されます。AEHDのまま使っている場合は、年内に「Windowsの機能の有効化または無効化」で「Windows ハイパーバイザー プラットフォーム」をオンにし、PCを再起動してください。どちらが使われているかは、SDKの emulator フォルダで次のコマンドを実行すると分かります。
emulator -accel-check
# 出力例
accel:
0
WHPX(10.0.22631) is installed and usable.
accel
PowerShellでは .\emulator -accel-check と先頭に .\ を付けて実行します。「AEHD」または旧名の「GVM」と表示された場合は、WHPXへの切り替えが必要です。ARM版CPUを搭載したWindows PCは、2026年10月時点で公式にサポートされていません。
Mac:dmgからのインストールと保存場所の注意
Macではdmgを開き、Android Studioを「アプリケーション」フォルダへドラッグして起動します。Apple シリコン搭載機はmac_arm版、Intel Macはmac版を選びます。
プロジェクトの保存先は /Users/ユーザー名/AndroidStudioProjects にしておくのが安全です。「書類」「デスクトップ」「ダウンロード」フォルダはmacOSのTCC(透明性、同意、制御)で保護されており、そこに置くと、Android Studioにフォルダへのアクセス権を特別に与えない限りプロジェクトファイルが正しく表示されないことがあると、公式ドキュメントが注意しています。
Linux・ChromeOS:展開先と32ビットライブラリ
Linuxでは、tar.gzを自分専用なら /usr/local/、複数ユーザーで共有するなら /opt/ に展開し、android-studio/bin/studio を実行します。64ビット版のUbuntu向けに、公式ドキュメントは32ビットライブラリを入れる次のコマンドを示しています。ただし libncurses5 はUbuntu 22.04ではuniverseリポジトリにあり、24.04以降の標準リポジトリにはないため、このコマンドはi386アーキテクチャとuniverseを有効にした22.04向けと考えてください。
sudo apt-get install libc6:i386 libncurses5:i386 libstdc++6:i386 lib32z1 libbz2-1.0:i386
対応するデスクトップ環境はGNOME、KDE、Unityです。起動後に「Tools > Create Desktop Entry」を選ぶと、アプリケーション一覧から起動できるようになります。ChromeOSでは「Linux 開発環境」を有効にしてからdebパッケージを sudo apt install で入れます。ただしChromeOS版はエミュレータが使えず、アプリを動かせるのは接続した実機だけです。
Android SDKの追加インストールとAPIレベルの対応
ウィザードで入るのは最新のSDK一式だけです。古いAndroidを対象にしたアプリや、新しいAPIレベルを試すときは「Tools > SDK Manager」から該当のSDK Platformを追加します。IDEを使わずCIサーバーなどにSDKだけ入れたい場合は、Android CLIの android sdk コマンドを使います。公式のsdkmanagerのページは、従来の「コマンドライン ツールのみ」に含まれる sdkmanager を非推奨とし、こちらへの移行を案内しています。Android CLIではパッケージを ; ではなく / 区切りのパスで指定します。
# Android CLI(現在の推奨):導入できるパッケージのパスを確認してから入れる
android sdk list --all
android sdk install platform-tools platforms/android-37.0
# 従来のsdkmanager(非推奨):同じパッケージは ; 区切り
sdkmanager --licenses
sdkmanager "platform-tools" "platforms;android-37.0"
APIレベルごとに必要なAndroid Studioの最低版も決まっています。リリースノートの対応表では、Android 17(API 37.0)を対象にするにはPanda 3 | 2025.3.3 Patch 1以降とAGP 9.1.1以降が必要です。Android 17での変更点はAndroid 17(API 37)の変更点と対応手順にまとめています。
初めてのプロジェクト作成からビルド・実行までの使い方
インストールが終わったら、ウェルカム画面の「New Project」から最初のアプリを作ります。ここでの選択は後から変えにくいものが多いです。
テンプレートと言語、最小APIレベルの選び方
テンプレートは「Empty Activity」を選びます。公式はComposeの依存関係とマテリアルデザインの設定が入ったこのテンプレートをComposeプロジェクトの新規作成に推奨しています。この推奨はCompose向けの説明であり、Native C++など目的が異なるプロジェクトでは対応するテンプレートを選びます。
言語はKotlinです。公式は「Java はサポートされていますが、新しいプロジェクトにはおすすめしません」と明記しており、Jetpack ComposeはKotlinでしか書けません。Javaの資産がある場合の判断はKotlinとJavaの選定基準で比較しています。
「Minimum API level」は、アプリが動く最も古いAndroidを決める値です。低くすれば対応できる端末は増えます。ただし、新しいAPIの利用には実行時のAPIレベル判定や互換処理が必要になります。コンパイル時に参照できるAPIはcompileSdkで決まります。「Help me choose」を押すと、APIレベルごとの端末の累積シェアが表示されるので、対象ユーザーの端末が9割以上カバーされる範囲で最も新しい値を選ぶのが目安です(公式の基準ではなく編集部の目安)。
プロジェクト構造:manifests・kotlin+java・resとビルドファイル
作成直後のプロジェクトは、左側のProjectウィンドウに「Android」ビューで表示されます。これはモジュールごとに整理した表示で、実際のフォルダ構成とは異なります。アプリモジュールの中身は次の3つです。
manifests:アプリ名、権限、画面(Activity)を宣言するAndroidManifest.xmlkotlin+java:ソースコードと、JUnitのテストコードres:文字列、画像、テーマなどコード以外のリソース
ビルド設定は「Gradle Scripts」にあり、Kotlinで書く場合は build.gradle.kts、Groovyなら build.gradle です。依存ライブラリはモジュール側のビルドファイルに書き、既定ではGoogleのMavenリポジトリとMaven Centralから取得されます(取得先の指定は settings.gradle.kts にあります)。実際のフォルダ構成を見たいときは、表示を「Project」に切り替えます。
ビルドと実行:Runボタンとコマンドラインのgradlew
IDEからは、ツールバーで実行構成(通常は app)と実行先の端末(エミュレータか接続した実機)を選び、Runボタンを押すだけでビルド、インストール、起動まで進みます。アプリを起動せずにビルドだけ確かめたいときは「Build > Make Project」を使います。同じ処理はプロジェクト直下のGradleラッパーでも実行できます。CIで自動ビルドする場合や、IDEが重いPCでビルドだけ走らせたい場合に使います。
# Mac・Linux・PowerShell(コマンドプロンプトでは ./ を付けずに gradlew)
./gradlew tasks # 実行できるタスクの一覧
./gradlew assembleDebug # デバッグ用APKを作成
./gradlew installDebug # 作成して接続中の端末へインストール
adb install app/build/outputs/apk/debug/app-debug.apk
assembleDebug で作られるAPKは app/build/outputs/apk/debug/ に出力されます。Google Playへ提出するのはAPKではなくApp Bundle(.aab。コマンドラインでは bundleRelease などのbundle系タスク)なので、公開時は「Build > Generate Signed Bundle/APK」から署名付きで作ります。無料版と有料版のように複数のビルドバリアントがある場合は、「Build > Select Build Variant」でRunボタンが使うバリアントを切り替えます。
ビルドが失敗したときに見る場所:Build OutputとGradle JDK
ビルドの経過とエラーは「View > Tool Windows > Build」で開くBuildウィンドウに出ます。プロジェクトを開いた直後の同期エラーは「Sync」タブ、コンパイルエラーは「Build Output」タブのツリーで、失敗したタスクを選ぶとエラー本文が表示されます。ビルドが遅いときは「Build Analyzer」タブで、時間を食っているタスクやプラグインを確認できます。Gemini in Android Studioの「Fix build errors」を使うと、ここに出たエラーから修正案を作らせることもできます。
初心者がつまずきやすいのはJDKの食い違いです。公式のJDKの解説によると、Android Studio本体は同梱のJetBrains Runtime(JBR)で動き、IDEのボタンから実行したGradleは「Settings > Build, Execution, Deployment > Build Tools > Gradle」の「Gradle JDK」で選んだJDKを使います。一方、ターミナルから gradlew を実行したときは環境変数 JAVA_HOME のJDK(未設定ならPATH上の java)がクライアントの起動に使われます。ただし、実際にビルドを行うデーモンのJVMは、Daemon JVM criteriaや org.gradle.java.home の指定によって異なる場合があります。IDEでは通るのにターミナルでは失敗する場合は、まず両者が使うJDKを確認します。JDKが一致している場合は、実行タスクや環境変数、認証・プロキシ設定の違いも調べてください。
# ターミナル側のJDKとGradleの版を確かめる
./gradlew --version
# AGPが求めるJDKより古いと、次のようなエラーで止まる
Android Gradle plugin requires Java 17 to run. You are currently using Java 11.
Panda 1以降の新規プロジェクトでは、既定でGradle Daemon JVM criteriaを使います。それ以前に作られたプロジェクトでは、Gradle JDKの既定が GRADLE_LOCAL_JAVA_HOME(.gradle/config.properties の java.home。既定値はJBR)で、互換性のあるGradleなら移行を勧める通知が出ます。公式は JAVA_HOME とGradle JDKを同じJDKにそろえるよう勧めています。最新のAGP 9.4は、JDK 17以上とGradle 9.6.0以上を要求し、扱える最大のAPIレベルは37です(AGP 9.4のリリースノート)。
エミュレータ・実機・Device Streamingの使い分け
エミュレータは「Device Manager」で端末の種類とAndroidのバージョンを選んで作ります。画面サイズやAPIレベルを変えて確認できるので、公式もテストの基本手段として推奨しています。実機でデバッグするときは、端末の「開発者向けオプション」でUSBデバッグをオンにしてPCとつなぎます。
RAMが16GB以下のPCでは実機を主に使い、画面サイズ違いの確認だけエミュレータで行います。手元にない機種での表示確認は、Android Device Streamingで実機を借りれば、エミュレータを増やさずに済みます。
バージョン一覧と命名規則:年号付きの番号と動物名
Android Studioは2021年7月28日公開のArctic Fox(2020.3.1)から、「年.番号.番号」の版番号と動物名を組み合わせる方式に変わりました。動物名の頭文字はArctic FoxのAからアルファベット順に進み、2026年10月時点で安定版はR(Rabbit)です。主な安定版の公開日と、各版が対応するAGPの範囲は次のとおりです(全版は公式リリースノートを参照)。
| 版 | 安定版の公開日 | 対応AGP |
|---|---|---|
| Rabbit 1 | 2026.2.1 | 2026-10-01 | 7.1〜9.4 |
| Quail 4 | 2026.1.4 | 2026-09-01 | 7.1〜9.4 |
| Quail 1 | 2026.1.1 | 2026-06-02 | 7.1〜9.2 |
| Panda 1 | 2025.3.1 | 2026-02-10 | 7.0〜9.0 |
| Otter | 2025.2.1 | 2025-10-30 | 4.0〜8.13 |
| Narwhal | 2025.1.1 | 2025-06-24 | 3.2〜8.11 |
| Meerkat | 2024.3.1 | 2025-03-04 | 3.2〜8.9 |
各動物名の中で、Quail 1からQuail 4のように機能追加を含む版が数回出ます。2026年はおおむね毎月1回のペースで安定版が更新されました。新しい版はCanary、RCを経て安定版になるので、仕事で使うPCには安定版を入れ、Canaryは別フォルダに並べて試すのが公式の想定する使い方です。
次の版(Rabbit 2・Rabbit 3)で予告されている変更
2026年10月24日時点で、Rabbit 2はRC 1(10月21日)、Rabbit 3はCanary 1(10月22日)の段階です。プレビュー版のリリースノートには、次の機能が載っています。
- Rabbit 2:前述のBYOA、LeakCanaryとAIエージェントを連携させたメモリリークの原因説明と修正案、Android skillsの検索と導入
- Rabbit 3:機能ごとに使うAIモデルを割り当てるModel Assignment、iOS・Flutter・React NativeのプロジェクトをKotlinとComposeのAndroidアプリへ変換する移行ツール、署名付きApp Bundleの作成からGoogle Play Consoleのテストトラックへ直接アップロードする機能、Compose Preview Screenshot Testingツール
プレビュー版の機能は、安定版になるまでに名称や挙動が変わることがあります。業務のPCで使うのは安定版に入ってからにしてください。
古い版を使い続けるリスクと更新方法
更新は「Help > Check for Update」(Macは「Android Studio > Check for Updates」)から行えます。更新を先延ばしにしたときの影響は2つあります。
1つはクラウド連携が止まることです。GeminiやFirebase Crashlytics、Play Vitalsとの連携は最新安定版と過去10か月以内のメジャー版だけが対象です。2026年10月時点ではOtter 3 Feature Drop(2026年1月公開)がすでに非推奨扱いで、次のメジャー版で連携が無効になる予定です。確実に使えるのはPanda 1以降です。もう1つはAGPとの互換です。Android Studioは過去3年以内に出たAGPだけをサポートする方針になっており、3年より古いAGPのプロジェクトを新しいAndroid Studioで開くと、AGPの更新を求められます。数年前のプロジェクトを引き継いだ場合は、IDEを更新する前にAGPの版を確認してください。
Android Studioを選ばない方がよい場面と代替手段
Android専用のネイティブアプリを作るなら、Android Studio以外を選ぶ理由はほぼありません。一方で、次の条件に当てはまる場合は、主な作業環境を別に置く方が合理的です。
iOSとAndroidを1つのコードで作る場合は、FlutterやKotlin Multiplatformが候補になります。どちらも対応するプラグインを使えばAndroid Studioを主な編集・実行環境にできるため、クロスプラットフォーム開発だけを理由にIDEを替える必要はありません。Flutterなら普段の編集をVS Codeに置くこともできますが、Android向けにビルドするにはAndroid SDKが必要なので、SDKの導入経路としてAndroid Studioかコマンドラインツールは結局入れることになります。手順はFlutterの環境構築で扱っています。
Claude CodeやCodexをターミナルで使い、IDEを常時起動したくない場合、公式はAndroid CLIを案内しています。プロジェクトの作成(android create)などをターミナルから実行できます。IDEの中でエージェントを使いたいなら、前述のBYOAを待つのが近道です。
RAM 8GBのノートPCでエミュレータまで動かすのは、公式の最小要件(16GB)を満たさないため勧めません。実機デバッグに切り替えるか、メモリの増設を先に検討してください。社内に開発環境を整える人手がない場合は、Androidアプリ開発の受託のように、設計から公開までを外部に任せる方法もあります。
よくある質問
Android Studioは無料ですか?料金はかかりますか?
Android Studio本体とAndroid SDKは無料で、商用アプリの開発にも使えます。SDKのライセンス契約は利用をロイヤリティフリーで許諾していますが、用途はAndroid対応デバイス向けのアプリ開発に限られます。費用がかかるのは、Google Playで公開するためのデベロッパー登録と、Geminiを企業向け(Gemini Enterprise)やAPIキーの従量課金で使う場合、Android Device Streamingを無料枠を超えて使う場合です。個人のFree区分ならAIアシスタントも無料です。
Android Studioの最新バージョンはいくつですか?
2026年10月24日時点の最新安定版は「Rabbit 1 | 2026.2.1」(2026年10月1日公開)で、対応するAGPの安定版は9.4.0です。版は毎月のように上がるので、正確な最新版は公式のダウンロードページか、IDEの「Help > Check for Update」で確認してください。
スマホ(Android端末)だけでAndroid Studioを使って開発できますか?
できません。配布対象はWindows、Mac、Linux、ChromeOSで、Android端末上で動く版はありません。スマートフォンは、PCにUSBでつないでアプリを動かす「実機」として使います。PCのメモリが少ない場合は、エミュレータより実機でデバッグする方が負荷を抑えられます。
Android StudioでJavaは使えますか?
使えます。Javaのコード補完、デバッグ、ビルドはKotlinと同様にサポートされ、1つのプロジェクトにJavaとKotlinを混在させることもできます。ただしJetpack ComposeはKotlinが前提のため、既存のJavaアプリはJavaのまま保守し、新しく作るアプリはKotlinで始めるのが現実的です。
Android SDKだけをインストールする方法はありますか?
あります。現在の公式の案内はAndroid CLIで、android sdk install platforms/android-37.0 のように必要なパッケージを指定して入れます。従来の方法は、ダウンロードページの「コマンドライン ツールのみ」を展開し、cmdline-tools の中に latest フォルダを作って中身を移してから sdkmanager を使うもので、こちらは非推奨になりました。どちらもCIサーバーや、IDEを使わないFlutter環境に向いています。