Siv3D(シブスリーディー)は、C++のコードだけで2Dゲームやビジュアライザ、GUIアプリを作るためのオープンソースのフレームワークです。MITライセンスで無料、商用作品にも使えます。2026年10月時点の最新安定版はv0.6.16(2025年4月7日リリース)で、次期版v0.8は開発中です。
この記事では、Siv3Dでできることと向いている用途、OS別の動作要件、Windows・macOS・Ubuntuへのインストール手順を公式情報で整理します。あわせて、Ubuntu 22.04のコンテナでv0.6.16をソースからビルドし、記事内のゲームのコードが動くことを確かめた結果と、公式手順だけでは詰まる点も載せています。
まとめ:Siv3Dの要点
- 何か:専用エディタを使わず、C++20のコードだけで2Dゲームや可視化ツールを書くフレームワーク。描画・音声・入力・2D物理演算・GUI・HTTP通信まで標準で入っている
- 費用:MITライセンスで無料。商用利用もできるが、配布時はSiv3Dと同梱ライブラリのライセンス表示が必要(実行中にF1キーで表示される)
- 最新版:安定版はv0.6.16。v0.8は別リポジトリで開発中で、2026年10月時点でリリースは0件
- 対応環境:Windows 10/11(Visual Studio 2022 17.14または2026)、macOS Ventura〜Tahoe(Xcode 14.3以降・Apple SiliconはRosetta経由)、Ubuntu 20.04/22.04(ソースからビルド)。Web版は有志による非公式版
- 始め方:WindowsはVisual Studio(C++によるデスクトップ開発)を入れた後、SDKインストーラを実行するだけで済む。Ubuntuは公式のCI設定どおりに入れても、素の環境では
build-essential・cmake・gitが別に要る - 向く人・向かない人:C++を学びながら作品を作りたい人、競技プログラミングや研究で可視化が欲しい人に向く。スマホアプリとして配信したいならUnityやGodotなどを選ぶ。家庭用ゲーム機向けは、どのエンジンでもメーカーの承認と専用SDKが前提になる
Siv3Dの特徴と向いている用途
Siv3Dは、鈴木遼(Ryo Suzuki)氏(GitHub: Reputeless)が中心となって開発しているC++20のフレームワークです。公式サイトは用途として「最新の C++ の学習」「フリーゲーム・商用ゲームの開発」「プログラミングコンテストにおける情報可視化・GUI」「研究のためのソフトウェア開発」などを挙げています。
UnityやUnreal Engineとの一番の違いは、シーンを編集する専用エディタが無く、作品をC++のコードで組み立てる点です。Main()関数を1つ書けばウィンドウが開き、1つの.cppファイルで小さなゲームが完成します。公式トップの紹介値では、Windows向けSDKのインストーラは約180MBで、本体は約2,200ファイルのソースと90のサードパーティ・ソフトウェアで構成されています。
全国高等専門学校プログラミングコンテストの第34回大会(2023年)競技部門では、優勝・準優勝・3位・特別賞をSiv3Dを使ったチームが占めました。公式トップは、第33回・第29回大会の優勝チームもSiv3Dを使ったと紹介しています(「出場校の3分の1以上」という紹介もありますが、対象の大会は書かれていません)。第35回(2024年)・第36回(2025年)でも、徳山高専や東京高専などのチーム紹介資料に使用ライブラリとしてSiv3Dが挙がっています。
MITライセンスと商用利用の条件
Siv3DはMITライセンスで公開されており、商用作品を販売してもSiv3Dへのロイヤリティは発生しません。公式サイトも、サードパーティ・ライブラリを含めて商用利用を妨げる条件は無いと明記しています。
守るべき条件は1つで、作品を配布するときはSiv3Dと内部で使っているライブラリのライセンス表示が必要です。Siv3Dのアプリは実行中にF1キーを押すとライセンス一覧がブラウザで開くので、その旨をREADMEに書くか、LicenseManager::ShowInBrowser()を呼ぶボタンをアプリ内に置けば条件を満たせます(手順は配布の章)。
標準で使える機能の範囲
GitHubのREADMEの機能一覧から、ゲーム制作で使う頻度が高いものを抜き出すと次のとおりです。
- 描画:2D図形・画像・テキスト(ビットマップ/SDF/MSDFフォント)、動画、HLSL・GLSLのカスタムシェーダー。3DはOBJモデル・基本図形・自作メッシュの描画に対応
- 音声:WAVE・MP3・OggVorbis・Opus・MIDIなどの再生、ループ、フェード、フィルタ、FFT
- 入力:キーボード・マウス・ゲームパッド・Webカメラ・マイク・Joy-Con
- その他:Box2Dによる2D物理演算、ボタンやスライダーなどの簡易GUI(
SimpleGUI)、シーン遷移、HTTPクライアント、Photon SDKを使ったマルチプレイヤー、OpenAI APIの呼び出し
3D描画はできますが、標準で組み込まれている物理演算は2D(Box2D)です。2Dゲーム、パズル、シミュレーションの可視化はSiv3Dだけで完結し、3D物理が要る作品では別のライブラリを組み込む前提になります。
Siv3DとOpenSiv3Dの名称
ダウンロードファイル名やGitHubのリポジトリ名に出てくる「OpenSiv3D」は、現在のSiv3Dの旧称です。READMEには「Siv3D (formerly known as OpenSiv3D)」とあり、SDKのファイル名(OpenSiv3D v0.6.16 Installer)やVisual Studioのテンプレート名には今も旧称が残っています。検索で両方の名前が出てきても、同じフレームワークです。名称の経緯と次期版での扱いはSiv3D v0.8の開発状況とv0.6.16との違いで扱っています。
Siv3D v0.6.16の対応OSと動作要件
公式ダウンロードページに載っている、開発する側の要件です。WindowsとmacOSはSDK(またはプロジェクトテンプレート)を入れるだけで始められ、Ubuntuはソースからのビルドが前提です。
| OS | 対応バージョン | 開発環境 | 導入方法 |
|---|---|---|---|
| Windows | 10(64bit)/11 | Visual C++ 2022 17.14 または 2026 | SDKインストーラ |
| macOS | Ventura/Sonoma/Sequoia/Tahoe | Xcode 14.3以降 | プロジェクトテンプレート |
| Ubuntu | 20.04 LTS/22.04 LTS | GCC 9.3.0/11.2、Clang 14.0.0 | ソースからビルド |
| Web(非公式) | ブラウザ | Visual Studio+Emscripten | 有志のSDK |
CPUはWindows・UbuntuともIntelまたはAMD製が要件で、Arm版Windowsは含まれていません。Apple Silicon(M1〜M5)のMacは、v0.6.16ではRosettaモードで動き、ネイティブ対応はv0.8からの予定です。作ったアプリを動かす側の要件はもう少し広く、WindowsはWindows 8.1(64bit)、macOSはMontereyから対象に入っています。
Web版は公式で「Siv3D の使用に慣れた中級者以上を対象」と位置づけられた非公式の拡張です。公式手順で入るSDKはv0.6.6相当で、v0.6.16の機能を取り込んだSDKを有志が別に配布しています。ビルドには通常版の数倍の時間がかかり、出力される.html・.js・.data・.wasmの4ファイルをWebサーバーに置いて公開します。WebAssemblyの仕組みはWebAssembly(Wasm)の解説が参考になります。
Siv3Dのインストール手順
Windows:Visual StudioとSDKインストーラ
- Visual Studio Community 2026(または2022の17.14以降)をインストールし、ワークロードで「C++によるデスクトップ開発」を選ぶ
- 公式のWindows版ダウンロードページから「OpenSiv3D v0.6.16 Installer for Windows Desktop」を入手して実行する。「WindowsによってPCが保護されました」と出たら「詳細情報」から「実行」を押す
- Visual Studioの「新しいプロジェクトの作成」でテンプレート「OpenSiv3D」を選び、プロジェクトを作る
- 最初から入っている
Main.cppをビルドし、「デバッグの開始」で実行する。ウィンドウを閉じるかEscキーで終了する
インストーラは、SDKの配置(既定はドキュメントフォルダ)、SDKのパスを指すユーザー環境変数の設定、Visual Studio用プロジェクトテンプレートのコピーを自動で行います。Visual Studio 2026では、テンプレートの置き場所が「Visual Studio 2022」ではなく「Visual Studio 18」フォルダになります。管理者権限が無くインストーラを実行できないPCでは、公式ページの手動インストール手順を使います。Visual Studio 2026と2022の違いはVisual Studio 2026の新機能とシステム要件にまとめています。
macOS:Xcodeとプロジェクトテンプレート
- App StoreからXcodeを入れる(OSが古くて入らない場合はApple Developerサイトから14.3などの旧版を入手)
- 公式のmacOS版ダウンロードページから「OpenSiv3D v0.6.16 Project Templates for macOS」をダウンロードして展開する
examples/empty/empty.xcodeprojをXcodeで開き、実行ボタンを押す。新しいプロジェクトはemptyフォルダを同じ階層にコピーして作る
Apple Silicon搭載のMacでは、実行前にRosettaの実行先を選びます。Xcode 15.3以降は「Product」メニューの「Destination」から「Show All Run Destinations」を選ぶと、Rosetta付きの実行先が出てきます。プロジェクトフォルダをデスクトップやダウンロードに置くと実行のたびにファイルアクセス許可のダイアログが出るので、ホームフォルダ直下の「アプリケーション」フォルダへ移します。最近のXcodeでは、実行できてもエディタにエラーのような赤い表示が出ることがありますが、公式は実行に影響しない不具合だとしています。
Ubuntu:ソースコードからのビルド
Ubuntu版はSDKの配布が無く、公式はGitHubのmainブランチ(最新安定版)を取得してビルドするよう案内しています。公式のUbuntu版ページは手順としてCIの設定ファイル(.github/workflows/ubuntu.yml)を参照しています。これに素のUbuntuで足りなかったパッケージ(次章)を加え、検証結果を再現できるよう取得元をv0.6.16のタグに固定したものが次のコマンドです。
sudo apt update
sudo apt install -y build-essential cmake git ninja-build libasound2-dev libavcodec-dev libavformat-dev libavutil-dev libboost-dev libcurl4-openssl-dev libgtk-3-dev libgif-dev libglu1-mesa-dev libharfbuzz-dev libmpg123-dev libopencv-dev libopus-dev libopusfile-dev libsoundtouch-dev libswresample-dev libtiff-dev libturbojpeg0-dev libvorbis-dev libwebp-dev libxft-dev uuid-dev xorg-dev
git clone --depth 1 --branch v0.6.16 https://github.com/Siv3D/OpenSiv3D.git
cd OpenSiv3D/Linux
mkdir build && cd build
cmake -GNinja -DCMAKE_BUILD_TYPE=RelWithDebInfo ..
cmake --build .
sudo cmake --install .
cd ../App
mkdir build && cd build
cmake -GNinja -DCMAKE_BUILD_TYPE=RelWithDebInfo ..
cmake --build .
cd .. && ./Siv3DTest
Linuxディレクトリでライブラリ本体(libSiv3D.a)をビルドして/usr/localへインストールし、Linux/Appで自分のアプリをビルドします。実行ファイルSiv3DTestはbuildではなくApp直下にできます。App/Main.cppの既定のコードは標準出力に書いてすぐ終わるプログラムなので、ウィンドウを出すには後述のゲームのコードで上書きします。GPUはOpenGL 4.1対応が要件です。OpenGLの版の確認方法はOpenGLの最新版と確認方法を参照してください。
インストール直後によく出るエラーと対処
- テンプレート一覧に「OpenSiv3D」が出ない:OneDriveを有効にしたPCでは「ドキュメント」フォルダが2つでき、Visual Studioが見に行く場所とテンプレートの置き場所がずれることがあります。「ツール」→「オプション」→「プロジェクトおよびソリューション」→「場所」で「ユーザー プロジェクト テンプレートの場所」を通常のドキュメントフォルダに変えるか、テンプレートのzipをOneDrive側へ移します
- 「Siv3D.hppが見つからない」:インストーラが設定した環境変数をVisual Studioがまだ読んでいない状態です。作ったプロジェクトを破棄し、Windowsを再起動してから作り直します
__std_min_element_dに関するエラー:Visual StudioのC++ビルドツールが古いと出ます。Visual Studio Installerで最新のビルドツールに更新します- 実行できるのに「エラー一覧」にエラーが並ぶ:表示が不正確なだけのことが多く、公式は「出力」ウィンドウのメッセージを見るよう案内しています
Ubuntu 22.04でv0.6.16をソースからビルドした結果
Ubuntu版の手順は公式ページでもCI設定へのリンクで示されるだけなので、2026年10月18日に、素のubuntu:22.04コンテナ(Docker・x86_64・4コア・メモリ約5.8GB)で上のコマンドを最初から実行しました(ライブラリ本体のビルドだけ、コア数に合わせて-j4を付けています)。GPUの無い環境のため、仮想ディスプレイ(Xvfb)とMesaのソフトウェア描画で起動を確認しています。
| 工程 | 結果 |
|---|---|
| 依存パッケージの導入 | 約2分50秒(確認用のXvfbなどを含め691パッケージ) |
| ライブラリ本体のビルド(-j4) | 約34分(Ninjaのビルド工程1,169件)。libSiv3D.aは約1.6GB |
| アプリのビルド | 約1分。実行ファイルは約280MB |
| 起動とクリック判定 | 800×600のウィンドウが開き、クリックで得点が増えた |
手順どおりで最後まで通りましたが、公式のページとCI設定を読むだけでは分からない点が4つありました。
- build-essential・cmake・gitは自分で入れる:CI設定のapt行にはこの3つが無い。GitHub Actionsの実行環境には最初から入っているためで、素の
ubuntu:22.04にはcmakeもgitも無い。上のコマンドは3つを足してある - GCCはUbuntu 22.04の既定版で通る:入ったのはGCC 11.4.0とCMake 3.22.1。要件表のGCC 11.2と一致しなくても、ライブラリとアプリのビルドはエラー無く終わった(警告は多数出る)
- 時間とディスクはライブラリ本体に集中する:34分のビルドは最初の1回だけで、インストール後の自分のアプリは約1分で再ビルドできる。CI設定の
RelWithDebInfoはデバッグ情報込みのため、ライブラリ約1.6GB・実行ファイル約280MBとかなり大きい。空き容量の少ないPCでは-DCMAKE_BUILD_TYPE=Releaseに変える - GPUが無くても描画の確認はできる:Mesaのソフトウェア描画(llvmpipe)はOpenGL 4.5 Coreを返し、要件の4.1を満たす。仮想マシンやCIで動作だけ確かめたいときに使える。初回起動時はエンジン同梱のフォントを
~/.cache/Siv3D/0.6.16/へ展開する。サウンドデバイスの無い環境ではALSAのエラーが出力されるが、描画とマウス入力には影響しなかった
Siv3Dの使い方:最小コードと20秒クリックゲーム
Main関数とSystem::Update()のメインループ
Siv3Dのプログラムは、C++のmain()ではなくMain()から始まります。画面に文字を出す最小のコードは次のとおりです。
# include <Siv3D.hpp>
void Main()
{
Print << U"Hello, Siv3D!";
while (System::Update())
{
}
}
while (System::Update())がメインループで、1回まわるごとに画面が1フレーム更新されます。ウィンドウを閉じるかEscキーを押すとSystem::Update()がfalseを返してループを抜け、プログラムが終わります。描画や入力の処理はすべてこのループの中に書きます。文字列の前のUはUTF-32文字列リテラルを表すC++標準の接頭辞で、Siv3DのAPIにはこの形式の文字列を渡します。
図形・テキスト・マウス入力・時間を組み合わせたクリックゲーム
20秒の間に、ランダムな位置へ移る円を何回クリックできるかを競うゲームです。時間切れの後はEnterキーでやり直せます。上のUbuntu 22.04の環境で、このコードがそのままビルド・起動できることを確認しています。
# include <Siv3D.hpp>
void Main()
{
Scene::SetBackground(ColorF{ 0.6, 0.8, 0.7 });
const Font font{ FontMethod::MSDF, 48, Typeface::Bold };
constexpr int32 Radius = 40;
constexpr double TimeLimit = 20.0;
Vec2 pos{ 400, 300 };
int32 score = 0;
Stopwatch stopwatch{ StartImmediately::Yes };
while (System::Update())
{
const double remaining = Max(TimeLimit - stopwatch.sF(), 0.0);
const Circle circle{ pos, Radius };
// 時間内に円が左クリックされたら得点し、画面内のランダムな位置へ移す
if ((0.0 < remaining) && circle.leftClicked())
{
++score;
pos = RandomVec2(Scene::Rect().stretched(-Radius));
}
// 時間切れの後は Enter キーでやり直す
if ((remaining == 0.0) && KeyEnter.down())
{
score = 0;
stopwatch.restart();
}
circle.draw(ColorF{ 0.9, 0.3, 0.2 });
font(U"score: {} time: {:.1f}"_fmt(score, remaining)).draw(32, Vec2{ 20, 20 }, ColorF{ 0.1 });
if (remaining == 0.0)
{
font(U"Enter: retry").drawAt(40, Scene::Center(), ColorF{ 0.1 });
}
}
}
Circleは描画する図形であると同時に当たり判定を持ち、leftClicked()でその円の上で左クリックされたかを判定できるScene::Rect().stretched(-Radius)は画面全体の長方形を半径分だけ内側に縮めたもので、円が画面外にはみ出さない範囲に移動先を絞っているStopwatchのsF()は経過秒数を小数で返す。Max()で0未満にならないようにし、残り時間の表示と判定の両方に使っているKeyEnter.down()は押された瞬間の1フレームだけtrueになる。押している間ずっと判定したいときはpressed()を使う
キーボードでキャラクターを動かすなら、KeyLeft.pressed()で押下中かを調べ、移動量にScene::DeltaTime()(前フレームからの経過秒数)を掛けます。こうしておくと、リフレッシュレートが144Hzのモニタでもキャラクターが速く動きすぎません。
Siv3Dの学び方:公式チュートリアル81章とコミュニティ
インストールの次に読むべきものは、公式のチュートリアルです。1章「はじめての Siv3D」から81章まで番号付きで並び、章の順に進めると作品が段階的に大きくなる構成になっています。
| 章 | 内容 | 到達点 |
|---|---|---|
| 1〜20章 | 図形・絵文字・テキスト・マウス・キーボード・乱数・時間 | 20章 クリックゲーム |
| 21〜40章 | 配列・交差判定・ボタン・テクスチャ・GUI | 25章 アイテム集め、29章 クッキークリッカー |
| 41〜60章 | オーディオ・カメラ・アセット管理・ファイル・シーン管理 | 60章 アプリの公開 |
| 61〜81章 | HTTP・OpenAI API・2D物理演算・通信・マルチプレイヤー | 68章 AI絵しりとり、75章 マルチプレイヤー |
この記事のクリックゲームは、20章「クリックゲーム」に制限時間とやり直しを足したものです。足した部分のうちMax()は21章「便利な関数」、Stopwatchは30章「時間と動き」で詳しく扱われているので、コードの各行の意味は章を追うと確かめられます。完成したゲームのコードを読みたいときは、公式のゲームのサンプル(ブロックくずしからスロットマシンまで22件)と、Siv3D勉強会 in 京都(2024)のゲームサンプル(タイピング・マインスイーパー・AIオセロなど)が参考になります。電卓アプリやレーダーチャート、ダメージ演出を1本ずつ作る「コース」も6本あります。
詰まったときの相談先は、公式が案内しているSiv3DのDiscordサーバーです。質問・作品紹介・本体の開発状況の共有に使われており、Web版の質問も#webチャンネルで受け付けています。学校や地域のコミュニティへ無料で訪問する「Siv3D勉強会」もあり、2025年11月30日には九州工業大学で開かれました。作品を作る目標が欲しいなら、毎年12月のSiv3D Advent Calendarや、2025年10月18日〜11月2日に開かれた「Siv3Dゲームジャム2025」(最優秀賞は「GOAT」)のようなイベントが区切りになります。
作ったアプリを配布する手順
完成した作品を人に渡すときは、公式チュートリアル60章「アプリの公開」の手順に従います。
- Releaseビルドにする:Visual Studioのビルド構成を「Release」に切り替えてビルドする。最適化が効き、デバッグ情報が外れてファイルも小さくなる
- ライセンス表示の手段を用意する:F1キーでライセンス一覧が出ることをREADMEに書く、F1で開くHTMLを同梱する、
LicenseManager::ShowInBrowser()を呼ぶボタンを置く、のいずれか。自作ゲームのライセンスはLicenseManager::AddLicense()で一覧の先頭に加えられる - 同梱するファイルを選ぶ:実行ファイル(.exeまたは.app)と、埋め込んでいない画像・音声・テキスト。
engineフォルダとアイコンはビルド時に実行ファイルへ埋め込まれるため不要 - ZIPにまとめて配布する:公開前に別のPCで動作を確かめる
素材をすべて埋め込めば、最小構成では実行ファイル1つで配布できます。ただし、WindowsでGlobalAudio::BusSetPitchShiftFilter()を使う場合はdllフォルダも同梱が必要です。公式は、画面が1366×768のPCでウィンドウが収まらない場合や、ゲームパッドごとにボタン番号が違う場合も想定するよう勧めています。
Siv3Dを選ぶべき人・選ぶべきでない人
Siv3Dが最も力を発揮するのは、C++を書くこと自体が目的に含まれている場面です。C++の授業や独学の教材、競技プログラミングの可視化、研究用のシミュレーション表示、1人から数人で作る2Dのインディーゲームがこれに当たります。作品がコードだけで完結するため、Gitでの差分管理やGistでの共有もしやすくなります。
次の条件に当てはまるなら、Siv3Dは選ばない方が早く目的に届きます。
- iOS・Androidのアプリとして配信したい:公式の対応環境はWindows・macOS・Ubuntuで、スマホに届ける手段は非公式のWeb版しかない。家庭用ゲーム機向けの公式対応も無い
- 3D主体のゲームを作りたい:3D描画はできるが、標準の物理演算は2D(Box2D)。3Dの物理や大量のモデルを扱うなら、エディタとエンジンが揃ったGodotやUnityの方が短く済む
- デザイナーとエディタ上で共同作業したい:シーンエディタやアセット管理画面は無く、配置も演出もコードで書く
- Apple SiliconのMacで性能を出したい:v0.6.16はRosetta経由で、ネイティブ対応はv0.8待ち
C++で2Dを作る点が同じ国産ライブラリには、DXライブラリがあります。関数ベースの素朴なAPIで長く使われてきたDXライブラリに対し、Siv3Dはクラスと演算子を多用するC++20寄りの書き方です。比較するならDXライブラリの導入と使い方を、エディタ付きのエンジンを検討するならGodotのインストール方法と動作要件をあわせて読んでください。Siv3Dで作った試作を商用ゲームやアプリとして仕上げる段階で開発体制が足りない場合は、ゲームアプリ開発の支援も相談先になります。
次期版Siv3D v0.8の状況とv0.6.16を使い続ける判断
次のメジャー版v0.8は、GitHubの別リポジトリ「Siv3D/siv8」で開発が続いています。2026年10月18日時点でsiv8のリリースとタグはどちらも0件で、月ごとの開発ブランチのプルリクエスト(10月14日の#87など)が積み重なっている段階です。公式トップの表記も「0.8.0(開発中)」で、v0.6系の最新は2025年4月7日のv0.6.16のままです。
これから始める人は、v0.8を待たずにv0.6.16で始めてください。公式チュートリアル、サンプル、コミュニティの質疑はいずれもv0.6系が前提です。v0.8で変わる要件(Visual Studio 2026、Apple Siliconネイティブ対応など)や移行の考え方はSiv3D v0.8の開発状況とリリース時期で追っています。
Siv3Dに関するよくある質問
Siv3Dは無料ですか?商用利用もできますか?
無料です。MITライセンスで公開されており、商用ゲームにも使えます。配布するときは、Siv3Dと同梱ライブラリのライセンス情報をユーザーが見られるようにしてください(F1キーの案内をREADMEに書くなど)。
Siv3Dの作者は誰ですか?
鈴木遼(Ryo Suzuki)氏が中心となって開発しています。GitHubのアカウント名はReputelessです。本体にはこれまで中学生を含む60人以上がコードをコミットしています。
OpenSiv3Dとは何ですか?Siv3Dとの違いは?
OpenSiv3Dは現在のSiv3Dの旧称で、別の製品ではありません。GitHubのリポジトリ名やSDKのファイル名に旧称が残っているため、両方の名前が使われています。
Siv3DはMacやLinux、スマホで使えますか?
MacはXcode 14.3以降で使えます(Apple SiliconはRosetta経由)。LinuxはUbuntu 20.04/22.04でソースからビルドします。iOS・Androidの公式対応は無く、スマホ向けには非公式のWeb版でブラウザ上に公開する方法があります。
Siv3Dを始めるにはC++の知識がどれくらい必要ですか?
変数・if文・while文・関数が書ければ、公式チュートリアルの1章から進められます。チュートリアル自体がC++の書き方を学べる構成で、20章でクリックゲームが完成します。クラスやテンプレートは作品を作りながら覚えていけます。