iLogScannerとは?IPA無料ツールで攻撃兆候を検出する使い方
iLogScanner(アイログスキャナー)は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が無償提供する「ウェブサイトの攻撃兆候検出ツール」です。ウェブサーバのアクセスログを読み込ませると、SQLインジェクションやクロスサイト・スクリプティングといった攻撃の痕跡を検出し、一部については攻撃が成功した可能性まで示します。名前は「スキャナー」ですが、外部からサイトを能動的に診断するツールでも、リアルタイムで通信を止めるツールでもありません。手元のログを後から解析して「攻撃を受けた痕跡がないか」を確認する、無料のフォレンジック向けツールです。この記事では、検出できる攻撃、対応するログと動作環境、ダウンロードから解析までの手順、そしてWAFや脆弱性診断とどう使い分けるかまでを整理します。
まとめ:iLogScannerの要点
- 正体:IPAが無償配布するJava製のローカルツール。ウェブ/SSH/FTPサーバのログから攻撃の痕跡を検出する。
- できること:SQLインジェクション、OSコマンド・インジェクション、ディレクトリ・トラバーサル、クロスサイト・スクリプティング、IDS回避目的の攻撃の5種類と、SSH/FTPの認証系攻撃を検出。
- できないこと:リアルタイム監視・自動遮断・外部からの脆弱性スキャンは行わない。攻撃の「予防」ではなく「後追いの発見」が役割。
- 入手:IPA公式ページからオフライン版(ZIP・約3.7MB)を無料ダウンロード。オンライン版は2019年1月16日に公開終了。
- 動作要件:Java(OpenJDK 25までの環境)。Java SE 26/JDK 26以降では動作しない(2026年6月19日時点)。Windows 11・Linuxで動く。
- 位置づけ:予防にはWAFや脆弱性診断、能動診断にはOWASP ZAP/Burp Suiteを併用し、iLogScannerは「侵入後の痕跡確認」に充てるのが実務的。
iLogScannerが解析するログと「攻撃兆候検出」の意味
iLogScannerは、ウェブサーバに残るアクセスログ・エラーログを1行ずつ照合し、攻撃に使われる典型的な文字列パターンが含まれていないかを調べます。ヒットしたリクエストを「攻撃と思われる痕跡」として一覧化し、さらにサーバが返したHTTPステータスコードなどから、その攻撃が成功した可能性があるかどうかも判定します。つまり出力されるのは「いつ・どのIPから・どの種類の攻撃らしきアクセスがあり、そのうち成功した恐れがあるのはどれか」という侵害調査の材料です。
リアルタイム監視・予防ツールとの違い
ここが最もつまずきやすい点です。iLogScannerはログファイルを開いて解析するローカルアプリで、通信を監視して攻撃を遮断するIPSでも、SIEMのように常時ログを取り込み続ける仕組みでもありません。ダッシュボードで24時間監視したり、AIで未知の攻撃を予測したり、Slackへアラートを飛ばしたりする機能はありません。役割は「すでに蓄積されたログに攻撃の痕跡が残っていないかを、事後にまとめて確認する」ことに絞られています。この前提を外すと、導入後に「常時監視できない」と評価を誤ります。
iLogScannerで検出できる攻撃の種類
検出対象は、解析するログの種類によって分かれます。ウェブサーバのログではウェブアプリケーションへの攻撃を、SSHやFTPのログでは認証まわりの攻撃を拾います。
ウェブサーバのログから検出する5種類
アクセスログ・エラーログからは、次の攻撃の痕跡を検出します。いずれもIPA「安全なウェブサイトの作り方」で解説されている代表的なウェブアプリ攻撃です。
| 攻撃 | 痕跡として現れるもの |
|---|---|
| SQLインジェクション | データベースを不正操作するSQL断片を含むリクエスト |
| OSコマンド・インジェクション | サーバ上で任意のOSコマンドを実行させる文字列 |
| ディレクトリ・トラバーサル | 相対パス記法で非公開ファイルへアクセスしようとする痕跡 |
| クロスサイト・スクリプティング | 訪問者のブラウザで実行させるスクリプトの注入 |
| その他(IDS回避目的) | 特殊文字で偽装した攻撃(16進コード/親パス等) |
SQLインジェクションやクロスサイト・スクリプティングの中身そのものを詳しく知りたい場合は、SQLインジェクションの仕組みと攻撃例・対策やXSS・CSRFの対策方法もあわせて確認すると、ログに現れる文字列の意味がつかめます。
SSH・FTPのログから検出する認証系攻撃
iLogScannerはウェブ専用ではありません。SSH(sshd)やFTP(vsftpd)のログに対しても、認証を突破しようとする攻撃の痕跡を検出します。具体的には、短時間に集中したログイン試行、大量のログイン失敗、FTPでは同一ファイルへの大量アクセスなどです。総当たり(ブルートフォース)でパスワードを破ろうとする挙動を、ログの回数と間隔から拾い上げる仕組みです。
対応するログ形式と動作環境
対応ログ形式
読み込めるログは、ウェブサーバではApacheのアクセスログ・エラーログとIISのログ、SSHはsshd(syslog形式)、FTPはvsftpd(vsftpd形式・wu-ftpd形式)です。ログ形式が一致していないと解析されないため、実際に読み込ませる前に自サーバの出力形式を取扱説明書の対応形式と突き合わせておくと確実です。
動作環境とJavaのバージョン制限
iLogScannerはJavaで動くため、実行環境にJava(JRE/JDK)が必要です。2026年6月19日のIPA更新時点でOpenJDK 25までの環境で動作し、OpenJDKの仕様変更によりJava SE 26およびJDK 26以降では動作しません。動かない場合は、まずインストール済みJavaのバージョンを疑ってください。対応OSはWindows 11とLinux(CentOS等)です。導入前にJavaのバージョンを固定しておくのが、起動しない主因を避ける一番の近道です。
iLogScannerのダウンロードと解析手順
公式ページからの入手手順
iLogScannerはIPAの公式ページから無料で入手できます。ページ内の「iLogScannerをダウンロード」からオフライン版のZIP(約3.7MB)を取得し、任意のフォルダに展開します。かつてはブラウザ上で解析するオンライン版もありましたが、オンライン版は2019年1月16日に公開を終了しており、現在提供されているのはオフライン版のみです。「ブラウザで使える」という古い解説はこの終了前の情報なので注意してください。取扱説明書(PDF)も同じページから入手できます。
GUIでの解析手順
展開したフォルダで、OSに合わせた起動スクリプトを実行します。WindowsはiLogScanner.bat、LinuxはiLogScanner.shです。起動したら次の流れで解析します。
- 解析したいログファイルと、結果の出力先フォルダを画面で指定する
- 「解析開始」ボタンを押す
- 解析結果が画面に表示され、あわせてHTML形式のレポートが指定フォルダに出力される
特別なインストール作業は不要で、ZIPを展開してスクリプトを起動するだけで使えます。
CUI(コマンド)モードでの実行
定期実行やバッチ処理に組み込みたい場合は、GUIを開かずコマンドラインから実行できます。ログの種類・入力ファイル・出力先を引数で渡す形式です。
iLogScanner.bat mode=cui logtype=apache accesslog=access.log outdir=result
この形にしておけば、タスクスケジューラやcronで定期的にログを解析し、レポートだけを蓄積する運用が組めます。
解析結果の見方と発見後に取るべき対応
出力されるHTMLレポートには、検出した攻撃の種類、該当したログ行、送信元IP、そして攻撃が成功した可能性の有無がまとまります。まず見るべきは「成功した可能性あり」と判定された項目です。ここに該当があれば、単なる攻撃試行の記録ではなく、実際に脆弱性を突かれた恐れがあるため、被害範囲の調査(データの改ざん・情報漏えいの確認)と該当箇所の修正を優先します。成功可能性が示されていない試行の痕跡でも、送信元IPや攻撃の種類が偏っている場合は、そのIPの遮断や該当機能の見直しにつながります。iLogScannerはあくまで「気づきを与える」ツールなので、レポートは対応の出発点として扱ってください。
iLogScannerだけでは足りない場面と他ツールの使い分け
iLogScannerは無料で手早く痕跡を確認できる反面、役割は「起きたことの後追い確認」に限られます。予防や継続監視は別の手段が必要で、目的ごとに次のように役割を分けて組み合わせます。
| 目的 | 適した手段 | iLogScannerの位置づけ |
|---|---|---|
| 攻撃をリアルタイムで遮断 | WAF・IPS | 対象外(防御はしない) |
| 公開前に弱点を洗い出す | 脆弱性診断・OWASP ZAP/Burp Suite | 対象外(能動診断はしない) |
| 攻撃を受けた痕跡を事後確認 | iLogScanner | ここが主戦場 |
結論として、iLogScannerは「入れておけば安全」になるツールではありません。継続的にサイトを守るなら、能動的に弱点を探す脆弱性診断や、診断ツールであるOWASP ZAP・Burp Suiteで事前に穴をふさぎ、WAFで日々の攻撃を止めたうえで、iLogScannerを「本当に痕跡が残っていないかを定期的に点検する監査役」として回すのが、無料ツールを活かす現実的な設計です。
iLogScannerに関するよくある質問(FAQ)
iLogScannerはどこからダウンロードできますか?
IPAの公式ページ「ウェブサイトの攻撃兆候検出ツール iLogScanner」から、オフライン版のZIP(約3.7MB)を無料でダウンロードできます。第三者サイトの再配布ではなく、公式ページから取得してください。
iLogScannerは無料で使えますか?
はい。IPAが無償で提供しており、商用・非商用を問わず無料で利用できます。有料版や別途ライセンス費用は存在しません。
ブラウザで使えるオンライン版はありますか?
いいえ。ブラウザ上で解析できたオンライン版は2019年1月16日に公開を終了しました。現在はダウンロードして使うオフライン版のみです。
どのOSとJavaで動きますか?
Windows 11とLinux(CentOS等)で動作します。実行にはJavaが必要で、2026年6月時点ではOpenJDK 25までに対応し、Java SE 26/JDK 26以降では動作しません。動かないときはJavaのバージョンを確認してください。
WAFや脆弱性診断の代わりになりますか?
なりません。iLogScannerはログから攻撃の痕跡を後追いで検出するツールで、攻撃の遮断(WAF)や事前の弱点検出(脆弱性診断)は行いません。予防・監視の手段と併用する前提で使います。