Cocos Creator(ココスクリエイター)は、中国のCocos社が開発する2D/3D対応のゲームエンジンです。エディタは無料で、ゲームのコードはTypeScriptで書き、Web・iOS・Android・WeChatなどのミニゲームへ同じプロジェクトから書き出せます。2026年10月時点の最新安定版は3.8.8(2025年12月16日公開)です。
2026年は大きな変化が続いています。1月にはエンジンとエディタを分離した次期版「COCOS 4」が発表され、10月からは版番号を変えずに既存のエディタへ新しい発行機能を足す「全版本更新」が始まりました。この記事では、3.8.8で何ができるか、インストールから最初のスクリプトまでの手順、Unity経験者向けの対応表、ライセンスの条件、そして10月の更新とCOCOS 4への向き合い方をまとめます。
まとめ:Cocos Creatorの現状と始め方の要点
- 現行の安定版は3.8.8。Cocos Dashboardから入れる、Windows・macOS用のエディタです。Linux版のエディタは無く、エディタの表示言語も中国語と英語だけです。
- スクリプトはTypeScriptが標準で、
@ccclassと@propertyのデコレータでコンポーネントを書きます。UnityのGameObjectはNode、MonoBehaviourはComponentに当たります。 - ビルド先はiOS・Android・HarmonyOS・Windows・macOS・Web・WeChat/抖音(Douyin)などのミニゲーム。Webとミニゲームに強いエンジンです。
- エンジンのソースはMITライセンスですが、3.x系のエディタは別の利用規約で配布されるクローズドソースです。ロイヤリティは不要です。
- 2026年10月1日から、親会社SUDの配信基盤「OpenPaaS」へ発行する機能が既存の各版に順次追加されています。公式も一部のプロジェクトで不具合が出たと認めているので、運用中のプロジェクトはバックアップを取ってから更新してください。
- COCOS 4(MIT)と新IDE「PinK」は2026年10月時点でもアルファ版です。製品として出すゲームは3.8系で作るのが現実的です。
Cocos Creatorの構成と現行バージョン
Cocos Creatorは「エンジン」と「エディタ」を1つの製品として配布してきました。公式FAQは、ゲームエンジンにUIツール群を組み合わせた開発環境であり、エディタはWindowsとMacに対応すると説明しています。
エンジン・エディタ・Dashboardの役割分担
- エンジン:ネイティブ向けのC++コアと、Web・ミニゲーム向けのTypeScriptコアの二本立てです。GitHubのcocos/cocos-engineで公開され、ライセンスはMITです。
- エディタ:シーン編集・アセット管理・プレビュー・ビルドを担う、Electron製のデスクトップアプリです。ソースは公開されていません。
- Cocos Dashboard:エディタの複数バージョンとプロジェクトをまとめて管理するランチャーです。エディタはここから入れます。配布中の版はv2.2.2(2026年9月16日公開)です。
Dashboard 2.2.2では、エンジンの一括アップグレード、OpenPaaSの入口、SUDアカウントとの連携が加わりました。公式フォーラムの更新ガイドによると、インストール済みのDashboardはネットに接続すると自動で2.2.2に更新され、Dashboardへのログインで同時にSUDアカウントが登録・連携されます。
3.8系のリリース履歴と4.0の開発状況
3.8系は2023年から続くマイナー版で、2025年はパッチ版が3本出ました。GitHubのリリース一覧の公開日(UTC)は次のとおりです。
| バージョン | 公開日 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 3.8.6 | 2025-03-27 | 安定版 |
| 3.8.7 | 2025-08-22 | 安定版 |
| 3.8.8 | 2025-12-16 | 最新の安定版 |
| 3.8.8+patch.1 | 2026-10-08 | OpenPaaS対応のブランチ |
| 3.8.9 | 未公開 | 開発中(既定ブランチ) |
| COCOS 4.0.0-alpha.1 | 2025-12-30 | アルファ版 |
| COCOS 4.0.0-alpha.35 | 2026-10-13 | アルファ版 |
3.8.8ではAndroidの16KBページサイズ対応、WebGL2とWebGPUでのMSAA対応、HarmonyOS Nextのゲームコントローラ対応などが入りました。Google Playの16KBページサイズ要件には、3.8.8へ上げたうえで、組み込むSDKや共有ライブラリも16KB対応かを確かめる必要があります。
Cocos2d-x・Cocos Studioとの関係
Cocos CreatorはC++製フレームワーク「Cocos2d-x」の後継です。Cocos2d-xの最終タグは2019年11月の4.0で、リポジトリのREADMEは新規ユーザーにCocos2d-xを勧めず、Cocos Creatorを使うよう案内しています。
Cocos2d-x向けのUIエディタだった「Cocos Studio」は、2016年3月末に公式フォーラムで開発打ち切りの方針が話題になり、以後はCocos Creatorが後継になりました。この時代のアプリを引き継ぐ場合は、更新の止まったCocos2d-xのまま保守するか、Cocos Creatorへ移すかを先に決めることになります。
2026年10月の全版本更新:版番号を変えずに発行機能を追加
2026年10月1日、Cocosは「COCOS全版本升级(全版本アップグレード)」を始めました。告知は、この更新ではCreatorの版番号は変わらず、既存の開発の流れにも影響せず、新しい発行先が増えるだけだと説明しています。3.8.8を使っていても、ある日エディタに更新の通知が届き、適用すると中身が変わる、という形です。
追加された機能:OpenPaaSへの発行と実機プレビュー
- Build All:1つのプロジェクトを複数の配信先へ一括で書き出す機能です。書き出し先にはSUDの配信基盤OpenPaaSが含まれ、公式は「3,000を超えるプラットフォームへ同期できる」としています。ただし既存のプロジェクトは、OpenPaaSのインターフェース文書に沿ってログインや課金などの連携を実装してからでないと発行できません。
- ビルド画面の再編:発行先が「端末(X-Device)」「アプリ(X-Application)」「シーン(X-Scenario)」の3つに分けられました。ネイティブ端末向けは端末、ミニゲームなどの各プラットフォームはアプリの分類に入ります。右上の従来の「Build」入口も残っています。
- Hello PinKによる実機プレビュー:10月17日の第2弾で、スマートフォンアプリ「Hello PinK」でQRコードを読み、実機でプレビュー・デバッグする機能が入りました。手順の解説によると、Androidではデバッグまでできますが、iOSはプレビューだけでデバッグできず、パッケージは本体・分割とも500MBまで、分割パッケージは50個までです。
第1弾は10月1日、16版を対象にした第2弾は10月17日に配信され、第2弾の告知では10月24日・30日にも続報を出して2.x系と3.x系の全版へ広げる計画が示されています。11月からは、エディタ内の「アプリへの発行」をSUDが対応する3,000超のアプリへ順次広げ、「シーンへの発行」としてプレイアブル広告なども開放する予定です。
既存プロジェクトの更新前バックアップと互換性確認
第2弾の告知で、公式は「第1弾の版で、一部のプロジェクトに安定性と互換性の問題が出た」と認め、一部は修正済みとしています。告知スレッドには、更新後にプロジェクトを開くとエラーが出る、WeChat向けに書き出したcc.jsが12.5MBに増えた、元の版に戻したいといった利用者の報告が並んでいます。10月24日に告知スレッドを確認した範囲では、戻し方を問う声に対して公式は個別に連絡を求める返答をしており、一般向けの手順は示されていません。戻し方を確かめられるまでは、運用中の環境への適用を見送るのが安全です。
OpenPaaSへ出す予定が無いなら、運用中のプロジェクトに急いで適用する理由はありません。適用するなら、次の順で進めてください。
- プロジェクトをGitなどでコミットし、ビルド設定(
profilesフォルダ)を含めて戻せる状態にします。 - 更新はエディタとエンジンごと置き換わるので、プロジェクトをコピーするだけでは本番環境を守れません。本番で使っているPCのエディタは更新せずに残し、別のPCにコピーしたプロジェクトで更新を当てて、ビルドと書き出しサイズを確かめます。
- エンジンを改造したカスタムエンジンを使っている場合は、公式スタッフの回答どおり、改造元の版に対応する
+patch.1ブランチを自分の改造版にマージします。3.8.8が元ならv3.8.8+patch.1で、3.0.0から3.8.7までの各版にも同名のブランチがありますが、2.x系向けのブランチは10月24日時点でリポジトリにありません。package.jsonを変えていれば衝突の解消も要ります。
OpenPaaSと各プラットフォームの関係にも注意が要ります。公式チームはフォーラムで、OpenPaaSとWeChatミニゲームは並列の配信先であり、WeChatへの提出は今後もWeChat開発者ツールから行う必要がある(Cocosからの直接アップロードは交渉中)と回答しています。OpenPaaSの英語表示は開発中で、まだ使えないとも回答しています(いずれも2026年10月15日の公式チームの回答)。配信に必要な資格は配信地域によって変わり、アップロード時に配信地域を選ぶ仕組みなので、日本向けに使う場合は対象地域と条件を先に確かめてください。
COCOS 4とPinK:エンジンとIDEの分離後の開発体制
Cocosは2025年11月、ゲーム配信プラットフォームのSUDに7,200万ドルで買収されました。その後、2025年12月30日に公式フォーラムで、2026年1月4日にプレスリリースで発表されたのが、エンジンとエディタの分離です。
COCOS 4の名称・ライセンス・開発環境の変更点
- 名称の分離:これまで「Cocos Creator」はエンジンとエディタの総称でした。今後「COCOS」はエンジンだけを指し、メジャー版が4に上がります。
- ライセンス:COCOS 4は標準のMITライセンスで、Cocos Creatorに含まれていた商用関連の条項はすべて削除されたと発表されています。
- CLI化:クロスプラットフォームのビルド処理とエディタの中核機能は
cocos/cocos-cli(MIT)としてコマンドライン化され、エディタなしで動くヘッドレスモードへ移っていきます。 - 新IDE「PinK」:エディタの後継で、AIエージェントを組み込んだ開発環境です。2026年10月19日公開の0.0.1.39もアルファ版で、使うには招待コード(激活码)が必要です。公式は本番環境で使わないよう注意しています。
- 互換性:COCOS 4はCocos Creator 3.xの発展版と位置づけられ、SemVerに従い、非推奨から削除まで最低6か月を置くとされています。
- 3.x系の扱い:「3.xは今後も更新されるか」という質問に対し、2025年12月の時点で公式アカウントは重大な問題と深刻なバグは修正するが新機能は出さない、中核機能とエディタはPinKへ統合すると回答していました。実際には2026年10月の全版本更新で発行機能が足されているので、この回答は「エディタの機能開発の主軸はPinKへ移る」という意味で読むのが妥当です。
PinKについては、0.0.1.39の告知で「今月中にベータ版へ移り、公開テストとして招待コードが不要になる」と予告されています。予告どおりなら、10月中のベータ公開後は招待コードなしで試せる予定です。
AI連携とcocos-cliの現状
COCOS 4のAI連携では、cocos-cliが提供するMCPサーバー機能を確認できます。cocos start-mcp-serverというコマンドで、プロジェクトをMCP(Model Context Protocol)サーバーとして公開し、AIエージェントから操作できます。
cocos create --project ./my-project
cocos build --project ./my-project --platform web-mobile
cocos start-mcp-server --project ./my-project --port 9527
2026年10月19日時点の最新リリースは0.0.1-alpha.44で、前提はNode.js 22.17.0です。npmの公開パッケージではなく、リポジトリをcloneしてビルドし、npm linkで入れる手順になっています。開発ブランチのpackage.jsonは0.2.0-beta.0に上がり、PinK 0.0.1.39以降を前提にしているので、PinKのベータ移行と歩調を合わせて動いていると読めます。
3.8で始めるかCOCOS 4を待つかの判断
いまから製品として出すゲームを作るなら、3.8.8で始めてください。COCOS 4は2025年12月30日のalpha.1から約10か月、alpha.35まで進んでもアルファ版のままです。3.x系については重大な不具合を修正する方針が示されており、2026年10月には発行機能と実機プレビューも追加されました。COCOS 4も3.xからの前方互換を掲げています。WeChatやDouyinのミニゲームを主な配信先にするなら、COCOS 4を待つ理由はありません。
COCOS 4を先に触る価値があるのは、エンジンを改造して自社ツールとして配りたい場合と、CI上でエディタなしにビルドしたい場合です。開発ツールとしての再配布は3.x系の規約で禁じられています。3.x系のCIビルドはコマンドラインからの発行として公式に案内されていますが、エディタとGUI環境が必要です。ミニゲームやWebゲームの開発体制から相談したい場合は、当社のゲームアプリ開発でも対応しています。
ライセンスと商用利用の条件
「無料・オープンソース」とひとまとめにされがちですが、3.x系はエンジンとエディタでライセンスが違います。
| 対象 | ライセンス | 商用ゲーム | 改変・再配布 |
|---|---|---|---|
| 3.x エンジン | MIT | 可 | ゲームへの組み込みは可 |
| 3.x エディタ | 独自の利用規約 | 可(ロイヤリティなし) | 不可 |
| COCOS 4・cocos-cli | MIT | 可 | 可 |
エンジンリポジトリに同梱されたエディタの利用規約(EDITOR_license_and_terms_en.txt)は、1.2項で「ロイヤリティ不要・非独占・取り消し可能」な利用権を、アプリやゲームの開発目的に限って与えています。1.3項では、エディタの逆コンパイル、フォーク、開発ツールとしての再配布を禁じています。前文には、改変したエンジンでゲームを作るのは自由でも、Cocos Creatorのコードをもとにした開発ソフトを再配布・公開してはならないと書かれています。
本体の利用料と売上に応じたロイヤリティはかかりません。OpenPaaSで配信する場合の収益分配について、公式チームはフォーラムで「開発者はOpenPaaSとの分配だけを考えればよく、詳細は商談で決める」と回答しています(2026年10月15日)。契約条件は個別に確かめてください。
Cocos Creatorのインストール手順
エディタ本体を直接入れるのではなく、先にCocos Dashboardを入れます。公式ドキュメント(3.8版)のインストール手順は次のとおりです。
- 公式サイトのダウンロードページからDashboardのインストーラーを入手します。Windowsは.exe、macOSは.dmgです。
- Windowsは既定で
C:\CocosDashboardに入ります。macOSはCocosDashboard.appをアプリケーションフォルダへドラッグします。 - Dashboardを起動し、Cocosの開発者アカウントでログインします(未登録なら画面の「Register」から作成)。2.2.2では、このログインでSUDアカウントも自動で作られます。
- Dashboardのエディタ一覧から3.8.8を選んでダウンロードします。
- プロジェクト画面右上の新規作成から、テンプレート(Templates)かサンプル(Examples)を選び、使うエディタのバージョン・プロジェクト名・保存先を指定して作成します。
エディタを起動したら、環境設定(Preferences)の「General」で表示言語を選べます。選択肢は中国語と英語の2つだけで、日本語の表示はありません。メニューやエラーメッセージは英語で読む前提で準備してください。
エディタの対応OSと起動・インストール時の対処
ダウンロードページで配布されている3.8.8のエディタは、macOS用とWindows用のZIPだけです。Linuxではエディタを動かせません。エンジンのリポジトリにはLinux向けのビルドテンプレートがありますが、公開ドキュメントのビルド先一覧には載っていません。標準エディタでのLinux開発とLinuxネイティブ向けの配信は、対応範囲の外と考えてください。Linux上のブラウザでWeb版のゲームを遊ぶこととは別の話です。
- 「This browser does not support WebGL」と出る:エディタはGPUで描画するため、グラフィックドライバが古いと起動できません。GPUメーカーが提供する対応ドライバを確認し、更新または再インストールを試してください。
- macOSで開けない:Finderで右クリックから「開く」を選び、「システム設定」の「プライバシーとセキュリティ」で許可します。
- 同じバージョンのDashboardを上書きできない:Windowsでは、同じ版番号のインストーラーは上書きされません。旧版をアンインストールしてから入れ直します。
公式ドキュメントの最小要件はWindows 7(64bit)とOS X 10.9のままですが、これはDashboardについての古い記述です。実際には、現行のドライバが提供されているWindows 10/11か、最近のmacOSを用意してください。
ビルドできるプラットフォーム
ネイティブ向けはC++コア、Webとミニゲーム向けはTypeScriptコアで動く二重構成なので、1つのプロジェクトから次の配信先へ書き出せます(3.8版ドキュメントのビルド先一覧より)。
| 分類 | 配信先 |
|---|---|
| モバイル | iOS / Android / Google Play / HarmonyOS / HarmonyOS Next |
| デスクトップ | Windows / macOS / Google Play Games(PC) |
| Web | Web Mobile / Web Desktop / Facebook Instant Games |
| 中国向けミニゲーム | WeChat / Douyin / Alipay / Taobao / Baidu |
| その他のミニゲーム | OPPO / vivo / Huawei / Honor / Migu(3.8.5以降) |
UnityやGodotと比べると、中国のミニゲーム基盤への書き出しが公式に揃っている点が目立ちます。反対に、家庭用ゲーム機は一般配布版のビルド先一覧にありません。Nintendo Switch向けには2022年に「Cocos Creator for Nintendo Switch」が別途提供されましたが、利用には任天堂が承認したSwitch開発者であることが条件です。Steamは、COCOS 4の発表で今後サポートする対象として挙げられた段階です。
iOSとAndroidへのネイティブビルドには、Cocos Creatorとは別にXcodeやAndroid Studio・JDK・Android SDK・NDKを用意します。ネイティブ開発環境の公式ガイドでは、3.8.0以降の組み合わせをAndroid Studio 2022.2.1か2022.3.1とJDK 17とし、NDKはr21〜r23(Apple Mシリーズのマシンはr24)を推奨しています。Google Play向けのApp Bundle(AAB)は、Androidのビルド設定で「Generate App Bundle(Google Play)」を有効にすると出力されます。全版本更新の「Build All」を使っても、これらの環境は省けません。
Webだけに出す2Dゲームで、エディタが要らない場合は、描画ライブラリのPixiJSや、コードだけで作るフレームワークのPhaser.jsのほうが軽く済みます。Web向けの描画の仕組みはWebGLの解説にまとめています。
TypeScriptでのスクリプトとライフサイクル
エンジンのAPIはすべてccモジュールにあり、ES6のimportで読み込みます。スクリプトはComponentを継承したクラスとして書き、エディタでノードに付けると動きます。3.8ではJavaScriptも使えますが、プラグインスクリプトとしての読み込みに限られるため、コンポーネントはTypeScriptで書くのが前提です。
TypeScriptによる矢印キー移動コンポーネント
左右の矢印キーでノードを動かすコンポーネントです。コードをPlayerMove.tsとしてassets内に保存し、シーン内の表示用ノードに追加して、キーボードを使えるプレビュー環境で確認します。@propertyを付けたspeedは、エディタのインスペクタから値を変えられます。3.8.8の公式型定義(@cocos/[email protected])に対して、TypeScript 5.9.3(strict・experimentalDecorators有効)で型チェックを通しています。エディタ上での動作確認とは別の検証です。
import { _decorator, Component, input, Input, EventKeyboard, KeyCode, Vec3 } from 'cc';
const { ccclass, property } = _decorator;
@ccclass('PlayerMove')
export class PlayerMove extends Component {
@property
speed = 300; // 1秒あたりの移動量(親ノードのローカル座標単位)
private leftPressed = false;
private rightPressed = false;
private readonly pos = new Vec3();
onLoad() {
input.on(Input.EventType.KEY_DOWN, this.onKeyDown, this);
input.on(Input.EventType.KEY_UP, this.onKeyUp, this);
}
onDestroy() {
input.off(Input.EventType.KEY_DOWN, this.onKeyDown, this);
input.off(Input.EventType.KEY_UP, this.onKeyUp, this);
}
update(dt: number) {
const dir = Number(this.rightPressed) - Number(this.leftPressed);
if (dir === 0) return;
this.node.getPosition(this.pos);
this.pos.x += dir * this.speed * dt;
this.node.setPosition(this.pos);
}
private onKeyDown(e: EventKeyboard) {
this.setKey(e.keyCode, true);
}
private onKeyUp(e: EventKeyboard) {
this.setKey(e.keyCode, false);
}
private setKey(code: KeyCode, pressed: boolean) {
if (code === KeyCode.ARROW_LEFT) this.leftPressed = pressed;
if (code === KeyCode.ARROW_RIGHT) this.rightPressed = pressed;
}
}
左右のキーは押下状態を別々に持ち、updateで「右−左」から向きを決めています。左を押したまま右を押して離しても、左への移動が続きます。updateの引数dtは前フレームからの経過秒数で、速度に掛けておくとフレームレートが変わっても移動速度が変わりません。
ライフサイクルの呼ばれる順番
コンポーネントのコールバックは、onLoad→onEnable→start→update→lateUpdate→onDisable→onDestroyという流れが基本です。ただし、updateとlateUpdateは有効な間の各フレームで繰り返され、onEnableとonDisableも有効・無効の切り替えに応じて繰り返されます。使い分けは次のとおりです。
onLoad:ノードが初めて有効になったときに1回だけ呼ばれます。他ノードの参照取得やイベント登録はここで行います。start:最初のupdateの直前に1回呼ばれます。他コンポーネントのonLoadが終わった後の値を使う初期化に向きます。onDestroy:onLoadで登録したinput.onをinput.offで外します。外し忘れると、ノードを破棄した後もハンドラが呼ばれ続けます。
注意点として、ccはCocos Creatorの予約語です。const cc = {}のようにグローバルで同名の変数を作ったり、import * as cc from 'cc'と書いたりするとエラーになります。
Unity経験者向け:用語と作業の対応表
Cocos公式はUnity開発者向けのクイックガイドを出しており、エディタの画面配置もUnityに近い作りです。ガイドの記述をもとに、名前が違うものを対応させると次のようになります。
| Unity | Cocos Creator 3.8 |
|---|---|
| Unity Hub | Cocos Dashboard |
| GameObject | Node |
| MonoBehaviourを継承(C#) | Componentを継承(TypeScript) |
| Animator(状態マシン) | Marionetteアニメーションシステム |
| .shader(Cg/HLSL/GLSL) | .effect(GLSL+YAML) |
| Debug.Log | console.log、またはccのlog |
| Visual Studioでのデバッグ | VS Codeかブラウザの開発者ツール |
独自シェーダーを持つプロジェクトは、シェーダーを書き直す作業が必ず発生します。Cocos CreatorのシェーダーはGLSLだけで書き、パスやプロパティの定義はYAMLで書くCocos Effect形式なので、UnityのShaderLabやHLSLの資産はそのまま持ち込めません。状態マシンはMarionetteで組み直します。逆に、テクスチャやFBXの取り込み、Prefab、シーン、インスペクタでの値の調整はUnityとほぼ同じ感覚で扱えます。
ログはimport { log, warn, error } from 'cc'で読み込んで使えます(3.8.8の型定義で確認)。ブレークポイントは、VS Codeのデバッガーか、ブラウザでプレビューしたゲームに対する開発者ツールで置きます。
UnityやGodotと比べたときの向き・不向き
選ぶ基準は、配信先と使いたい言語です。
| 観点 | Cocos Creator 3.8 | Unity 6 | Godot 4.7 |
|---|---|---|---|
| 主な言語 | TypeScript | C# | GDScript / C# |
| エディタのOS | Windows / macOS | Windows / macOS / Linux | Windows / macOS / Linux |
| エディタの日本語表示 | なし(中国語・英語) | あり | あり |
| エンジンのライセンス | MIT(エディタは独自規約) | 商用(プラン制) | MIT |
| 強い配信先 | Web・中国ミニゲーム | モバイル・PC・家庭用機 | PC・モバイル・Web |
Cocos Creatorが合うのは、WeChatやDouyinのミニゲームに出す場合、Webブラウザで軽く動く2Dゲームを作る場合、チームがTypeScriptに慣れている場合です。
逆に、次の条件に1つでも当てはまるなら、Cocos Creatorは選ばないほうがよいでしょう。家庭用ゲーム機での発売を予定している、Linuxで開発したい、日本語のエディタや資料・求人の多さを優先したい、大規模な3Dゲームを作る、のいずれかです。加えて2026年は、全版本更新とCOCOS 4への移行で開発環境が数か月単位で変わっています。仕様の変化を追いかける余力のないチームにも勧めにくい時期です。家庭用機と大規模3DならUnity 6.3 LTS、Linuxでの開発とMITライセンスを重視するならGodotが候補になります。
よくある質問
Cocos Creatorは無料で使えますか?
はい。エディタは無料で配布され、ゲームを販売してもロイヤリティはかかりません。エンジンのソースはMITライセンスです。ただし3.x系のエディタは独自の利用規約で配布されており、エディタのフォークや開発ツールとしての再配布は禁止されています。
Cocos CreatorはLinuxで使えますか?
使えません。3.8.8のエディタとCocos Dashboardは、WindowsとmacOS向けにだけ配布されています。Linuxで開発したい場合は、エディタを含めてLinuxに対応したGodotなどを選ぶことになります。
Cocos Creator 4(COCOS 4)はもう使えますか?
GitHubのcocos/cocos4で公開されており試せますが、2026年10月13日公開の最新版も4.0.0-alpha.35のアルファ版です。名称も「Cocos Creator 4」ではなく、エンジンを指す「COCOS 4」に変わりました。エディタは新IDEの「PinK」が引き継ぐ方針で、PinKも本番利用は勧められていません。PinKは10月中にベータ版へ移り、招待コードなしで公開テストになると予告されています。
Cocos Creatorの案件や副業ではどんなスキルが求められますか?
TypeScriptでコンポーネントを書けること、3.8系のエディタでシーンとプレハブを組めることが前提になります。加えて、WeChatなどのミニゲームやWebへの書き出し、iOS・Android向けのネイティブビルド(XcodeとAndroid Studioの設定)、2.x系で作られた既存アプリを3.x系へ移す作業の経験があると、担当できる範囲が広がります。既存案件を引き受けるときは、使っているエディタの版と、2026年10月の全版本更新を当てたかどうかを最初に確かめておくと、不具合の切り分けがしやすくなります。
Cocos CreatorとCocos2d-xの違いは何ですか?
Cocos2d-xはC++やLuaでコードを書くフレームワークで、エディタを持ちません。最終版4.0の公式CHANGELOG上の公開日は2019年12月3日で、現在は新規利用が推奨されていません。Cocos Creatorはエディタを中心にした後継製品で、TypeScriptで開発します。