Firebase Studioとは|2027年3月終了までの移行判断と引き上げ手順
Firebase Studio は、ブラウザだけでフルスタックのアプリを組み立てて公開まで持っていけるクラウド開発環境として提供されていました。ただし2026年8月17日時点の状況は、紹介記事が書かれた頃とまるで違います。新規のワークスペース作成は2026年6月22日に止まり、サービス自体も2027年3月22日にシャットダウンが予定されました。この記事では、Firebase Studio が何を担っていた環境なのか、手元のコードをどう引き上げるのか、移行先をどちらに寄せるのかを、公式ドキュメントの実測にもとづいて整理します。
まとめ:新規登録は停止済み、既存資産の引き上げ期限は2027年3月22日
- Firebase Studio は旧 Project IDX から改称した、ブラウザ完結のクラウド開発環境。プレビュー提供でSLAの対象外でした。
- 2026年3月19日にサンセットが発表され、移行ツールの提供が始まりました。
- 2026年6月22日に新規ワークスペース作成と新規ユーザー登録が停止。これから触り始める経路はもうありません。
- 2027年3月22日にシャットダウンし、残っているデータは完全に削除されます。復旧はできません。
- 費用は無料で、ワークスペース数は Google Developer Program の区分に応じて3・10・30。
- コードの引き上げは Zip and Download・GitHub連携・Firebase CLI の3経路。公開URLを保つ手順も用意されています。
- 移行先はローカル制御なら Antigravity、ブラウザ完結を続けるなら Google AI Studio。
- Cloud Firestore・Authentication・App Hosting といったFirebase本体の機能とデプロイ済みアプリは影響を受けません。
Firebase Studioの実体と旧Project IDXから続く設計思想
製品名だけを見ると「Firebase の管理コンソールの一種」に見えますが、実体は開発環境そのものでした。公式ドキュメントは Firebase Studio を、ブラウザから直接フルスタックのAIアプリをプロトタイプし、構築し、デプロイできるクラウドベースの開発環境と説明しています(2026年8月17日時点)。ローカルにIDEもランタイムも置かず、タブ1枚で開発が始まる設計です。
ブラウザ上で完結するワークスペースの構造とGemini統合の範囲
作業単位はワークスペースと呼ばれ、1つのプロジェクトが1つのワークスペースに対応します。プロジェクトの持ち込み口は3つ用意されていました。ソース管理からのインポート、ローカルアーカイブの読み込み、そして Figma デザインからの取り込みです。テンプレートも Next.js・React・Angular・Vue・Android・Flutter など複数の言語とフレームワークをカバーしていました。
Gemini の統合範囲は補完だけにとどまりません。公式ドキュメントはコード補完、コード生成、テスト、ツール実行、ドキュメント作成を挙げています。加えて Firebase Local Emulator Suite とアプリのプレビュー、デバッグ機能が環境に内蔵されており、ローカルにエミュレータを立てる工程が省かれていました。デプロイ先として直結していたのは Firebase App Hosting と Firebase Hosting の配信構成の2つです。
App Prototyping agentが自然言語からアプリを生成する範囲
Firebase Studio を特徴づけていたのが App Prototyping agent でした。自然言語のプロンプトからWebアプリを生成する機能で、入力はテキストだけに限られません。画像やスケッチを渡すマルチモーダルのプロンプトが受け付けられ、そこから動くアプリの骨格が出てきます。
この機能があったため、Firebase Studio は2つの顔を持っていました。企画段階で画面イメージを起こす道具としての顔と、生成された成果物を Code View で手直しする開発環境としての顔。移行先の選定でこの区別が効いてきます。どちらの顔を主に使っていたかで、移る先が変わるためです。
旧Project IDXからの改称とGoogle AI Studioとの混同点
Firebase Studio の前身は Project IDX という名前で提供されていた実験的なクラウドIDEです。Firebase ブランドへ統合される形で改称され、Firebase の各プロダクトとの接続が前面に出ました。検索で古い記事に当たると Project IDX 表記のままのものが混ざります。
もう1つ紛らわしいのが Google AI Studio との区別。名前が似ていますが別製品で、こちらは Gemini API を試すためのWebツールが出発点でした。現在は Cloud Firestore と Firebase Authentication が直接統合されており、Google AI StudioからFirestoreと認証を組む手順は別記事で扱っています。名前の近さで混同したまま移行先を選ぶと、想定と違う環境に着地します。
2026年6月22日の新規停止と2027年3月22日終了までの3区切り
サンセットは一度に起きるのではなく、3つの日付に分かれています。手元の案件がどの段階にあるかで、取れる手が変わりました。
発表から完全停止までの3つの日付と各時点で失われる機能の範囲
| 日付 | 起きたこと | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 2026年3月19日 | サンセット発表と移行ツール提供開始 | 移行の検討を始められる時点 |
| 2026年6月22日 | 新規ワークスペース作成と新規登録の停止 | 新規案件では選択肢から外れる |
| 2027年3月22日 | シャットダウンと残存データの完全削除 | 引き上げ未了のコードは復旧不可 |
2026年8月17日時点で、すでに2番目の区切りを越えています。つまり「Firebase Studio を試してみる」という選択肢は存在しません。残っているのは、2026年6月22日より前にワークスペースを作った人が、あと何か月で何を運び出すかという話だけです。
既存ワークスペースで継続する保守範囲と2027年3月22日の削除
既存ワークスペースは2027年3月22日まで使い続けられます。公式のリリースノートは、この期間中もセキュリティパッチと Gemini モデルの更新は提供されると記載しました。放置しても即座に壊れるわけではありません。
ただし新機能の追加は止まっています。2026年6月以降のリリースノートに機能追加の記載はなく、既存ワークスペースの保守だけが続く状態。そして期限当日、残っているデータは永久に削除され、回復できないと明記されています。「まだ使えている」ことと「移行を先送りしてよい」ことは別です。
デプロイ済みアプリとFirestore・認証への影響の切り分け
ここは切り分けを間違えないでください。シャットダウンの対象は開発環境である Firebase Studio だけです。Cloud Firestore、Firebase Authentication、App Hosting といったFirebaseのコアプロダクトは影響を受けず、通常どおり機能します。
Firebase Studio からデプロイ済みのアプリも、サンセット後に稼働し続けます。データベースとユーザーデータも同様。失われるのは、ソースコードを編集していたブラウザ上の作業環境と、そこに置きっぱなしのソースコードだけ。逆に言えば、コードさえ手元に降ろしてしまえば、稼働中のサービスに手を入れる必要はありません。課金体系そのものは変わらないため、Firebaseの無料枠とBlaze超過単価の考え方はそのまま引き継げます。
Firebase Studioが無料だった範囲とワークスペース上限3・10・30
「firebase studio 料金」という検索が残っているので、提供されていた条件を記録として整理します。結論から言えば無料でした。有料になるのは Premium を購読した場合だけです。
Google Developer Programの区分別ワークスペース数とクォータ
ワークスペース数の上限は、Google Developer Program のメンバーシップ区分で決まっていました。
| 区分 | ワークスペース数 | Geminiクォータ |
|---|---|---|
| プログラム未加入 | 1ユーザーあたり3 | 標準 |
| 標準メンバーシップ | 1ユーザーあたり10 | 標準 |
| プレミアム | 1ユーザーあたり30 | 増量 |
未加入でも3つ持てたため、個人で試すぶんには十分な枠でした。数字を見返すと、受託開発で案件ごとにワークスペースを切る運用だと、標準メンバーシップの10でも足りなくなる規模感。この上限の低さは、本番の開発基盤として据えるには窮屈だった部分です。
FlutterとReact Native+Expoに掛かる合計2ワークスペース制限
モバイル系のテンプレートには別枠の制限が掛かっていました。Premium を購読していない場合、Flutter と React Native + Expo を合わせて2ワークスペースまで。個別に2つずつではなく、両者の合計で2です。
クロスプラットフォーム開発を複数案件で並行させると、この制限に先に当たります。Firebase Studio がモバイルアプリの主開発環境として広がりきらなかった実務的な理由の1つがここにありました。
App Hosting連携でCloud BillingとBlazeプランが要る条件
環境そのものは無料でも、統合機能の側で課金が発生する経路がありました。公式ドキュメントは、Firebase App Hosting のような一部の統合には Cloud Billing アカウントが必要になる場合があると記載しています。
プロジェクトを紐づけた時点で従量課金の Blaze プランへ自動的に切り替わり、無料枠を超えた分が請求されます。Studio の画面上では無料と表示されていても、裏で Firebase 側の課金が動く構造。移行後もこの関係は変わらないので、請求の発生源を Studio ではなく Firebase プロジェクト側で把握しておくと混乱しません。
コードを失わずに移すZipとGitHubとFirebase CLIの3経路
移行ツールは2026年3月19日から提供されています。手元の状況に応じて、経路は3つ。まずコードを確保し、次に公開URLの扱いを決める順序で進めます。
Move nowボタンからのZip and Downloadでの一括取り出し
最短の確保手段がこれです。ワークスペース上の「Move now」から Zip and Download を実行すると、プロジェクト一式が圧縮ファイルとして手元に落ちます。コマンドパレット経由でも同じ操作を呼び出せます。
移行先が決まっていない案件でも、この工程だけは先に済ませておく価値があります。Zip を落として Git 管理下に置いてしまえば、2027年3月22日の削除に怯える必要がなくなるためです。移行先の議論は、コードが手元にある状態でゆっくりやればよい。
Google AI StudioでGitHubリポジトリを作る際の.env除外確認
Google AI Studio へ寄せる場合は、GitHub を経由する経路が用意されています。手順は次の4段階です。
- Google AI Studio の Settings で GitHub アカウントを接続する
- Create GitHub repository を実行し、
.envが除外されているかを確認する - App Hosting 側で作成した GitHub リポジトリを接続する
- 変更をコミットしてデプロイする
2段階目の確認を飛ばさないでください。.env には Firebase の設定値やAPIキーが入っている場合があり、これを含んだままリポジトリを作ると資格情報がそのまま外へ出ます。移行作業でありがちな事故のうち、影響が長く残るのがこの型です。除外の確認は数秒で済みます。
既存の公開URLを保つfirebase init apphostingでの再接続
すでに公開しているアプリのURLを変えたくない場合は、Firebase CLI から既存のバックエンドへ繋ぎ直します。firebase init apphosting を実行し、Link to an existing backend を選んで studio を指定。そのうえで firebase deploy を流せば、同じURLのまま新しい環境からの配信に切り替わります。
この経路を使うかどうかは、URLが外部に共有済みかで決まります。社内検証用のプロトタイプなら新規バックエンドで作り直したほうが構成が素直になりますし、顧客や利用者にURLを配ってしまっている案件なら再接続を選ぶ。判断軸はここだけです。
AntigravityとGoogle AI Studioのどちらへ移すかの判断基準
公式が示す移行先は2つあり、選び分けの軸も明示されています。Studio のどちらの顔を主に使っていたか、で決めるのが実務的です。
ローカル制御を取るならAntigravity 2.0と対応OSの条件
コード中心のエージェント開発を続けるなら Antigravity です。公式は、エージェント優先のデスクトップ環境を好む場合、テンプレートやリポジトリを読み込んでアプリを作る場合、Code View を主に使っていた場合、ローカル環境での深い制御を望む場合を対象に挙げています。
2026年8月17日時点の Antigravity 2.0 の対応環境は、macOS 12以降(Apple Silicon・Intel)、Windows 10の64ビット(x64とARM64)、glibc 2.28以降のLinux。実行モードは Local Mode と New Worktree Mode の2つです。個人向けプランは月額0ドルで、Gemini 3.5 Flash や Gemini 3.1 Pro、Claude Sonnet 系のモデルが基本的なレート制限つきで使えます。より緩いレート制限が要るなら Google AI Pro や Ultra、組織で使うなら Google Cloud 経由の従量課金プランという段階構成です。
ブラウザ完結を続けるならGoogle AI Studioと統合済みの構成
ブラウザで完結する体験を保ちたい場合は Google AI Studio。公式は、素早いプロトタイピングを App Prototyping agent で続けたい場合、プロンプトからフルスタックの本番アプリまでの最短経路を求める場合を対象としています。Cloud Firestore と Firebase Authentication が直接統合されたため、Studio でやっていた「認証とデータベースを繋いで動くものを出す」という流れはそのまま再現できます。
選び方を1行にすると、手元のマシンでコードを触っていたなら Antigravity、プロンプトで作らせていたなら Google AI Studio。Code View をほとんど開かなかった案件をデスクトップIDEへ移すと、作業の重心がずれて生産性が落ちます。
受託開発でFirebase Studio前提の案件を引き受けない条件
ここは言い切ります。2026年8月17日以降、新規案件で Firebase Studio を前提にした開発体制は組めません。新規ワークスペースが作れない以上、検討の対象ですらないためです。提案書に Firebase Studio の名前が残っている場合は、Antigravity か Google AI Studio へ置き換えたうえで見積もりを組み直してください。
既存案件については、引き上げ期限を2027年3月22日ではなく2026年内に置くことを勧めます。理由は2つ。Firebase Studio はプレビュー提供でSLAと廃止予定ポリシーの対象外だったため、期限までの品質保証が契約上存在しないこと。もう1つは、期限直前に移行が集中すると、検証環境の再構築とデプロイ確認に取れる時間が削られることです。
見送るべき場面も具体的に挙げておきます。移行先が決まっていないことを理由に、Zip の取り出しまで止めている状態は避けてください。コードの確保と移行先の選定は独立した作業で、前者は今日30分で終わります。もう1つの失敗パターンが、期限を「まだ半年以上ある」と読んで放置し、削除後に復旧を試みる型。公式は残存データが永久に削除され回復できないと明記しており、サポートに問い合わせても戻りません。移行先の選定や、Studio で作ったプロトタイプを本番品質のアプリへ仕立て直す工程で人手が足りない場合は、スマホアプリ開発の受託としてご相談いただけます。
よくある質問
Firebase Studio の提供終了と移行について、実務で問い合わせの多い5点をまとめました。
Firebase Studioは今からでも使えますか?
新しく使い始めることはできません。2026年6月22日に新規ワークスペースの作成と新規ユーザー登録が停止されたためです。2026年6月22日より前にワークスペースを作っていたユーザーだけが、2027年3月22日のシャットダウンまで既存ワークスペースを使い続けられます。この期間中もセキュリティパッチと Gemini モデルの更新は提供されますが、新機能の追加は止まっています。
Firebase Studioの料金はいくらでしたか?
Firebase Studio 自体は無料でした。有料になるのは Google Developer Program の Premium を購読した場合だけで、その場合はワークスペースが1ユーザーあたり30、Gemini のクォータも増量されます。未加入で3、標準メンバーシップで10という区分でした。ただし App Hosting などの統合機能を使うと Cloud Billing アカウントが必要になり、プロジェクトが従量課金の Blaze プランへ切り替わって無料枠を超えた分が請求されます。
Firebase Studioで作ったアプリはサンセット後も動きますか?
動きます。シャットダウンの対象は開発環境である Firebase Studio だけで、Cloud Firestore、Firebase Authentication、App Hosting といったFirebaseのコアプロダクトは影響を受けません。デプロイ済みのアプリもそのまま稼働し、データベースとユーザーデータも通常どおり機能します。失われるのはブラウザ上の作業環境と、そこに置いたままのソースコードです。
Project IDXとFirebase Studioは同じものですか?
同じ製品です。Google が実験的なクラウドIDEとして提供していた Project IDX が、Firebase ブランドへ統合される形で Firebase Studio へ改称されました。2025年頃の記事には Project IDX 表記のまま残っているものがあります。なお名前の似た Google AI Studio は別製品で、こちらは Gemini API を扱うWebツールが出発点。現在は Cloud Firestore と Firebase Authentication が統合され、Firebase Studio からの移行先の1つになっています。
移行先はAntigravityとGoogle AI Studioのどちらを選ぶべきですか?
Code View でコードを直接触っていた案件なら Antigravity、App Prototyping agent にプロンプトで作らせていた案件なら Google AI Studio です。Antigravity はエージェント優先のデスクトップIDEで、macOS 12以降・Windows 10の64ビット・glibc 2.28以降のLinuxに対応し、個人向けプランは月額0ドルから。Google AI Studio はブラウザで完結し、プロンプトからフルスタックのアプリまでの最短経路を担います。判断に迷うなら、まず Zip and Download でコードを手元に確保してから決めてください。
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