Gemini APIは、GoogleのGeminiモデルを自社のアプリや業務システムからプログラムで呼び出すための開発者向けAPIです。Google AI StudioでAPIキーを発行すれば、数行のコードでテキスト生成、画像・PDFの読み取り、JSONでの構造化出力、関数呼び出しまで扱えます。この記事では、2026年6月に既定となったInteractions APIの最小コード、APIキーの新しい仕様、gemini-3.8-flashの単価と無料枠、業務で使う前に確かめるデータ保存の設定を、公式ドキュメントをもとに整理します(2026年10月22日時点)。
まとめ:Gemini APIの正体と2026年10月時点で押さえる始め方
Gemini APIの正式名はGemini Developer APIです。窓口はgenerativelanguage.googleapis.comで、Google AI Studioで作ったAPIキーで認証します。Googleアカウントがあれば無料枠から始められ、Cloud Billingを紐づけて5ドル以上を前払いすると有料枠に上がります。
新規開発ではInteractions APIを使います。2026年6月にGAとなり、公式は従来のgenerateContentを「レガシー」と位置づけました。SDKはPythonのgoogle-genai(2.3.0以降)かJavaScriptの@google/genaiで、旧SDKのgoogle-generativeaiで書かれた解説記事のコードは使いません。
業務データを送るなら有料枠が前提です。無料枠の入出力は製品改善に使われます。Interactions APIは既定でリクエストを保存し、有料枠で55日間残ります。保存したくない処理で指定する設定値はstore=falseです。SLAやデータの処理場所を契約で説明する必要が出た時点で、Google Cloud側のVertex AI(現Agent Platform)への移行を検討します。
Gemini APIとは:Google AI Studio経由の開発者向けAPI
「Gemini」はチャットアプリ、Workspaceの機能、APIで共通の名前です。まずAPIが指す範囲を切り分けます。
Geminiアプリ・Vertex AIと開発者向けAPIの守備範囲
Geminiアプリ(gemini.google.com)は人が画面で対話する製品です。Gemini APIは、プログラムからHTTPでモデルを呼ぶための別の製品で、課金もAI StudioのプロジェクトにひもづくCloud Billingで管理します。Gemini APIの公式ドキュメントは、テキストや画像の生成、マルチモーダル入力の解析、会話エージェントの構築に使う開発者向けAPIと説明しています。
同じモデルはGoogle CloudのVertex AI(2026年に「Gemini Enterprise Agent Platform」へ改称)からも呼べます。こちらの認証方式はIAMで、SLAやCMEKなど企業向けの統制も備えた提供形態です。両者の契約・SLA・データ所在地の違いはVertex AIとGemini APIの違いで比べています。本記事が扱うのは、AI Studioで鍵を発行して使うDeveloper API側です。
1つのAPIキーで呼べるモデルとテキスト・画像・音声・動画の機能範囲
モデル一覧(2026年10月21日更新)では、Stable扱いのテキスト系としてgemini-4-argon、gemini-3.8-flash、gemini-3.6-flash、gemini-3.5-flash-liteが並びます。同じAPIキーで、画像生成のNano Banana、動画生成のGemini Omni Flash、音声合成の3.8 Flash TTS、文字起こしの3.5 Transcribeも呼べます。
入力側は、PDFなら最大1,000ページまで読み取れると概要ページに書かれています。Gemini 4 Argonは100万トークンのコンテキストと最大100万トークンの長い出力に対応したフラッグシップです。迷ったら、クイックスタートの既定でもあるgemini-3.8-flashから始めれば足ります。版ごとの差分はGemini 3.8 Flashの差分・料金・移行コードにまとめています。
Gemini APIでできること:生成・構造化出力・ツール連携・エージェント実行
業務システムで使う機能を、利用頻度の高い順に並べます。
テキスト生成と構造化出力でJSONを受け取る業務処理への組み込み
問い合わせ文の要約、議事録の整形、商品説明文の下書きといった処理は、テキストを渡して文章を受け取るだけで実装できます。システムに組み込むうえで効くのは構造化出力です。公式クイックスタートでは、response_formatにJSON Schemaを渡すと、スキーマに沿ったJSON文字列が返る例を示しています。PythonならPydantic、JavaScriptならZodのスキーマから生成できます。
請求書の項目抽出や問い合わせの分類のように、後続処理がJSONを読む業務では、この指定を最初から入れておきます。自由文を正規表現で切り出す実装は、モデルの言い回しが変わるたびに壊れます。
関数呼び出し・Google検索連携・マネージドエージェントで広がる処理
関数呼び出し(Function Calling)を使うと、モデルが「在庫確認APIをこの引数で呼ぶべき」と判断した結果を受け取り、自社のコードで実行して結果を返せます。組み込みツールにはGoogle検索、Googleマップ、コード実行、URLの読み込み、Computer Useがあります。Google検索によるグラウンディングは、Gemini 3以降のモデル合算で月5,000回まで無料、超過分は1,000回あたり14ドルです。
2026年に加わったのがマネージドエージェントです。antigravity-preview-09-2026などのエージェントIDを指定すると、Google側のサンドボックスでコードの実行やWeb調査、ファイル作成までを1回のリクエストで進めます。名前にpreviewが付くとおりプレビュー段階なので、本番の業務フローには組み込まず、調査や試作の補助に留めます。
Interactions APIの既定化と従来APIの違い:2026年6月以降
2025年以前の解説記事と今のコードが食い違う最大の理由がここです。generateContentからInteractions APIへ、呼び出すメソッドそのものが変わりました。
Interactions既定化とgenerateContentのレガシー扱い
Interactions APIの説明ページは、2026年6月にGAとなり新規プロジェクトでの利用を推奨すると明記しています。従来のgenerateContentは「レガシー」扱いですが、サポートは継続する方針です。今後の新モデル、マルチモーダル機能、ツール、エージェント機能はInteractions API側で先に提供されます。
中身の違いは会話の持ち方です。Interactions APIは1ターンを「Interaction」というリソースとしてサーバーに保存し、次のリクエストでprevious_interaction_idを渡せば履歴を送り直さずに会話を続けられます。長時間の処理はbackground=trueで非同期に流せます。既存のgenerateContentのコードは動き続けるので、急いで書き換える必要はありません。新機能が必要になった箇所から移すのが現実的です。
Interactions API未対応のBatch・自動関数呼び出し・明示キャッシュ
同じページの制限事項には、generateContentでは使えてInteractions APIではまだ使えない機能として、Batch API、Pythonの自動関数呼び出し、明示的なコンテキストキャッシュの3つが挙がっています。夜間に数万件をまとめて処理し、Batchの半額単価を使いたい業務は、現時点ではgenerateContent側に残します。
もう1点、previous_interaction_idが引き継ぐのは入力と出力の履歴だけです。tools、system_instruction、generation_configはリクエストごとの指定なので、2ターン目にも毎回付け直します。付け忘れると、2ターン目から指示や温度設定が外れた応答が返ります。
Gemini APIの始め方:キー発行とPython・curlでの初回応答
手順は「キーを作る、環境変数に入れる、SDKで呼ぶ」の3段階です。2026年5月にキーの仕様が変わった点に注意してください。
AI Studioのキー発行と2026年5月からのauth key移行
Google AI Studioは新規ユーザーにプロジェクトとAPIキーを自動で作ります。APIキーのページによると、2026年5月28日以降に作るキーはすべて「auth key」で、Google Cloudのサービスアカウントに紐づく仕様です。従来の標準キーのうち制限の付いていないものはリクエストを拒否され、長く使っていない無制限キーは5月7日からブロックされています。以前に作ったキーでリクエストが通らなくなったら、AI Studioで新しいキーを作り直してください。
キーは環境変数GEMINI_API_KEYに入れると、SDKが自動で読みます。GOOGLE_API_KEYも設定されていると、SDKが優先して読み込むのは、そちらの環境変数に設定されたキーです。社内の別用途でGOOGLE_API_KEYを使っている開発機では、意図しないキーで請求が立つ原因になります。保管と失効の運用はAPIキーの発行・保管・失効の手順を参照してください。
google-genai 2.3.0以降で書くPythonの最小コードと会話の引き継ぎ
Interactions APIを使うには、Pythonのgoogle-genaiが2.3.0以降である必要があります。PyPIのgoogle-genaiの最新は2.32.0(2026年10月21日公開)で、Python 3.10以上が必要です。次のコードは、1ターン目の応答を受け取り、その履歴を引き継いで2ターン目を送ります。
# 事前に: pip install -U google-genai
from google import genai
# 環境変数 GEMINI_API_KEY を自動で読む
client = genai.Client()
first = client.interactions.create(
model="gemini-3.8-flash",
input="Gemini APIとは何かを40字で説明して",
)
print(first.output_text)
# 2ターン目は previous_interaction_id で履歴を引き継ぐ
# tools や system_instruction を使う場合はここでも指定し直す
second = client.interactions.create(
model="gemini-3.8-flash",
input="同じ内容を英語で",
previous_interaction_id=first.id,
)
print(second.output_text)
output_textはSDKが用意する便利プロパティで、応答本体のstepsから最終出力のテキストだけを取り出します。SDKの導入手順や旧SDKからの書き換えはGoogle Gen AI SDKの導入と旧SDK移行で、Goで書く場合はGoでGemini APIを呼び出す実装手順で扱っています。
SDKなしでREST・OpenAI互換エンドポイントから呼ぶリクエスト例
SDKを入れられない環境や、疎通だけ確かめたい場面ではcurlで呼べます。エンドポイントは/v1beta/interactionsで、キーを送信する際の指定先はx-goog-api-keyヘッダーです。保存が不要な単発の処理なのでstoreをfalseにしています。
export GEMINI_API_KEY="AI Studioで発行したキー"
curl -X POST "https://generativelanguage.googleapis.com/v1beta/interactions" \
-H "x-goog-api-key: $GEMINI_API_KEY" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"model": "gemini-3.8-flash", "input": "Explain how AI works in a few words", "store": false}'
応答はInteractionリソース全体のJSONで、status、usageの入出力トークン数、stepsの配列が入ります。OpenAIのSDKで書かれた既存コードがある場合は、OpenAI互換のエンドポイントへ向けることで、キー・URL・モデル名の3行を変えるだけで移せます。
from openai import OpenAI
# 変更点はキー・base_url・モデル名の3つ
client = OpenAI(
api_key="GEMINI_API_KEY",
base_url="https://generativelanguage.googleapis.com/v1beta/openai/",
)
response = client.chat.completions.create(
model="gemini-3.8-flash",
messages=[{"role": "user", "content": "Explain to me how AI works"}],
)
print(response.choices[0].message)
ただし公式は、OpenAIのライブラリをまだ使っていないなら直接Gemini APIを呼ぶよう勧めています。互換レイヤーは移行の足場と割り切り、新規のコードはgoogle-genaiで書きます。
Gemini APIの料金と無料枠:有料枠への切り替えとレート制限の仕組み
料金はトークン単位の従量課金です。2026年末から主要モデルの値上げが予定されているので、見積もりには適用日を添えます。
主要モデルの単価と2026年12月・2027年1月の値上げ予定
Gemini Developer APIの料金ページ(2026年10月19日更新)から、Standard枠の単価を抜き出しました(100万トークンあたり・米ドル)。
| モデル | 無料枠 | 有料枠の入力/出力 | 改定後の入力/出力 |
|---|---|---|---|
| gemini-4-argon | 提供なし | 2.00/10.00 | 4.00/20.00(2026年12月1日から) |
| gemini-3.8-flash | 無料 | 0.75/3.75 | 1.50/7.50(2027年1月1日から) |
| gemini-3.5-flash-lite | 無料 | 0.30/2.50 | 改定の記載なし |
出力の単価には思考(thinking)トークンも含まれます。gemini-3.8-flashのBatchは入力0.375ドル/出力1.875ドルで、通常の半額です。毎月100万件規模の分類を流す業務なら、モデル選定より先にBatchへ寄せられるかを検討したほうが請求額は下がります。
使用量ティア別の10分単位の費用上限で起きる429と請求額の上限
レート制限のページによると、上限はAPIキー単位ではなくプロジェクト単位です。キーを分けても上限は増えません。1分あたりのリクエスト数やトークン数とは別に、10分間のローリングウィンドウで見る費用ベースの上限があり、Tier 1は10ドル、Tier 2は50ドル、Tier 3は200ドルです。超えると429 RESOURCE_EXHAUSTEDが返ります。
ティアごとに請求額の上限も決まっていて、Tier 1は250ドル、Tier 2は2,000ドルです。Tier 2へは累計100ドルの支払いと初回支払いから3日、Tier 3へは1,000ドルと30日で自動的に上がります。公開直後にアクセスが集中するサービスでは、この自動昇格を待てません。リリースの1か月前には有料枠に切り替えて実績を積むか、上限緩和を申請しておきます。
業務でGemini APIを使ってよい条件と見送る条件・データ保存の確認点
動くことと、業務データを流してよいことは別の問題です。判断の材料はデータの扱いと、障害時に何を説明する必要があるかの2点です。
無料枠の製品改善利用とInteractionsの保存期間55日を踏まえた設定
料金ページの「製品改善への利用」の行は、gemini-3.8-flashの無料枠で「Yes」、有料枠で「No」です。Gemini API追加利用規約は、無料サービスの入出力を人間のレビュアーが確認する場合があるとして、機密情報や個人情報を送らないよう求めています。顧客情報や社外秘を扱う処理は、有料枠に切り替えてから実装します。
見落としやすいのがInteractions APIの保存です。既定はstore=trueで、有料枠は55日、無料枠は1日保存されます。有料枠ならAI Studioで7・14・28・55日から保存期間を選べ、APIの削除メソッドによるリクエスト単位での個別削除も可能です。store=falseにすると保存されませんが、previous_interaction_idでの会話の引き継ぎとbackground=trueは使えなくなります。会話を続ける画面だけ保存を有効にし、単発の抽出処理は保存しない、という分け方が扱いやすい構成です。
Developer APIで進める条件とVertex AIや受託開発へ切り替える判断
社内ツール、PoC、停止しても業務が止まらない機能は、Developer APIの有料枠で本番運用して問題ありません。単価はVertex AIのglobalエンドポイントと同じで、Interactions APIの新機能も先に使えます。APIキーの保管先はサーバー側だけに限定する設計です。公式は本番のWebアプリやモバイルアプリにキーを埋め込むことを禁じているので、ブラウザやスマホから直接呼ぶ構成ならFirebase AI LogicとApp Checkによる構成を使います。
見送るのは、可用性を顧客に約束するサービスと、データの処理場所を監査で説明する必要がある業務です。Developer APIにはSLAがなく、処理リージョンも指定できません。この条件に当てはまった時点でVertex AIへ移します。既存の業務システムへの組み込み、権限とキーの設計、Vertex AIへの切り替えまでを外部に任せたい場合は、一創の生成AI開発・AI受託開発で要件整理から相談できます。
Gemini APIの基本と始め方に関するよくある質問と回答
Gemini APIを使い始める前によく出る疑問に、公式ドキュメントの記載をもとに答えます。
Gemini APIは無料で使えますか?
使えます。Google AI Studioの無料枠では、gemini-3.8-flashやgemini-3.5-flash-liteの入出力が無料です。ただし最上位のgemini-4-argonは無料枠で提供されず、レート制限も有料枠より低く設定されています。無料枠の入出力は製品改善に使われ、人間がレビューする場合もあるため、業務データを送るなら5ドル以上を前払いして有料枠に切り替えてください。
ChatGPTのAPI(OpenAI API)からGemini APIへ移るのは難しいですか?
OpenAIの公式ライブラリを使っているコードなら、OpenAI互換エンドポイントへ向けることで、APIキー・base_url・モデル名の3行を変えるだけで呼び出せます。まず互換エンドポイントで応答品質と費用を比べ、採用が決まったらgoogle-genaiで書き直すと手戻りが少なく済みます。新機能はInteractions API側で先に出るためです。
旧SDKのgoogle-generativeaiで書いたコードは今も動きますか?
公式のライブラリ一覧では、Pythonのgoogle-generativeaiをはじめ旧SDKは2025年11月30日で非推奨となり、「積極的には保守されていない」状態です。Live APIやVeoなどの新しい機能にもアクセスできません。ネット上の解説でgenai.configureやGenerativeModelが出てきたら旧SDKの書き方なので、google-genaiのgenai.Client()に置き換えてください。
Gemini APIのAPIキーをフロントエンドに書いてもよいですか?
本番では書かないでください。APIキーのページは、Webやモバイルアプリに埋め込んだキーは利用者に抜き取られるとして、バックエンドのプロキシ経由で呼ぶよう求めています。キーが漏れると、プロジェクトの上限まで他人に使われ、請求も自社に来ます。漏洩が疑われるときは、新しいキーを発行してアプリを切り替えてから古いキーを無効にする、という順番が公式の手順です。
Gemini APIではどのモデルを選べばよいですか?
汎用の処理はgemini-3.8-flashから始め、件数が多く単純な分類や翻訳ならgemini-3.5-flash-lite(入力0.30ドル)、難しい推論や長いコードの生成ならgemini-4-argonを試します。モデルIDは数か月単位で入れ替わるため、IDは設定ファイルに切り出し、コードに直書きしないでおくと切り替えが楽です。Previewと付くモデルは仕様が変わる前提で扱い、本番はStableのモデルに寄せます。
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