Grafana 12とは?最新版13との違い・v11からの変更点とバージョン確認方法
Grafana 12は2025年5月5日にリリースされたメジャーバージョンで、ダッシュボードをGitで管理するGit Syncや、パネル配置を動的に組み替えるDynamic Dashboardsが初めて載った版です。ただし2026年7月現在、最新版はすでにGrafana 13(v13.1.0、2026年7月1日)へ移り、12系のうち12.0・12.1・12.2はセキュリティ修正の提供が終わっています。この記事では、Grafana 12で実際に何が入ったのか、v11から何が壊れる変更だったのか、そしてv13が出た今この版をどう扱うべきかを、公式ドキュメントとリリース履歴だけを根拠に整理します。
まとめ:Grafana 12の位置づけと現在取るべき判断
Grafana 12.0.0のGAは2025年5月5日。目玉はObservability as Code(Git Sync)とDynamic Dashboardsですが、この2つは12ではexperimental段階に留まり、正式版になったのは2026年4月のGrafana 13です。v11からv12へ上げる際の最大の非互換はAngularプラグインサポートの完全削除で、angular_support_enabledという設定オプションごと消えました。
運用判断は単純です。12系に留まるなら12.4系一択で、それ以外の12系はすでにパッチが止まっています。12.0は12.0.10(2026年2月12日)、12.1は12.1.10(2026年3月26日)、12.2は12.2.10(2026年6月23日)が最終パッチ。12.3も2026年8月19日でサポートが切れます。新機能の要否と関係なく、サポート期限だけで移行を決める段階です。以下、バージョン体系・v12の機能・v11からの変更点・v13との差分・アップグレード判断の順に見ていきます。
Grafanaのバージョン体系と2026年7月時点の最新版
Grafanaのマイナーリリースは2か月ごとに出ます。「grafana 最新バージョン」を調べるとき本当に知りたいのは、いま入れるべき版と、手元の版がまだ修正を受け取れるかの2点です。公式のサポート表とリリース履歴を突き合わせると、2026年7月14日時点の状況は次のとおりです(日付は公式サポート表の基準日で、GitHubの公開日とは最大9日ずれます。13.1は公式表が2026年6月22日、GitHub公開が7月1日)。
| 系列 | 初版 | サポート期限 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 13.1 | 2026-06-22 | 2027-03-20 | 最新(13.1.0) |
| 13.0 | 2026-04-14 | 2027-01-09 | パッチ提供中(初版は13.0.1) |
| 12.4 | 2026-02-24 | 2027-05-24 | 12系の最終マイナー |
| 12.3 | 2025-11-19 | 2026-08-19 | まもなく終了 |
| 12.2 | 2025-09-23 | 2026-06-23 | 終了 |
| 12.1 | 2025-07-22 | 2026-04-22 | 終了 |
| 12.0 | 2025-05-05 | 2026-02-05 | 終了 |
| 11.6 | 2025-03-25 | 2026-06-25 | 終了(11系の最終マイナー) |
Grafana 13はGrafanaCON 2026(2026年4月・バルセロナ)の基調講演で発表されました。ただし13.0.0は後述するGit Sync絡みの不具合で配布停止となっており、現在入手できる13系の初版は修正版の13.0.1(2026年4月17日)です。12系の最終パッチは12.4.5・12.3.8・12.2.10(いずれも2026年6月23日)、12.1系は12.1.10、12.0系は12.0.10で止まっています。
サポート期限の逆算式(初版+9か月、メジャー最終マイナーは15か月)
公式のアップグレード指針は、各マイナーリリースをリリース日から9か月サポートし、メジャーバージョンの最終マイナーだけ15か月に延長すると定めています。上の表の期限はすべてこの計算どおりです。12.2は2025年9月23日リリースで9か月後の2026年6月23日が期限、最終パッチの12.2.10もまさに2026年6月23日で打ち止めでした。11系の最終マイナー11.6は2025年3月25日リリースの15か月後、2026年6月25日で終了しています。
この式を知っていれば、公式の個別告知を待たずに手元の版の寿命を計算できます。逆に知らないと、「11.6はまだパッチが出ているから当面安心」という誤解が生まれます。11.6の延長サポートは2026年6月で終わっており、いま11系に残っている環境は無防備です。
稼働中バージョンの確認方法(/api/health と grafana server -v)
最も確実なのはHTTP APIです。GET /api/health は認証なしで commit・database・version の3フィールドを返し、versionがそのまま実行中のバージョンになります。監視やCIから複数インスタンスの版を棚卸しする用途にも使えます。
curl -s http://localhost:3000/api/health
{"commit":"...","database":"ok","version":"12.4.5"}
コマンドラインから調べる場合は grafana server -v を使います。Grafana 13では旧形式の grafana-server / grafana-cli コマンドが削除されているため、起動スクリプトやDockerfileに旧コマンドをベタ書きしている環境は13で起動に失敗します。12系のうちに呼び出しを直しておく箇所です。
Grafana 12の主要機能とリリース時期
Grafana 12.0.0のGAは2025年5月5日、翌日開幕したGrafanaCON 2025(シアトル)の基調講演で発表されました。「grafana 12 release notes」で調べたときに押さえるべき変更は、実質的に次の3系統です。
Git Sync(12ではexperimental・GitHubのみ)
Git Syncは、ダッシュボードのJSONをGitリポジトリと同期させ、UIで作ったダッシュボードをリポジトリの変更として扱う機能です。Grafana 12時点ではexperimentalで、対象もGitHubに限られていました。本番のGitOpsフローに載せるには早く、この版では検証用と割り切るのが妥当な段階です。GitLabやBitbucketを含む一般のGitリポジトリに対応し、GAになったのは13なので、Git Sync目当てで12を選ぶ理由はいまはありません。
Dynamic Dashboards・Drilldown・SQL Expressionsの成熟度(GAはDrilldownのみ)
Dynamic Dashboardsは、変数や文脈に応じてレイアウトを組み替え、似たダッシュボードの静的コピーを増やさずに済ませる機能です。12ではexperimental。一方、Metrics・Logs・Tracesを掘り下げるGrafana Drilldownは12でGAに到達しており、この版で安心して使える数少ない新機能です。複数データソースの結果をSQLで結合するSQL Expressionsはprivate previewで、12の段階では申請が前提でした。
機能の成熟度がバラバラなのが12の実態で、「12に上げれば新機能が使える」とは言えません。GAはDrilldownだけ、と覚えておくと判断を誤りません。ログ側の掘り下げを本格的に使うなら、Grafana LokiとPrometheusを組み合わせたログ基盤を整えておくと、同じダッシュボードからメトリクスとログを行き来できます。メトリクスの収集経路そのものを見直すなら、OpenTelemetryの3シグナルとCollectorの役割を押さえたうえで収集経路から見直すのが順序です。
機能トグル(feature_toggles)の有効化手順とトグル名
experimentalやpreviewの機能は、設定ファイル(grafana.ini または custom.ini)の [feature_toggles] セクションで個別に有効化します。Git Syncのトグル名は provisioning、新レイアウト(Dynamic Dashboards)は dashboardNewLayouts です。
[feature_toggles]
enable = provisioning dashboardNewLayouts
コンテナ運用なら環境変数 GF_FEATURE_TOGGLES_ENABLE に同じ値を渡しても効きます。experimental機能はマイナーアップデートでフラグ名も挙動も変わり、依存する別トグルの同時有効化を要求されることがあるため、有効化は検証環境に限定し、公式のfeature toggle一覧で現行の名前を確認してください。本番インスタンスでは開けないこと。とくにGit Sync系のフラグは、後述する13.0.0のデータ喪失不具合の発動条件そのものです。
Grafana 11からGrafana 12への変更点
「grafana 11 vs 12」で調べるとき、機能追加より先に確認すべきなのは壊れる箇所です。v11→v12で影響が大きいのは3つあります。
Angularプラグインサポートの完全削除。 Angularは段階的に廃止されました。v9で angular_support_enabled による制御が入り、v11でこのデフォルト値が無効に変わり、v12では設定オプションごと削除されています。11では設定を戻せば動いていたAngularベースのプラグインが、12では設定する手段すらありません。古いコミュニティプラグインを使っている環境は、12へ上げる前にReactベースの後継があるかを確認する必要があります。
データソースUIDの形式チェック。 v12.0では機能フラグ failWrongDSUID がデフォルトで有効になり、REST APIやプロビジョニング経由で不正な形式のUIDを持つデータソースを作成・更新しようとすると拒否されます。有効なUIDは英数字とダッシュのみ、長さは40文字以内です。Terraformやプロビジョニングファイルで独自のUIDを振っている環境は、アップグレード前に既存UIDを洗い出してください。
annotationテーブルのマイグレーション。 v11.xからv12.xへの移行ではannotationテーブルが全面的に書き換えられます。公式は現在のテーブルサイズの2〜3倍の空きディスク容量を事前に確保するよう求めており、移行後はVACUUMやOPTIMIZE TABLEの実行を推奨しています。詰まりやすいのは、アラート履歴が長いインスタンスです。
Grafana 12と13の差分:GA化した機能と破壊的変更
13の位置づけは、12でexperimentalだったものを仕上げた版です。Dynamic DashboardsがGAになり、既存ダッシュボードは自動的に新レイアウトへ移行されます。Git SyncもGA化し、GitHubに加えてGitLab・Bitbucket・任意のgitリポジトリに対応しました。AIエージェントのGrafana Assistantはself-managed環境でも使えますが、こちらはpublic previewで、利用にはGrafana Cloudアカウントとの接続が前提です。
一方で13は12より非互換が多い版でもあります。公式のアップグレードガイドとv13.0のリリースノートが挙げる主な非互換・注意点は次のとおりです。
| 変更 | 影響と対応 |
|---|---|
| Image Rendererプラグイン | プラグイン提供終了/別サービス化 |
| レンダリング認証 | JWT化/renderer_token の設定が必要 |
| Unified Storage | 自動移行/戻すにはDBリストア |
| RBAC | 非推奨権限のカスタムロールが失敗 |
| Alertmanagerレガシーapi | 削除/管理者限定に制限 |
| アラート状態エンドポイント | 新権限 alert.notifications.system-status:read |
| レガシー /api パス | 非推奨(当面は無効化されない) |
| grafana-server / grafana-cli | 旧形式コマンド削除 |
| 数値IDのデータソースAPI | 既定で無効(datasourceLegacyIdApi で復帰) |
| HTTP圧縮 | デフォルト有効 |
| React 18→19 | TwinMaker SceneViewerが非対応 |
誤解しやすいのがImage Rendererです。画像レンダリング機能そのものが消えたのではなく、Grafanaのコンポーネントとしてのプラグイン形式が廃止され、リモートレンダラーを別サービスとしてGrafanaの横に立てる構成に変わりました。あわせて認証がJWTになるため、[rendering] セクションの renderer_token に空でない値を設定して再起動する必要があります。アラート通知やレポートにパネル画像を添付している運用は、13へ上げる前にこのサービス分離を設計してください。
もう1つ、後戻りできない変更がUnified Storageです。フォルダとダッシュボードは起動時にレガシーSQLテーブルから自動移行され、以後13から12へ戻すとデータが古い状態で見えます。バックアップをリストアせずにダウングレードした場合、ダウングレード中に作成・更新したフォルダやダッシュボードは自動移行されません。13へ上げる作業は「戻せる前提」で組まないことです。
Grafana 12に留まるか13へ上げるかの判断基準
結論から言えば、12.0・12.1・12.2で止まっている環境に「様子見」という選択肢はありません。いずれもパッチ提供が終わっており、次にCVEが出ても修正が届かないためです。12.3も2026年8月19日で切れます。移行先は運用の重さで決まります。
12.4へ寄せるべき環境:Angular時代から引き継いだ自作プラグインの移植が済んでいない、あるいは13の破壊的変更(Image Rendererのサービス分離、RBACの見直し、Unified Storageの不可逆移行)を検証する工数がいま取れない場合。12.4は12系の最終マイナーとして15か月の延長サポート対象で、公式のサポート表に2027年5月24日までと明示されています。この約10か月をv13検証にあてる進め方が現実的です。
13へ上げるべき環境:ダッシュボードをGitで管理したい、あるいは似たダッシュボードのコピーが増えて管理しきれなくなっている場合。この2つは12では未完成のまま、13で初めて実用段階になった機能です。12で我慢して使うより、13へ上げたほうが手戻りが少なくなります。
ただし上げる先は必ず13.0.1以降にしてください。13.0.0には、v12.xでGit Sync系のフラグ(provisioning、kubernetesDashboards など)を有効にしたセルフマネージド環境から移行すると、ダッシュボードやフォルダが失われる、あるいは巻き戻る不具合があり、13.0.0自体が配布停止になりました。厄介なのは、13.0.0へ上げてしまった後に13.0.1へ上げても失われたデータは戻らない点です。公式の復旧手順は、ローカルとGit Syncの内容が混在していた場合はアップグレード前のデータベースバックアップをリストアしてから13.0.1へ上げる、インスタンス全体をGit Syncで管理していた場合は13.0.1へ上げてリポジトリから再同期する、判断がつかなければバックアップをリストアしてから13.0.1へ上げる、というものです。
やってはいけないのは、メジャーを飛ばして年1回だけ上げる運用です。 公式もこの戦略について、活発に開発されているプラグインとの互換性が限定的になると警告しています。11から13へ一気に上げると、Angular削除(12)とImage Rendererのサービス分離・Unified Storage移行・React 19化(13)が同時に襲ってきて、どの変更で壊れたのかの切り分けができなくなります。2か月ごとのマイナーに追従できないなら、せめてメジャーは1つずつ、11.6→12.4→13.1と踏むべきです。
アップグレードそのものを自社で抱えたくないなら、AWSがマネージドで提供するAmazon Managed Grafanaのようにバージョン管理を委ねる選択肢もあります。ただしマネージド側は対応バージョンの追随に時差があるため、13の新機能をすぐ使いたい場合は自己管理のほうが早くなります。
よくある質問
Grafana 12はいつリリースされましたか?
Grafana 12.0.0のGAは2025年5月5日です。翌日の5月6日に開幕したGrafanaCON 2025(シアトル)の基調講演で発表されました。
Grafanaの最新バージョンは何ですか?
2026年7月14日時点ではv13.1.0(2026年7月1日リリース)です。13.0系の最新パッチは13.0.3(2026年6月23日)。マイナーは2か月ごとに進むため、導入時は公式のリリース一覧で最新を確認してください。
Grafana 12はまだサポートされていますか?
12系で修正が届くのは12.4系と、2026年8月19日までの12.3系だけです。12.0(最終パッチ12.0.10/2026年2月12日)、12.1(同12.1.10/2026年3月26日)、12.2(同12.2.10/2026年6月23日)はいずれも提供終了しています。各マイナーのサポートはリリースから9か月、メジャーの最終マイナーのみ15か月です。
Grafana 11から12へ上げると何が動かなくなりますか?
Angularベースのプラグインです。v12では angular_support_enabled という設定オプション自体が削除されており、有効化して動かす手段がありません。加えて、データソースUIDが英数字とダッシュ以外を含む場合、APIやプロビジョニング経由の更新が拒否されます。
Grafanaの動作中バージョンはどうやって確認しますか?
GET /api/health を叩くと、versionフィールドに実行中のバージョンが返ります(認証不要)。コマンドラインからは grafana server -v を使います。Grafana 13では旧形式の grafana-server コマンドが削除されている点に注意してください。あわせて、Tremorxについても解説しています。