Cortex AI(コーテックス エーアイ)は、Snowflake に保存したデータへ SQL や Python から直接 LLM をかけられる機能群の総称です。Cortex はラテン語で「樹皮・外皮」、英語では「大脳皮質」を指す語で、IT 分野で「Cortex AI」と言えば多くは Snowflake のこの機能を指します。この記事では、構成要素の役割分担、AIクレジットの料金、日本の AWS アカウントで使えるモデル、モデルの廃止日程と権限の落とし穴を、2026年10月17日時点の公式ドキュメントと料金表(Service Consumption Table、2026年10月15日版)に沿って説明します。
まとめ
- Cortex AIとは:Snowflake のセキュリティ境界の中で LLM を動かす機能群です。データを外部の LLM API へ持ち出さずに、SELECT 文の中で生成・分類・翻訳ができます。
- 中心はAI関数:
AI_COMPLETE・AI_CLASSIFY・AI_FILTERなどを行単位に呼び出します。対話アプリは Cortex Analyst と Cortex Search を道具として束ねる Cortex Agents で作ります。 - 料金:主要機能は AIクレジット建てで、オンデマンド単価は Global 2.00ドル/Regional 2.20ドル。
AWS_JPを使用するアカウントには Regional 単価が適用されます。倉庫の稼働費は別にかかります。 - 日本リージョン:AWS 東京・大阪の既存アカウントは、値を設定していなければ2026年9月から既定が
AWS_JPになりました(金融・医療・政府系のアカウントと、2026年3月9日より後に新しい組織で作ったアカウントは別扱い)。AWS_JPのままではclaude-sonnet-5・claude-opus-5・OpenAI のモデルは使えず、使えるのは Claude Sonnet 4.6/4.5・Haiku 4.5、Llama、Qwen3 系などです。 - モデルの寿命:一般提供(GA)のモデルの廃止は、原則60日以上前に告知されます。
claude-4-sonnetは2026年10月14日に提供終了(EOL)しました。使えるモデルはSHOW CORTEX BASE MODELSで確かめます。 - 日本語:
AI_SENTIMENTの対応言語に日本語はなく、AI_CLASSIFY・AI_FILTERは英語の入力を推奨しています。日本語の文章はAI_COMPLETEで処理するか、先にAI_TRANSLATEで英訳します。
Snowflake Cortex AIの定義とデータの扱い
公式ドキュメント「Snowflake AI and ML」は、Snowflake Cortex を LLM で非構造化データを理解し、自由形式の質問に答える AI 機能のスイートと位置づけています。製品ページやイベントでは「Cortex AI」と呼ばれますが、指しているものは同じです。
同じページは、利用者が自ら選んだ場合を除いてすべてのモデルが Snowflake のセキュリティ境界の中で動き、データが他の顧客やモデル開発元から見えることはないと説明しています。一方で、出力が不正確・偏りを含む可能性があるため、自動パイプラインに組み込む場合も人の確認を挟むよう求めています。分類結果をそのまま顧客対応や与信に流す設計は避けるべきです。
需要予測・異常検知の ML 関数(FORECAST など)は、公式の分類では Cortex ではなく「Snowflake ML」側の機能です。SQL だけで予測したい場合は Snowflake AutoMLとは|ML関数で予測・異常検知・分類をSQLだけで実装 を参照してください。
Cortexの読み方・意味と同名の別製品
Cortex は英語の発音(/ˈkɔːr.teks/)に近い「コーテックス」と読むのが一般的で、ローマ字読みの「コルテックス」も使われます。語源はラテン語の cortex(樹皮・外皮)で、英語では大脳皮質(cerebral cortex)を指す医学用語として定着しています。
IT 製品にも Cortex を名乗るものが複数あり、検索結果で混同しやすい組み合わせは次のとおりです。
| 名称 | 提供元 | 分野 |
|---|---|---|
| Snowflake Cortex(Cortex AI) | Snowflake | データ基盤上のLLM機能 |
| Arm Cortex-A/M/R | Arm | CPUコアの製品名 |
| Cortex XDR など | Palo Alto Networks | セキュリティ製品群 |
| Razer Cortex | Razer | PCゲーム向け最適化アプリ |
| TextCortex | TextCortex | 企業向けAIエージェント基盤 |
CPU の Arm Cortex の世代は ARMアーキテクチャとは?x86との違い・Armv9の世代とarm64移行の確認手順 で扱っています。
Cortex AIの構成要素と役割分担
公式の一覧に載っている Cortex の機能を、呼び出す主体で分けると次のとおりです。
| 機能 | 役割 | 主な利用者 | 呼び出し方 |
|---|---|---|---|
| AI関数(Cortex AI Functions) | 行単位の生成・分類・抽出・翻訳 | SQLを書く人 | SQL関数・Python |
| Cortex Analyst | 自然言語からSQLを生成 | アプリ開発者 | REST API |
| Cortex Search | ハイブリッド検索・RAGの検索層 | アプリ開発者 | 検索サービス+API |
| Cortex Agents | AnalystとCortex Searchを束ねる | アプリ開発者 | AGENTオブジェクト・REST |
| Snowflake CoWork | 業務ユーザー向けの対話アプリ | 業務ユーザー | Snowsight画面 |
| Snowflake CoCo | データ作業用のコーディングエージェント | データエンジニア | Snowsight・CLI |
| Cortex Fine-tuning | モデルの追加学習 | MLエンジニア | FINETUNE関数 |
| Cortex AI Guardrails | プロンプトインジェクション対策 | 管理者 | AI_SETTINGSパラメータ |
Snowflake CoWork は旧称「Snowflake Intelligence」、Snowflake CoCo は旧称「Cortex Code」です。CoCo の権限と課金は Snowflake CoCoとは?旧Cortex Codeからの改称・権限境界・課金の二重経路を実装目線で解説、エージェントの実装は Snowflake Cortex Agentsとは?CREATE AGENT・REST API・権限設定の実装手順、検索サービスは Snowflake Cortex Searchとは?作成SQL・検索API・料金とCORTEX_SEARCH_BATCHの使い分け で扱っています。Fine-tuning の学習ジョブを実行できるのは米欧の4リージョンだけで、東京のアカウントでは学習ジョブを動かせません。
Cortex Analyst:セマンティックビューとCortex Agentsへの移行
Cortex Analyst は、自然言語の質問を SQL に変換する API です。返るのは SQL 文と解釈の説明で、実行は呼び出し側が行います。精度の源泉は、テーブルの業務上の意味(ディメンション・ファクト・メトリクス・関係)を定義したセマンティックビューです。公式は、前回の SQL の実行結果を参照できない(「一覧の2番目の売上は?」に答えられない)ことを既知の制限に挙げています。
2026年8月28日からは、Cortex Agents 経由での利用が推奨されています。Cortex Analyst の公式ページによると、Agents は Analyst の全機能をより高い回答品質で提供するためで、セマンティックビューはそのまま引き継げます。単体の API は1,000メッセージあたり67 Platformクレジットで、課金されるのは HTTP 200 で返った応答だけです。Analyst だけを使わせたいロールには SNOWFLAKE.CORTEX_ANALYST_USER を付けます。AWS 東京(ap-northeast-1)はネイティブ提供のリージョンに入っています。
AI関数の一覧とSQLでの呼び出し例
用途別の主なAI関数
AI 関数はスループット重視のバッチ処理向けです。公式は、テーブルの大量行を処理する用途に向き、応答の速さが重要な対話用途には REST API(Complete API・Embed API・Agents API)を使うよう案内しています。
| 関数 | 用途 | 課金対象 |
|---|---|---|
| AI_COMPLETE | モデルを指定した汎用の生成 | 入力+出力トークン |
| AI_CLASSIFY / AI_FILTER | ラベル分類・TRUE/FALSE判定 | トークン |
| AI_AGG / AI_SUMMARIZE_AGG | 複数行をまとめて集約・要約 | トークン |
| AI_SUMMARIZE | テキスト・画像・文書の要約(プレビュー) | トークン |
| AI_SENTIMENT | 感情分析(観点別も可) | トークン |
| AI_TRANSLATE | 翻訳 | トークン |
| AI_EXTRACT / AI_PARSE_DOCUMENT | 文書からの項目抽出・OCR | トークン・ページ |
| AI_EMBED / AI_SIMILARITY | 埋め込みベクトル・類似度 | 入力トークン |
| AI_MULTI_EMBED | 画像・音声・動画の埋め込み | 動画・音声の秒数など |
| AI_REDACT | 個人情報のマスキング | トークン |
| AI_TRANSCRIBE | 音声・動画の文字起こし | トークン |
AI_AGG と AI_SUMMARIZE_AGG は、集約する行の合計がモデルのコンテキスト長を超えても処理できるため、数千件の問い合わせから傾向を出す用途に向きます。AI_MULTI_EMBED のモデルは twelvelabs-marengo-embed-3-0 だけで、ネイティブ提供は AWS バージニア北部のみです(東京からはクロスリージョン推論が必要)。補助関数の AI_COUNT_TOKENS は全リージョンで使え、モデルの上限を超えないか事前に確かめられます。文書処理の2関数は Snowflake AI_PARSE_DOCUMENTとAI_EXTRACTの使い方|日本語の対応範囲・上限・料金【2026年9月】 で詳しく扱っています。
AI_COMPLETE・AI_CLASSIFY・AI_FILTERのSQL例
次の例は、問い合わせ本文を持つ support_tickets(列 ticket_id・body)と、英語のレビューを持つ reviews_en(列 review_id・review_en)という架空のテーブルを前提にしています。AI_COMPLETE は第1引数にモデル名、第2引数にプロンプトを取ります。AI_FILTER は WHERE 句にそのまま書けるので、「返金を求めるレビューだけ」のような絞り込みを SQL で表現できます。
-- 問い合わせ本文を日本語で1文に要約する
SELECT ticket_id,
AI_COMPLETE('claude-sonnet-4-6',
CONCAT('次の問い合わせを日本語1文で要約してください: ', body)) AS summary
FROM support_tickets
LIMIT 100;
-- 英語のレビューを指定ラベルに分類する(戻り値は {"labels": [...]} 形式)
SELECT review_id,
AI_CLASSIFY(review_en, ['shipping', 'quality', 'price']):labels AS labels
FROM reviews_en;
-- 条件に合う行だけを残す
SELECT *
FROM reviews_en
WHERE AI_FILTER(CONCAT('The reviewer is asking for a refund: ', review_en));
処理できない入力があっても、既定ではその行が NULL になるだけでクエリ全体は止まりません。失敗の理由を知りたい場合は最後の引数に return_error_details を TRUE で渡すと、値とエラーメッセージを含む OBJECT が返ります。本番では失敗行を数える集計も入れておきます。
日本語データで使うときの関数ごとの制約
関数リファレンスには、日本語の文章をそのまま渡すと想定外の結果になりうる記述があります。
| 関数 | 公式の記述 | 日本語データでの扱い |
|---|---|---|
| AI_SENTIMENT | 英・仏・独・ヒンディー・伊・西・葡の7言語 | 対応言語外 |
| AI_CLASSIFY | 入力とラベルは英語の平文を推奨 | 英訳してから渡す |
| AI_FILTER | 入力は英語の平文を推奨 | 英訳してから渡す |
| AI_AGG | 指示文は平易な英語で | 指示だけ英語にする |
| AI_TRANSLATE | 対応言語に日本語(’ja’)あり | そのまま使える |
| AI_EXTRACT | 日本語を含む29言語 | そのまま使える |
| AI_PARSE_DOCUMENT | 公式の対応言語一覧に日本語なし | 精度を事前に検証する |
日本語の問い合わせを感情分析・分類したいときの選択肢は二つです。一つは AI_COMPLETE で Claude などの多言語モデルを指定し、ラベルをプロンプトで指示する方法。もう一つは AI_TRANSLATE(body, 'ja', 'en') で英訳してから AI_CLASSIFY や AI_SENTIMENT に渡す方法で、翻訳のトークン分だけ費用が上乗せされます。どちらが安く正確かはモデルとプロンプトの長さで変わるため、100件程度の検証データで正解率と消費クレジットを比べてから決めてください。
日本リージョン(東京・大阪)で使えるモデルとクロスリージョン推論
既定のAWS_JPで使えるモデル
東京リージョン単体でネイティブに提供されている AI_COMPLETE のモデルは、llama3.1-8b と、レガシー扱いの llama3.1-70b・mistral-large2・mixtral-8x7b・mistral-7b だけです。Claude などは、別リージョンへ推論を回す「クロスリージョン推論」で使います。回す範囲はアカウント単位のパラメータ CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION で決まります。既定値はアカウントの作られ方と業種で変わります。
- AWS 東京・大阪の既存アカウント:動作変更 BCR-2376(2026_06 バンドル、2026年9月の10.32リリースから既定で有効)により、値を設定していなければ
AWS_JP(東京・大阪のみ)が入ります。適用は週ごとの一括処理です。 - 対象外のアカウント:金融・医療・政府系の業種のアカウント、すでに値を明示したアカウント、Azure 東日本のアカウントは変わりません。値が未設定または
DISABLEDのままならクロスリージョン推論は使えず、使えるのはホームリージョン(東京なら上の「東京のみ」列)にネイティブ提供されるモデルだけです。 - 2026年3月9日より後に新しい組織で作った商用アカウント:既定が
ANY_REGIONで、推論が国外で処理されることがあります。
| モデル | 東京のみ | AWS_JP(既定) | AWS_APJ | ANY_REGION |
|---|---|---|---|---|
| claude-opus-5 | - | - | - | ○ |
| claude-opus-5-5 | - | プレビュー | プレビュー | プレビュー |
| claude-sonnet-5 | - | - | ○ | ○ |
| claude-sonnet-4-6 | - | ○ | ○ | ○ |
| claude-haiku-4-5 | - | ○ | ○ | ○ |
| qwen3-32b など Qwen3 系3種 | - | ○ | - | ○ |
| mistral-large3 | - | プレビュー | プレビュー | プレビュー |
| openai-gpt-5.4 | - | - | - | ○ |
| llama3.3-70b | - | ○ | ○ | ○ |
| llama3.1-8b | ○ | ○ | ○ | ○ |
出典は公式の「Models and regional availability for Cortex AI Functions」の東京列と各クロスリージョン列(2026年10月17日取得)です。AWS_JP で一般提供の Claude は Sonnet 4.6・Sonnet 4.5・Haiku 4.5 までで、Sonnet 5 には AWS_APJ などを、Opus 5 には米国か EU の AWS リージョンを含む値を、OpenAI のモデルには ANY_REGION か Azure 米国(AZURE_US)を設定します。Qwen3 系(qwen3-32b・qwen3-next-80b-a3b・qwen3-vl-235b-a22b)は AWS_JP では使えますが AWS_APJ には含まれず、料金表では Preview の注記が付いています。
CORTEX_ENABLED_CROSS_REGIONの確認と、使えるモデルの一覧
設定は ACCOUNTADMIN ロールだけが変更でき、アカウント全体に効きます。現在のロールにモデルアクセス権があるモデルと、そのライフサイクル・地域別提供状況は、SHOW CORTEX BASE MODELS で一覧できます。lifecycle_status(GA・PUPR・PRPR・LEGACY・EOL)、legacy_date・eol_date、届くクロスリージョンの値(cross_region_availability)が列として返り、倉庫を起動せずに実行できます。ただし一覧に出ても、クロスリージョンの設定によっては呼び出せないことがあります。
-- 現在効いている値を確認する(value列)
SHOW PARAMETERS LIKE 'CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION' IN ACCOUNT;
-- 自分のロールで使えるモデルと寿命の状態(IN SCHEMA を省くと0行になることがある)
SHOW CORTEX BASE MODELS LIKE '%claude%' IN SCHEMA SNOWFLAKE.MODELS;
-- 範囲を広げる場合はどちらか一方だけを実行する(後から実行した値で上書きされる)
ALTER ACCOUNT SET CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION = 'AWS_APJ';
ALTER ACCOUNT SET CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION = 'ANY_REGION';
クロスリージョン推論では、保存データは自リージョンに残り、処理先へはプロンプトと応答だけが一時的に送られます。処理先に顧客データは保存されず、データ転送(egress)料金もかかりません。同じクラウド内なら通信は事業者のバックボーン網に閉じ、AWS から Azure のようにクラウドをまたぐ場合は mTLS で暗号化してインターネットを経由します。社内規程が「国外で処理しない」なら AWS_JP のまま使えるモデルで設計し、「国外処理は可だがインターネット経由は不可」なら AWS_GLOBAL を選びます。
Cortex AIの料金:AIクレジットとトークン単価
AIクレジットの単価とモデル別の料金
AI 関数・Cortex Search・Cortex Agents・CoWork・CoCo などの主要機能は、倉庫の稼働に使う通常のクレジット(Platform Credits)とは別の「AIクレジット」で課金されます。例外は単体の Cortex Analyst API と Fine-tuning の学習で、公式の料金ページでは Platform Credits 扱いです。Service Consumption Table(2026年10月15日版)のオンデマンド単価は、1 AIクレジットあたり Global 2.00ドル、Regional 2.20ドルです。Global が適用されるのは CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION が ANY_REGION・AWS_GLOBAL などのグローバル値のときで、AWS_JP や DISABLED では Regional 単価になります。
| 項目 | 入力 | 出力 | 単位 |
|---|---|---|---|
| AI_COMPLETE – claude-sonnet-5 | 1.20 | 6.00 | AIクレジット/100万トークン |
| AI_COMPLETE – claude-sonnet-4-6 | 1.80 | 9.00 | AIクレジット/100万トークン |
| AI_COMPLETE – claude-haiku-4-5 | 0.60 | 3.00 | AIクレジット/100万トークン |
| AI_COMPLETE – qwen3-32b | 0.09 | 0.36 | AIクレジット/100万トークン |
| AI_COMPLETE – llama3.3-70b | 0.432 | 0.432 | AIクレジット/100万トークン |
| AI_CLASSIFY | 1.62 | AIクレジット/100万トークン | |
| AI_TRANSLATE | 1.63 | AIクレジット/100万トークン | |
| Cortex Search(配信費のみ) | 6.3 | AIクレジット/GB・月(索引データ) | |
| Cortex Analyst(単体API) | 67 | Platformクレジット/1,000メッセージ | |
試算すると、10万件の問い合わせを claude-haiku-4-5 で要約し、1件あたり入力300トークン・出力100トークンだった場合、入力3,000万トークンで18クレジット、出力1,000万トークンで30クレジット、合計48 AIクレジットです。AWS_JP の Regional 単価なら 48×2.20=105.60ドルです。同じ処理を qwen3-32b にすると 2.7+3.6=6.3クレジット(13.86ドル)まで下がりますが、日本語の要約品質は検証してから選んでください。いずれも倉庫の稼働費が別に乗ります。なお2026年9月29日から、同じクエリ内で同一の AI_COMPLETE(テキスト)呼び出しが繰り返される場合、ベストエフォートで結果がキャッシュされ、キャッシュヒット分は課金されません。
見積もりを外しやすい点は二つです。AI_CLASSIFY や AI_SENTIMENT などは内部で指示文を足すため、課金トークンは渡した文章より多くなります。また、公式は AI 関数を呼ぶ倉庫を MEDIUM 以下にするよう推奨しており、大きくしても速くならず費用だけ増えます。
利用履歴ビューによるAIクレジット消費の監視
AI 関数の消費は SNOWFLAKE.ACCOUNT_USAGE.CORTEX_AI_FUNCTIONS_USAGE_HISTORY で追います。コスト管理のページによると遅延は最大5分(早ければ2分)で、実行中のクエリの消費も見えるため、暴走したバッチを早く止められます。データは2026年1月5日以降、ユーザーとロールの列は2026年2月16日以降の分だけが入ります。旧ビューの CORTEX_FUNCTIONS_USAGE_HISTORY は更新が止まっているので、古い記事の SQL をそのまま使わないでください。
-- 直近30日の消費を日・関数・モデル別に集計する
SELECT DATE_TRUNC('day', START_TIME) AS usage_date,
FUNCTION_NAME,
MODEL_NAME,
SUM(CREDITS) AS total_credits,
COUNT(DISTINCT QUERY_ID) AS query_count
FROM SNOWFLAKE.ACCOUNT_USAGE.CORTEX_AI_FUNCTIONS_USAGE_HISTORY
WHERE START_TIME >= DATEADD('day', -30, CURRENT_TIMESTAMP())
GROUP BY 1, 2, 3
ORDER BY usage_date DESC, total_credits DESC;
同じページには、月の消費がしきい値を超えたら通知するアラートと、ユーザーごとの月間上限を超えたらロールを外すタスクの例も載っています。費用が読めないうちは、本番より先に監視を入れてください。
権限設計:USE AI FUNCTIONSとCORTEX_USER、モデル単位のRBAC
公式の「Privileges and model access for Cortex AI Functions」によると、AI 関数を呼ぶには、アカウントレベルの権限 USE AI FUNCTIONS(または関数単位の USE AI FUNCTION <関数名>)と、データベースロール SNOWFLAKE.CORTEX_USER か AI_FUNCTIONS_USER の両方が必要です。USE AI FUNCTIONS も CORTEX_USER も既定で PUBLIC ロールに付与されているため、何も設定しなければアカウントの全ユーザーが AI 関数を実行でき、費用も発生させられます。
使えるモデルは、モデル単位の RBAC で絞ります。SNOWFLAKE.MODELS スキーマにモデルを表すオブジェクトと、それに対応するアプリケーションロール(CORTEX-MODEL-ROLE-<モデル名>)が毎日自動で作られます。注意すべきなのは、全モデルを許す CORTEX-MODEL-ROLE-ALL が SNOWFLAKE.PUBLIC 経由で全ユーザーに既定付与されるアカウントがある点です。対象は、旧許可リストが All のアカウント(既定が All の新規アカウントを含む)です。この既定付与は、素の REVOKE ... FROM ROLE PUBLIC では外れず、専用のプロシージャで外す必要があります。
USE ROLE ACCOUNTADMIN;
-- 全員への付与を外し、専用ロールにだけ渡す
REVOKE USE AI FUNCTIONS ON ACCOUNT FROM ROLE PUBLIC;
CREATE ROLE cortex_user_role;
GRANT USE AI FUNCTIONS ON ACCOUNT TO ROLE cortex_user_role;
GRANT DATABASE ROLE SNOWFLAKE.CORTEX_USER TO ROLE cortex_user_role;
-- 旧許可リストによるアクセスを無効化する
ALTER ACCOUNT SET CORTEX_MODELS_ALLOWLIST = 'None';
-- 全モデルの既定付与を外し、使わせるモデルだけを付ける(ロール名は SHOW APPLICATION ROLES で確認)
SHOW APPLICATION ROLES LIKE 'CORTEX-MODEL%' IN APPLICATION SNOWFLAKE;
CALL SNOWFLAKE.LOCAL.REVOKE_FROM_PUBLIC_APPLICATION_ROLE('APP_ROLE', 'CORTEX-MODEL-ROLE-ALL');
GRANT APPLICATION ROLE SNOWFLAKE."CORTEX-MODEL-ROLE-CLAUDE-HAIKU-4-5" TO ROLE cortex_user_role;
-- example_user は付与先の既存ユーザー名に置き換える
GRANT ROLE cortex_user_role TO USER example_user;
包括権限と関数単位の権限は OR の関係で、USE AI FUNCTIONS を持つロールは関数単位の付与・剥奪にかかわらず全関数を呼べます。権限を確かめるときは、ACCOUNTADMIN を二次ロールに持っているとすべて使えるように見えるため、USE SECONDARY ROLES NONE; で外してから試します。旧来のアカウント全体の許可リスト CORTEX_MODELS_ALLOWLIST は、2026年8月5日から 'None' 以外へ変更できなくなりました。BCR-2378 の予定では、認可は段階的にモデル RBAC だけに切り替わり(埋め込みモデルと Cortex Search も対象)、2026年11月18日に完全に廃止されます(日付は変更されうると注記あり)。
モデルの廃止サイクルと2026年の移行
Legacy・EOLの仕組みと告知期間
公式の「Model Update and Behavior Change Policy」では、Cortex のモデルは Private Preview → Public Preview → GA → Legacy → End of Life(EOL)の順に進みます。GA のモデルを廃止するときは少なくとも60日前の告知に合理的な努力を払うとされ、プレビューのモデルは告知期間の保証がありません。Legacy になったモデルは、その日より前にアカウントで使った実績があれば EOL まで使え、実績がなければ新しく使い始められません。EOL を過ぎると、どのアカウントでもモデル名を指定した呼び出しが失敗します。
2026年8月の廃止告知「Cortex model deprecations for August 2026」では、ファインチューニング版を含む16のモデルが2026年8月12日に Legacy になりました。主な EOL 日は次のとおりです。
| モデル | Legacy | EOL |
|---|---|---|
| claude-4-sonnet | 2026-08-12 | 2026-10-14(終了済み) |
| openai-gpt-4.1 | 2026-08-12 | 2027-04-14(延長後) |
| llama3.1-70b・mistral-large2 など | 2026-08-12 | 2026年末より前にはならない |
2025年に書かれた解説記事やサンプルコードには claude-4-sonnet を使う例が多く、そのままでは動きません。AI_CLASSIFY・AI_FILTER・AI_AGG のようにモデルを指定しない関数は、この廃止の影響を受けません。本番のパイプラインでモデル名を固定している場合は、月に1回 SHOW CORTEX BASE MODELS の lifecycle_status を確かめ、LEGACY になったら移行を始める運用にしておくと、移行の着手遅れを減らせます。ただし、60日前の告知は保証ではなく、プレビューモデルでは短い告知期間も想定する必要があります。
Document AI・旧Cortex関数・Analystの移行と製品名変更
- Document AI:UI と
!PREDICTメソッドが2026年3月16日に廃止され、文書からの抽出はAI_EXTRACTへ移行しました(経緯は Snowflake Document AIは2026年3月16日に廃止|AI_EXTRACTへの移行と現在の文書処理)。 - SNOWFLAKE.CORTEX スキーマの旧関数:
SNOWFLAKE.CORTEX.COMPLETEのリファレンスには “This legacy function will be deprecated by the end of 2026.”(2026年末までに非推奨化)とあり、AI_COMPLETEなどAI_で始まる関数への置き換えが前提です。残っている呼び出しはQUERY_HISTORYの QUERY_TEXT を検索すれば洗い出せます。 - 単体の Cortex Analyst:2026年8月28日に Cortex Agents への移行が推奨されました。REST API は引き続き使えます。
- 名称変更:Snowflake Intelligence は Snowflake CoWork に、Cortex Code は Snowflake CoCo になりました。
Cortex AIが向く場面・向かない場面
Cortex AI が最も効くのは、分析対象のデータがすでに Snowflake にあり、数万〜数百万行に同じ処理をかけたい場合です。外部の LLM API で必要になるデータの持ち出し審査・API キー管理・結果の書き戻しが要らず、ロールと監査ログも既存の Snowflake の仕組みにそろいます。生成 AI を業務にどう組み込むかの設計から相談したい場合は、生成AI導入支援も用意しています。
逆に、次の条件に当てはまるなら、Cortex AI 以外の手段も含めて先に検討してください。
- 国内処理が必須で最新モデルも必要:
AWS_JPでは Claude Sonnet 5・Opus 5 や OpenAI のモデルが使えません。規程とモデル要件が両立しない場合は、どちらを優先するかを先に決めます。 - データが Snowflake の外にある:AI を使うためだけに Snowflake へ移すと、保存と取り込みの費用が上乗せされます。BigQuery など他の基盤との違いは BigQueryとSnowflakeの比較:課金モデルの構造差と同時実行で決める選定基準 を参照してください。
- 日本語テキストの感情分析・分類が主目的:
AI_SENTIMENTは日本語が対応言語外です。前述の2つの方法の精度と費用を、日本語向けの既存ツールと比べてから採用を決めます。
よくある質問
Snowflake CortexとCortex AIは別の製品ですか?
同じものです。公式ドキュメントは「Snowflake Cortex」、製品ページやイベントは「Snowflake Cortex AI」と表記しており、AI 関数・Cortex Analyst・Cortex Search・Cortex Agents などを含む機能群全体を指します。
Cortex AIに入力したデータはモデルの学習に使われますか?
Snowflake が顧客全体に提供するモデルの学習には使われません。公式ドキュメントには “Snowflake never uses your Customer Data to train models made available to our customer base.” と明記されています。クロスリージョン推論を有効にした場合も、処理先にデータは保存されません。
Cortex AgentsとSnowflake CoWorkはどう違いますか?
Cortex Agents は、開発者が AGENT オブジェクトや REST API で自社アプリに組み込む部品です。Snowflake CoWork は、その上に作られた業務ユーザー向けの対話アプリで、Snowsight から使います。自社アプリに組み込むなら Agents、社内の分析窓口をすぐ用意したいなら CoWork が出発点です。
AI_COMPLETEではどのモデルから試せばよいですか?
公式は、迷ったら最も高性能なモデル(claude-opus-5 と gemini-3.1-pro)で基準となる品質を測り、そこから小さなモデルへ下げて費用対効果を比べる手順を勧めています。ただし AWS_JP のアカウントではどちらも使えないため、その設定のまま試すなら claude-sonnet-4-6 を基準にし、claude-haiku-4-5 や Qwen3 系と比べるのが現実的です。
Cortex AI Guardrailsを使うには何が必要ですか?
政府向け・VPS・Sovereignを除く商用アカウントの Enterprise Edition 以上で、CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION が ANY_REGION・AWS_JP・AWS_APJ などに設定されている必要があります(DISABLED では使えません)。ACCOUNTADMIN が AI_SETTINGS パラメータで有効にすると、CoCo・CoWork・Cortex Agents へのプロンプトインジェクションと脱獄の試みを実行時に検知します。料金表での単価は100万トークンあたり0.35 AIクレジットです。Guardrails が属する Horizon Catalog は Snowflake Horizon Catalogとは?機能と設定SQLを解説 で扱っています。
関連記事
- Snowflake Cortex Agentsとは?CREATE AGENT・REST API・権限設定の実装手順
- Snowflake Cortex Searchとは?作成SQL・検索API・料金とCORTEX_SEARCH_BATCHの使い分け
- Snowflake AI_PARSE_DOCUMENTとAI_EXTRACTの使い方|日本語の対応範囲・上限・料金【2026年9月】
- Snowflake CoCoとは?旧Cortex Codeからの改称・権限境界・課金の二重経路を実装目線で解説
- Snowflake Document AIは2026年3月16日に廃止|AI_EXTRACTへの移行と現在の文書処理