Amazon Managed Grafanaとは?機能・料金・データソースと始め方
Amazon Managed Grafanaは、AWSが運用まで引き受けるフルマネージド型の可視化サービスです。オープンソースのGrafanaをそのまま動かしながら、サーバーの構築やバージョン更新、スケーリングはAWSが担当します。この記事では、接続できるデータソース、認証とアクセス制御、そして誤解されやすい料金体系(クエリ数ではなくアクティブユーザー単位の課金)まで、検索でよく見られる論点を一度ずつ整理します。読み方は「グラファナ」です。
目次
まとめ
- 正体:OSS版Grafanaのフルマネージド版。AWSがインフラ運用を代行し、利用者はダッシュボード作成に集中できる。
- データソース:CloudWatch・Amazon Managed Service for Prometheus・X-Ray・Athenaなどに加え、Prometheusやリレーショナルデータベースにも接続可能。
- 料金:ワークスペースごとのアクティブユーザー課金。Editor/Administratorが月$9、Viewerが月$5。90日間・最大5ユーザーの無料トライアルあり。
- 認証:AWS IAM Identity Center(旧AWS SSO)とSAML 2.0でSSO、データソース権限はIAMロールで制御。
- 選び方:AWS中心の監視なら第一候補。マルチクラウドや高度な機能重視ならGrafana Cloud、コストを抑えたい小規模ならセルフホストも検討余地。
以下で各論点を順に見ていきます。
Amazon Managed Grafanaとは:OSS版・Grafana Cloudとの位置づけ
Amazon Managed Grafana(正式名称Amazon Managed Service for Grafana)は、可視化ツールGrafanaをAWSがホスティングして提供するサービスです。オープンソースのGrafanaと同じダッシュボードやクエリUIを使えますが、サーバーのプロビジョニング、セキュリティパッチ、バージョンアップ、負荷に応じたスケーリングをAWSが実施します。自前でGrafanaサーバーを立てる場合に発生する「監視ツール自体の運用」を切り離せるのが本質的な違いです。
フルマネージドで手離れする運用作業
セルフホストでは、Grafana本体のインストール、OSやミドルウェアのパッチ適用、可用性を保つための冗長構成、バージョン更新の検証といった作業が継続的に発生します。Amazon Managed GrafanaはこれらをAWS側が引き受けるため、利用者の作業はワークスペースの作成とダッシュボードの設計が中心になります。監視対象が増えても、可視化基盤のスケールをAWSが自動で調整します。
セルフホストOSS・Grafana Cloudとの違い
同じGrafanaでも、誰が運用しどこに課金するかで選択肢が分かれます。AWS上のリソースを主に監視するならネイティブ連携の効くAmazon Managed Grafanaが噛み合います。
| 観点 | セルフホストOSS | Grafana Cloud | Amazon Managed Grafana |
|---|---|---|---|
| 運用主体 | 自社 | Grafana Labs | AWS |
| 課金軸 | 自前インフラ費のみ | 使用量・ユーザー | アクティブユーザー |
| AWS連携 | 手動設定 | プラグイン | IAMでネイティブ |
| 向くケース | 小規模・コスト最優先 | マルチクラウド・最新機能 | AWS中心の監視 |
マルチクラウドやGrafana Labs独自の新機能をいち早く使いたい場合はGrafana Cloudが有利で、逆にAWS外の要素が少ないほどAmazon Managed Grafanaの連携の手軽さが効きます。
メトリクス・ログ・トレースを1画面に束ねる主な機能
Amazon Managed Grafanaの中心機能は、複数のデータソースから集めたメトリクス・ログ・トレースを、1つのダッシュボードで横断的に表示することです。時系列グラフやヒートマップ、ゲージなどのパネルを組み合わせ、システムの状態を1画面で把握できます。しきい値を超えたときに通知を飛ばすアラート機能、アドホックにクエリを投げて原因を掘り下げるExplore機能も標準で備わります。障害時にメトリクスの異常からログ・トレースへ辿る導線を1ツールに集約できる点が、個別ツールを併用する構成との差になります。
接続できる主なデータソース(AWS純正・OSS・他社)
Amazon Managed Grafanaは、AWSの監視系サービスとネイティブに接続できるほか、OSSや他社のデータソースも扱えます。AWS純正のデータソースはIAMロールを指定するだけで接続でき、認証情報を個別に管理する手間が減ります。時系列ログの可視化ではGrafana Lokiのようなコスト効率重視のログ基盤を、既存のPrometheus運用がある場合はPrometheusとGrafanaを組み合わせたメトリクス収集を併用する構成もよく採られます。
| データソース | 主な用途 |
|---|---|
| Amazon CloudWatch | AWSリソースのメトリクス・ログ |
| Amazon Managed Service for Prometheus | コンテナ・Kubernetesの時系列監視 |
| Amazon Athena / Redshift | クエリ結果・DWHの分析 |
| AWS X-Ray | 分散トレース |
| Amazon Timestream | IoT・時系列データ |
| Prometheus / MySQL / PostgreSQL | 既存OSS・DBの可視化 |
接続できるデータソースは随時追加されているため、扱いたいサービスが対応済みかはAmazon Managed Grafanaユーザーガイドのデータソース一覧で確認するのが確実です。
認証とアクセス制御(IAM Identity Center・SAML・IAM)
Amazon Managed Grafanaは、ユーザーのサインインとデータへのアクセス権限を分けて管理します。誰がログインできるかは企業のIDプロバイダーと連携し、ログイン後に何を見られるかはIAMで絞り込む二段構えです。
IAM Identity Center・SAML 2.0によるSSO
ユーザー認証はAWS IAM Identity Center(旧AWS SSO)を使う方法と、SAML 2.0対応のIdP(Microsoft Entra ID/Azure AD、Oktaなど)を直接つなぐ方法があります。既存の社内アカウント基盤をそのまま流用できるため、Grafana専用のユーザー管理を別に持つ必要がありません。多要素認証(MFA)はIdP側の設定に従わせられます。
IAMロールで絞るデータソース権限
ワークスペースにはIAMロールを割り当て、そのロールが許可された範囲でだけデータソースにアクセスします。例えばCloudWatchの特定名前空間だけを読める権限に絞れば、閲覧者が想定外のデータに触れることを防げます。ユーザーにはGrafana側でAdmin・Editor・Viewerのロールを付与し、ダッシュボードの編集可否を分けられます。
料金体系はアクティブユーザー課金(Editor $9・Viewer $5)
料金で最も誤解が多いのがここです。Amazon Managed Grafanaはワークスペースごとの「アクティブユーザーライセンス」による月額課金で、クエリ数やダッシュボードの作成数、ワークスペースの稼働時間そのもので課金されるわけではありません。その月に一度でもサインインしたユーザーが課金対象になります。
| ライセンス | 月額(1アクティブユーザー) | 権限 |
|---|---|---|
| Editor / Administrator | $9 | ダッシュボード・アラート作成、ユーザー管理 |
| Viewer | $5 | 閲覧のみ |
| Enterprise Plugins | +$45 | Editor/Viewer料金に上乗せ。Datadog等の商用データソース利用時 |
| 無料トライアル | $0(90日間) | アカウントあたり最大5ユーザー |
いずれも「1アクティブユーザー・1ワークスペース・1か月」あたりの単価です。ただし各ワークスペースには最低1つのEditorライセンス(月$9)が必要で、その月に誰もログインしなくても1ワークスペースあたり最低$9は課金されます。90日間・アカウントあたり最大5ユーザーまでの無料トライアルがあり、前払い・長期契約はありません。価格は改定され得るため、確定値は公式の料金ページで確認してください。
コストを読み違えやすいポイント
旧来の解説では「ダッシュボード数やクエリ数で課金される」と書かれていることがありますが、これは誤りです。コストを抑える鍵はダッシュボードを減らすことではなく、権限に見合ったライセンス配分と、休眠ユーザーの棚卸しです。閲覧しかしない人はViewer($5)に寄せ、退職・異動で使わなくなったユーザーを外すだけで、その月の請求額が下がります。ただしワークスペース単位で最低1つのEditorライセンス($9)は残るため、請求をゼロにはできません。監視するAWSリソース側の費用(CloudWatchの取り込み料金など)が別途かかる点も見落としがちです。
ワークスペースの作成から可視化までの手順
Amazon Managed Grafanaの利用は、ワークスペースという単位で始めます。AWSマネジメントコンソールから数ステップで作成でき、プロジェクトやチームごとに分離して権限とデータを独立させられます。
- コンソールでワークスペースを新規作成し、リージョンと名前を指定する。
- 認証方式にIAM Identity CenterまたはSAML 2.0を選び、ログインできるユーザーを割り当てる。
- ワークスペースにIAMロールを設定し、CloudWatchなど利用するデータソースを追加する。
- パネルを配置してダッシュボードを作成し、必要ならアラートのしきい値を設定する。
スケーリングやバージョン更新はAWSが担うため、運用開始後に監視対象が増えても基盤側の増強を意識する必要はありません。
Amazon Managed Grafana・Grafana Cloud・セルフホストの選び方
3つの選択肢は「AWSへの依存度」と「運用にかけられる工数」で切り分けると判断しやすくなります。結論から言えば、監視対象の大半がAWS上にあり、可視化基盤の運用に人手を割きたくないならAmazon Managed Grafanaが第一候補です。IAM連携で認証とデータソース権限が一元化でき、可視化ツール自体の保守がなくなる効果が大きいためです。
一方で、採用を急がない方がよい場面もあります。監視するユーザーがごく少人数で、すでにサーバーを運用できる体制があるなら、月額ライセンス費を払うより軽量なセルフホストの方が総額を抑えられることがあります。AWS以外のクラウドやSaaSが監視対象の中心で、Grafana Labsの最新機能を優先したい場合は、Amazon Managed Grafanaよりも本家のGrafana Cloudが噛み合います。「AWSのサービスだから」で機械的に選ぶと、連携の恩恵が薄いまま固定費だけが残ることになります。
よくある質問(FAQ)
Amazon Managed Grafanaの読み方は?
Grafanaは「グラファナ」と読みます。Amazon Managed Grafanaはそのまま「アマゾン マネージド グラファナ」で、AWS公式では正式名称としてAmazon Managed Service for Grafanaという表記も使われます。どちらも同じサービスを指します。
商用利用やライセンスの扱いは?
Amazon Managed GrafanaはAWSのマネージドサービスとして提供されるため、商用利用も含めてAWSの利用規約に沿って使えます。なお、Grafana本体はバージョン8以降でAGPLv3ライセンスに変わっているため、自前でOSS版Grafanaを運用・改変して配布する場合はそのライセンス条件に留意が必要です。マネージド版を使う分にはAWS側が提供責任を負います。
無料で使えますか?
90日間の無料トライアルがあり、アカウントあたり最大5ユーザーまで無料で試せます。トライアル終了後はアクティブユーザー単位の課金に移行します。恒久的な無料枠ではないため、検証で使う場合は期間とユーザー数を意識しておくとよいでしょう。
OSS版Grafanaとの違いは?
機能面のダッシュボードやクエリUIは共通ですが、サーバー運用の有無が異なります。OSS版は自分でインフラを用意・保守する代わりに利用自体は無料、Amazon Managed版は運用をAWSに任せる代わりにアクティブユーザー課金が発生します。AWSサービスとの認証・データソース連携はマネージド版の方が手軽です。
最低どれくらいの料金がかかりますか?
トライアル終了後は、各ワークスペースに最低1つのEditorライセンス(月$9)が必要です。そのため下限は$5ではなく、ワークスペースあたり月$9で、たとえその月に誰もログインしなくても課金されます。閲覧者を追加する場合は1人あたりViewer(月$5)が上乗せされます。使わないワークスペースは削除しないと最低$9が発生し続ける点に注意してください。より詳しくは、Sentryの記事で整理しています。