Gemma 2は、Google DeepMindが2024年6月27日に公開したオープンウェイトの言語モデルです。2B・9B・27Bの3サイズがあり、重みをダウンロードして自社環境で動かせます。ただし2026年8月現在、Gemmaファミリの現行世代は2026年4月公開のGemma 4で、ライセンスもGemma 4からApache 2.0に切り替わりました。最新世代の仕様を探している場合はGemma 4とは|モデル一覧・必要スペック(VRAM)・量子化(GGUF/AWQ)・ローカル実行を解説【2026年版】を参照してください。この記事はGemma 2そのものの仕様と、いま新規案件でGemma 2を選ぶ合理性があるかの判断基準を扱います。
まとめ
Gemma 2は2B・9B・27Bの3サイズ構成で、学習トークン数はそれぞれ2兆・8兆・13兆です。2Bと9Bは次トークン予測ではなく知識蒸留で学習されており、27Bだけがゼロから学習されています。コンテキスト長は8,192トークン、入力はテキストのみです。
採用判断で最も見落とされやすいのはライセンスです。Gemma 2はApache 2.0ではなく「Gemma Terms of Use」で提供され、再配布時に利用制限条項を引き継ぐ義務があり、Googleは違反と判断した利用を制限できます。Apache 2.0になったのはGemma 4からです。
結論として、2026年8月時点で新規にGemma 2を選ぶ理由はほとんどありません。画像入力や128K以上のコンテキストが要件ならGemma 3以降で足りますが、Apache 2.0が要件なら選択肢はGemma 4だけです。以下でサイズ別の仕様、ライセンス4条項の中身、世代間の差、そして実際に動かす手順を順に見ていきます。
Gemma 2の3サイズと基本仕様
Gemma 2は2024年6月27日に9Bと27Bの2サイズで公開され、2024年7月31日に2Bが追加されました。「2つのバリエーション」という説明が残っている資料がありますが、これは2Bの追加前の情報です。現在のモデル一覧は次の3サイズで、パラメータ規模ごとに学習トークン数も学習に使われたチップも異なります。
| サイズ | 学習トークン | 学習方式 | 学習チップ | 公開日 |
|---|---|---|---|---|
| Gemma 2 2B | 2兆 | 知識蒸留 | TPUv5e 512 | 2024-07-31 |
| Gemma 2 9B | 8兆 | 知識蒸留 | TPUv4 4096 | 2024-06-27 |
| Gemma 2 27B | 13兆 | ゼロから学習 | TPUv5p 6144 | 2024-06-27 |
学習トークン数はGoogleのモデルカード、学習方式と学習インフラは技術レポート(arXiv:2408.00118)の記載です。技術レポートは2Bと9Bについて「次トークン予測の代わりに知識蒸留で学習した」と明記し、27Bは「本研究のためにゼロから学習した」と記しています。学習チップはサイズごとに異なり、モデルカードにはTPUv5pとだけ書かれていますが、技術レポートの学習インフラ表では9BがTPUv4、2BがTPUv5eです。アーキテクチャ面ではローカルアテンションとグローバルアテンションの交互配置、およびGrouped-Query Attentionが採用されています。
2B・9B・27Bの選び分けと入出力の制約
27Bは公開時のGoogleの説明で「自サイズクラスで最高の性能を提供し、2倍以上の規模のモデルに対する競争的な代替となる」とされたモデルです。9Bは「同サイズ帯において、Llama 3 8Bおよび他のオープンモデルを上回る」と説明されています。2Bは2024年7月31日の追加公開時に、同年7月30日時点のLMSYS Chatbot Arenaのスコアで全GPT-3.5系モデルを上回るとアナウンスされました。いずれも公開当時の同世代モデルとの比較であり、現在の他社モデルとの優劣を示すものではありません。
選び分けの実務的な軸はメモリです。後述のOllamaの配布サイズで言えば2Bが1.6GB、9Bが5.4GB、27Bが16GBです。これはディスク使用量であると同時に必要メモリのおおよその下限にあたり、実際の推論ではコンテキスト長に応じたKVキャッシュが上乗せされます。ノートPCの内蔵GPUや16GBメモリの環境で試すなら2B、単体GPUで実用品質を求めるなら9B、というのが現実的な線引きです。
入出力には明確な制約があります。Gemma 2はテキスト入力のみで画像・音声を受け取れず、コンテキスト長は8,192トークンです(技術レポートarXiv:2408.00118の記載。Ollamaのモデルページも8Kと表示しています)。さらにモデルカードは出力を「入力に応じて生成される英語テキスト」と定義しています。日本語での応答生成そのものは可能ですが、公式が品質を保証している出力言語は英語であり、日本語プロダクトに組み込むなら自前の評価が前提になります。日本語特化モデルとの比較検討が必要なら、CyberAgentLM3-22B-Chatとは|VRAM要件の実算とローカル実行手順で国産モデル側の要件も確認できます。
公式カナ表記が存在しない読み方と名称の由来
読み方を先に整理しておくと、Googleは日本語のドキュメントやブログでもカナに直さず「Gemma」と英字のまま表記しており、公式のカナ表記は定められていません。日本語圏では「ジェマ」と読まれるのが一般的です。表記を統一したい社内資料などでは、公式にならって英字のまま書くのが無難です。
名称はラテン語のgemma(precious stone=宝石)に由来し、初代Gemmaが公開された2024年2月21日のGoogleの発表で説明されています。初代は2Bと7Bの2サイズで、Geminiと同じ研究・技術から作られた軽量なオープンモデルという位置づけでした。7Bから9Bへの変更はGemma 2で行われたもので、単なる名前の付け替えではなくアーキテクチャと学習方式ごと変わっています。
Apache 2.0ではないGemma 2のライセンス条件
「オープンモデル=Apache 2.0やMITで自由に使える」という前提で導入を進めると、Gemma 2ではつまずきます。モデル本体に料金はかからず、重みのダウンロードも無料です。しかし適用されるのはGemma Terms of Useという独自ライセンスで、これはOSI承認のオープンソースライセンスではありません。商用利用も明示的には禁止されていませんが、Apache 2.0とは義務の重さが違います。
再配布で発生する4つの義務とGoogleの利用制限権
Gemma Terms of Use(最終更新2026年4月1日)のSection 3.1は、Gemma本体または派生モデルを第三者に配布する場合に次の4つを義務づけています。
- Section 3.2の利用制限を、執行可能な条項として自分の配布条件に組み込むこと
- すべての第三者受領者に本規約のコピーを提供すること
- 改変したファイルには、改変した旨を示す目立つ通知を付すこと
- ホステッドサービス経由を除くすべての配布に、「Gemma is provided under and subject to the Gemma Terms of Use found at ai.google.dev/gemma/terms」と記載したNoticeファイルを添付すること
つまり、Gemma 2をファインチューニングしたモデルを配布するとき、その制限は下流にそのまま伝播します。加えてGemma Prohibited Use Policyの遵守義務があり、規約には「法律上認められる最大限の範囲で、Googleは、本契約に違反していると合理的に判断したGemma Servicesの利用を、リモートその他の方法で制限する権利を留保する」という条項も置かれています。自社サービスの基盤モデルとして組み込む場合、この停止リスクを法務レビューに含めておく必要があります。
入手経路に挟まる手動承認(2026年8月16日実測)
この違いは配布の実務にも出ます。Hugging FaceのモデルAPIを引くと、google/gemma-2-27b-it はgated: "manual"(配布元による手動承認が必要)を返し、認証を通していないリクエストではREADME本体の取得が401で拒否されます。一方でGemma 4のgoogle/gemma-4-12B はgated: falseで、同じ方法でファイルを取得でき、フロントマターにlicense: apache-2.0が入っています。いずれも2026年8月16日に確認した値です。
CI/CDやコンテナビルドの中でモデルを自動取得する構成にしている場合、Gemma 2側はアクセストークンと事前の同意が必要になり、Gemma 4側は不要になります。「同じGoogleのオープンモデルだから同じ手順で入る」と考えていると、パイプラインの移植で必ずここで止まります。
Gemma 3・Gemma 4との違いと移行判断
Gemma 2の位置づけを決めるには、後続2世代との差を仕様レベルで見るのが早道です。世代が進むごとにモダリティとコンテキスト長が拡張され、Gemma 4でライセンスが切り替わりました。
| 世代 | 公開日 | サイズ | 最大コンテキスト | 入力 | ライセンス |
|---|---|---|---|---|---|
| Gemma 2 | 2024-06-27 | 2B / 9B / 27B | 8K | テキスト | Gemma Terms of Use |
| Gemma 3 | 2025-03 | 270M / 1B / 4B / 12B / 27B | 32K〜128K | テキスト(4B以上は画像も) | Gemma Terms of Use |
| Gemma 4 | 2026-04 | E2B / E4B / 12B / 26B A4B / 31B | 128K〜256K | テキスト・画像(音声は3構成) | Apache 2.0 |
Gemma 3は2025年3月に1B・4B・12B・27Bで公開され、その後270Mが加わって現在は5サイズです。コンテキストは4B以上が128K、1Bと270Mは32Kで、画像入力に対応するのも4B以上に限られます。扱う言語は140以上です。最小構成の実力を確認したい場合はGemma 3 270Mとは何か?270Mパラメータを持つGoogle最新小型AIモデルの概要を詳しく解説が参考になります。
Gemma 4は2026年4月公開で、E2B(実効2.3B)・E4B(実効4.5B)・12B Unified(11.95B)・26B A4B(総25.2B・活性3.8BのMoE)・31B Dense(30.7B)の5構成です。コンテキストはE2BとE4Bが128K、12B・26B・31Bが256K。画像入力は全構成が対応し、音声入力に対応するのはE2B・E4B・12Bの3構成です。
新規案件でGemma 2を選ぶべきでない条件
結論を先に言えば、2026年8月時点で新規にGemma 2を選ぶ合理性はほぼありません。次のどれか1つでも要件に該当するなら、後続世代に切り替えてください。
- ライセンスにOSI承認(Apache 2.0)が求められる。Gemma 2でもGemma 3でも満たせず、選択肢はGemma 4だけです
- 画像を入力する。Gemma 3の4B以上、またはGemma 4の全構成で対応できます
- 音声を入力する。Gemma 4のE2B・E4B・12Bに限られます
- 長い文書を一度に読ませる。Gemma 2のコンテキストは8Kで、後続世代の128K・256Kとは桁が違います
- ファインチューニング済みモデルを顧客や外部に配布する。Gemma 2では規約の継承義務が下流に及びます
逆に、Gemma 2を残す判断が成立するのは「すでにGemma 2で評価とチューニングを終えた本番パイプラインがあり、出力品質の再検証コストが移行の利益を上回る場合」に限られます。この場合も、規約の停止条項が残り続ける点は経営判断として認識しておくべきです。移行先のスペック要件はGemma 4 12Bのリリースで変わるローカルAI開発の前提条件で具体的に確認できます。
Gemma 2をローカルで動かす手順
既存環境の再現や旧世代との比較検証のためにGemma 2を動かす場面は残ります。ここでは実際に配布されているタグとコードで手順を示します。
Ollamaでの実行とモデル容量
Ollamaで最も手軽に試せます。gemma2のlatestタグは9B(5.4GB)を指しており、サイズを明示しない場合は9Bが落ちてきます。
ollama run gemma2:2b
ollama run gemma2:9b
ollama run gemma2:27b
2026年8月16日時点の配布サイズは2bが1.6GB、9b(latest)が5.4GB、27bが16GBです。この3つはいずれも、同名のq4_0タグ(2b-instruct-q4_0が1.6GB、9b-instruct-q4_0が5.4GB、27b-instruct-q4_0が16GB)とサイズが一致する4bit量子化版です。量子化を外して精度を上げると27b-instruct-q8_0が29GB、量子化なしの9b-instruct-fp16が18GB、27b-instruct-fp16が54GBまで膨らみます。この帯域は単体GPUのVRAMに収まらないため、27Bを常用するなら16GBの量子化版を選ぶのが前提になります。ローカル運用の全体像を先に押さえたい場合は大規模言語モデル(LLM)とは?仕組みと学習の流れをわかりやすく解説から入ると理解が早くなります。
Transformersでの実行と事前の同意手続き
Hugging Face Transformersから使う場合、モデルカードに掲載されている最小の呼び出しは次の形です。
import torch
from transformers import pipeline
pipe = pipeline(
"text-generation",
model="google/gemma-2-27b-it",
model_kwargs={"torch_dtype": torch.bfloat16},
device="cuda",
)
messages = [
{"role": "user", "content": "Who are you? Please, answer in pirate-speak."},
]
outputs = pipe(messages, max_new_tokens=256)
assistant_response = outputs[0]["generated_text"][-1]["content"].strip()
print(assistant_response)
このコードは貼るだけでは動きません。google/gemma-2-27b-it はgatedリポジトリで、Hugging Face上でGemmaのライセンスに同意し、hf auth loginで認証を通しておく必要があります。未認証だと設定ファイルの取得時点で「Access to model google/gemma-2-27b-it is restricted」というエラーで止まります。
もう1つの注意点はdtypeです。上のコードがtorch_dtypeをbfloat16に固定しているのは、指定を省くとtransformersの版によってfp32でロードされ、27Bで100GBを超える要求になるためです。bfloat16のままでも重みだけで約54GBあるので、単体GPUで動かすなら量子化版を使うか、9B以下を選んでください。
よくある質問
Gemma 2の読み方は?
公式のカナ表記はありません。Googleは日本語のブログやドキュメントでも「Gemma」と英字のまま表記しています。日本語圏では「ジェマ」と読まれるのが一般的です。名称はラテン語のgemma(宝石)に由来し、2024年2月21日の初代Gemma発表時にGoogleが説明しています。Geminiと同じ研究・技術をベースにした軽量なオープンモデルという位置づけで、GeminiとGemmaは名前だけでなく開発の系譜としてもつながっています。
Gemma 2の料金は?無料で商用利用できますか?
モデル本体の料金はかかりません。重みのダウンロードは無料で、Gemma Terms of Useに明示的な商用利用禁止条項もありません。ただしApache 2.0のような自由なライセンスではなく、Gemma Prohibited Use Policyの遵守義務と、再配布時に利用制限条項・規約コピー・改変通知・Noticeの4点を引き継ぐ義務があります。Googleが違反と判断した利用を制限できる条項も残っています。OSI承認ライセンスが必要な案件では、Apache 2.0で提供されるGemma 4を選んでください。
Gemma 2にはどのサイズがありますか?
2B・9B・27Bの3サイズです。2024年6月27日に9Bと27Bが公開され、2Bは2024年7月31日に追加されました。公開当初の資料には「2つのバリエーション」と書かれているものがありますが、これは2B追加前の情報です。学習トークン数は2Bが2兆、9Bが8兆、27Bが13兆で、2Bと9Bは知識蒸留で学習されています。
Gemma 2で何ができますか?
テキスト入力に対するテキスト生成が対象で、要約、質問応答、文章生成、コード補助などに使えます。画像や音声は入力できません。モデルカードは出力を「入力に応じて生成される英語テキスト」と定義しているため、日本語での運用を想定する場合は自前の品質評価が前提になります。マルチモーダルが必要ならGemma 3以降、音声まで扱うならGemma 4が必要です。
Gemma 2とGemma 4はどちらを使うべきですか?
新規開発ならGemma 4です。Apache 2.0で配布され、コンテキストは最大256K、画像入力は全構成が対応します(音声入力はE2B・E4B・12Bの3構成)。Gemma 2を継続すべきなのは、すでに評価とチューニングを終えた本番パイプラインがあり、出力品質の再検証コストが移行の利益を上回る場合に限られます。