Android CLIとは|1.0のインストール・コマンド一覧・エージェント連携

Android CLIは、Googleが提供するAndroid開発用の公式コマンドラインインターフェースです。2026年4月に0.7が初回リリースされ、2026年5月に1.0が公開されました。AIエージェントがターミナルからAndroid開発を完結できるよう設計されたツールで、sdkmanageravdmanageradbに分かれていた操作の入口を android という単一コマンドへ集約しています。ここではインストール手順、コマンドの全体像、Android Skills、Claude Code・Codex・Gemini CLIからの使い方、そして導入しても効果が出ない条件までを、公式ドキュメントとリリースノートの記述に沿って整理します。

まとめ

  • 正体:エージェント前提で設計されたAndroid開発の公式CLI。既存のadbやGradleを廃止するものではなく、SDK導入・プロジェクト生成・仮想デバイス・実行・IDE参照の入口を一本化する層。
  • :0.7(2026年4月・初回リリース)→ 1.0(2026年5月)。1.0で android studio コマンド、Journeys、パッケージマネージャー対応、Google Antigravity 2.0への統合が入った。
  • 導入:Windowsは winget install --id Google.AndroidCLI、macOSは brew tap android/tap + brew install android-cli、Linuxは apt-get リポジトリを追加して apt-get install android-cli。導入後は android init でエージェント側にスキルを入れる。
  • 数値の扱い:「トークン70%超削減・3倍速」はGoogleの社内実験値で、対象は「プロジェクトと環境のセットアップ」に限定される。ビルド全体が3倍速になるという意味ではない。
  • 制約:Windowsでは android emulator が無効、PowerShellからのダウンロードも未対応(公式ドキュメント2026年6月16日更新時点の既知の問題)。

Android CLIの定義と1.0までの経緯

公式の位置付けは「エージェント優先のワークフローに向けて、Android開発の中核的な操作を標準化するコマンドラインインターフェース」です。人間がIDEのGUIで行っていた操作を、機械が誤りなく呼べる形の引数と構造化された出力に落とし込んだもの、と捉えると実態に近くなります。

リリースノート上の履歴は単純です。0.7が2026年4月の初回リリースで、1.0が2026年5月。1.0で追加されたのは、Android Studioのインデックスをエージェントから引く android studio コマンド、自然言語で書いたユーザーフローをターミナルやCI/CDから実行するJourneys、CameraX移行・アダプティブUI・AppFunctions・Compose Stylesといった新スキル、そしてapt-get・winget・homebrewでの配布です。Google Antigravity 2.0にはオプションのリソースバンドルとして同梱されました。日本語の解説記事の多くは4月のプレビュー時点で書かれているため、android studio 系コマンドとパッケージマネージャー導入が丸ごと抜けています。

adb・sdkmanager・avdmanagerとの関係

Android CLIはこれらを置き換えるものではありません。SDKパッケージの導入は android sdk install、仮想デバイスは android emulator create というように、従来 sdkmanageravdmanager に分かれていた入口を統合しますが、実機のログ取得やポートフォワードのような低レイヤの操作はこれまでどおり adb の領域です。ビルドもGradleが担当し、Android CLIは生成されたAPKを android run でデプロイする側に回ります。

エージェント側から見た価値はここにあります。ツールが3つに割れていると、エージェントはどのコマンドがどの責務を持つかを試行錯誤で探り、失敗するたびに出力全体をコンテキストに読み込みます。入口が1つで出力が構造化されていれば、この探索が消えます。

「3倍速・トークン70%削減」が意味する範囲

この数字はAndroid Developers Blogの記述が出典です。原文は「社内実験において、Android CLIはLLMのトークン使用量を70%以上削減してプロジェクトと環境のセットアップを改善し、標準ツールセットだけでエージェントが同じ作業を行った場合と比べてタスクが3倍速く完了した」というものです。

読み違えやすいのは対象範囲です。測定されたのはセットアップ系タスクであって、コード生成やビルド、テスト全体の所要時間ではありません。ベースラインの「標準ツールセット」の具体的な構成も公開されていないため、自社環境で同じ倍率が出る保証はない数値です。導入判断に使うなら、削減されるのは「エージェントがツールの使い方を探る往復」であり、そこが自社のトークン消費の主要因かどうかを先に確認してください。

インストールと初期設定

パッケージマネージャーからの導入

1.0からOSごとのパッケージマネージャーに対応しました。Windowsはwingetを使います。

winget install --id Google.AndroidCLI

macOSはApple Silicon・Intelとも同じ手順です。

brew tap android/tap
brew install android-cli

Linux(Debian系)はGoogleの署名鍵とリポジトリを追加してから導入します。

curl -fsSL https://dl.google.com/linux/linux_signing_key.pub | sudo tee /etc/apt/keyrings/google.asc >/dev/null
sudo sh -c 'echo "deb [arch=amd64 signed-by=/etc/apt/keyrings/google.asc] http://dl.google.com/android/cli/latest/debian/ stable main" > /etc/apt/sources.list.d/android-cli.list'
sudo apt-get update
sudo apt-get install android-cli

導入できたかは which android で確認します。CLI自体の更新は android update、バージョン確認は android --version です。更新の頻度が高いツールなので、エージェントの挙動がドキュメントと合わないときは、まず android update を実行してください。SDKのパスを固定したい場合は、ホームディレクトリの .androidrc(Windowsは %USERPROFILE% 直下)に --sdk=<パス> を書いておくと、毎回の指定を省けます。

android init でエージェントにスキルを入れる

インストールしただけでは、エージェントはAndroid CLIの存在を知りません。android init を実行すると、エージェントの設定ディレクトリに android-cli スキルが配置され、「この作業はこのコマンドで行う」という知識が渡ります。この一手を飛ばすと、エージェントは従来どおりadbやsdkmanagerを手探りで叩き、削減効果は出ません。

Windowsの既知の制約

公式ドキュメント(2026年6月16日更新)は、Windowsについて2点の既知の問題を挙げています。android emulator コマンドが現時点で無効であること、そしてPowerShellからのダウンロードが未対応であることです。Windowsで仮想デバイスを扱う開発では、エミュレーター操作だけ従来のAndroid Studioや avdmanager に残す前提で計画してください。制約は版ごとに変わる。着手前に android update を実行し、リリースノートの既知の問題を確認してから設計に入ります。

主要コマンドの全体像と実務での使い分け

コマンド 役割 代表的な用途
sdk SDKパッケージ管理 install / list / update / remove
create プロジェクト生成 公式テンプレートから雛形作成
describe プロジェクト解析 ビルドターゲットとAPK位置をJSON出力
emulator 仮想デバイス create / list / start / stop
run アプリ実行 APKのデプロイと起動
screen / layout 画面状態の取得 スクリーンショット・UI階層
docs 知識ベース参照 公式ガイドラインの検索・取得
studio IDE連携 コード解析・宣言検索・Composeプレビュー
skills スキル管理 add / list / find / remove
init エージェント設定 android-cliスキルの配置
info 環境情報 既定のSDKパス表示
update CLI自体の更新 最新版へのアップデート

SDK導入とプロジェクト生成のコマンド

SDKは必要なコンポーネントだけを名前で指定して入れます。バージョン固定や、beta・canaryチャンネルの指定にも対応しています。

android sdk install platforms/android-34 build-tools/34.0.0
android sdk list platforms --all-versions
android sdk update

sdk list はパッケージ名のパターンが必須引数で、上の例の platforms がそのパターンにあたります。--beta--canary を付ければ各チャンネルの版も見えます。新規プロジェクトは android create にテンプレート名を渡します。利用できるテンプレートは android create list で確認でき、既定は empty-activity-agp-9 です。--output は必須引数なので、エージェントに任せる場合もここだけは明示させてください。既存プロジェクトの構造をエージェントに把握させるときは android describe が使えます。プロジェクトを解析してメタデータを出力するコマンドで、「どこに何があるか」を探すための往復を減らせます。

仮想デバイス作成とAPKデプロイの手順

android emulator create --profile=medium_phone
android emulator start medium_phone
android run --apks=app/build/outputs/apk/debug/app-debug.apk --device=emulator-5554

android run は分割APK(base.apkと密度・言語別APK)をカンマ区切りで同時指定でき、--debug でデバッガ接続待ちにもできます。--type でACTIVITY以外にWATCH_FACEやTILE、COMPLICATIONといったWear OS向けコンポーネントを起動対象に指定できるのは、CLIならではの利点です。

screen・layoutによるUI状態の構造化取得

エージェントに画面を「見せる」ための系統です。android screen capture --annotate はUI要素に番号ラベルを重ねたスクリーンショットを返し、android screen resolve にその番号を渡すと実座標に変換されます。android layout --diff は前回から変化した要素だけを返すため、操作後の差分確認でトークンを大きく節約できます。UI自動操作をエージェントに任せる場合、この3つが実質的な目玉です。

ドキュメント検索(Knowledge Base)

android docs search 'How do I improve my app performance?'
android docs fetch kb://android/topic/performance/overview

検索で候補のkb URIを得て、必要なものだけを取得する2段構えです。エージェントの学習データが古くても、公式の最新ガイドラインを参照させられます。

android studio コマンドによるIDE連携

1.0で追加された、実務上いちばん効く機能です。起動中のAndroid Studioへ接続し、IDEが持つインデックスと解析結果をターミナルから引き出します。利用にはAndroid Studio Quail 2 Canary 1以降と、Gemini in Android Studioの有効化・サインインが必要です。

android studio check
android studio find-declaration --short HotelDetailScreen
android studio find-usages --short HotelDetailScreen
android studio analyze-file --project=MyApplication path/to/MainActivity.kt
android studio render-compose-preview --output-image-file=preview.png path/to/DetailScreen.kt HotelDetailScreenPreview

grepで参照箇所を探すエージェントは、同名メソッドや文字列一致のノイズを大量に読み込みます。find-usages はIDEの意味解析の結果を返すため、読み込む行数が桁で変わります。render-compose-preview はComposeのプレビューを画像として書き出し、エージェントにUIの見た目を評価させられます。なお android studio 系は1.0時点でもプレビュー扱いです。

Android Skillsの導入と管理

Android Skillsは、Androidのベストプラクティスをエージェントに注入する SKILL.md 形式の指示セットです。Navigation 3のセットアップ、エッジツーエッジ対応、AGP移行といった手順が公式にモジュール化されており、1.0ではCameraX移行、アダプティブUI、AppFunctions、Compose Stylesが追加されました。

android skills list --long
android skills find 'performance'
android skills add --agent='claude' --all
android skills remove --skill=edge-to-edge

--agent を省略した場合、スキルは検出されたすべてのエージェントに導入されます。エージェントの設定ディレクトリが1つも見つからないときだけ、Gemini/Antigravity用の ~/.gemini/antigravity/skills にフォールバック配置されます。複数のエージェントを併用していて特定の1つにだけ入れたいなら、--agent をカンマ区切りで明示してください。導入したのにエージェントが従来手順を使い続ける場合は、配置先が実際に使っているエージェントの設定ディレクトリと一致しているかをまず確認します。

エージェント別の接続手順

Android CLIは特定のエージェントに縛られません。公式が名前を挙げているのはGemini in Android Studio、Gemini CLI、Antigravity、そしてサードパーティのClaude CodeとCodexです。接続手順そのものは共通で、android init または android skills add --agent=<名前> でスキルを配置し、あとはエージェントに通常どおり指示を出すだけです。エージェント側にAndroid CLI専用のプラグインを入れる必要はありません。

Googleのエージェント環境は再編が続いています。Gemini CLIは個人向け提供が終了し、後継はAntigravity CLIです(--agent=gemini の配置先はGemini/Antigravity系で共通です)。Android CLIとスキルはAntigravity 2.0にオプションバンドルとして統合されているため、Google製ツールで統一するならこちらが最短路になります。移行の経緯はGemini CLIとは?2026年6月の個人向け終了とAntigravity CLI移行・使い方まで解説Antigravity 2.0で変わった点|IDEとの違い・エディタ復旧・料金・CLI移行で整理しています。

導入しても効果が出ない場面

Android CLIは、エージェントにAndroid開発をさせる前提でこそ意味を持ちます。人間がAndroid Studioで開発している現場に入れても、得られるのは sdkmanager の書き味が少し良くなる程度で、公表されている削減効果は再現しません。70%・3倍という数字はどちらも「エージェントが標準ツールを手探りする」状態をベースラインにした比較だからです。

次の条件に当てはまるなら、いま急いで移行する必要はありません。第一に、Windowsでエミュレーターを日常的に使うチーム。android emulator が無効な状態では、結局は従来ツールとの二重運用になります。第二に、CIがすでにGradleタスクとadbスクリプトで安定して回っているチーム。Android CLIはビルドを置き換えないので、書き換えても得られるのはコマンド表記の統一だけです。第三に、IDE連携を主目的とする場合。android studio はAndroid Studio Quail 2 Canary 1以降が前提で、安定版のIDEを使い続ける方針とは両立しません。

逆に、エージェントに環境構築から実機確認までを任せたい、あるいは新規プロジェクトの立ち上げとCIの自動化をこれから設計する、という状況なら導入価値は明確です。特にUI検証を含む自動化では、screenlayout の構造化出力が他の手段では代替しにくい強みになります。

よくある質問

Android CLIのインストール方法は?

Windowsは winget install --id Google.AndroidCLI、macOSは brew tap android/tap のあと brew install android-cli、Linuxはapt-getリポジトリを追加して sudo apt-get install android-cli です。公式サイトからの直接ダウンロードも用意されています。導入後は android init を実行してください。

Windowsでも問題なく使えますか?

コマンドの大半は動作しますが、公式ドキュメントの既知の問題として android emulator コマンドが無効であること、PowerShellからのダウンロードが未対応であることが明記されています(2026年6月16日更新時点)。仮想デバイス操作はAndroid Studio側で行う運用になります。

adbやsdkmanagerは不要になりますか?

不要にはなりません。SDK管理と仮想デバイス作成の入口はAndroid CLIに集約できますが、ログ取得やポートフォワードなどの低レイヤ操作はadbが担当し、ビルドはGradleのままです。Android CLIは置き換えではなく上位の統一インターフェースです。

Claude CodeやCodexからも使えますか?

使えます。公式がサードパーティエージェントとして両者を明示しています。android skills add --agent='claude' --all のようにエージェント名を指定してスキルを配置すれば、あとは通常の指示で android コマンドを呼び出します。--agent を省略すると検出済みの全エージェントに導入される点に注意してください。

Android Skillsとは何ですか?

エージェントにAndroidのベストプラクティスを渡す SKILL.md 形式の指示セットです。エッジツーエッジ対応やNavigation 3、AGP移行、CameraX移行などが公式に提供されています。android skills list --long で一覧と導入状況を確認でき、android skills find でキーワード検索できます。

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