Power Automateのホーム画面には自然言語の入力欄が置かれ、やりたいことを書けばトリガーとアクションの並びが返ってきます。AI Builderのモデル一覧を開けば、請求書や領収書の読み取りが数クリックで試せる状態です。実装で効いてくるのはその先で、Copilotがどこまで組み立ててくれるのかという範囲と、モデルを本番で回したときに何がいくら減るのかという単価が、そのまま設計と見積もりを左右します。この記事では、Copilotの生成範囲と制約、AI Builderのモデル種別、2025年11月に始まったクレジットの二重通貨、帳票処理を組むときの前提条件を、Microsoft Learnの記載に沿って整理しました。製品そのものの概要はPower Automateとは?基本・できること・料金・導入判断まで解説をご覧ください。
まとめ:Copilotは骨組み止まり、AI Builderは単価の設計で決まる
先に結論を置きます。Copilotが返すのはトリガーと1つ以上のアクションからなる構造で、接続の設定までは面倒を見ますが、対応するのはPower Platformのコネクタの一部にとどまります。英語での利用を前提に調整されているため、日本語で込み入った条件分岐を書いても、そのまま動く形にはなりません。生成物を人がデザイナーで読み直す前提を組み込めるなら、最初の1本を起こす時間は確かに縮みます。
AI Builder側の争点は精度ではなく単価と期限です。2025年11月1日から、Power AppsとPower AutomateのAI Builder機能はAI Builderクレジットを先に消費し、尽きればコパイロットクレジットへ回り、どちらも無ければ実行が止まります。2026年11月1日にはプレミアムライセンスに付いていたシード済みクレジットが外れ、容量アドオンも更新できなくなる予定です。カスタムドキュメント処理は1ページあたりAI Builderクレジットで100、コパイロットクレジットで8という別建てのレートで、通貨が替われば見積もりを引き直す作業が発生します。
Copilotが返すのはフローの骨組みで、接続と分岐は人が詰める
まずCopilot側の範囲を確定させます。ここを広く見積もると、生成物の手直しが工数として計上されないまま計画が進みます。
ホーム画面のプロンプト入力からフローが組み上がるまでの実際の手順
手順は5段階です。Power Automateにサインインし、ホームの入力欄に自動化したい内容を自然言語で書き、生成を選びます。するとCopilotは、トリガーと1つ以上のアクションからなるフローの構造を返します。内容に納得できれば保持して続行を選び、次の画面で接続の状態を確認しましょう。正しく構成された接続には緑のチェックが、対処が要る接続には赤の感嘆符が付くため、感嘆符の側だけを潰してからフローの作成へ進みます。作成後はデザイナーが開き、右側にCopilotペインが並ぶ形です。
プロンプトの書き方はドキュメントに明示があります。「XのときにYする」の形式で書くこと、できるだけ具体的に書くこと、可能ならコネクタ名をプロンプトに含めることの3点です。「メールを処理したい」ではなく「メールが届いたら、その件名をContosoチームの一般チャネルに投稿する」と書けと例示されています。入力の途中でCopilotが候補を提示するため、そこから選んでも同じ画面へ進めます。
デザイナーの中で編集を指示し、既存フローの説明を返させる方法
新規作成だけでなく、既存フローの編集にもCopilotペインが使えます。指示できるのはアクションの更新と置換、指定したアクションの削除、末尾へのアクション追加といった操作です。「メールではなくTeamsチャネルに投稿したい」「SharePointの各項目のタイトルがUSBに等しいか確認して、該当すればメールを送る」といった文でも編集を受け付けると例示されています。
読む側の用途もあります。「このフローは何をしますか」と尋ねればフローの要約が返り、フローの詳細を編集する場面では説明文の候補も提案されます。子フローへの入り方やライセンスの参照先といった製品ドキュメントの質問にも答え、Power Automateと現在のフローに関係のない質問は除外する挙動です。引き継ぎ資料が残っていない既存フローを読み解く場面では、この要約が入口になります。
対応コネクタが一部という制約と、新しいデザイナー限定という条件
制約は4点あります。第一に、Copilotがサポートするのは、Power Platformで使えるコネクタの一部です。第二に、英語での利用を前提に調整されており、他の言語のサポートは限定的で、画面の一部が日本語ではなく英語で表示される場合があります。第三に、Copilotが使えるのは新しいデザイナーだけで、クラシックデザイナーには機能そのものが出てきません。第四に、この機能はAzure OpenAI Serviceの上で動くため、組織として止めたい場合はPower Platform管理者がMicrosoftのサポートに連絡して無効化する運用になります。
エラー修正の扱いには注意が要ります。Copilotのトラブルシュート機能は、テスト時や実行履歴の確認時に発生したエラーの特定と解消を支援すると案内される一方、責任あるAIのFAQでは、現時点でCopilotはフローのエラー修正を支援する構成にはなっていないと明記されています。同じ2026年1月時点の2つのドキュメントで記述が分かれるため、エラー対応をCopilot前提で計画するのは避けてください。デザイナーでの変更はすべて人が確認し、必要なら元に戻す運用が前提として案内されています。フロー種別ごとの違いはPower Automateのクラウドフローとデスクトップフローの違いとは?トリガー種別・実行基盤・ライセンス差で選び分けるにまとめました。
AI Builderのモデル種別は学習の要否と文書タイプで枝分かれする
ここからAI Builder側です。モデルの選択を誤ると、学習に費やした時間がそのまま無駄になります。
事前構築済みモデルとカスタムモデルで、学習の手間が入れ替わる
AI Builderのモデルは、学習せずにそのまま呼べる事前構築済みモデルと、自社の文書を読ませて学習させるカスタムモデルに分かれます。請求書、領収書、身分証明書、名刺、テキスト認識、感情分析、言語検出、キーフレーズ抽出、カテゴリ分類、エンティティ抽出、翻訳は前者に属し、フローにアクションを置けば動きます。自社帳票の項目を抜き出したい場合や、独自の分類軸で仕分けたい場合が後者です。カスタムモデルとプロンプトは、作成とテストの段階ではクレジットを消費せず、フローやアプリで実行した時点から消費が始まります。
カスタムドキュメント処理の三つの文書タイプで学習時間が変わる
カスタムのドキュメント処理では、文書タイプを3つから選びます。固定テンプレート文書は以前は構造化と呼ばれていた種別で、同じレイアウトの中で項目や表、チェックボックス、署名の位置がおおむね揃っている帳票に向き、学習時間が短く済む設計です。一般文書は以前の非構造化にあたり、決まった構造が無い文書や形式が複雑な文書にも対応できる反面、学習に長い時間がかかります。請求書は、事前構築済みの請求書モデルに既定以外の項目を足したい場合や、うまく抜けなかった文書を学習させたい場合の選択肢です。
ドキュメント処理には二つの版があり、最後の編集時期で決まる仕組み
ドキュメントインテリジェンスのモデルにはv4.0とv3.1があり、どちらになるかは最後にモデルを編集した時期で決まります。v4.0はv3.1の機能をすべて備えたうえで、複雑なレイアウトで効く項目の重なりへの対応、契約書などで使う署名の検出、表とそのセルに対する信頼度スコア、文字認識エンジンの改善が入りました。設定から発行済みモデルのバージョンを開けば、最後に学習したモデルの版が確認できます。v3.1からv4.0へは、編集して再学習し発行し直すだけで移り、項目のタグ付けをやり直す必要はありません。
クレジットは二つの通貨を順に消費し、2026年11月に片方が消える
ここが本記事で最も見積もりに効く部分です。数値はいずれもMicrosoft Learnの記載で、2026年8月時点の値です。
先にAI Builderクレジット、尽きればコパイロットクレジットへ回る
2025年11月1日以降、Power AppsとPower AutomateのAI Builder機能は、まずAI Builderクレジットを消費します。無いか使い切っていればコパイロットクレジットを消費し、どちらも無ければ機能の実行そのものが止まる仕組みです。消費量は毎月1日にリセットされ、両方の通貨が環境に割り当てられていれば、翌月の頭からまたAI Builderクレジット側の消費に戻ります。未使用分は翌月へ繰り越されないため、購入と割り当ての量は、単月で見込む最大消費に合わせて決めるのが筋です。なお、エージェントとエージェントフローはコパイロットクレジットだけを消費します。
もう一つ、見落とすと請求の説明がつかなくなる挙動があります。AI Builderクレジットの消費量は定期的に計算されますが、理想は日次であるものの5日以上遅れることがあり、その間は直前の計算結果が有効なままです。超過していないという判断のもとでAI Builder側の消費が続き、結果として大きな超過が発生する場合があります。この超過は当該環境だけに影響し、請求されることはありません。計算が走った時点から、以降の実行がブロックされるか課金対象になるかが決まります。
販売終了から提供終了まで、日付ごとに起きることを押さえる判断軸
| 日付 | 対象 | 起きること |
|---|---|---|
| 2025年11月1日 | 新規の顧客 | 容量アドオンを購入できない |
| 2025年11月1日 | 全体 | 二つの通貨の併用が開始 |
| 2026年11月1日 | 既存のアドオン | 更新と追加購入が不可 |
| 2026年11月1日 | シード分 | 付与そのものが停止 |
表を言葉に直します。2025年11月1日にAI Builder容量アドオンの新規販売が終わり、それまでにアドオンを持っていなかった顧客は、以後コパイロットクレジットを買う形になりました。同じ日にAI Builderの試用版も廃止されています。2026年11月1日には、既存顧客もアドオンを更新できなくなり、プレミアムライセンスに付いていたシード済みクレジットの付与が止まる予定です。ただし2025年11月1日より前に始まった契約は契約期間中の権利が守られ、有効なアドオンを持つ顧客はライセンスが切れるまで手元のクレジットを使い切れます。シード分からコパイロットクレジットへの自動変換や移行は用意されていません。
機能ごとのレート表を読むと、通貨で単価が入れ替わる料金計算の仕組み
| 機能 | 単位 | コパイロット側 | AI Builder側 |
|---|---|---|---|
| カスタムドキュメント処理 | 1ページ | 8 | 100 |
| 請求書・領収書・身分証 | 1ページ | 8 | 32 |
| テキスト認識 | 1ページ | 0.1 | 3 |
| 物体検出 | 1画像 | 8 | 8 |
| プロンプト(基本) | 1kトークン | 0.1 | 1.2 |
| プロンプト(標準) | 1kトークン | 1.5 | 24 |
| プロンプト(上位) | 1kトークン | 10 | 182 |
| 感情分析・言語検出 | 1k文字 | 0.1 | 2 |
| 分類・エンティティ抽出 | 1k文字 | 1.5 | 20 |
| 名刺リーダー・予測 | 該当なし | 無料 | 無料 |
通貨が違えば数値の意味も違うため、単純な大小比較はできません。ドキュメントに併記された金額換算では、コパイロットクレジットは従量課金で1クレジットが0.01ドル、AI Builderクレジットは年間前払いのTier1アドオン(月間100万クレジットで月額500ドル)を基準としています。この前提で並べると、カスタムドキュメント処理は1ページ0.05ドルから0.08ドルへ、請求書や領収書は0.016ドルから0.08ドルへ動き、逆にテキスト認識は0.0015ドルから0.001ドルへ下がる計算です。自社の購入形態が前払いか従量かで基準そのものが変わるため、契約条件に合わせて引き直してください。権利区分と見積もりの手順はPower Automateの料金・ライセンスとは?Premium/Process/従量課金の区分と見積もり手順を解説【2026年版】で扱っています。
もう一点、クレジットとは別に効く条件があります。名刺リーダーを含むAI Builderのアクションはプレミアムコネクタに分類されるため、AI Builderのアクションを1つでも置いたフローはプレミアムフローとなり、Power Automateのプレミアムライセンスが要ります。従量課金の場合は各実行がクラウドフロー実行のメーターで課金され、これはAI Builderクレジットの消費とは別建てです。名刺リーダーのようにクレジット消費が無い機能でも、フロー側の課金は発生します。
帳票処理の実装では、入力条件とコレクション設計を先に決める実装方針
単価の目処が立ったら実装条件です。ここで挙げる数値は、要件定義の段階で施主側と握っておく類のものです。
ファイル形式とサイズの上限が、そのまま前段の設計を縛る入力条件
処理できる文書はJPG、PNG、PDFの各形式で、PDFはテキスト埋め込みでもスキャンでも構いませんが、文字の抽出と位置の誤りが出ない分だけテキスト埋め込みのほうが有利です。TIFFは学習には使えません。学習はPDFかJPGかPNGで行い、学習済みのモデルをPower Automateのクラウドフローで使う段になれば、TIFFからのデータ抽出ができます。パスワードで保護されたPDFは、投入前に保護を外す必要があります。1件あたりのサイズは20MBまで、画像の寸法は50×50ピクセルから10,000×10,000ピクセルの範囲です。紙からスキャンする場合は高品質な画像で取り込みます。前段のファイル置き場と権限の設計はPower AutomateのSharePoint連携とは?トリガー選定・無限ループ回避・権限設計を実装目線で解説を参照してください。
レイアウトごとのコレクションと、1件につき5件のサンプル要件
コレクションは、同じレイアウトの文書をまとめた単位です。処理したいレイアウトの数だけ作ります。取引先2社の請求書がそれぞれ独自の様式なら、コレクションは2つになります。各コレクションには最低5件のサンプル文書を投入する決まりで、自社文書で作るなら同一レイアウトの実物が5件必要です。手元に揃わない段階では、サンプルデータで組み立てておく手もあります。上限は1モデルあたり200コレクションまで、クラウドフローでタグ付けできる項目は300までです。抽出する項目は、テキスト、数値、日付、チェックボックス、表として定義し、数値は小数点の記号を、日付は年月日の並び順をそれぞれ指定します。
ページ境界をまたぐ項目と署名の扱いには逃げ道がない実装上の制約
制約は3つあります。ページの境界で分割される項目は現時点でサポートされません。ページをまたいで続く表の行も同様です。署名の抽出は固定テンプレート文書でのみサポートされます。この3つは回避策が用意されていないため、複数ページにまたがる帳票を扱うなら、前段で文書を分割してから投入する設計に倒すか、抽出対象からその項目を外す判断が要ります。言語については、固定テンプレート文書と一般文書のいずれも日本語に対応しており、日本語の帳票そのものが理由で使えないということはありません。読み取りを含む帳票処理の設計を外部と組む場合は、AI-OCR導入支援で扱っている精度検証と例外処理の切り分けが判断材料になります。
採用する条件と、いま見送るべき場面を条件付きで切り分ける導入判断
ここまでの制約を、着手の可否として言い切ります。判断の軸は、Copilotについては工程が実際に短くなるかどうか、AI Builderについては月間の処理量が読めるかどうかの2点です。
Copilotで短くなる工程と、短くならない工程を分けて数える
短くなるのは、単一トリガーと数個のアクションで済む新規フローの初期構造を起こす工程、既存フローの要約を出して仕様を書き起こす工程、製品仕様の調べ物をデザイナーから離れずに済ませる工程の3つです。ここは採用してよい範囲だと考えます。一方で短くならないのは、対応外のコネクタを含む構成、日本語で書いた込み入った条件分岐、失敗した実行の原因追跡でした。エラー対応をCopilot前提で計画に織り込むのは見送るべき場面にあたります。生成物をデザイナーで人が読み直す工数を最初から計上し、それを含めても速いかどうかで採否を決めてください。
通貨の切り替えを月間件数に掛け直してから、内製の可否を決める
AI Builderは、月間の処理ページ数が読めるなら内製で回せます。目安として、帳票の様式が数種類にとどまり、各様式で実物のサンプルが5件以上集まり、抽出項目が数十個の範囲に収まり、1件20MBと単一ページの制約に収まるなら、社内のPower Platform担当で完結できる規模です。判断の前に、現在のシード済みクレジットが2026年11月1日で外れる前提を置いて、コパイロットクレジット側のレートで月額を引き直します。カスタムドキュメント処理を月5,000ページ回す想定なら、レート表の8という数値がそのまま40,000クレジットとして効いてきます。
委託へ倒すのは、例外処理と基幹連携が主戦場になったときの判断基準
外部に出す判断になるのは、様式が数十種に増えて分類の前段が要る場合、抽出結果を基幹システムへ書き戻して整合を取る必要がある場合、読み取り失敗時の差し戻しと人手確認の導線まで設計する場合、監査のために処理履歴を残す要件がある場合です。この4つは、モデルの精度ではなく業務設計とシステム連携の話で、Power Platform単体の知識では閉じません。Power Automate導入支援・RPA移行では、この切り分けを含めた設計から対応しています。Excelを起点にした社内自動化から着手する場合の実装制約はPower AutomateのExcel操作とは?テーブル必須の制約・256行の壁・調整制限から実装を設計するにまとめました。
よくある質問
Copilotだけでフローを完成させられますか?
完成までは届きません。Copilotが返すのはトリガーと1つ以上のアクションからなる構造で、接続の設定は補助しますが、対応するコネクタはPower Platformの一部にとどまります。生成後はデザイナーで内容を確認し、必要に応じて元に戻す運用が前提として案内されています。
Copilotは日本語のプロンプトでも使えますか?
使えますが、英語での利用を前提に調整されており、他の言語のサポートは限定的です。画面の一部が日本語ではなく英語で表示される場合もあります。日本語で書くなら「XのときにYする」の形式を守り、コネクタ名を明示して短く区切ると生成が安定します。
AI Builderのモデルを作るだけでクレジットは減りますか?
減りません。カスタムモデルの作成とテストは、プロンプトを含めてクレジットを消費しない扱いです。消費が始まるのは、エージェント、エージェントフロー、アプリ、フローの中でモデルを実行した時点からになります。
無償のPower AutomateでAI Builderは使えますか?
使えません。名刺リーダーを含むAI Builderのアクションはプレミアムコネクタに分類され、AI Builderのアクションを含むフローはプレミアムフローとして扱われます。Power Automateのプレミアムライセンスが要り、従量課金の場合はクラウドフロー実行のメーターでも課金されます。
2026年11月以降、手元のクレジットはどうなりますか?
プレミアムライセンスに付いていたシード済みクレジットは、2026年11月1日をもって付与が止まり、以後は使えません。有効な容量アドオンを持っている場合は、更新や追加購入ができなくなる一方、契約が切れるまでは手元のクレジットで実行を続けられます。コパイロットクレジットへの自動変換はありません。
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