Claudeのテキスト透かしは、Anthropicが生成文の単語選びに埋め込む、目に見えない統計的な印です。2026年11月3日にはClaude Platformのリリースノートで、Claude Mythos 5・Claude Opus 4.7・Claude Sonnet 4.6の出力にも付くと告知されました。この記事では公式ドキュメントとサポート記事をもとに、透かしの仕組み、対象モデルと提供面、Sonnet 4.6でtemperatureなどを外す実装手順、検出の公開範囲を整理します。API利用者が透かしに依拠する場合の判断材料として使ってください。
まとめ:Claudeのテキスト透かしでAPI利用者が確認すべき設定と結論
Claudeの透かしは、対応モデルで生成した文に自動で付きます。APIのリクエストも応答の処理も変える必要はありません。トークンや隠し文字は足されず、料金も速度もほぼ変わらないと公式に説明されています。
実装者が手を入れるべき箇所は1つだけです。Claude Sonnet 4.6でtemperature・top_p・top_kを既定外の値にすると、透かしが付かない場合があります。透かしに依拠するなら3つとも送らないでください。API版2026-10-21へ移行すれば、この3つは送れなくなるので自然に解消します。
検出側は限定公開です。検出APIはプライベートプレビューで、規制当局や報道機関、研究者などの適格な組織に限られます。自社で「この文はClaude製か」を判定する仕組みとしては使えません。EU向けにClaudeで生成文を届ける事業者は、サンプリング設定を外したうえで透かしを第50条対応の一部に数え、社内の判定用途には見送る、が結論です。
Claudeのテキスト透かしの仕組みをSynthID-Text方式と鍵付き乱数から理解する
方式の説明は、2026年8月14日公開のAnthropic公式記事「How Claude’s text watermark works」にまとまっています。
次の単語を選ぶ乱数を鍵と直前の数語から決めるSynthID-Text系の方式
言語モデルは1語ずつ候補を並べ、どれを選んでも意味がほぼ変わらない場面では乱数で1つを決めます。Claudeの透かしは、この乱数の出どころだけを差し替える方式です。通常の乱数生成器の代わりに、秘密の鍵と直前の数語から選ぶ語を決めます。選ばれる語は従来どおり候補の中にあり、普段使わない難語へ誘導されることもありません。
方式は、Google DeepMindが2024年に発表したSynthID-Textの論文(Nature掲載)を基にした版です。系譜はScott Aaronsonによる2022年の提案にさかのぼります。鍵を持つ側だけが、語の並びが鍵どおりの選び方と整合するかを確かめ、Claudeが関与した確率を出せます。
トークンも隠し文字も足さず料金・速度・利用者情報に影響しない理由
Text watermarkのドキュメントは、透かしが出力の意味・品質・読みやすさを変えず、トークンや隠し文字を追加しないと明記しています。出力トークンが増えないので、料金は変わりません。
利用者の情報も含みません。透かしにも鍵にも、個人・組織・会話を特定できる情報は入っていないと公式記事は説明しています。ゼロ幅スペースを挟む旧来の手法と違い、Unicode正規化やコピー&ペーストでは消えない点も実装上の違いです。
事実の記述・校正・コードで透かしが薄くなる条件と翻訳では残る条件
透かしが乗るのは、どの語を選んでも正しい「低リスクの選択」だけです。正解が1つに決まる場面では作用しません。
- 事実の記述:書名や数値のように正解が1語の箇所には乗らない
- 校正:文法と句読点だけを直させた文は、Claudeが選んだ語が少なく検出に届かない場合がある
- コード:正確さが要る記述には乗らず、コメントなど任意の箇所にだけ乗る
- 翻訳:全ての語をClaudeが選ぶため透かしが付く
文が長いほど判定の確信度は上がり、短文では弱くなります。軽い編集では完全には消えない一方、全ての語を書き換えれば消えると公式記事は書いています。
2026年11月3日時点で透かしが付くClaudeモデルと提供面の対応範囲
対象モデルの正本は、サポート記事「How Claude marks AI-generated content」の対応表です。リリースノートもこの表を参照先にしています。
テキスト透かしの対象モデル一覧と4.6世代以前で対象外となるモデル
2026年11月4日時点の対応表を、テキスト透かしの列だけ抜き出すと次のとおりです。
| モデル | 自社提供面 | クラウド経由 |
|---|---|---|
| Fable 5.1/Fable 5 | 対象 | 対象 |
| Mythos 5.1 | 対象 | 対象 |
| Mythos 5 | 対象(11月3日告知) | 対象(Bedrockは展開中) |
| Opus 5.5/Opus 5/Opus 4.8 | 対象 | 対象 |
| Opus 4.7 | 対象(11月3日告知) | 対象(Bedrockは展開中) |
| Sonnet 5.5/Sonnet 5 | 対象 | 対象 |
| Sonnet 4.6 | 対象(設定に注意) | 対象(Bedrockは展開中) |
| Haiku 5.5 | 対象 | 対象 |
| Opus 4.6/Opus 4.5 | 対象外 | 対象外 |
| Sonnet 4.5/Haiku 4.5 | 対象外 | 対象外 |
Amazon Bedrockでの展開は11月10日までに完了する予定です。対象外の4モデルも、ファイルに付くC2PA(後述)は対応しています。2026年8月2日より前に公開されたモデルには法の経過措置があり、Anthropicは順次対応を広げている段階です。Opus 4.7の位置付けと4.8との違いはClaude Opus 4.7の料金・仕様と移行判断で整理しています。
API・Claudeアプリ・Claude Code・AWSなど透かしが付く提供面と地域
透かしはモデル側で付与されるため、どの製品から出た文にも付きます。サポート記事が挙げる自社の提供面は、Claude Platform(API)、Claude、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tagです。AWS・Google Cloud・Microsoft Foundry経由で対象モデルを呼んだ出力にも付きます。
地域の限定はありません。公式記事によれば、地域で範囲を区切る確かな手段がまだ無いため、提供開始時点から全世界に適用しています。日本から呼ぶAPIの出力も対象です。Bedrock経由の呼び出し方はBedrock Claudeの使い方で扱っています。
temperatureとtop_pを外してSonnet 4.6の出力に透かしを残す実装手順
Text watermarkのドキュメントで、実装者向けの注意として書かれている項目はサンプリング設定だけです。
Sonnet 4.6で既定外のサンプリング設定が透かしを外す条件と公式の指示
Claude Sonnet 4.6では、temperature・top_p・top_kのいずれかを既定外の値にしたリクエストの出力に、透かしが付かない場合があります。公式の指示は「透かしに依拠するなら3つとも省略する」で、フレームワークやクライアントライブラリが代わりに設定する値も含みます。
見落としやすいのは、自分のコードに書いていない値です。ラッパーやエージェント基盤が既定値を補って送る構成では、送信される実際のペイロードで確かめる必要があります。なお同じサポート記事の制限事項にはOpus 4.6も並んでいますが、対応表ではOpus 4.6はテキスト透かしの対象外です。Sonnet 4.6の後継との違いはClaude Sonnet 4.6とSonnet 5・5.5の違いで確認できます。
API版2026-10-21でサンプリングパラメータが400エラーになる変更との関係
2026年10月21日に出たAPI版2026-10-21では、移行ガイドのとおり、3つのパラメータを送ると既定値でも400エラーになります。Python SDK 2.0.0などの新しいメジャー版SDKからは、パラメータ自体が無くなりました。Claude 4.7以降のモデルはもともと既定値しか受け付けないため、影響を受けるのはSonnet 4.6のように別の値を受け付けるモデルです。
つまり新しいAPI版へ移れば、Sonnet 4.6の透かしの注意点は構造的に消えます。SDKを使わない場合は、ヘッダーで版を指定して次のように送ります。
curl https://api.anthropic.com/v1/messages \
-H "x-api-key: $ANTHROPIC_API_KEY" \
-H "anthropic-version: 2026-10-21" \
-H "content-type: application/json" \
-d '{
"model": "claude-sonnet-4-6",
"max_tokens": 1024,
"messages": [{"role": "user", "content": "製品マニュアルの概要を400語で書いてください"}]
}'
このリクエストにtemperatureを足すと400が返るため、透かしが外れる設定を誤って送る事故は起きません。SDKのメジャー更新に伴う書き換えはClaude API 2026-10-21移行ガイドで手順を追えます。
旧API版のまま送信ログからサンプリング指定を洗い出すPythonコード
すぐに移行できない場合は、送信ペイロードのログを監査します。次のコードは標準ライブラリだけで動き、JSON Lines形式のログからSonnet 4.6にサンプリング指定を付けた行を数えます。
import json
import sys
SAMPLING_KEYS = ("temperature", "top_p", "top_k")
# 2026-11-04時点で公式にサンプリング設定の影響が記載されたモデル
SENSITIVE_MODELS = {"claude-sonnet-4-6"}
def strip_sampling(payload: dict) -> tuple[dict, list[str]]:
"""透かしに依拠するリクエストからサンプリング指定を外す"""
removed = [k for k in SAMPLING_KEYS if k in payload]
clean = {k: v for k, v in payload.items() if k not in SAMPLING_KEYS}
return clean, removed
def audit(path: str) -> int:
"""送信ログ(1行1リクエスト)から要確認の行を数える"""
hits = 0
with open(path, encoding="utf-8") as f:
for no, line in enumerate(f, 1):
req = json.loads(line)
if req.get("model") not in SENSITIVE_MODELS:
continue
_, removed = strip_sampling(req)
if removed:
hits += 1
print(f"{no}行目: {req['model']} に {', '.join(removed)} を指定")
return hits
if __name__ == "__main__":
n = audit(sys.argv[1])
print(f"要確認 {n} 件")
sys.exit(1 if n else 0)
python audit_sampling.py requests.jsonlのように実行し、要確認が1件以上なら終了コード1を返します。CIへの組み込みにより、透かしの外れる設定が入った時点で停止できる仕組みです。strip_samplingは送信直前に呼べば、そのまま除去処理として使えます。
透かしの検出APIとC2PA検証ツールで2026年11月時点に確かめられる範囲
付与は全員に及ぶ一方、検出の窓口は限られています。テキストとファイルで仕組みも公開範囲も異なります。
検出APIはプライベートプレビューで適格な組織と義務を負う企業に限定
テキスト透かしの検出APIは、2026年11月4日時点でプライベートプレビューです。対象は、EUの行動規範に沿った適格な組織として、規制当局、法執行機関、報道機関、ファクトチェッカー、独立研究者、教育機関、EUの市民社会団体が挙げられています。加えて、AI Actの義務を果たすために自社のClaude出力の印を確かめる必要がある企業も対象です。
利用希望はサポート記事の申請フォームから登録します。提供範囲は今後広げる予定とされていますが、時期は示されていません。透かしを付けた文を、手元で自由に判定できる状態にはまだありません。
生成ファイルのC2PAをClaude Content Checkerで誰でも検証する方法
ファイルは別の仕組みです。ClaudeがPNG・JPEG・SVGなどを生成すると、署名付きのメタデータとしてC2PA形式のContent Credentialを付けます。ファイルの中身には手を加えません。
こちらは無料のClaude Content Checkerで誰でも確認できます。ただし形式変換・再保存・スクリーンショットでメタデータが落ちると、検出されなくなります。テキストは公開の検証手段が無く、ファイルはある。この非対称が、運用設計で最も取り違えやすい点です。
検出結果が示せることと「検出なし」を人が書いた証明にできない理由
検出された印は、Claudeが処理に関与した可能性を示すだけです。サポート記事は「完全に決定的ではない」と明記しています。Claudeに校正・翻訳・要約させた文にも印は付くため、元の発想や文章が別の人のものでも検出されます。
逆に、印が無いことはAIで作られていない証明になりません。対象外のモデル、大幅な編集や他者による言い換え・翻訳、短すぎる文、既定外のサンプリング設定で生成したSonnet 4.6の出力は、どれも「検出なし」になります。
OpenAIのtextGrainと比べたClaudeの透かしの付与範囲と設定の違い
OpenAIも2026年10月5日にテキスト透かし「textGrain」を発表しました。同じEUの行動規範に沿った対応ですが、付与の既定値が正反対です。
全世界で既定付与のClaudeとAPIオプトイン方式のtextGrainの比較
| 観点 | Claude | OpenAI textGrain |
|---|---|---|
| APIでの既定 | 対応モデルで常に付与 | 既定オフ・設定でオン |
| チャット製品 | 全世界で付与 | EU域内のみ付与 |
| 方式の基盤 | SynthID-Textの一版 | 独自方式 |
| 実装者の注意点 | Sonnet 4.6のサンプリング設定 | 組織かプロジェクトの設定 |
| テキストの検出 | 限定プレビュー | 審査を通った研究機関等 |
Claudeでは、透かしを付けるかどうかを利用者が選ぶ設定は公式資料に記載がありません。OpenAIは付けたい利用者が設定で選びます。textGrainの設定手順と検出の限界はtextGrainの仕組みとAPI設定手順で解説しています。
両社のモデルを併用する構成で透かしの有無を説明できるようにする設計
モデルを切り替えて使う構成では、同じ機能の出力でも透かしの有無が呼び先で変わります。Claudeの対応モデルなら付き、OpenAIで設定オフのプロジェクトなら付きません。
監査や問い合わせに答えるには、応答ごとに呼び先・モデルID・API版を記録しておくのが確実です。Claude側はモデルIDとサンプリング指定の有無、OpenAI側は透かしを有効にしたプロジェクトのキーかどうかが、透かしの有無を説明する根拠になります。
EU向けにClaudeを組み込む開発企業が透かしに依拠する条件と見送る場面
制度の全体像はEU AI Actのリスク分類と日本企業の対応で扱っています。ここでは透かしの性質を踏まえた採否に絞ります。
第50条の行動規範と自社製品に組み込む事業者が独自に評価すべき範囲
AnthropicはAI Act第50条(2)に関する行動規範に、生成AIモデルと生成AIシステム両方の提供者として署名しました。署名は2026年7月で、署名者は約190に上ります。欧州委員会の行動規範ページによれば、透明性の義務は2026年8月2日から適用されています。
ただしサポート記事は、Claudeを自社製品に組み込む場合、第50条が自社の製品とサービスに何を求めるかは自分で評価すべきだと書いています。透かしはモデル提供者側の対応であり、画面上の表示など導入者側の義務までは肩代わりしません。Claudeの利用規約側の変更はClaude利用ポリシー2026年改定の要点で確認できます。
EU向け生成文の透かしを第50条対応の一部に数えてよい構成の条件
次の条件が揃う構成なら、透かしを第50条対応の一部として記録に残してよいと判断します。EUの利用者に生成文をそのまま届けている。呼んでいるモデルが対応表で「対象」になっている。Sonnet 4.6を使うならサンプリング指定を送っていない。出力の多くが短文ではなく、まとまった長さの自然文である。
追加費用は掛かりません。手を入れるのはAPI版の移行かログ監査だけで、対応の負担は小さく済みます。モデル選定から送信ログの設計まで含めて検討したい場合は、生成AI開発・AI受託開発で要件整理から支援しています。
社員や受講者のAI判定や採点に使えず透かしへの依拠を見送るべき場面
「社員や受講者の文章がClaude製か見分けたい」目的なら、透かしは使えません。検出APIは限定提供で、仮に使えても、検出は関与の可能性、未検出は何も示さない、という性質です。人事評価や採点の根拠にすると誤った結論を招きます。
生成物の大半がコードや定型の短い応答で、透かしがほとんど乗らない構成も、依拠する意味は小さいです。Opus 4.6やHaiku 4.5のような対象外モデルを使い続ける構成も同様です。この場合は、透かしではなく画面上の表示と生成記録で説明責任を果たす設計を選んでください。
Claudeのテキスト透かしの対象・料金・検出についてよくある質問
Claudeの透かしについて、実装者から出やすい質問に答えます。
Claudeのテキスト透かしは日本から使うAPIやClaude Codeの出力にも付きますか?
付きます。公式記事とサポート記事によれば、透かしは地域を限定せず、Claudeが提供される全世界で対応モデルの出力に付与されます。Claude Codeも透かしの付与が行われる提供面の一つです。ただしOpus 4.6・Opus 4.5・Sonnet 4.5・Haiku 4.5は2026年11月4日時点の対応表でテキスト透かしの対象外です。旧モデルへの対応は今後広げるとされています。
透かしが付くとAPIの料金や応答速度は変わりますか?
変わりません。公式記事は、透かしは追加のトークンを生まないため提供・利用の価格は同じで、速度への影響もごくわずかと説明しています。Text watermarkのドキュメントも、リクエストや応答の処理を変える必要はないとしています。料金そのものはモデルごとに異なるため、Claude APIの料金ページで確認してください。
APIで透かしを無効にする設定はありますか?
2026年11月4日時点の公式ドキュメントとサポート記事に、透かしを無効にする設定の記載はありません。透かしの有無に影響すると書かれているのは、Sonnet 4.6でのサンプリング設定だけです。この挙動を無効化の手段として使うことは公式に案内されておらず、API版2026-10-21ではそのパラメータ自体が送れません。
透かしの入ったClaudeの文章を自社で検出できますか?
原則としてできません。検出APIはプライベートプレビューで、規制当局・報道機関・研究者などの適格な組織と、AI Actの義務のために自社出力を確かめる必要がある企業に限られます。該当する企業が利用希望を登録する窓口は、サポート記事の申請フォームです。ファイルのC2PAだけは、Claude Content Checkerで誰でも確認できます。
Claudeに翻訳や校正をさせた文章にも透かしは入りますか?
翻訳には入ります。全ての語をClaudeが選ぶためです。校正は修正箇所にしか乗らないため、文法と句読点だけを直させた文では検出に届かない場合があります。言い換えさせた量が多いほど、透かしの乗る余地は増えます。
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