ChatGPT Enterpriseは、OpenAIが組織向けに提供する管理型のChatGPTプランです。料金表に金額は載っておらず、営業との個別見積りで決まります。この記事では、2026年9月17日時点の公式ヘルプと料金ページをもとに、価格の決まり方、Business(旧Team)との機能差、セキュリティ、国内の導入事例、契約前に確認すべき点を整理します。
まとめ:ChatGPT Enterpriseの価格と選び方の要点
- 価格は非公開:料金ページは「カスタム料金」「営業チームへお問い合わせ」とだけ表示しています。Enterpriseに用意されているのは年間プランです。
- 課金方式は契約による:シート料金などの契約費用に加え、米ドル建てトークン課金またはクレジット課金が適用されます。クレジット課金の契約では、Deep Researchや推論モデルなどの高度な機能を使うと、ワークスペースの共有クレジットが減ります。
- 比較の基準はBusiness:Standardシートは1ユーザー月25ドル(年払いなら月20ドル)、2シートから契約できます。
- Enterpriseが必要になる条件:SCIM、ロールベースのアクセス制御、エンタープライズキー管理、Compliance API、IP許可リスト、日本でのデータ保存のいずれかが要件に入る組織です。
- データの扱い:BusinessもEnterpriseも、入力と出力は既定でモデルの学習に使われません。
ChatGPT Enterpriseの位置づけと提供範囲
ChatGPT Enterpriseは2023年8月28日に提供を開始しました。公式ヘルプは、エンタープライズグレードのプライバシーとセキュリティ、一元化された管理機能、ドメイン認証・SSO・SCIM・利用状況の可視化、拡張されたコンテキストウィンドウを含むプランと説明しています。大学向けのChatGPT Eduは、Enterpriseプランの一種という扱いです。
2026年4月2日の更新で、シートは2種類になりました。標準のChatGPTシートでは、ChatGPTに加えてGPTs、Projects、Apps、Company Knowledge(社内ナレッジ)、ChatGPT Agent、Deep Research、Codexを利用できます。CodexシートはCodexだけに使えるシートで、1ユーザーあたりの月額固定費がありません。利用分はワークスペースのクレジットで支払います。
「エンタープライズサーチ」で探している場合、ChatGPT側でこれに当たる機能は社内ナレッジです。接続したツールやファイルを参照して回答し、成果物を作ります。長時間のタスクを任せるエージェント機能は、ChatGPT Workの仕組みと料金で解説しています。ChatGPTのワークスペースに参加しても、APIプラットフォームの利用権は付きません。両者は別々に契約・管理します。
ChatGPT Enterpriseの料金体系と見積りの考え方
Enterpriseの公開料金情報と見積りの依頼手順
chatgpt.comの料金ページでは、Enterpriseの欄が「カスタム料金」で、金額はありません。FAQには、月額プランがあるのはGo・Plus・Business、年間プランがあるのはBusinessとEnterpriseと書かれています。見積りはOpenAIの営業フォームから依頼します。関心のある製品に「ChatGPT Enterprise」を選んで送信すると、担当者が要件を聞き取ります。
一部の解説記事にある「1ユーザー約60ドル」「150席以上」という数字は、本記事で確認した公式の料金ページやヘルプには載っていません。社内の稟議で使う場合は、必ず見積書の金額を使ってください。最低席数や複数年契約の可否も公開されていないため、見積りの段階で確認する必要があります。
クレジット課金とトークン課金の2方式
クレジット課金のEnterprise契約では、共有クレジットを利用します。クレジットの割り当ては、契約に応じてシートに伴う定期配分またはプールの購入によります。ワークスペースの全ユーザーが、高度な機能を使うたびにこの残高から消費します。既定ではユーザーごとの上限がなく、管理者はRBACでグループ単位の支出を管理します。残高を使い切った場合、所有者が超過利用を有効にするか、アカウントチーム経由でクレジットを追加購入するまで、高度な機能は止まります。ユーザーを追加した分のシートは、一般に四半期ごとのトゥルーアップで精算されます。
トークン課金の契約では、Chat・Work・Codexの利用量をトークンなどの単位で計測し、シート料金とは別に米ドルで毎月後払いします。シート料金は各請求月の開始時点で割り当てているシート数で決まり、使っていないユーザーの分もかかります。シートを削除しても、請求額が下がるのは翌請求月からです。契約によっては、EnterpriseとAPIを合算した利用額コミットメントが付きます。管理者は、ワークスペースの月間予算と、ユーザー・グループごとの上限をドル建てで設定できます。どちらの方式になるかは契約で決まり、一部のEnterpriseワークスペースは今もクレジット課金です。
以下はクレジット課金の契約に適用される消費量の目安です(2026年9月時点)。米ドル建てトークン課金の契約には別のレート表が適用されます。
| 利用内容 | 単位 | クレジット(概算) |
|---|---|---|
| 即時モードのチャット | 1メッセージ | 原則クレジット不要(自動推論切替時を除く) |
| GPT-5.6 Sol(中程度・高・超高) | 1メッセージ | 10 |
| GPT-5.6 Sol Pro/GPT-6 Pro | 1メッセージ | 50 |
| エージェントモード | 1メッセージ | 30 |
| Deep Research | 1タスク | 50 |
| 画像生成 | 1回 | 5 |
推論レベルを「高」や「超高」に上げても、GPT-5.6 Solの消費は1メッセージ10クレジットのままです。見積りを取る前に、Deep Researchとエージェントを日常的に使う部署の人数を数えておくと、必要なクレジット量を詰めやすくなります。出典:OpenAIヘルプ「ChatGPT レート表」、同「トークンベース請求」
比較の基準になるBusinessの価格
セルフサービスで契約できるBusinessは、価格が公開されています。ヘルプに載っている米ドル価格は次のとおりです。国や通貨によって金額が変わる場合があります。
| プラン・シート | 月払い | 年払い | 契約条件 |
|---|---|---|---|
| Business Standard | 月25ドル | 月20ドル | 合計2シート以上 |
| Business Premium | 月125ドル | 月100ドル | Standardと混在可 |
| Enterprise | 設定なし | 個別見積り | 営業経由 |
Premiumシートでは、Standardの5倍の利用枠を使え、5時間の利用制限もかかりません。ChatGPT Teamは2025年8月29日にBusinessへ改称しました。「チームプラン 料金」で探している場合も、現在の価格はこの表のBusinessです。出典:OpenAIヘルプ「ChatGPT Business – 概要」、ChatGPT料金ページ(ビジネス)
「無制限」表記の変化と現在の課金の実態
2023年の発表時、Enterpriseの売りは「GPT-4を利用上限なしで使える」「32kトークンのコンテキスト」「従来の最大2倍の速度」でした。いまも多くの解説記事がこの説明を引き継いでいますが、課金の仕組みはその後大きく変わっています。
現在の公式ヘルプは、対象の基本モデルについて「実質的に無制限」に送信できると書いたうえで、メッセージ送信が無制限でも、料金がかからないわけではないと明記しています。トークン単位の米ドル請求を採用するEnterprise契約では、即時モードを含めて使った分が課金されます。この請求方式は対象のEnterprise契約向けで、EduとHealthcareでは現在提供されていません。2026年4月23日以降は、Codexのトークン使用量に応じたクレジット料金が、新規・既存のEnterprise、Edu、Teachers、Healthcareプランに適用されました。これはEnterprise全体の米ドル建てトークン課金への一律移行ではありません。
「Enterpriseにすれば使い放題」という前提で予算を組むのは危険です。予算を組む前に、次の3点を営業に確認してください。
- 自社の契約がクレジット課金か、トークン単位の米ドル請求か
- クレジット課金なら、クレジットの配分量と有効期限(注文書に記載されます)と超過制限の既定値(0に設定すれば、契約量を超えた利用を止められます)
- トークン課金なら、利用単価、月間予算、APIと合算する利用額コミットメントの有無
モデルの提供状況も管理者の設定しだいで変わります。GPT-6 Astraは、対象のEnterpriseワークスペースでは提供開始時点で無効になっており、所有者がワークスペース全体かロール単位で有効にする必要があります。
EnterpriseとBusiness(旧Team)の機能差
料金ページの比較表を見ると、日常の機能(ChatGPT Work、Codex、プロジェクト、社内ナレッジ、画像生成、Deep Research)は両プランとも利用できます。違いが出るのは、長い入力の扱いと、IT部門向けの統制機能です。
| 項目 | Business | Enterprise |
|---|---|---|
| Instantのコンテキスト上限 | 54K | 128K |
| Instantの入力上限 | 約40ページ | 約250ページ |
| 推論モデルのコンテキスト上限 | 256K | 256K |
| 応答時間(公式の定性表記) | 高速 | 最速 |
| SAML SSO・ドメイン認証 | あり | あり |
| SCIM | なし | あり |
| ロールベースのアクセス制御 | なし | あり |
| エンタープライズキー管理 | なし | あり |
| Compliance APIログ | なし | あり |
| IP許可リスト | なし | あり |
| データレジデンシー(日本を含む) | なし | あり |
| ISO 27001・27017・27018・27701 | なし | あり |
| SOC 2 Type 2 | あり | あり |
| 専任の導入支援・アカウント管理 | なし | あり |
Businessで足りる組織とEnterpriseが必要な組織
判断の分かれ目は人数よりも、IdP連携と監査の要件です。社内のIdP(IDプロバイダー)から利用者を自動で作成・削除したい場合、単体のBusinessワークスペースにはSCIMも同期グループもないため、要件を満たせません。退職者のアカウント削除を手作業で回せる規模でなければ、Enterpriseを選ぶことになります。
次のいずれかが要件にある場合も、Businessでは足りません。
- 会話やエージェントの操作記録をCompliance APIで取得し、社内の監査に使う
- 暗号鍵を自社のAWS KMS、Google Cloud、Azure Key Vaultで管理する(EKM)
- 顧客データを日本国内に保存する
- 請求書払い、発注書、銀行振込、ゼロデータ保持、BAAが必要(ヘルプは、これらをセルフサービスのBusinessではなく契約ベースの提供で扱うと案内しています)
逆に、数十人規模でSSOだけあればよく、監査ログの外部連携も国内保存も求めない組織なら、Businessで始めて問題ありません。利用の重い一部メンバーだけをPremiumシートにすれば、Enterpriseの見積りを待たずに運用を始められます。
PlusやProを法人でまとめて契約しない理由
個人向けのChatGPTでは、入力内容がモデルの学習に使われることがあり、各自が設定でオプトアウトしない限り止まりません。BusinessとEnterpriseは、既定で学習に使いません。社員に個人プランを配ると、学習の設定、退職時のデータ回収、請求の管理がすべて個人任せになります。個人プランの違いはChatGPT Proの2段階料金とPlusとの違いとChatGPT Goの料金とPlusとの違いで解説しています。
ChatGPT Enterpriseのセキュリティと監査の仕組み
Enterpriseの学習除外・暗号化・第三者認証
OpenAIのビジネスデータ向けページによると、Enterpriseの入力と出力は既定でモデルの学習に使われず、保存時はAES-256、転送時はTLS 1.2以上で暗号化されます。EnterpriseはSOC 2 Type 2の監査を完了しており、料金ページの比較表ではISO 27001・27017・27018・27701の認証取得も「あり」になっています。データの保持期間はワークスペースの管理者が設定でき、削除した会話は法的な保存義務がない限り30日以内にシステムから消去されます。出典:Enterprise privacy at OpenAI
監査ログ・Compliance API・EKM
Compliance APIを使うと、ワークスペースの管理者が会話やGPTの監査ログにアクセスできます。対象のワークスペースでは、管理キーに監査ログや認証ログといった記録のカテゴリごとに権限を付けられます。EKMは自社で暗号鍵を持ち込む方式(BYOK)で、AWS KMS、Google Cloud、Azure Key Vaultに対応しています。外部通信を制限し、プロンプトインジェクションによる情報流出リスクを抑えたい場合は、ChatGPTのロックダウンモードも併せて検討してください。
日本リージョンでのデータ保存
データレジデンシーの対象国には日本も含まれますが、選べるのは新たにEnterpriseまたはEduを導入する組織です。追加料金はかかりません。ただし、地域内でのGPU推論に対応しているのは米国・欧州・アラブ首長国連邦で、日本国内で推論まで完結させることはできません。また、一部のデータは地域外で一時的に処理され、不要になった時点で削除されます。既存のワークスペースで国内保存を後から求める場合は、移行の可否を営業に確認してください。
国内の導入事例と公表された効果
導入効果を判断する材料として、MIXIと三菱UFJ銀行の公表事例を紹介します。導入企業の自己申告や計画を含むため、第三者による効果測定とは区別して読んでください。
- MIXI:2025年3月に全従業員へ導入しました。3か月未満で週次アクティブ率が80%に達し、1,800個以上のカスタムGPTが作られています。アンケートからは月間約17,600時間(1人あたり約11時間)の削減を見込んでいます。法務部では利用規約の確認が30分〜1時間から約10分に短縮しました。
- 三菱UFJ銀行:2025年11月12日にOpenAIと戦略的な協業の契約を結び、2026年1月以降、全行員約35,000人がEnterpriseを使えるよう順次展開すると発表しています。2024年10月からは全行員での利用に向けた実証を重ねていました。
出典:MIXIニュース(2025年8月21日)、三菱UFJフィナンシャル・グループ ニュースリリース(2025年11月12日・PDF)
MIXIの月間約17,600時間という全社削減時間は、時間削減に関する設問の回答329件を選択肢の下限値で集計し、週次アクティブ率80%(1,600人)に換算した推計です。自社の効果を試算するときは、導入前に対象業務の所要時間を測っておくと、導入後に比べられます。
比較対象としてGoogle側の法人向けAIを検討している場合は、Gemini Enterpriseの機能と料金も参考になります。
導入手順と契約前の確認事項
- 営業フォームから問い合わせ、利用人数・必要な統制機能・データ保存先を伝える
- 見積りで、課金方式、シート数、利用単価、契約期間、支出上限を確定し、クレジット課金の場合は配分量と超過制限も確認する
- 管理コンソールでドメイン認証とSSOを設定し、SCIMでIdPと連携する
- RBACでグループ単位に使えるモデル・コネクタ・エージェントを決める
- メンバーを招待し、使用量アラートを設定する
招待を受ける社員側にも、事前に伝えておくべき注意点が2つあります。組織が個人ワークスペースの統合を必須にしている場合、個人のチャット・ファイル・GPTは組織の管理下へ移り、統合は元に戻せません。また、同じアカウントで個人の有料プランを契約していると、そのサブスクリプションは自動で解約され、未使用期間の分が一部返金されます。
ChatGPT Enterpriseのよくある質問
ChatGPT Enterpriseの料金はいくらですか?
公開されていません。料金ページは「カスタム料金」の表示で、営業との個別見積りによる年間プランです。利用料金は契約により、共有クレジットからの消費または米ドル建てトークン課金で計算されます。適用方式とシート料金は見積書で確認してください。
ChatGPTのBusinessとEnterpriseの違いは何ですか?
Enterpriseにだけあるのは、SCIM、ロールベースのアクセス制御、エンタープライズキー管理、Compliance API、IP許可リスト、データレジデンシーです。即時モードのコンテキスト上限も、Businessの54Kに対してEnterpriseは128Kです。Businessは1ユーザー月25ドル(年払いは月20ドル)で、2シートから契約できます。
ChatGPT Enterpriseに入力したデータは学習に使われますか?
既定では使われません。これはBusinessも同じです。ただし、フィードバック機能などで明示的にデータ共有へオプトインした場合は、その共有データが使われることがあります。
ChatGPTエンタープライズで何ができますか?
標準シートでは、ChatGPTのほか、GPTs、Projects、Apps、社内ナレッジ、ChatGPT Agent、Deep Research、Codexを使えます。管理者は、使えるモデルや機能をロールごとに制御できます。
ChatGPT Enterpriseのワークスペースに参加すると、個人のPlus契約はどうなりますか?
同じアカウントに紐づく個人向け有料サブスクリプションは自動で解約され、未使用期間の分が一部返金されます。