Claude Dispatchは、スマホのClaudeアプリから指示を送り、自宅や職場のPCで動くClaude Desktopに作業させる機能です。2026年3月17日にリサーチプレビューとしてMaxプランから提供が始まり、Proプランには続く2日間で展開すると案内されました。
2026年9月、Anthropicのヘルプ記事に「Dispatchは新規ユーザーには提供していない」という注記が加わりました。すでに使っている人は当面そのまま使えます(Claudeヘルプセンターの該当記事、2026年9月26日確認)。これから始める人には、クラウドで動く新しいClaudeやClaude CodeのRemote Controlが代わりの選択肢になります。この記事では、Dispatchの仕組みと利用条件、既存ユーザー向けの設定手順、Remote Controlとの違い、代わりに何を使うかを公式ヘルプとドキュメントをもとに整理します。
まとめ:Claude Dispatchの現状と選び方の要点
- Dispatchは、スマホとPCで共有する1本の会話からタスクを依頼し、PC側でCoworkまたはClaude Codeのセッションを立てて処理させる機能です。
- 2026年9月中旬から、ヘルプ記事に新規ユーザーへの提供停止が明記されています。既存ユーザーは当面使い続けられますが、終了日は案内されていません。
- 対象はProとMaxのみで、TeamとEnterpriseでは使えません。PCはmacOS、Windows x64、Linuxに対応し、Linuxではcomputer use(画面操作)が使えません。
- 作業はPC上で行われるため、PCが起動していてClaude Desktopが開いている間しか進みません。
- Claude Codeのセッションをスマホから操作したいならRemote Control、PCを閉じても作業を続けさせたいならクラウドで動くCowork(新しいClaude)が向いています。
Claude Dispatchの仕組みとPC上のタスク振り分け
Dispatchを開くと、スマホとPCで同じ内容が表示される会話が1本だけ用意されます。この会話はリセットされず、前のタスクの文脈を引き継ぎます。通勤中にスマホで依頼し、席に着いてからPCで続きを指示する、という使い方を想定した設計です。
依頼を受けたClaudeは作業の種類を判断し、PC上に別のセッションを立てて処理します。公式ドキュメントでは、1本の会話の下で複数の子タスクを実行でき、子タスクがさらに子タスクを生むことはないと説明されています。
| 依頼の種類 | 実行先 | 例 |
|---|---|---|
| 開発作業 | Claude Code(設定済みのワークスペース) | バグ修正、テスト実行、プルリクエスト作成 |
| 知的作業 | Cowork(指定または既定のプロジェクト) | 調査、文書作成、ファイル整理 |
Claude Codeに回されたセッションは、デスクトップアプリのCodeタブに「Dispatch」バッジ付きで表示されます。タスクが終わったとき、または承認が必要になったときは、スマホにプッシュ通知が届きます。
子タスクの状態表示と承認の期限
子タスクはサイドバーに「実行中」「入力待ち」「回答待ち」「完了」「エラー」「アーカイブ済み」のいずれかの状態で表示されます。ワークスペース外へのファイル書き込みやコマンド実行など、許可が必要な操作はスマホに転送されます。10分以内に応答しないと自動的に拒否され(Coworkドキュメント)、タスクはその操作を飛ばして続行します。外出中に承認通知を見逃すと、成果物の一部が欠けた状態で「完了」になり得るということです。
computer useを有効にしていると、Dispatchから起動したClaude Codeのセッションも画面操作を使えます。ただしアプリの使用許可は30分で切れて再確認が入り、通常のCodeセッションのように終了まで続きません。
2026年9月時点の提供状況と対象プラン
Dispatchは一般提供(GA)に至らないまま、新規受付を止めています。利用条件は時期によって変わっているため、公開当初の記事の説明は現状と合わない部分があります。
新規ユーザーへの提供停止までの経緯
ヘルプ記事の変化は、Internet Archiveに保存された版で追うことができます。8月29日版には限定ベータの記述が無く、9月13日版には新規ユーザーの注記が無いため、表の時期はその前後の保存版で挟んだ範囲です。
| 時期 | 変化 | 確認元 |
|---|---|---|
| 2026年3月17日 | Maxから提供開始、続く2日間でProへ展開と案内 | ヘルプのリリースノート |
| 2026年3月23日 | computer useと組み合わせた利用を案内 | 公式ブログ |
| 2026年4月9日 | Cowork本体が全有料プランで一般提供に(Dispatchは対象外) | 公式ブログ |
| 2026年7月末まで | 要件にLinuxが追加 | ヘルプ記事の保存版(7月31日版) |
| 2026年8月末〜9月上旬 | 一部のPro・Maxのみの限定ベータに変更 | ヘルプ記事の保存版(9月9日版) |
| 2026年9月16日 | Coworkとチャットを1つのClaudeに統合すると発表 | 公式ブログ |
| 2026年9月中旬 | 新規ユーザーには提供しない旨を追記 | ヘルプ記事の保存版(9月17日版) |
9月9日の版からは「サイドバーにDispatchが見当たらない場合はクラウドのCoworkを使う」という案内も加わりました。現行のヘルプは「すでにDispatchを使っているなら当面は使い続けられ、この記事の説明もそのまま当てはまる」としています。「当面」の期限は示されていません。これから業務の手順にDispatchを組み込むのは避け、既存ユーザーも代わりの手段を並行して試しておくのが安全です。
ProとMaxのみでTeam・Enterpriseは対象外
Dispatchの利用にはProまたはMaxプランが必要です。Claude Codeの公式ドキュメントは「TeamプランとEnterpriseプランでは利用できない」と明記しています。組織契約で使えないという点は、導入を判断するうえで最初に確認しておくべき制約です。Team・Enterpriseの組織でスマホからClaude Codeを操作したい場合は、後述のRemote Controlを使います(Ownerが管理画面で有効化する必要があります)。
ヘルプにDispatch専用の料金は書かれておらず、ProかMaxの契約が条件です。作業はプランの使用量の範囲で行われます。Coworkの「自動承認(Auto)」モードは、各操作の安全確認を挟むぶん他のモードより使用量の消費が多いとヘルプに書かれています。プランごとの料金はClaude Coworkの料金プラン・使い方・制限で解説しています。
対応OS:macOS・Windows x64・Linuxの違い
現行のヘルプが挙げるPC側の要件は、macOS、Windows x64、LinuxのいずれかでClaude Desktopの最新版が動いていることです。スマホ側はiOSまたはAndroidのClaudeアプリ最新版が必要で、両方の端末がインターネットにつながっている必要があります。
- Windows:要件は「Windows x64」と明記されており、Arm版Windowsは要件に含まれていません。
- Linux:ベータ版のためcomputer useに対応していません。ファイル、コネクタ、プラグインを使うタスクは動きますが、デスクトップアプリを画面操作させるタスクは実行できません。
- macOS:Dispatchヘルプには、Linuxのcomputer use非対応に相当するOS固有の制限は記載されていません。PCが起動していてClaude Desktopが開いている必要がある点は他のOSと同じです。
なお、claude.comのCoworkドキュメントは前提条件を「macOSまたはWindows」とだけ書いています。Linuxも使えるという記載はヘルプ記事の側にあります。
既存ユーザー向けDispatchの設定手順と使い方
以下はヘルプ記事の手順です。アカウントが新しいClaudeに移行済みだと、画面の見た目が異なる場合があります。
既存ユーザー向けDispatchの初期設定
- PCにClaude Desktopの最新版を入れる(claude.com/downloadから入手または更新)。
- スマホにClaudeアプリ(iOSまたはAndroid)の最新版を入れる。既存ユーザーも更新が必要です。
- スマホかPCでCoworkを開き、左のサイドパネルで「Dispatch」を選ぶ。
- 説明ページで「Get started」を押す。
- 次の画面で、ファイルへのアクセス許可と、PCをスリープさせない設定をオンにする。
- 「Finish setup」を押し、Dispatchの会話にメッセージを送り始める。
公開当初の解説記事には、PCに出たQRコードをスマホで読み取ってペアリングする手順がよく載っています。現行のヘルプ記事の手順にQRコードの読み取りは含まれておらず、セットアップが終わると同じ会話がスマホとPCで自動的に同期されます。
スマホからの依頼例と成果物の受け取り方
ヘルプ記事が挙げる依頼の例は、PC内のスプレッドシートからデータを集めた報告書の作成、Slackとメールをもとにしたブリーフィング資料の下書き、Googleドライブのファイルからのプレゼン資料作成、特定フォルダのファイル整理です。スマホでは開けないPC上のファイルや、Coworkで設定済みのコネクタ、プラグインをそのまま使えます。スマホ用に別の設定をする必要はありません。
Claudeは途中経過ではなく結果を返します。ファイルが生成された場合は、スマホから直接開くか、Claudeが示すPC上の保存場所で確認します。依頼文には、対象のフォルダ名、出力形式、完了の条件を明記します。ただし、操作の許可を求める承認通知はこれとは別に届き、10分以内に応答しないとその操作は拒否されます。
つながらない・Dispatchが表示されないときの確認点
- サイドバーにDispatchが無い:新規ユーザーには表示されません。ヘルプはこの場合、ペアリングの代わりにクラウドのCoworkを使うよう案内しています。
- 依頼してもタスクが始まらない:PCがスリープしていないか、Claude Desktopが開いているかを確認します。設定の「Keep computer awake」はアプリを開いている間のアイドルスリープを防ぐだけで、ノートPCの蓋を閉じればスリープします。外出前に蓋を閉じる運用では作業が止まります。
- スマホに会話が同期されない:両方のアプリが最新版か、両方の端末がオンラインかを確認します。
- 画面操作のタスクだけ失敗する:Linuxではcomputer useが使えません。macOSとWindowsでは、Claude Desktopの設定でcomputer useを有効にしているか確認します。
Dispatch・Remote Control・クラウドのCoworkの違い
スマホからClaudeに作業を依頼・指示する選択肢として、Dispatch、Remote Control、クラウドのCoworkを比較します。違いは、どこで処理が動くか、PCを閉じても続くかです。
| 項目 | Dispatch | Remote Control | クラウドのCowork |
|---|---|---|---|
| 始め方 | スマホから依頼 | 実行中のセッションに接続 | どの端末からでも依頼 |
| 処理の場所 | 自分のPC | 自分のPC | Anthropicのサーバー |
| PCを閉じたとき | 止まる | オフラインになる | 続く |
| 対象プラン | Pro・Max | Pro・Max・Team・Enterprise(組織プランはOwnerの有効化が必要) | Pro・Max・Team・Enterprise(Enterpriseは管理者の有効化が必要) |
| 新規利用 | 不可 | 可 | 可(ベータ) |
| 向く作業 | 留守中の依頼 | 進行中の開発の続行 | PCを閉じたい作業 |
Remote Controlが向く場面と起動方法
Remote Controlは、PCで動いているClaude Codeのセッションに、claude.ai/codeやスマホのClaudeアプリから接続する機能です。Dispatchが「作業を任せて結果を待つ」のに対し、Remote Controlは「進行中のセッションを別の端末から操縦する」ものです。Claude Codeの公式ドキュメントも、Dispatchは留守中の作業委任、Remote Controlは進行中の作業の続行に向くと整理しています。
起動方法はRemote Controlの公式ドキュメントによると3通りです。ターミナルでclaude remote-controlを実行するとサーバーモードで待ち受け、既定で最大32セッションを同時に扱えます。claude --remote-control(--rc)なら、通常の対話セッションをリモート操作可能な状態で始められます。すでに動いているセッションでは/remote-control(/rc)を入力します。デスクトップアプリのCodeタブ(ローカルセッション)とVS Code拡張でも、この2つのコマンドを入力欄から使えます。
通信はPCからの外向きHTTPSだけで、受信ポートは開きません。通信の流れはローカル環境をスマホから操作できるRemote Controlの全体像と通信構造で詳しく扱っています。APIキーでの利用や、Amazon Bedrock、Google Cloudのエージェントプラットフォーム、Microsoft Foundry経由の利用には対応していません。スマホ側の具体的な操作はClaude Codeをスマホで使う4つの方法で解説しています。
新規ユーザー向けの代替手段とクラウド実行の制約
2026年9月16日、AnthropicはCoworkとチャットを1つのClaudeに統合すると発表しました。ProとMaxから順次切り替わり、TeamとFreeが続きます。Enterpriseには変更の30日以上前に管理者へ通知があります。移行後はメッセージ欄から「Chat」と「Cowork」の切り替えが消え、どの会話でも依頼内容に応じて作業を始めます。
Dispatchとの違いは処理の場所です。新しいClaudeでは時間のかかるタスクがクラウドで動くため、ノートPCを閉じても作業は続きます。スマホからタスクを始めることもでき、PCで始めたタスクの進み具合をスマホで確認し、質問に答えたり方向を修正したりできます。定期実行のタスクも、PCが起動していなくてもクラウドで動きます。
ただし、PC内のファイルやアプリを使う作業には、今もClaude Desktopが開いている必要があります。クラウドのセッションが接続済みフォルダを読み書きできるのは、PCでアプリが開いていて、かつセッションをPCから始めた場合だけです。「スマホから依頼して、PC内のローカルファイルを処理させる」用途は、Dispatchを使えない新規ユーザーには完全な代わりが無いのが現状です。この用途では、作業ファイルをGoogleドライブなどコネクタで読める場所に置くか、Claude Codeの作業ならRemote Controlを使う、という組み合わせが現実的です。
PCを遠隔操作させる前に決めておく安全範囲
ヘルプ記事は、スマホのAIエージェントにPCのAIエージェントを操作させる構成について、スマホからの指示がPC上の実際の操作に連鎖すると警告しています。対象はローカルファイルの読み取り・移動・削除、接続済みサービスの操作、ブラウザやデスクトップアプリの操作です。誤った指示や、作業中に読み込んだ悪意あるコンテンツ、ブラウザで開いたフィッシングリンクが、取り消せない操作につながり得るとしています。
ヘルプの判断基準は「意図していることではなく、起こり得ることに納得できる場合だけ接続する」です。実務では、次の3点を事前に決めておくと判断しやすくなります。
- アクセスを許可するフォルダ:Anthropicの安全ガイドも、広いアクセスを与えずClaude専用の作業フォルダを作り、重要なファイルはバックアップするよう勧めています。ホームディレクトリ全体や経理・人事の資料は含めないでください。ファイルを完全に削除する操作は、どの承認モードでも事前に許可を求められます。
- つなぐコネクタ:メール送信やチャット投稿ができるコネクタは、外出中の依頼では誤送信が取り消せないため、読み取り中心の作業に限る。
- 止め方:Claude Desktopを終了すればDispatchの作業は止まります。スマホの紛失時に備え、PC側のアカウントからサインアウトする手順を確認しておく。
computer useは、コネクタや許可制のファイルアクセスを通さず、画面を直接クリック・入力して操作します。ヘルプはこれを他のCowork機能とは安全上の性質が違うものとして扱っています。送金、顧客への送信、本番環境の変更のように結果が重い作業は、Dispatchに任せず、PCの前で確認しながら進めるべきです。
よくある質問
Claude Dispatchは今から使い始められますか?
使い始められません。2026年9月中旬から、ヘルプ記事に新規ユーザーには提供していないと明記されています。PCを閉じても作業を続けたいならクラウドで動く新しいClaude、Claude Codeの作業をスマホから操作したいならRemote Controlを使います。
Claude DispatchはTeamプランで使えますか?
使えません。対象はProとMaxのみで、TeamとEnterpriseは対象外です。Team・EnterpriseでもRemote Controlは使えますが、Ownerが管理設定で有効にする必要があります。
Claude DispatchはWindowsで使えますか?
Windows x64版のClaude Desktopで使えます。Arm版Windowsは要件に含まれていません。PCがスリープせず、アプリが開いている状態を保つ必要がある点はmacOSと同じです。
PCの電源を切ってもDispatchのタスクは進みますか?
進みません。DispatchはPC上で作業するため、PCが起動していてClaude Desktopが開いている間しか動きません。PCを閉じても続けたい作業は、クラウドのセッションで始めます。
Claude DispatchとRemote Controlはどちらを使えばよいですか?
留守中に作業を丸ごと任せて結果だけ受け取りたいならDispatch、PCで動いているClaude Codeのセッションを別の端末から続けたいならRemote Controlです。Dispatchを新しく使えない現在は、開発作業ならRemote Control、それ以外の作業ならクラウドのClaudeを選ぶのが基本になります。