回転機にセンサーを付けたのに、しきい値をいくつに置けばよいか決まらない。振動診断の実装でつまずくのはたいていこの一点で、原因は取付方式・サンプリング条件・判定パラメータが噛み合っていないことにあります。この記事では加速度センサーの方式と取付共振から測定上限周波数を決め、2.56倍則とデータ長でサンプリングを設計し、FFTと包絡線解析で軸受・ギアの特徴周波数を取り出すまでを実装の順に追う。続けてOA値・クレストファクタ・尖り度の使い分け、ISO 20816-3のゾーン境界値を起点にした閾値、送信量の試算、多段アラートまでを扱います。投資回収の考え方は予知保全とは?仕組みと予防保全との違いから費用対効果・導入判断までで整理しているため、ここでは信号を取る側と処理する側に絞ります。
まとめ:振動診断の実装で先に固めるセンサー・帯域・閾値の3点
先に結論を置きます。第一に決めるのは取付方式です。測定上限周波数はセンサー本体の性能ではなく、取付方式が作る取付共振で頭打ちになる。マグネット取付で3〜7kHz、接着で7〜8kHz、スタッド固定なら10kHzを超えて平坦という差があり、軸受の初期損傷を包絡線解析で捉えるならマグネットでは足りません。ここを最後に決めると設置工事をやり直すことになる。
第二に、サンプリング周波数とデータ長を測りたい周波数から逆算する。最大解析周波数の2.56倍でサンプリングし、分解能は測定時間の逆数で決まります。この2つが1回の測定時間とデータサイズを決め、送信量と電源設計に跳ね返る。低速回転機ほど制約は厳しくなります。
第三に、閾値はISO 20816-3のゾーン境界値を出発点に置き、自社設備の初期値で補正します。規格は広帯域の振動速度実効値を10〜1,000Hzで見る枠組みで、軸受の初期損傷のような高周波側の事象は現れない。規格値だけで運用すると、壊れる直前まで何も鳴らない監視ができあがります。速度のOA値と加速度側の指標を別系統で持ってください。
加速度センサーの選定と取付方法で決まる測定上限周波数の設計指針
測定系はセンサー単体ではなく「センサー+取付部+対象構造」で1つの系になります。カタログの周波数応答は理想条件の値で、現場ではそこまで出ません。
圧電式とMEMS式の使い分けと感度100mV/Gを基準にしたレンジ選定
常時監視で主力になるのは圧電式(IEPE)の加速度センサーです。感度100mV/Gの汎用品が事実上の標準で、測定レンジは±50G前後。微小振幅を見るなら500mV/Gの高感度品へ、高衝撃が乗る場所では10mV/Gの広レンジ品へ振ります。
MEMS式は消費電力と単価で有利で、電池駆動の無線ノードに向く。ただし雑音密度が圧電式より一桁悪い機種が多く、暗騒音に埋もれる領域では傾向監視にしか使えません。分かれ目は電源の有無で、ケーブルを引けるなら圧電式、引けない箇所だけMEMS式とします。
スタッド・接着・マグネット取付で変わる取付共振と測定上限周波数
取付方式の違いは、そのまま使える上限周波数の違いです。2026年8月時点の各社公開値では、スタッド固定が10kHz超で平坦、接着が概ね7〜8kHz、マグネットは平面形で5〜10kHz・2極形で3〜7kHz、手持ちプローブは1kHz前後で頭打ちになります。
PCB Piezotronicsの測定例では、スタッド固定は20kHzでも応答の持ち上がりが+2dBに収まり位相も平坦。マグネット取付でも10kHz付近までは応答がほぼ同一で、20kHzで+4dBまで持ち上がります。手持ちプローブは押し付け力で値が変わり再現性を確保できないため、閾値判定を行う点は固定式にしてください。
測定点は軸受箱の荷重方向へ|水平・垂直・軸方向の3方向で採る根拠
測定点は軸受箱の荷重を受ける方向に置きます。カバーや配管に付けると板の共振が乗り、原因の切り分けができなくなる。
方向を3つ採るのは、故障モードによって卓越する方向が違うためです。アンバランスは半径方向(主に水平)に回転周波数の1倍成分として出る。ミスアライメントは軸方向成分が大きくなり2倍成分が目立ちます。据付のゆるみは垂直方向に高次の調波が並ぶ。1方向だけの監視では、鳴った後に原因を絞れません。まず全点を3方向で採り、傾向が安定したら常時監視の点だけ間引きます。
FFT前に決めるサンプリング周波数とデータ長・周波数分解能の基準
サンプリングの設計は、測りたい周波数の上端と分離したい細かさという2つの要求から決まります。どちらを緩めるかを先に決めないと、設定値が現場ごとにばらつく。
最大解析周波数の2.56倍でサンプリングし折返しを断つ前段設計
FFTアナライザが最大解析周波数の2.56倍でサンプリングするのは、標本化定理の2倍に余裕を足してアンチエイリアスフィルタの減衰域を確保するためです。10kHzまで見たいなら25.6kHz、1kHzでよければ2.56kHzになります。
この余裕分は、フィルタが実在して初めて意味を持ちます。汎用のADコンバータでソフト的に間引くだけにすると、折返しで入り込んだ高周波成分が低周波側に幽霊のピークとして現れ、実在しない特徴周波数を追うことになる。アナログ側にローパスを置くか、高いレートで取り込んでデジタルフィルタを通してから間引いてください。
周波数分解能から逆算する測定時間と、低速回転機で必要なデータ長
周波数分解能は測定時間の逆数です。0.5Hz刻みで見たければ2秒、0.1Hz刻みなら10秒の連続データが要る。ライン数とサンプリング周波数を決めれば測定時間は自動的に決まります。
この制約が効くのが低速回転機です。60 r/minの機械は回転周波数が1Hzで、保持器の特徴周波数は0.4Hz前後まで下がる。0.5Hz刻みでは隣り合うピークが1本に溶けるため、0.05Hz級、つまり20秒以上の連続波形が要ります。窓関数はハニングを既定にすればよく、振幅の絶対値を比べる校正用途だけフラットトップへ切り替える。窓の選択で振幅が数十パーセント変わるため、傾向監視では途中で変えません。
FFTと包絡線解析で軸受とギアの特徴周波数を抽出する処理の設計
軸受とギアの損傷は周期的な衝撃として現れます。生のスペクトルでは埋もれるため、帯域の使い分けが要る。
転動体数と接触角から求める軸受の特徴周波数4種の計算手順と実例
軸受の損傷部位は、4つの特徴周波数のどれが立つかで見分けます。外輪傷がBPFO、内輪傷がBPFI、転動体傷がBSF、保持器の異常がFTFで、いずれも軸受諸元と回転周波数から算出できます。
深溝玉軸受6206の公開諸元(転動体数9、転動体径9.525mm、ピッチ円径46mm、接触角0度)を1,500 r/min、すなわち回転周波数25Hzで計算すると、BPFOが約89Hz、BPFIが約136Hz、BSFが約58Hz、FTFが約9.9Hzになります。実装では軸受型番と回転数から4値を表として持ち、該当ビンだけを監視対象にする。全帯域を人が眺める運用は点数が増えた瞬間に破綻します。諸元は型番ごとに異なるため軸受メーカーの公開値を使ってください。
包絡線解析の帯域選定|共振帯を通してから復調するまでの処理の順序
包絡線解析は、損傷による微小な衝撃が構造の共振を叩いて生じる高周波振動を帯域通過で切り出し、その振幅変化だけを取り出す処理です。順序は次のとおり。
- 加速度波形に帯域通過フィルタをかけ、共振帯(多くは2〜10kHzの範囲)だけを残す
- 整流して包絡線を作り、低域通過フィルタで搬送成分を落とす
- 包絡線波形をFFTにかけ、0〜500Hz程度の範囲でピークを見る
勘所は1段目の帯域選定です。ここが外れると、損傷があっても包絡線スペクトルに何も出ない。正常時の加速度スペクトルを見て、雑音が少なく構造共振が立つ帯域を選びます。上限はセンサーの取付共振で、マグネット取付なら包絡線側も5kHz以下に置きます。
噛合周波数とサイドバンド間隔から偏心と歯欠けを見分ける読み取り方
歯車では噛合周波数(歯数×回転周波数)とその調波が基本です。この線の周りに等間隔で並ぶ小さなピーク、サイドバンドの間隔が故障部位を指します。
サイドバンド間隔が入力軸の回転周波数と一致すれば入力側の偏心や軸のふれ回り、出力軸と一致すれば出力側の問題だと切り分けられる。歯が1枚欠けた場合は時間波形のほうが分かりやすく、1回転に1回の鋭いパルスが等間隔に並びます。噛合周波数の振幅だけを監視すると単発欠損を取り逃すため、減速機では時間波形の尖り度も記録してください。
OA値・クレストファクタ・尖り度という診断パラメータの使い分け
スペクトルを毎回人が読むわけにはいかず、波形を数個のスカラー値へ畳んで監視します。値ごとに反応する劣化段階が違う。
振動速度のOA値で全体傾向を、加速度で高周波の初期損傷を捉える設計
OA値(オーバーオール値)は、指定帯域内の全成分を1つの実効値にまとめた指標です。振動速度のOA値を10〜1,000Hzで採ると、アンバランス・ミスアライメント・ゆるみといった低次の異常によく反応します。
一方、軸受の初期損傷は数kHzの微小な衝撃として現れ、速度のOA値にはほとんど乗りません。実装では速度OA値と加速度OA値(あるいは包絡線スペクトルの特徴周波数振幅)を別系統で保持し、それぞれに閾値を持たせる。1つの総合スコアへまとめる設計は原因の切り分けを潰すので採りません。
クレストファクタが劣化末期に下がる挙動と、尖り度を併用する理由
クレストファクタは波形のピーク値を実効値で割った値です。純粋な正弦波なら約1.41、正常な回転機の加速度波形では概ね3〜4に収まります。軸受に微小な傷が入るとピークだけが立つため、この値は5や7へ上がる。
厄介なのはその先です。損傷が全周に広がるとピークが増える一方で実効値も上がり、クレストファクタは正常値付近まで下がる。単調に増える指標ではなく山を越えて戻ります。「下がったから回復した」と読むと末期を見逃す。尖り度(クルトシス)を併用してください。正常な広帯域雑音で約3、衝撃性が増すと上昇する性質があり、組み合わせると劣化段階の推定が安定します。
回転数と負荷で動く測定値を比較可能にする正規化と前処理の置き方
振動値は運転条件で簡単に動きます。回転数が変われば特徴周波数の位置ごと動き、負荷が変われば振幅が変わる。条件を揃えずに並べた傾向グラフは、劣化ではなく生産計画を映すだけです。
置くべき前処理は2つ。1つは運転条件ゲートで、回転数・負荷・温度が規定の窓に入るサンプルだけを傾向監視に採用し、起動・停止・暖機中のデータは除外する。もう1つは回転数による正規化で、特徴周波数を回転周波数の倍数(オーダー)で表す次数比分析に切り替えれば可変速機でも同じビンを追えます。この2つを入れずに機械学習へ渡すと、正常データの分布が運転条件で割れて誤検知が増える。前処理と学習の関係は異常検知とは?機械学習の手法と仕組み・導入判断までで扱っています。
ISO 20816系の判定区分を使った閾値設計と自社基準への補正手順
閾値をゼロから決める必要はありません。広帯域の振動速度は国際規格が判定区分を持っており、そこを出発点にできる。
Group1と2×剛性支持と柔軟支持で決まるゾーン境界値の読み方
ISO 20816-3:2022は、ISO 10816-3:2009(軸受箱振動)とISO 7919-3:2009(軸振動)を置き換え、両者を1つの評価体系へ統合した規格です。適用範囲は定格出力15kW超、回転速度120〜30,000 r/min(旧規格の上限は15,000 r/min)。判定はゾーンA(新規・整備直後)、B(長期連続運転が可能)、C(長期連続運転には不適で是正が必要)、D(損傷が起こりうる危険水準)の4区分です。
| 機械群と支持条件 | A/B境界 | B/C境界 | C/D境界 |
|---|---|---|---|
| Group 2・剛性支持 | 1.4 | 2.8 | 4.5 |
| Group 2・柔軟支持 | 2.3 | 4.5 | 7.1 |
| Group 1・剛性支持 | 2.3 | 4.5 | 7.1 |
| Group 1・柔軟支持 | 3.5 | 7.1 | 11.0 |
単位は振動速度の実効値(mm毎秒)です。Group 1は約300kW超から50MWの大形機、Group 2は約15kWから300kWの中形機を指します。支持条件は、機械の主要な加振周波数より支持系の固有振動数が高ければ剛性支持、低ければ柔軟支持という区分。実装ではまず監視対象ごとに出力と支持条件を台帳へ持たせます。この2列がないと同じ閾値表を全設備に当ててしまう。
規格値を当てはめられない設備で初期値の2倍・4倍を仮閾値に置く手順
15kW以下の小形機、専用機、既に長年運転している設備には、規格の区分をそのまま当てられません。この場合は自社ベースラインを作ります。
手順は単純です。整備直後または正常と判断できる期間に2週間から1か月、同じ運転条件でOA値を採り、その平均を初期値とする。警報を初期値の2倍、危険を4倍に置くのが実務でよく使われる出発点です。この倍率に絶対的な根拠はなく、規格が使えない設備で運用を始めるための仮置きだと理解してください。故障や整備の記録が溜まったら実測値に合わせて引き直す。1年以上そのまま使う運用は鳴らないか鳴りすぎるかに寄ります。
10Hzから1kHzの帯域制限で軸受初期損傷が速度値に出ない理由
ISO 20816系の判定が前提とする測定帯域は概ね10〜1,000Hzです。回転速度が600 r/min未満の機械では下限を2Hzまで下げますが、上限は動きません。
この上限が意味するのは、数kHz帯に現れる軸受の初期損傷が規格の判定対象外だということです。6206ではBPFOが89Hzで帯域内に入りますが、初期段階で立つのは微小なピークで広帯域の実効値に埋もれる。速度OA値が動くのは、損傷が進んで軸の挙動そのものが変わってからです。規格の閾値は機械全体の振動が許容範囲かを判定する道具で、部品レベルの早期検知には使えない。早期検知には包絡線スペクトルの特徴周波数振幅と尖り度へ独立した閾値を持たせます。
エッジ側の前処理とクラウド送信量の見積りで決まる監視構成の選択
振動は生波形のまま扱うと、他のセンサーデータより桁が2つ大きいデータ量になります。構成の選択はここから逆算する。
25.6kHz生波形が生む1日あたりのデータ量と回線負荷の試算
10kHzまで見るため25.6kHzでサンプリングし、16ビット(2バイト)で保存すると1軸あたり毎秒51.2キロバイト、3軸で毎秒153.6キロバイト。1回の測定を10秒とすれば1.54メガバイト、1時間ごとに測って1日24回なら測定点1つで約37メガバイトです。
測定点を100点に増やすと1日あたり約3.7ギガバイト、1か月で110ギガバイト前後。対してOA値・クレストファクタ・尖り度と特徴周波数10本の振幅だけを送るなら1回およそ1キロバイトで、100点でも1日2.4メガバイト程度、おおよそ1,500分の1です。この差が通信費だけでなく電池寿命とゲートウェイの選定を決めます。
エッジで特徴量まで畳んで送る構成と、生波形を退避させる条件の線引き
既定の構成は、エッジ側でFFTと包絡線処理まで済ませ、特徴量だけをクラウドへ送る形です。ゲートウェイやノード上でスカラー値と主要ピークまで畳み、常時はこれだけを流せば回線も蓄積コストも現実的な範囲に収まります。振動以外のセンサーも含めた収集経路と通信量・費用の設計は予知保全のIoT構成で決める電源と伝送の判断で整理しています。
ただし生波形を一切残さない設計は避けてください。閾値を超えた前後の波形がないと、鳴った後に原因を解析できず閾値の見直しもできない。エッジに数日分のリングバッファを置き、閾値超過を検知したときだけ前後の生波形を退避させます。月1回程度は正常時の波形も吸い上げる。これがないと後から機械学習へ切り替える判断ができません。
誤報を減らす多段アラート設計と振動診断を採用しない設備の線引き
振動監視が使われなくなる原因は精度不足ではなく誤報です。鳴りすぎたシステムは3か月で無視される。
瞬時値・移動平均・変化率という3段で鳴らす多段アラートの構成例
単一しきい値の即時判定はやめます。運転条件のわずかな揺らぎで境界をまたぎ、鳴ったり止んだりを繰り返すためです。3段に分けてください。
1段目は瞬時値で、C/D境界を超えたら即時通知して停止判断へ回す。見逃しを避ける層なので単発でも鳴らします。2段目は24時間移動平均がB/C境界を超えた状態が3回連続したときに点検指示を出す層で、日常運用の主力になる。3段目は30日移動平均の変化率を見る層で、絶対値が閾値内でも前月比20パーセント以上増えていれば傾向監視のチケットを起票します。この3段目が、規格の閾値では捉えられない緩やかな劣化を拾う。運転条件ゲートは全段の手前に置いてください。誤報の大半はここで消えます。
振動診断を見送る設備の条件|超低速・往復動・冗長構成という3類型
入れない判断も明確にしておきます。次の条件に当てはまる設備では投資に見合いません。
- 回転速度が概ね100 r/minを下回る超低速機。衝撃エネルギーが小さく、アコースティックエミッションや潤滑油分析のほうが早い
- 往復動機械。ピストンの往復による加振が支配的で、ISO 20816系の広帯域判定は使えず専用の評価体系が要る
- 冗長構成があり、片系が止まっても生産が継続する設備。事後保全で足りる
- 停止1時間あたりの損失が、センサーと設置工事の費用を数年で回収できない補機類
4つ目の損失額の積み方は予知保全の費用対効果と投資回収の考え方で扱っています。全設備へ一律に付ける計画はほぼ確実に途中で止まる。重要設備から始めて、鳴った実績が出てから広げてください。
内製と受託開発を分ける境界|既存PLC・SCADAとの接続要件
傾向グラフを見るところまでは市販の振動監視サービスで完結します。内製や受託開発を検討するのは、既存の制御系と接続する要件が入ったときです。
PLCやSCADAから回転数・負荷・運転状態を取り込んで運転条件ゲートに使う、設備台帳と測定点を突き合わせる、警報を既存の保全ワークフローへ流す、といった要件です。既製サービスの標準機能から外れるため、OPC UAやModbus TCPでの接続部分と判定ロジック側の設計が開発対象になる。防爆区域やIP等級の制約が絡む場合も同様です。設備データの取り込みからエッジ処理・判定基盤までの構築はAI/IoTソリューションで対応しており、既存設備の構成と接続可否の確認から入ります。接続要件がグラフ表示だけで完結するなら、開発を入れず市販サービスで始めるほうが速い。
よくある質問
現場から出やすい質問を、設計判断に直結するものへ絞りました。
振動診断はどのくらいの周期で測定すればよいですか?
常時監視なら1時間ごと、巡回測定なら月1回が出発点です。基準は劣化の進行速度で、初期損傷から機能喪失に至るまでの期間(P-F間隔)より十分短い周期にします。転がり軸受は数週間から数か月の幅があり、月1回では取り逃す設備がある。損失が大きい設備は常時監視、劣化が緩やかな設備は巡回という切り分けが実務的です。周期は点ごとに変えられる設計にしてください。
スマートフォンの加速度センサーで振動診断はできますか?
傾向を眺める用途に限れば可能ですが、診断には使えません。理由は3つ。多くの機種はサンプリングが数百Hzまでで、軸受の特徴周波数を含む帯域に届かない。手持ちや両面テープでは取付共振が低く、押し付け方で値が変わるため再現性を確保できません。時刻同期の精度も足りず周波数軸がずれる。閾値判定を行うならIEPE規格のセンサーと専用の計測ハードウェアを使ってください。
ISO 20816の基準値はそのまま自社設備に使えますか?
定格出力15kW超で回転速度が120〜30,000 r/minの範囲にある一般的な回転機なら、Group分類と支持条件を確認したうえで出発点として使えます。専用機や特殊構造の機械、15kW以下の小形機は範囲外です。その場合は整備直後の実測値を2週間から1か月採って初期値とし、警報を2倍、危険を4倍に仮置きして始め、故障記録が溜まった時点で引き直す。規格値は広帯域の振動速度に対する判定で、早期検知には別の閾値が要ります。
低速回転の設備でも振動診断は使えますか?
回転速度が概ね100 r/minを下回ると振動法の効きが落ちます。衝撃のエネルギーが小さく信号対雑音比を確保しにくいうえ、分解能を上げるため20秒以上の連続波形が要り、測定と送信の負荷が上がるためです。この領域ではアコースティックエミッション法や潤滑油中の摩耗粉分析のほうが早く兆候を捉えられる。低速機で振動を採るなら低周波用の高感度センサーを選び、次数比分析で追ってください。
振動診断に機械学習は必要ですか?
最初から入れる必要はありません。軸受やギアは故障モードと特徴周波数の対応が物理的に決まっており、閾値判定と包絡線解析だけで実用的な検知ができます。機械学習が効くのは、運転条件が多様で単一閾値を引けない設備、複数センサーの組み合わせでしか異常が出ない設備、故障モードを事前に列挙できない設備です。導入する場合も、正常時の生波形と運転条件のログが揃っていることが前提になる。手法の選び分けは機械学習による異常検知の手法と選定基準にまとめています。
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