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さくらのAI Engineとは?料金・無料枠・提供モデルとAPIの使い方【2026年10月】

さくらのAI Engineとは?料金・無料枠・提供モデルとAPIの使い方【2026年10月】

さくらのAI Engineは、さくらインターネットが2025年9月24日に一般提供を始めた生成AI向けの推論APIです。公式の説明は「基盤モデルを搭載したGPUサーバーで推論を実行し、結果を返すAPIサービス」。GPUを自分で用意せずに、gpt-oss-120bや国産モデルをAPIで呼び出せます。

提供開始から1年で中身は大きく変わりました。開始時の4つのチャットモデルのうちQwen3-Coderの2つは2026年7月21日に終了し、音声合成、OpenAI互換のResponses API、Anthropic互換のMessages API、Playground、専有型の「プライベートエディション」が加わっています。直近では、Messages APIで唯一使えるKimi-K2.6が2026年11月9日に提供を終えると告知されました。Claude Codeから使っている人は、11月9日より前に接続先のモデルを見直す必要があります。この記事では2026年10月25日時点の公式サイト・マニュアル・お知らせをもとに、料金、提供モデル、APIの使い方と、どの形態を選ぶかを整理します。

まとめ:さくらのAI Engineの要点(料金・モデル・使い方・判断)

  • 何ができるか:チャット補完、埋め込み、ドキュメント管理とRAG、音声の文字起こし、音声合成の5機能。推論は国内で処理され、入力は学習に使われない(ZDR対応)。約款上は保守・障害対応のために入出力を一定期間保存する場合があり、RAG用のドキュメントは削除するまで保管される。
  • 料金:基盤モデル無償プランと従量課金プランの2つ。無償枠対象のチャットモデルは、どちらのプランも月3,000リクエストまで無料。gpt-oss-120bの超過分は入力0.15円・出力0.75円(1万トークンあたり・税込)。
  • 無料プランの注意点:枠を超えると課金ではなくレート制御がかかり、従量課金へは自動で切り替わらない。RAGのドキュメントは無料プランでも課金される。
  • 使い方:会員ID作成(電話番号認証)→さくらのクラウドのプロジェクト作成(クレジットカード登録)→プランを選び、アカウントトークンを発行してAPIを呼ぶ。
  • 接続先:https://api.ai.sakura.ad.jp。OpenAI SDKには /v1 まで含めて渡し、Claude CodeなどAnthropic系のベースURLには /v1 を付けない。
  • 11月9日の期限:Messages APIの対応モデルとして明示されているのはpreview/Kimi-K2.6だけで、そのKimi-K2.6が2026年11月9日に終了する。10月25日時点で、Messages APIの後継モデルは告知されていない。
  • 運用上の前提:SLAの適用対象外。プレビューは予告なく終了することがあり、告知された終了では、告知から終了まで26〜62日だった。
  • 選び方:PoCや社内ツールは共有型のAI Engine、自社モデルをトークン量に左右されない定額で動かすならプライベートエディション、学習まで自分で回すなら高火力のGPUサーバー。

さくらのAI Engineとは?国内で推論が完結する生成AI APIの概要と提供範囲

さくらのAI Engineは、生成AI向けサービス群「さくらのAI」の中核サービスです。一般提供の開始に合わせて、それまでの「さくらの生成AIプラットフォーム」は「さくらのAI」に改称されました。基盤は同社のGPUクラウド「高火力」で、申し込み窓口はさくらのクラウドのコントロールパネルです。

さくらのAI Engineのマニュアルは、ホストしているモデルはすべてさくらインターネットが運用し、データはユーザーと同社の間の通信だけで完結すると説明しています。チャット補完などのデータはモデルの学習に使われず、クローズドモデルでも、入力したテキストはモデル提供元へ送られません。公式サービスページのよくある質問は、入力データや応答内容は保存されず、プロンプトのキャッシュもしないと答えています。ただしさくらのAI Engineのサービス約款第10条は、入出力は「原則として保存されません」としたうえで、保守や障害対応のために暗号化して一定期間保存する場合があり、一定期間後に削除すると定めています。学習に使わない点は約款でも同じです。社内規程で「一切保存しないこと」を求める場合は、FAQではなく約款の条文で判断してください。

「AI Engine」という名前の製品は、AMDのハードウェアやWordPressのプラグインなど他にもあります。同名のものの整理はAIエンジンとは?仕組み・種類と主要AIの一覧、提供形態別の選び方にまとめています。

5つの機能とテキスト推論の3種類のAPIエンドポイント(OpenAI互換・Anthropic互換)

機能は、チャット補完、テキストのベクトル化(埋め込み)、RAG用のドキュメント管理と検索、音声の文字起こし(Whisper)、音声合成(VOICEVOXの音声)の5つです。埋め込みはRAGの内部で使われるだけでなく、単体のAPIとしても呼べます。音声合成は2026年2月26日に、Responses APIとMessages APIは2026年5月20日に追加されました。テキスト推論のAPIは3系統あり、どれも https://api.ai.sakura.ad.jp/v1 の配下にあります。

API パス(v1配下) 2026年10月25日時点の制約
OpenAI互換 Chat Completions chat/completions 対応パラメータはモデル依存
OpenAI互換 Responses responses 画像入力・マルチターン未対応
Anthropic互換 Messages messages preview/Kimi-K2.6のみ(11月9日終了)

このほか、埋め込み(/v1/embeddings)、文字起こし(/v1/audio/transcriptions)、音声合成(/v1/audio/speech と VOICEVOX形式の /tts/v1/audio_query・/tts/v1/synthesis)があります。さくらのクラウドのAPIポータルで公開されているOpenAPI仕様(さくらの AI Engine Inference API 1.0.1)は、Chat CompletionsとResponsesとMessagesのいずれにも「利用するモデルによってはサポートされていないパラメータもあります」と注記しています。使うモデルで一度通してから組み込むのが前提です。

料金と無料枠:基盤モデル無償プランと従量課金プランの違いと無償枠の条件

プランは「基盤モデル無償プラン」と「従量課金プラン」の2つで、無償枠対象モデルの無料リクエスト数は共通です。Weblab-MedLLM-gpt-oss-120bとクローズドモデルは無償枠の対象外です。2つのプランの違いは無償枠を超えたときの扱いで、無償プランではレート制御がかかり、従量課金プランでは超過分に料金がかかります。無償枠は翌月に自動でリセットされます。

機能 月の無償枠(両プラン共通)
チャット補完 3,000リクエスト
埋め込み 10,000リクエスト
音声の文字起こし 50リクエスト
音声合成 50リクエスト
ドキュメント(RAG) 無償枠なし(100チャンクごとに3円)

無償プランで見落とされやすい条件は次の4つです。

  • 無償プランから従量課金プランへは自動で切り替わらない。本番で上限に達すると、課金されない代わりにリクエストが制限される。
  • RAGのドキュメントは無償プランでも課金される。マニュアルは、RAGの利用を始めてからすべてのドキュメントを削除するまで課金対象になると注意している。
  • 基盤モデル無償プランには申し込み数の上限があり、上限に達すると新規の受付を止める。
  • 支払いはクレジットカードのみ。

無償プランでは、チャット補完などは枠を超えても課金されず、その代わりにリクエストが止まります。RAGのドキュメントは別に課金されるので、請求がゼロになるのはRAGを使わない場合だけです。チャット補完の月3,000リクエストは1日あたり約100回なので、業務で毎日100回以上呼ぶ見込みが立った時点で従量課金プランへの切り替えを決めます。

モデル別の超過単価一覧(通常モデル・プレビュー・クローズドモデル)

超過分の単価は、2026年10月25日時点の公式サービスページの料金表で次のとおりです(税込)。表のllm-jp-3.1-8x13bは正式名がllm-jp-3.1-8x13b-instruct4、Weblab-MedLLMはWeblab-MedLLM-gpt-oss-120bです。

区分 モデル 入力(1万トークン) 出力(1万トークン)
通常 gpt-oss-120b 0.15円 0.75円
通常 llm-jp-3.1-8x13b 0.15円 0.75円
通常・埋め込み multilingual-e5-large 2円 無料
通常・文字起こし whisper-large-v3-turbo 60秒ごとに0.5円
通常・音声合成 VOICEVOX(8音声) 1万モーラごとに3円
プレビュー Kimi-K2.6(11月9日終了) 0.6円 3円
プレビュー Kimi-K2.7-Code 0.52円 5.04円
プレビュー Qwen3.6-35B-A3B 0.3円 1.5円
プレビュー gemma-4-31B-it 0.24円 0.96円
プレビュー Qwen3-VL-30B-A3B-Instruct 0.1円 0.3円
プレビュー Qwen3-0.6B-cpu 0.01円 0.03円
プレビュー Phi-4-mini-instruct-cpu 0.01円 0.03円
プレビュー Qwen3-Embedding-4B(FP16) 3円 無料
プレビュー Weblab-MedLLM 0.9円(無償枠外) 4.5円

クローズドモデル(PFNのPLaMo 3.0 Prime、NECのcotomi v3)は料金表に単価がなく、無償枠の対象外です。PLaMo 3.0 Primeの性能は国産生成AI基盤モデル「PLaMo 3.0 Prime」とは|2026年最新の性能・料金・使い分けで扱っています。通常モデルの主力であるgpt-oss-120bの推論レベルや20bとの差は、gpt-oss-120bの性能と比較|20b・Qwen3.5・Nemotron 3 Superとのベンチマーク、必要スペックにまとめました。

月額料金の試算:社内チャットボットで月1万リクエストを送る場合

1リクエストあたり入力2,000トークン・出力500トークンのチャットボットを、従量課金プランで月1万回呼ぶ場合です。無償枠の3,000リクエストを差し引いた7,000リクエスト分に単価を掛けます。

モデル 入力1,400万トークン 出力350万トークン 月額
gpt-oss-120b 210円 262.5円 472.5円
Kimi-K2.7-Code 728円 1,764円 2,492円

出力単価の高いKimi-K2.7-Codeは約5.3倍になり、コーディング支援では出力トークンの見積もりが費用を決めます。利用料金の1円未満の端数は切り上げです(サービス約款第5条第2項)。料金ページは課金の最小単位を「10,000トークン/60秒」としていますが、リクエストごとに切り上げるのか月の合計で数えるのかは書かれていないため、この表は概算です。この規模なら月数百円から数千円で収まるので、共有型のAI Engineでは費用より先に、後述するSLAの有無とモデルの入れ替わりが効いてきます。

提供モデル一覧:通常・プレビュー・クローズドの3区分と入れ替えの履歴

モデルは「通常モデル」「パブリックプレビューモデル」「クローズドモデル」の3区分です。プレビューは動作検証とフィードバックの収集が目的で、予告なく終了することがあり、正式提供に移るときに料金が変わる可能性もあります。クローズドモデルは提供元の審査を通った法人だけが使えます。APIの model に指定する名前はコントロールパネルの「利用可能なモデル」で確認でき、プレビューモデルには preview/Kimi-K2.7-Code のように接頭辞が付きます。

2026年9月24日には、Weblab-MedLLM-gpt-oss-120bがプレビューに加わりました。東京大学の松尾・岩澤研究室が中心となって開発し、gpt-oss-120bを日本語の医学論文や診療ガイドラインなどで追加学習したモデルです。単価は入力0.9円・出力4.5円と通常のgpt-oss-120bの6倍で、無償枠もありません。医療分野の追加学習が要らない用途なら、まず単価の安い通常のgpt-oss-120bで応答を比べてから選びます。

提供終了・入れ替えの履歴と告知から終了までの日数

さくらのクラウドニュースのAI Engineのお知らせを並べると、1年でモデルがかなり入れ替わっています。

日付 内容 告知
2025-09-24 一般提供開始(4チャットモデル) -
2025-10-09/10-21 軽量CPUモデルとQwen3-VLをプレビュー提供 -
2025-11-28/12-02 PLaMo 2.0・cotomi v3を提供開始 -
2026-02-26 音声合成(TTS)APIを提供開始 -
2026-03-27 Kimi-K2.5を一時中断 告知なし
2026-05-12 Kimi-K2.5終了・K2.6をプレビュー提供 -
2026-05-20 Responses API・Messages APIを提供開始 -
2026-06-04/06-30 Qwen3.6-35B-A3B・gemma-4-31B-itをプレビュー提供 -
2026-07-21 Qwen3-Coder(480B・30B)提供終了 5月20日(62日前)
2026-07-27 Phi-4-multimodal提供終了 6月25日(32日前)
2026-07-28 Kimi-K2.7-Codeをプレビュー提供 -
2026-08-04 PLaMo 3.0 Primeを提供開始 -
2026-09-24 Weblab-MedLLMをプレビュー提供 -
2026-10-08 プライベートエディション提供開始 -
2026-10-12 PLaMo 2.0-31B提供終了 8月13日(60日前)
2026-11-09(予定) Kimi-K2.6提供終了 10月14日(26日前)

終了が告知された4件のうち、通常モデルはQwen3-Coderだけです。開始時からある通常モデルでも約10か月で終わり、告知から終了までは26〜62日でした。直近のKimi-K2.6は26日前の告知で、これまでで最も短くなっています。プレビューのKimi-K2.5は、問題の確認を理由に告知なしで一時中断されました。同じ10月14日の告知では、DeepSeek-V4.1-FlashとGLM-5.3-Flashのプレビュー追加も予告されていますが、提供日・料金は「後日改めて」とされ、10月25日時点では未定です。GLMの世代と本家APIの料金はGLM(Z.ai)とは?最新GLM-5.3までの世代一覧と料金・使い方で確認できます。

本番に組み込むなら、次の3点を最初から設計に入れてください。

  • モデル名はコードに直書きせず、設定ファイルや環境変数で差し替えられるようにする。
  • 止まると困る処理には通常モデル(gpt-oss-120b、llm-jp-3.1)を使い、プレビューは評価と非本番に限る。
  • さくらのクラウドニュースの「さくらのAI Engine」タグを監視する。26日前の告知でも切り替えられるよう、代替モデルでの動作確認を先に済ませておく。

使い方:会員ID作成からアカウントトークン発行、curlでAPIを呼ぶまで

  1. さくらインターネットの会員IDを作成する(電話番号認証が必須)。
  2. さくらのクラウドのプロジェクトを作成し、クレジットカードを登録する。
  3. さくらのAI Engineのコントロールパネルで利用規約に同意し、プランを選ぶ。
  4. 左メニューの[アカウントトークン]から[アカウントトークンを作成]でトークンを発行する。トークンは <UUID>:<シークレット> の形式で再表示されないので、安全な場所に保存する。
  5. トークンをBearer認証に入れてAPIを呼ぶ。

マニュアルの動作確認用のcurlは次のとおりです。<Token> を UUID:シークレット のまま置き換えます。

curl --location 'https://api.ai.sakura.ad.jp/v1/chat/completions' \
  --header 'Accept: application/json' \
  --header 'Authorization: Bearer <Token>' \
  --header 'Content-Type: application/json' \
  --data '{
    "model": "gpt-oss-120b",
    "messages": [{"role": "user", "content": "こんにちは!"}],
    "temperature": 0.7,
    "max_tokens": 200,
    "stream": false
  }'

gpt-oss-120bの応答には、本文の content とは別に推論過程の reasoning_content が含まれます。アプリで表示するのは content だけにします。レスポンスの usage には入力と出力のトークン数が入るので、ログに残せば前述の試算を実測値で置き換えられます。

コントロールパネルでは、プランの契約・解約、アカウントトークンの発行と削除、RAGのドキュメント管理、当月の利用料金と直近30日のモデル別トークン数の確認ができます。解約するには、先にすべてのドキュメントとアカウントトークンを削除しておく必要があります。

Playgroundの認証条件と1日の利用制限:契約前のモデル比較

契約前にモデルの応答を比べたいなら、Playgroundを使います。2025年12月25日から、会員IDがなくてもGitHubかさくらIDの認証だけで使えるようになりました。無料ですが、1日あたりの利用量に制限があります。複数モデルの応答を並べられるので、候補を絞る初期評価に向きます。

OpenAI SDK・Claude Codeから接続する設定とベースURLのv1の扱い

OpenAI互換とAnthropic互換のSDKやツールから接続できますが、間違えやすいのがベースURLに /v1 を付けるかどうかです。OpenAIのPython SDK 2.48.0とAnthropicのPython SDK 0.125.0(Python 3.9.6)を、本物のAPIではなくローカルの模擬サーバーへ送り、SDKが実際に送信したパスとヘッダーを記録しました。

SDK base_url の末尾 送信されたパス 結果
OpenAI v1 まで含める 正しいパス 成功
OpenAI v1 なし v1が欠落 404
Anthropic v1 なし 正しいパス 成功
Anthropic v1 まで含める v1が二重 404

「成功」「404」は模擬サーバーの応答で、実サービスへの接続成功を示すものではありません。確かめたのはSDKがどのパスへ送るかです。OpenAI SDKはbase_urlの後ろに /chat/completions を足し、Anthropic SDKは /v1/messages を足します。v1を付けずにOpenAI SDKを使うと送信先は /chat/completions、v1を付けてAnthropic SDKを使うと /v1/v1/messages になります。

OpenAI SDK(Python)の接続設定とチャット補完の呼び出し例

事前に pip install openai を実行し、発行したアカウントトークンを環境変数 SAKURA_AI_TOKEN に設定しておきます。

import os
from openai import OpenAI

client = OpenAI(
    base_url="https://api.ai.sakura.ad.jp/v1",   # /v1 まで含める
    api_key=os.environ["SAKURA_AI_TOKEN"],          # アカウントトークン(UUID:シークレット)
)
model = os.environ.get("SAKURA_AI_MODEL", "gpt-oss-120b")  # 提供終了に備えて外出し

res = client.chat.completions.create(
    model=model,
    messages=[{"role": "user", "content": "RAGとは何か1文で説明して"}],
    max_tokens=200,
)
print(res.choices[0].message.content)
print(res.model, res.usage)  # 実際に応答したモデル名とトークン数

OpenAI SDKは api_key を Authorization: Bearer ヘッダーで送るので、curlの例と同じ認証になります。LLMに「あなたのモデル名は?」と聞いても実際のモデル名と一致しない場合がある、とマニュアルは注意しています。どのモデルが応答したかは本文ではなく res.model で確認します。OpenAI互換で他社APIへ差し替えるときの判断材料は、Sakana Namazuとは?API料金とOpenAI互換での移行判断を実装目線で解説でも扱っています。

ストリーミング応答と429のレート制限に備えた再試行の設定例

チャット画面に組み込むなら、生成された文字から順に表示するストリーミングにします。SDKでは stream=True を渡すだけです。あわせて429への備えを決めておきます。公式サービスページのよくある質問は、無償枠を使い切る前でも、アクセス集中で一時的に429(Too Many Requests)が返る場合があり、そのときは数分待ってから再実行するよう案内しています。OpenAIのPython SDKは429や5xxを既定で2回まで、間隔を空けながら自動で再試行しますが、間隔は秒単位なので「数分待つ」には届きません。

import os, time
import openai
from openai import OpenAI

client = OpenAI(
    base_url="https://api.ai.sakura.ad.jp/v1",
    api_key=os.environ["SAKURA_AI_TOKEN"],
    max_retries=2,   # SDKの短い自動再試行(既定値)
    timeout=60.0,    # 接続・読み取りなど各段階の待ち時間(秒)。再試行込みの総時間ではない
)

def ask_stream(prompt, waits=(60, 180)):
    for wait in (*waits, None):
        try:
            stream = client.chat.completions.create(
                model=os.environ.get("SAKURA_AI_MODEL", "gpt-oss-120b"),
                messages=[{"role": "user", "content": prompt}],
                max_tokens=400,
                stream=True,
            )
            for chunk in stream:
                if chunk.choices and chunk.choices[0].delta.content:
                    print(chunk.choices[0].delta.content, end="", flush=True)
            print()
            return
        except openai.RateLimitError:
            if wait is None:
                raise          # 数分待っても429なら月の枠の超過を疑う
            time.sleep(wait)   # 公式FAQの「数分待って再実行」に合わせる

ask_stream("議事録を要約するときの観点を3つ挙げて")

このコードを待ち時間だけ1秒に縮めて模擬サーバーで動かすと、常に429を返す設定では、SDKの自動再試行込みの3回を3巡、計9回送ってから RateLimitError で止まりました。最初の3回だけ429を返す設定では、4回目で応答を受け取っています。実際の待ち時間は60秒と180秒なので、最悪で約4分かかる前提で画面側のタイムアウトを決めます。

数分おいても429が続くときは、コントロールパネルで当月のリクエスト数を見て原因を切り分けます。無償プランで月の枠を使い切っていれば、再試行しても翌月のリセットまで制限は解けないので、従量課金プランへ切り替えるかを判断します。枠が残っているなら混雑による一時的な429なので、待ち時間を延ばして再実行します。

Responses APIのマルチターン:previous_response_idの非参照と履歴の送り方

Responses APIは画像入力とマルチターン会話に未対応です。OpenAPI仕様を見ると、store・previous_response_id・conversation_id の3項目は「現在は指定可能ですが、システム上は参照されません」と書かれています。つまり、OpenAIの本家と同じつもりで前回のレスポンスIDを渡すと、エラーにはならないまま文脈だけが失われます。会話を続けるには、これまでのやり取りを毎回 input に入れて送ります。

import os
from openai import OpenAI

client = OpenAI(base_url="https://api.ai.sakura.ad.jp/v1",
                api_key=os.environ["SAKURA_AI_TOKEN"])
history = []  # 会話はクライアント側で持つ

for q in ["さくらのAI Engineの無償枠は?", "それを超えたらどうなる?"]:
    history.append({"role": "user", "content": q})
    res = client.responses.create(
        model=os.environ.get("SAKURA_AI_MODEL", "gpt-oss-120b"),
        input=history,              # previous_response_id ではなく履歴ごと送る
        max_output_tokens=300,
    )
    history.append({"role": "assistant", "content": res.output_text})
    print(res.output_text)

このコードを同じSDK 2.48.0でローカルの模擬サーバーに送ったところ、2回目のリクエストの input には「質問1→回答1→質問2」の3件が入っていました。履歴が長くなるほど入力トークンが増え、そのまま料金に乗ります。プロンプトのキャッシュもないため、長い会話では古いやり取りを要約して詰める処理を自分で入れます。

Claude CodeからMessages APIへ接続する設定と11月9日以降の扱い

2026年6月の公式コラムの手順では、環境変数を2つ設定してモデルを指定するだけで、Claude Codeからさくらのインフラ経由で推論できます。以前必要だったclaude-code-router(ccr code で起動するOSSの変換ミドルウェア)は不要になりました。

export ANTHROPIC_BASE_URL="https://api.ai.sakura.ad.jp"    # /v1 は付けない
export ANTHROPIC_AUTH_TOKEN="<アカウントトークン>"
claude --model preview/Kimi-K2.6

ANTHROPIC_API_KEY ではなく ANTHROPIC_AUTH_TOKEN を使います。模擬サーバーで確かめると、Anthropic SDKはauth_tokenなら Authorization: Bearer、api_keyなら x-api-key ヘッダーで送っていました。公式の手順はBearerのほうです。設定を ~/.claude/settings.json に残す場合、コラムは ANTHROPIC_DEFAULT_OPUS_MODEL・ANTHROPIC_DEFAULT_SONNET_MODEL・ANTHROPIC_DEFAULT_HAIKU_MODEL の3つにもpreview/Kimi-K2.6を入れる例を載せています。モデルを替えるときは、この3つも書き換えます。

コラムは「対応モデルは今後増やしていく予定」としていますが、問題は期限です。2026年10月14日のお知らせで、preview/Kimi-K2.6は11月9日に提供を終えると告知されました。お知らせは後継としてKimi-K2.7-Codeなどへの移行を勧めていますが、Kimi-K2.7-Codeの提供開始のお知らせが示す提供形態は「通常モデル(Chat completions)」です。10月25日時点の料金ページも、Messages APIで使えるモデルを「preview/Kimi-K2.6のみ」と書いたままです。Messages APIの後継モデルが告知されないまま11月9日を迎えると、上の設定は動かなくなります。

  • 11月9日より前に、コントロールパネルの「利用可能なモデル」とお知らせで、Messages APIの対応モデルが増えていないかを確認する。
  • 増えていなければ、公式コラムが「他のモデルを使う場合」として案内している従来の方法、つまりclaude-code-routerを挟んで ccr code で起動する構成に戻し、Kimi-K2.7-Codeなどへ切り替える。形式を変換するプロキシを挟む考え方は、Sakana FuguをClaude Codeで使う設定手順|claude-fuguと環境変数、Fugu Max既定のモデル割り当てでも扱っています。
  • Kimi-K2.7-Codeは出力単価が5.04円とKimi-K2.6の約1.7倍になるので、月額を見積もり直す。

RAG・音声の文字起こし・音声合成APIの仕様と使うときの注意点

RAG:ドキュメントのアップロードから検索・回答生成までの流れ

RAG用のAPIとベクトルストアはAI Engineが持っているので、自前でベクトルDBを用意する必要はありません。documents_upload でtxt・pdf・html・docx・xlsx・mdなどをアップロードすると、指定した埋め込みモデルでベクトル化されて保存されます。検索は2種類で、documents_query は該当チャンクをそのまま返し、documents_chat は質問のベクトル化、検索、指定LLMでの回答生成を1回の呼び出しで行います。距離はcosineとl2から選べます。RAGの仕組みそのものはRAGとは?仕組みとLLM・ファインチューニングとの違い・企業での導入例を解説を参照してください。

埋め込みモデル 最小値(トークン) 最大値(トークン) 既定値(トークン)
multilingual-e5-large(既定) 256 512 512
Qwen3-Embedding-4B 256 32,000 512

チャンクサイズの指定とQwen3-Embedding(モデル名はpreview/Qwen3-Embedding-4B-FP16)の利用は2026年2月25日に可能になりました。スキャン画像のPDF、縦書きや段組みの多い文書、パスワード付きファイルは正しく取り込めないことがあるため、テキストに変換してからアップロードするのが確実です。RAGでは埋め込みとチャットの料金に加えて、ドキュメントの保管料(100チャンクごとに3円)がかかります。埋め込みモデルの選び方は埋め込みモデルとは?仕組みと日本語モデルの選び方・RAG実装での判断基準【2026年版】で解説しています。

検索精度を詰めるときは、まずAPIで指定できる項目を調整します。操作ガイドの例では、アップロード時に chunk_size と tags、検索時に top_k・threshold・distance_type を指定しています。それでも足りず、ハイブリッド検索や再ランキングを組み込みたくなった段階で、埋め込みだけAI Engineで作り、検索は自前のベクトルDBで持つ構成に移ります。

音声の文字起こしAPI:1ファイル30分・30MBまでの制限と分割

whisper-large-v3-turboを /v1/audio/transcriptions で呼びます。aac・m4a・mp3・mp4・ogg・wavなどに対応しますが、同期APIのため1ファイル30分、または30MBまでです。長い会議の録音は分割してから送ります。無償枠は月50リクエストなので、分割後の送信回数が月50回を超える運用では従量課金プランを選びます。無償枠を超えた分は60秒0.5円で、1時間の録音なら30円です。同じWhisperを自社のGPUで動かす手順はWhisperをPyTorchで動かす手順|openai-whisper・faster-whisper・Transformersと日本語・GPU設定にあります。

音声合成API:VOICEVOXの8音声とクレジット表記・利用規約

ずんだもん、四国めたん、春日部つむぎなどVOICEVOXの8音声が使えます。OpenAI互換の /v1/audio/speech とVOICEVOX形式の2系統があり、1回あたり1,000文字程度まで。使う前に、音声ごとの利用規約にコントロールパネルで同意する必要があります。マニュアルは、使ったキャラクター名を「VOICEVOX:ずんだもん」の形式でクレジット表記するよう求めています。音源ごとの利用規約は3つに分かれている(ずんだもんなど6音声/春日部つむぎ/冥鳴ひまり)ので、商用利用の前にそれぞれ確認してください。

共有型API・プライベートエディション・GPUサーバー(高火力)の比較と選び方

「aiサーバー さくら」で探している場合、選択肢は3つあります。提供モデルをAPIで呼ぶ共有型のAI Engine、自社のモデルを専有環境で動かしてもらうプライベートエディション、GPUサーバー(高火力)を借りて自分でモデルを動かす方法です。

プライベートエディションは2026年10月8日に提供開始が発表されたフルマネージドのサービスです。独自開発モデル、ファインチューニング済みモデル、オープンウェイトモデルを顧客専用の環境に載せ、推論基盤の構築から運用・監視、障害対応までを同社が担います。閉域接続に対応し、入力データと生成結果はAI学習に使われません。料金はGPU単位の月額定額で、プライベートエディションの製品ページでも金額は公開されておらず、構成ごとの見積もりです(2026年10月25日時点)。

観点 AI Engine(共有型) プライベートエディション 高火力GPUサーバー
料金 トークン従量・無償枠あり GPU単位の月額定額 GPUサーバーの利用料
使えるモデル 提供モデルから選ぶ 自社・FT済み・OSSを持込 自由(自分で載せる)
推論基盤の運用 さくら側 さくら側(監視・障害対応) 利用者
環境 他の利用者と共有 専有・閉域接続に対応 専有
モデル終了の影響 受ける(26〜62日前告知) 持込モデルは受けない 受けない
向く場面 PoC・社内ツール 機密業務・自社APIの提供 学習・独自の推論基盤

判断の軸は2つです。1つは、提供モデルで用が足りるか。足りるなら共有型で始め、足りないなら自社モデルを載せられる後の2つに進みます。もう1つは、推論基盤を自分で運用する人手があるか。運用を任せたいならプライベートエディション、学習まで含めて自分で回すなら高火力のGPUサーバーです。共有型の月額が数百円〜数千円で収まる規模なら、GPU単位の定額に移る理由は薄く、トークン量が増えて請求が読めなくなった段階か、モデルの入れ替わりに業務を合わせられなくなった段階で見積もりを取ります。

さくらのAI Engineを採用する条件と見送るべき用途・制約の判断基準

採用してよい条件:国内処理・トークン従量課金・無償枠でのPoC

  • 海外のAPIに送れないデータを扱う社内ツール:推論は国内のデータセンターで処理され、入力は学習に使われない。社内規程で「海外リージョン不可」とされている組織なら第一候補になる。ただし約款上は保守・障害対応のための一時保存がありうるので、保存そのものを禁じる規程なら条文を法務と確認する。
  • 無料枠の範囲で進めるPoC:月3,000リクエストあれば、1日100回程度の試行には足りる。チャット補完は上限に達しても課金されないが、RAGのドキュメントは無償プランでも課金されるので、RAGを試すなら少額の費用を見込んでおく。
  • 日本語の文字起こしやRAGを安く組みたいケース:文字起こしは1時間30円、RAGはベクトルDBを自前で持たずに済む。会議録の要約や社内FAQ検索のように、最上位モデルでなくても成り立つ用途に合う。

さくらのクラウドでアプリを動かすなら、コンテナ実行基盤のさくらのクラウド「AppRun」とは?料金・共用型と専有型の違い・使い方を実務目線で解説と組み合わせれば、アプリも推論も国内で完結します。社内文書を検索して答えるチャットボットにする段階では、RAGの検索精度、モデル名の外出し、429時の待ち方といった設計で品質が決まります。一創ではAIチャットボット開発として、こうしたLLM APIを使ったチャットボットを要件整理から実装まで受託しています。

見送る場面:SLA・最上位商用モデル・Claude Codeの常用

次のどれかに当てはまるなら、さくらのAI Engine(共有型)は第一候補になりません。

  • SLAが必要なシステム:マニュアルに「品質保証(SLA)の適用対象外」と明記されている。可用性を契約で担保する必要があるなら使えない。プライベートエディションでの扱いは公開情報に記載がないため、問い合わせで確認する。
  • 最上位クラスの商用モデルが必要な用途:GPTやClaudeの最新モデルは提供されていない。提供されているのはオープンウェイトと国産モデルが中心。
  • 個人でクローズドモデルを使いたい場合:PLaMo 3.0 Primeやcotomiは法人アカウントだけが申請でき、審査は原則7営業日前後。不許可の理由は開示されない。
  • Claude Codeを業務の主力として使いたい場合:Messages APIの対応モデルはプレビュー1つだけで、前述のとおり26日前の告知で終了が決まった。普段使いの開発環境とは分けておく。

よくある質問

さくらのAI Engineは無料で使えますか?

使えます。基盤モデル無償プランなら、チャット補完は月3,000リクエスト、埋め込みは月10,000リクエストまで無料です。超えるとレート制御がかかり、翌月に枠がリセットされるまで制限が続きます。ただし、RAGのドキュメントは無償プランでも100チャンクごとに3円かかり、Weblab-MedLLMとクローズドモデルには無償枠がありません。

料金はいくらですか?

無償枠を超えた分は、gpt-oss-120bとllm-jp-3.1なら1万トークンあたり入力0.15円・出力0.75円(税込)です。文字起こしは60秒ごとに0.5円、音声合成は1万モーラごとに3円。支払いはクレジットカードのみです。専有型のプライベートエディションはGPU単位の月額定額で、金額は見積もりになります。

どのモデルが使えますか?

2026年10月25日時点の通常モデルは、gpt-oss-120b、llm-jp-3.1-8x13b-instruct4、whisper-large-v3-turbo、multilingual-e5-large、VOICEVOXの8音声です。プレビューにはKimi-K2.7-Code、Qwen3.6-35B-A3B、gemma-4-31B-it、Weblab-MedLLM-gpt-oss-120bなどがあり、Kimi-K2.6は11月9日に終了します。クローズドモデルはPLaMo 3.0 Primeとcotomi v3で、PLaMo 2.0-31Bは10月12日をもって提供を終えました。DeepSeek-V4.1-FlashとGLM-5.3-Flashは追加が予告されていますが、提供日は未定です。

マニュアルやAPI仕様はどこにありますか?

さくらのクラウドのマニュアル内のさくらのAI Engineの章に、サービス基本情報、利用手順、操作ガイド、クローズドモデルの利用方法が載っています。推論APIとRAG APIの仕様は、さくらのクラウドのAPIポータルでOpenAPI形式として公開されています。

入力したデータは学習に使われますか?

学習には使われません。公式サイトはZDR(Zero Data Retention)対応とし、よくある質問では入力データや応答内容は保存しないと答えています。一方、サービス約款第10条は、保守・障害対応のために入出力を暗号化して一定期間保存し、期間経過後に削除する場合があると定めています。RAG用にアップロードしたドキュメントは、削除するまでベクトルストアに保管されます。プライベートエディションも、入力データと生成結果をAI学習に使わないと発表されています。

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