MagicPod(マジックポッド)は、iOS・Androidアプリとブラウザのテストを、コードを書かずに作成・実行・保守するクラウドサービスです。株式会社MagicPodが2017年7月から提供しています。この記事では、2026年9月時点の公式料金ページとヘルプセンターをもとに、スタンダードプランの月額に含まれるものと追加費用が発生する条件、AI自動修復が効かないケース、CIから一括実行するときの終了コードの扱いまでを整理します。
まとめ:MagicPodを選ぶ前に押さえる要点
- 対象はモバイルアプリ(iOS・Android)とブラウザのE2Eテスト。単体テストやAPIテストの置き換えではありません。
- スタンダードプランは年契約で月39,800円(税別)。テスト実行回数とユーザー数は無制限ですが、テストケースは100個まで、プロジェクトは3個までで、超過分はオプション(各月10,000円・税別)です。
- ブラウザ版とモバイルアプリ版は別契約です。両方テストするなら料金は2本分かかります。
- AI自動修復は一括実行のときだけ働き、「値が一致することを確認」のような確認コマンドの失敗は直しません。修復結果は承認するまで提案扱いです。
- CIでは
magicpod-api-clientの終了コード2(自動修復あり=要確認)の扱いを決めておかないと、成功したテストでパイプラインが落ちます。 - 2026年8月24日以降に作成された組織では、ブラウザテストの既定エンジンがSeleniumからPlaywrightに変わりました(Chromeのみ対応)。
MagicPodの概要と運営会社
MagicPodは、ブラウザ上の編集画面でテスト対象の画面を開き、ボタンや入力欄などのUI要素を選んでコマンドを並べるだけでテストケースを作れるテスト自動化サービスです。テストの実行環境(クラウド端末・クラウドブラウザ)もMagicPod側が用意するため、SeleniumやAppiumのようにドライバーや実行サーバーを自前で構築する必要がありません。
運営は東京都中央区の株式会社MagicPodで、2012年7月6日に設立されました(旧社名TRIDENT)。代表取締役の伊藤望氏は「日本Seleniumユーザーコミュニティ」の設立者で、『Selenium実践入門』の著者でもあります。会社はSeleniumのサポート事業から始まり、2017年7月にMagicPodの提供を開始しました。「マジックポット」と表記されることもありますが、正式な読みは「マジックポッド」です。
MagicPodでできることと対応環境
モバイルアプリテストとクラウド端末
対応するのはiOS・Androidのネイティブアプリ、ハイブリッド(WebView)アプリ、Flutterアプリ、React Nativeアプリで、Unityアプリには対応していません(公式ヘルプ「サポート環境」)。テストは、MagicPodが提供するクラウド端末(シミュレーター・エミュレーター)か、手元のPCにつないだ実機で作成・実行します。ローカルPC環境では2026年8月10日のバージョン1.69.0でiOS 26.6の実機に対応しました。クラウド端末は初回の立ち上げに2〜3分かかるため、実行時間を縮めたい場合は、公式が指定する「高速起動端末」を選びます(2025年5月時点の公式ヘルプでは、Androidはarm64-v8aエミュレーターのPixel 9・Android 16.0など)。
ブラウザテストとテストエンジン(Selenium・Playwright)
ブラウザテストはクラウドブラウザかローカルPCのブラウザで動かします。2026年8月時点のクラウドブラウザはChrome 151・Firefox 153・Edge 151で、Chromeは過去10バージョンから選べます。新しいChromeへの対応は、リリースから2週間程度が目安とされています。
内部のテストエンジンはSeleniumとPlaywrightから選べます。Playwrightは2026年6月1日に正式版として提供が始まり、バージョン1.70.0(2026年8月24日)からは、新規に作成された組織の既定がPlaywrightになりました。新規組織では、Web APIで実行するときもエンジンを指定しなければPlaywrightで動きます。Playwrightを使えるのはエンタープライズプランと新スタンダードプラン2025の契約者です。また、PlaywrightはChromeでしか使えず、EdgeやFirefoxのテストはSeleniumのままです。既存テストの移行について、公式ヘルプはSeleniumでの実行を続けながら一部のテストから段階的に切り替えるよう勧めています。Seleniumで撮った画像を期待値にしている「画像差分がないか確認」コマンドは、Playwrightに切り替えると差分が出ます。
外部クラウドサービスでの実行
自社で契約しているBrowserStackやSauce Labs、Remote TestKit(モバイルアプリのみ)の端末でも、MagicPodで作ったテストを実行できます。これらのサービスとの契約は別途必要です。MagicPodのクラウド端末にない機種で確認したい場合の選択肢になります。
AI機能の中身:自動修復・Autopilot・MCPサーバー
AI自動修復が効く条件と効かない条件
自動修復は、デザイン変更などで操作対象のUI要素が見つからなくなったときに、AIが変更後の要素を推定してテストを続行する機能です。公式ヘルプの例では、「登録」ボタンの文言が「この内容で登録」に変わっても、テストを止めずに次のステップへ進みます。修復が起きたテストは結果がオレンジ色の「要確認」になり、担当者が「承認」するとテストケース側のUI要素も新しいものに置き換わります。「却下」すると結果は「失敗」になります。
公式ヘルプにある主な制約を以下に示します。なお、1つのテストケースでiOSとAndroidの両方をテストする場合も、自動修復は利用できません。
- 働くのは一括実行のときだけで、編集画面から1本だけ実行した場合は修復されない。
- 要素が見つからないときの補助であり、「UI要素の値が『登録する』と一致することを確認」のような確認コマンドが失敗しても修復しない。
- 要素の存在・表示の有無による条件分岐では動かない。また、要素が存在しないことや非表示であることを期待する確認・待機コマンドでも動かない。
つまり、仕様変更で期待値そのものが変わった場合はテストが正しく失敗します。自動修復で減らせるのは、ロケーターの変化による「偽の失敗」です。
MagicPod Autopilot(生成AIによるテスト作成)
MagicPod Autopilotは、2025年8月4日に提供が始まったテスト自動化エージェントです。「ユーザー名とパスワードを入力して、ログインボタンをクリックする」のように日本語や英語で指示すると、テストステップを生成・編集し、実行して動作を確かめます。テストが失敗したときに原因を調べる「失敗分析機能」もAutopilotの機能です。
利用には組織管理者による生成AI機能の有効化と、AIクレジットが必要です。消費量の目安は、1セッション(一連の会話)あたり平均1.5クレジットです。既存の共有ステップを使ったり新しく作ったりはできますが、既存の共有ステップをAutopilotで編集することはできません。会話履歴はMagicPodのサーバーに2週間保存された後に削除され、入力内容が生成AIモデルの学習に使われることはないと公式ヘルプは説明しています。
MagicPod MCPサーバーによる外部AIエージェント連携
MCPサーバーを使うと、Claude Code・Cursor・Codexなど手元のAIエージェントからMagicPodを操作できます。バージョン1.69.0(2026年8月10日)で、テストケースを対話的に編集できる新しいMCPサーバーに刷新されました。以前から使っている場合も、設定の切り替えが必要です。テストケースの作成・編集・実行、実行結果の取得、ロケーターの検証などを行うツールがそろっており、Excelのテスト手順書を読み込ませてテストケースを作るような使い方ができます。AutopilotとちがってAIクレジットは消費しません。
MagicPodの料金プランとAIクレジット
スタンダードプランとエンタープライズプランの違い
公式料金ページ(2026年9月時点)の内容です。
| 項目 | スタンダード | エンタープライズ |
|---|---|---|
| 月額(年契約) | 39,800円(税別) | 応相談 |
| 月額(月契約) | 54,800円(税別) | 応相談 |
| テスト実行回数・ユーザー数 | 無制限 | 無制限 |
| プロジェクト数 | 3 | 要問い合わせ |
| テストケース数 | 100 | 無制限 |
| 画像差分確認ステップ | 100 | 無制限 |
| ブランチ数 | 10 | 無制限 |
| クラウド端末(作成用+一括実行用) | 同時2+同時2 | 要問い合わせ |
| テスト結果の保存期間 | 1年間 | 2年間 |
| SAML SSO・IP制限 | なし | あり |
年契約は月契約より27%安くなります。スタンダードプランに追加できるオプションは、プロジェクト1個・テストケース100個・画像差分確認100ステップ・クラウド端末1台・ブランチ10個が、それぞれ月10,000円(税別)です。無料トライアルは2週間です。
MagicPodの契約区分と追加課金条件
料金ページの注記には、見積もりに影響する条件が並んでいます。
- ブラウザ版とモバイルアプリ版は別契約:両方をテストするなら2契約が必要で、契約期間と支払方法はそろえる必要があります。
- 300ステップを超えるテストは2テストケース扱い:600ステップを超えると3テストケース扱いになります。ゴミ箱に入れたテストケースも総数に含まれます。
- オプションの上限:プロジェクトは合計20個、テストケースは合計500個、クラウド端末は合計50台まで追加できます。
- 年契約ではオプションも年単位:途中で追加したオプションも年契約になります。
たとえばブラウザテストだけでテストケースを250個持つ場合、100個を超える150個分として2オプション(月20,000円)が加わり、年契約で月59,800円(税別)になります。テストケースが500個を超える規模や、SSO・IP制限が必須の組織は、最初からエンタープライズプランの見積もりを取るほうが早く判断できます。
AIクレジットの無料枠と追加購入
Autopilotと失敗分析機能はAIクレジットを消費します(旧スタンダードプランではAIアサーションも対象)。MCPサーバーやテストケース要約などほかのAI機能は、クレジットなしで使えます。
- 毎月の無料枠:スタンダードプラン2025は20クレジット(翌月へ繰り越し不可)。旧スタンダードプランは5クレジット。
- 初回の無料枠:トライアル開始時か契約時に100クレジット(期限は90日)。
- 追加購入:1クレジット100円(税別)。プランページからの購入は1回20クレジット以上、申込書による銀行振込は100クレジット以上で、期限は2年。旧スタンダードプランでは追加購入できません。
無料枠はブラウザ・モバイルの契約ごとに付与されます。月20クレジットはAutopilotの作成セッション約13回分なので、テストケースを一気にAIで作る導入初期は、有償クレジットを見込んでおくと安心です。
使い方:無料トライアルからCI実行までの手順
テストケースの作成と一括実行
ブラウザテストの基本的な流れは次のとおりです(公式スタートガイドより)。
- テストケースの編集画面で「起動」を押し、テストしたいページのURLを指定してクラウドブラウザを開く。
- 要素選択モードで入力欄やボタンを選ぶ(左へドラッグする)と、そのUI要素を操作するステップが追加される。値が必要なコマンドには値を入れ、コマンドは▼から変更する。
- 「実行」でテストを動かし、結果画面で実行ログとスクリーンショットを確認する。
- テスト一括実行の設定で「一括実行をスケジュール」を有効にし、メールやSlackに結果を通知する。
1テストケースの推奨ステップ数は200以下です(UI要素の多いサイトのブラウザテストは300以下)。前述のとおり300ステップを超えると2テストケースとして数えられるため、長いシナリオは「共有ステップ」に切り出して分割するほうが、保守性と料金の両面で有利です。
GitHub ActionsからのCLI実行と終了コードの扱い
CIからの実行には、公式のコマンドラインツール magicpod-api-client を使います。一括実行を開始して完了まで待ち、結果を終了コードで返します。ソースコード(GitHubの Magic-Pod/magicpod-api-client)で確認できる終了コードは次の3つです。
0:成功1:失敗(APIエラーを含む)2:要確認(自動修復が発生)
終了コードの扱いは、公式ヘルプの例をそのまま写すと2か所でつまずきます。
- 自動修復だけでジョブが落ちる:ブラウザテスト用のスクリプトは最後の行が
batch-runなので、自動修復が起きただけの実行(終了コード2)でもジョブが失敗します。 - モバイル用の例は失敗を見逃す:モバイルアプリ用のスクリプトは
batch-runの後に「成功ならアプリを削除する」if文があり、ワークフローからはbash run_magicpod_test.shで呼んでいます。bash ファイル名で起動するとシバン行の-eは効きません。そのためbatch-runが終了コード1または2を返しても、スクリプトの終了コードは最後のif文が返す0になり、テストが失敗してもステップは成功扱いになります。
「修復はMagicPod上で承認すればよい」と運用するなら、終了コードを変数に受けてから2だけを警告に落とします。以下は、組織名・プロジェクト名を自分の環境に置き換え、一括実行設定1を作成済みの場合に、ブラウザテストを ubuntu-latest で実行する例です(APIトークンはリポジトリのSecretsに MAGICPOD_API_TOKEN として登録)。
name: magicpod-browser-test
on:
push:
branches: [main]
jobs:
magicpod:
runs-on: ubuntu-latest
env:
MAGICPOD_API_TOKEN: ${{ secrets.MAGICPOD_API_TOKEN }}
MAGICPOD_ORGANIZATION: your-organization
MAGICPOD_PROJECT: your-project
steps:
- name: Download magicpod-api-client
run: |
curl -sSL "https://app.magicpod.com/api/v1.0/magicpod-clients/api/linux/latest/" \
-H "Authorization: Token ${MAGICPOD_API_TOKEN}" --output magicpod-api-client.zip
unzip -q magicpod-api-client.zip
- name: Batch run
run: |
set +e
./magicpod-api-client batch-run -S 1
code=$?
if [ "$code" -eq 2 ]; then
echo "::warning::Self-healing occurred. Approve or reject it on MagicPod."
exit 0
fi
exit "$code"
-S 1 はテストケース番号ではなく、MagicPodの一括実行設定の番号です。完了を待つ上限は既定で「テストケース数×10分」で、-w で秒数を指定できます。結果を待たずにジョブを終えるなら -n を付けます。モバイルアプリの場合は、ビルドしたアプリを upload-app でアップロードし、得られたファイル番号を一括実行に渡す手順が加わります。このときも batch-run の終了コードを変数に保存し、アプリの削除処理の後でその値を exit で返してください。GitHub Actionsのワークフロー自体の書き方はGitHub Actionsでビルド・自動テストを設定する方法で解説しています。
Selenium・Appium・Playwrightとの使い分け
MagicPodは内部でSeleniumやPlaywrightを動かしているため、競合というより「上に載る運用層」です。選ぶ軸はテストを誰が書き、誰が保守するかです。
| 観点 | MagicPod | Selenium・Appium・Playwright |
|---|---|---|
| テストの書き方 | 画面操作でステップを並べる | コードで記述 |
| 実行環境 | クラウド端末を提供 | 自前で構築 |
| テストの保存場所 | MagicPod上 | Gitリポジトリ |
| ロケーター変更への追随 | AI自動修復(承認制) | 自分で修正 |
| 費用 | 月39,800円〜(税別) | OSSは無料(環境費は別) |
QA担当者や非エンジニアがテストを作り、開発者はCIに組み込むだけ、という分担ならMagicPodが合います。開発者がテストコードをレビューとセットで管理したい場合や、複雑なデータ準備・API呼び出しをテストの中で組みたい場合は、コードで書くフレームワークのほうが素直です。コードで書く場合の選択肢は、モバイルならAppium、ブラウザならPlaywrightやSeleniumの各記事で比較しています。
MagicPodを採用すべきでないケース
次の条件に当てはまるなら、MagicPodは第一候補になりません。
- 単体テストで検証できるロジックまでE2Eテストだけで網羅しようとしている:MagicPodの主な対象は、画面操作を通したE2Eテストです。ロジックの検証を単体テストに寄せず、E2Eで網羅しようとすると、テストケース上限に早く達し、オプション費用が膨らみます。まずは主要な導線に絞り、リグレッションテストとして毎日回す範囲から始めるのが現実的です。
- テストをGitのブランチ・レビューと完全に一体で管理したい:テストケースはMagicPod上に保存され、スタンダードプランのブランチは10個までです。プルリクエストごとにテストを変更するチームでは、ブランチの運用ルールを先に決める必要があります。
- Chrome以外のブラウザでPlaywrightの速度を得たい:PlaywrightエンジンはChromeのみで、Firefox・EdgeはSeleniumで実行されます。
- 並列度を大きく上げたい:スタンダードプランの一括実行用クラウド端末は同時2台です。100本のテストを短時間で回したい場合、端末の追加(1台あたり月10,000円)が前提になります。
よくある質問
MagicPodの費用はいくらですか?
スタンダードプランは年契約で月39,800円(税別・税込43,780円)、月契約で月54,800円(税別)です。エンタープライズプランは個別見積もりです。ブラウザ版とモバイルアプリ版は別契約のため、両方を使う場合は2契約分の費用がかかります(2026年9月時点)。
MagicPodに無料プランはありますか?
公式料金ページに掲載されているプランはスタンダードとエンタープライズの2つで、無料で使えるのは2週間の無料トライアルです。トライアル開始時にはAIクレジットの初回無料枠(100クレジット・90日間有効)も付与されるため、Autopilotも試せます。
MagicPodの評判はどうですか?
評価されやすいのは、コードなしでテストを作れる点と、テスト実行回数が全プラン無制限である点です。一方で、Qiitaの利用レポート(2024年12月)では、クラウド端末の同時実行数やiOSの実行時間への不満が挙げられています。ただし、これは当時の利用環境での評価です。公式は2025年中にiOS・iPadOSクラウド端末の動作速度を改善したと説明しているため、現在の所要時間は無料トライアルで自社のシナリオを動かして確かめるのが確実です。公式サイトの導入事例と口コミのページも、自社と近い規模の事例を探す材料になります。
株式会社MagicPodはどんな会社ですか?
2012年7月6日設立(旧社名TRIDENT)で、東京都中央区に本社を置くテスト自動化の専業企業です。代表取締役の伊藤望氏はSeleniumの国内コミュニティ設立者で、2017年7月からMagicPodを提供しています。
MagicPodでiOSアプリのテストはできますか?
できます。MagicPodのクラウド端末(iOSシミュレーター)か、ローカルPCに接続したiPhone・iPadの実機で作成・実行できます。ローカル環境の実機は2026年8月にiOS 26.6へ対応しました。実機を使う場合は、ヘルプセンターの「ローカルPC環境のiOSセットアップ」に沿って手元のMacを準備します。