さくらのクラウド「AppRun」とは?料金・共用型と専有型の違い・使い方を実務目線で解説

AppRunは、さくらインターネットが2025年12月9日に正式版を提供開始した、コンテナをサーバーレスで実行するアプリケーション基盤です。作成したコンテナイメージを登録するだけで公開URL付きのアプリとして動き、サーバーやOS、スケール調整といったインフラ運用を自分で持つ必要がありません。正式版では料金体系や提供形態がβ版から大きく変わり、用途の異なる「共用型」と「専有型」の2タイプに分かれました。この記事では、正式版を前提にAppRunの位置付け・料金・使い方・移行時の注意点を、公式情報の実数に沿って整理します。

まとめ:AppRun正式版の要点

  • AppRunはコンテナイメージをそのまま登録して動かすサーバーレス実行基盤。サーバー構築やスケール設定を持たずにアプリを公開できる。
  • 正式版は「共用型」(低コスト・同時リクエスト数でスケール・ゼロスケール可)と「専有型」(専有VM・CPU使用率でスケール・高信頼向け)の2タイプ。
  • 料金は従量課金。共用型は最小0.5vCPU/1GiBで約5円/時(約3,720円/月)、専有型は最小1vCPU/2GBで55円/時・11,000円/月から、料金表の最大構成は8コア/8GB。
  • 共用型はゼロスケールでアクセスが無い間の課金を止められる。ただし復帰時はコールドスタートの遅延(公式の秒数は非公表。第三者検証では体感で数秒程度)が発生する。
  • β版・CR版で作ったアプリは正式版移行時に削除され、公開URLも引き継げない。正式版では再デプロイが必要。

以下で、それぞれの意味と選び方を具体的な数値とともに見ていきます。

AppRunとは:コンテナをサーバーレスで動かすさくらの実行基盤

AppRunは、DockerなどでビルドしたコンテナイメージをさくらのクラウドのAppRunに登録すると、そのコンテナをHTTPでアクセスできるアプリとして起動してくれるサービスです。位置付けとしては、Google Cloud Runやかつてのマネージドコンテナ実行サービスと同系統の、国内クラウド上で使えるコンテナ実行基盤にあたります。

特徴は、稼働に必要なサーバー・OS・ロードバランサ・スケール制御を利用者が構築・保守しなくてよい点です。仮想サーバー(IaaS)にDockerを入れて自分で運用する場合と違い、AppRunでは「動かしたいコンテナ」と「必要なCPU/メモリ」「公開ポート」を指定すれば、あとはアクセス量に応じた起動・停止をプラットフォーム側が担います。コンテナやサーバーレスの前提知識は、コンテナ技術とは何か:仮想化との違いや基本概念を解説サーバーレスアーキテクチャとは?構成パターン・AWS実装・採用判断を実装者目線で解説で補えます。

共用型と専有型の違い:正式版で選ぶ2つの実行環境

正式版で最初に決めるのが、共用型と専有型のどちらで動かすかです。両者はホスト環境・スケールの効き方・向く用途が明確に分かれます。

項目 共用型 専有型
実行環境 複数ユーザーで共用 専有VM(他ユーザーと分離)
スケール基準 同時リクエスト数 CPU使用率
ゼロスケール 可(コスト最小化) 常時稼働の専有リソース中心
最小構成 0.5vCPU/1GiB 1vCPU/2GB
最小料金の目安 約5円/時・約3,720円/月 55円/時・11,000円/月
主な用途 開発・検証・小規模サービス 高信頼・セキュリティ要件の本番

共用型は他の利用者とホストを共有する代わりに単価が安く、アクセスが途切れればコンテナ数をゼロまで落として課金を止められます。開発・検証や、アクセスが読めない小規模サービスに向きます。専有型は他ユーザーのワークロードから分離された専有VMで動くため、企業・自治体のように信頼性やセキュリティの分離要件がある本番用途に向きます。

判断の起点はシンプルです。分離要件や安定した専有リソースが明確に必要でなければ、まず共用型で十分です。専有型はコストが一段上がるため、「共用環境が許容できない」「CPU使用率で安定的にスケールさせたい」という理由が言語化できてから選びます。

AppRunの料金体系:共用型・専有型の従量課金プラン

正式版は従量課金です。β版・CR版は正式リリースまで無料で提供されていましたが、正式版からは使った分だけ課金される有料サービスになりました。料金は選んだCPU/メモリのプランで決まります(いずれも税込の目安。最新は公式の料金ページで確認してください)。

共用型の料金プラン

vCPU メモリ 時間あたり
0.5コア 1GiB 約5円
1コア 1GiB 約8円
1コア 2GiB 約9円
2コア 2GiB 約17円
2コア 4GiB 約19円

最小構成の0.5vCPU/1GiBは、スケールアウトなしで動かし続けても約120円/日・約3,720円/月(31日換算)です。共用型は時間従量なので、ゼロスケールで停止している間は課金が発生しません。

専有型の料金プラン

vCPU メモリ 時間あたり 月額
1コア 2GB 55円 11,000円
2コア 2GB 84円 16,940円
4コア 4GB 165円 33,000円
8コア 8GB 320円 64,020円

専有型は、料金表に掲載されている最大構成が8コア/8GBです。専有VMを確保する形なので、共用型のように単価を数円まで下げることはできませんが、他ユーザーの負荷に左右されない安定した処理能力が得られます。冗長構成にする場合はロードバランサ2台の構成になります。

ゼロスケール時の課金と即応性の注意点

共用型のゼロスケールは、アクセスが無い間はコンテナ数を0まで縮小し、その時間の課金を止める仕組みです。したがって「アクセスが月に数回」といった低頻度用途では、稼働していない時間の料金はかかりません。ただし停止状態から最初のリクエストで起動し直す際にはコールドスタートの遅延が発生します(起動秒数は公式には非公表で、第三者の検証では体感数秒程度とされます)。常に即応が求められる用途では、最小インスタンスを1以上に保つか専有型を検討します。

他社のコンテナ実行サービスとの比較

AppRunは、Google Cloud RunやAWSのコンテナ実行系サービスと同じ「コンテナをそのままデプロイして従量課金で動かす」カテゴリーの国内クラウド版です。比較検討の際は、料金が円建てで為替の影響を受けない点と、国内リージョン・国内事業者のサポートを受けられる点が実務上の判断材料になります。なお同カテゴリーのAWS App Runnerは新規受付停止が発表されているため、移行先を探す文脈でも国産のAppRunは候補に挙がります(詳細はAWS App Runnerは終了する?2026年の新規受付停止・メンテナンスモード移行と移行先を解説)。

AppRunの主な機能

AppRunは、コンテナを動かすだけでなく運用に必要な機能を一通り備えています。過剰な設定項目を持たない分、少ない手数で本番運用に乗せられるのが設計思想です。

  • 自動スケール/ゼロスケール:負荷に応じてコンテナ数を増減。共用型は同時リクエスト数、専有型はCPU使用率が基準。
  • リビジョン管理:デプロイ履歴を残し、不具合時に以前のバージョンへ切り戻せる。
  • トラフィック分散:複数バージョンへ割合を指定してトラフィックを振り分けられるため、新バージョンへ段階的に切り替えるカナリアデプロイが可能。
  • ログ:標準出力・エラー出力を自動で記録し、さくらのクラウドのモニタリングスイート(ログストレージ)と連携して収集できる。
  • コンテナレジストリ:さくらのクラウド上にプライベートなイメージ置き場を作り、AppRunのデプロイ元にできる。

AppRunの使い方:レジストリ作成からデプロイまで

コンテナイメージがあれば、デプロイは大きく2段階です。GitHub Container Registryなど外部レジストリの考え方はGitHub Container Registry(ghcr.io)の料金とは|無料枠・課金条件とDocker Hub/ECR比較【2026年版】も参考になります。

コンテナレジストリを作成してイメージを登録する

さくらのクラウドのコントロールパネルでコンテナレジストリを新規作成し、その中にプッシュ用のユーザーを作って認証情報を取得します。あとはローカルでビルドしたイメージにレジストリのホスト名を含むタグを付け、そのホスト名でログインしてプッシュします(下のコマンドのプレースホルダはレジストリのホスト名に置き換えます)。イメージのビルドやDockerそのものはDockerの標準手順どおりで、仕組みはDockerの仕組みを原理から理解する|コンテナ隔離・アーキテクチャ・VMとの違いで確認できます。

docker tag myapp:latest <レジストリ名>/myapp:latest
docker login <レジストリ名>
docker push <レジストリ名>/myapp:latest

アプリを作成してデプロイする

コントロールパネルからAppRunアプリを新規作成し、共用型か専有型を選びます。登録済みのコンテナイメージを指定し、コンテナが待ち受けるポート番号、CPU/メモリのプラン、最小・最大スケール数(ゼロスケールにするなら最小0)、必要な環境変数を設定します。作成するとアプリが起動し、発行された公開URLへアクセスして動作を確認できます。イメージを更新して再デプロイするとリビジョンが増え、切り戻しやトラフィック分散の対象になります。

β版・CR版から正式版へ移行するときの注意点

β版・CR版を使っていた場合、正式版は既存環境の延長ではなく作り直しになります。移行前に次の点を押さえておきます。

  • アプリは削除される:β/CR版で作成したアプリは正式版移行時にすべて削除される。正式版で作り直す前提で計画する。
  • 公開URLは引き継げない:正式版では従来の公開URLをそのまま使えない。URLを外部に共有・登録している場合は差し替えが必要。
  • レジストリのイメージは再利用可:コンテナレジストリに登録済みのイメージは削除されず、正式版でもそのままデプロイ元に使える。
  • 無料から従量課金へ:β/CR版は無料だが正式版は課金対象。稼働させ続ける構成のコストを事前に試算しておく。
  • 再デプロイはIaC化しておくと安全:作り直しが前提になるため、デプロイ手順をコード化しておくと移行と再現がスムーズになる。

AppRunが向くケース・向かないケース

AppRunは万能ではなく、ゼロスケールと従量課金が効く使い方でこそ価値が出ます。

向くケース:問い合わせフォームのように呼び出しが散発的な低頻度API、学園祭やキャンペーンといった期間限定サイト、試作・スタートアップの小規模Webアプリ、独立してデプロイ・スケールさせたいマイクロサービス。いずれもアクセスの波が大きく、常時フル稼働ではない用途です。

向かないケース:アクセスが常に高く稼働率がほぼ100%になる用途では、ゼロスケールの節約効果が働かず、同等スペックの仮想サーバーを常時起動したほうが安くなることがあります。また、コールドスタートの数秒すら許容できない厳格な低レイテンシ要件や、共用環境が規程上認められない分離要件のある案件では、共用型は避け専有型または別構成を選びます。

よくある質問

さくらのAppRunとAWS App Runnerは同じサービスですか?

別のサービスです。この記事のAppRunはさくらインターネットが提供する国産のコンテナ実行基盤で、AWSのApp Runnerとは提供事業者もクラウドも異なります。名前が似ているため検索で混同されやすい点に注意してください。

さくらのAppRunの料金はいくらですか?

従量課金で、選ぶプランによります。共用型は最小0.5vCPU/1GiBで約5円/時(約3,720円/月)から、専有型は最小1vCPU/2GBで55円/時・11,000円/月から、料金表の最大構成は8コア/8GBです。最新の金額は公式の料金ページで確認してください。

ゼロスケールなら本当に料金は0円になりますか?

共用型はアクセスが無くコンテナ数が0の時間は課金されません。ただし停止からの復帰時にコールドスタートの遅延が生じるため、即応が必要な用途では最小インスタンスを保つ運用も検討します。

共用型と専有型はどちらを選べばよいですか?

分離要件や安定した専有リソースが明確に必要でなければ、まずは低コストの共用型が基本です。企業・自治体などで他ユーザーと環境を分離したい、CPU使用率ベースで安定的にスケールさせたい場合に専有型を選びます。

β版で作ったアプリは正式版でそのまま使えますか?

アプリ自体は正式版移行時に削除され、公開URLも引き継げないため再デプロイが必要です。ただしコンテナレジストリに登録済みのイメージは残るので、そのイメージから作り直せます。

関連記事

資料請求

RELATED POSTS 関連記事