Microsoft Build 2025は、2025年5月19日から22日まで米シアトルのSeattle Convention Centerとオンラインで開かれたMicrosoftの開発者会議です。Satya Nadella CEOが基調講演に立ち、Microsoftが掲げたテーマは「open agentic web」でした。GitHub Copilotのコーディングエージェント、Azure AI FoundryのAgent Service、WindowsのMCP対応、NLWebと、発表の大半がAIエージェント関連です。
この記事では主要発表を分野別に整理し、それぞれが2026年10月時点でGA(一般提供)になったのか、プレビューのままなのかを一次情報で確かめて並べます。2026年6月に開かれた次回のうちGitHub関連の発表はMicrosoft Build 2026のGitHub・GitHub Copilot発表まとめで扱っています。
まとめ:Build 2025の主要発表と2026年10月時点の到達点
- 開催は2025年5月19〜22日。発表の全体像は2025年5月19日のMicrosoft公式ブログで確認できます(当時のBook of NewsのURLは、現在Build 2026のページへ転送されます)。
- GitHub Copilotのコーディングエージェントは当日パブリックプレビュー、2025年9月25日にすべての有料プランでGAになりました。
- Azure AI Foundry Agent Serviceは当日GA。Foundry Localは2026年4月9日にGAとなり、製品名は2025年11月のIgnite 2025以降「Microsoft Foundry」に変わっています。
- WindowsのMCPネイティブ対応は2025年11月にパブリックプレビューへ進んだ段階で、GAの告知は確認できません。
- Copilot Tuningは発表から16か月たってもGAの告知がありません。14件の主要発表のうち、2026年10月時点でGAに届いていないのはWindowsのMCP対応とCopilot Tuningの2件です。
Microsoft Build 2025の開催概要と基調講演のテーマ
Microsoft Buildは、Microsoftが毎年5〜6月に開く開発者向けの年次カンファレンスです。秋のMicrosoft Igniteが企業のIT部門向けの製品発表を中心にするのに対し、Buildは開発ツール・API・プラットフォームの発表が中心になります。2025年の会場は2023年・2024年に続いてシアトルで、現地とオンラインのハイブリッド形式でした。
Microsoftが打ち出した「open agentic web」は、AIエージェントが利用者や組織に代わって判断し実行するWebを指します。Microsoftはこの構想を、開発ツール(GitHub)、エージェントの構築基盤(Azure AI Foundry、Copilot Studio)、OS(Windows)、Webの層(NLWeb)、エージェント同士をつなぐ標準(MCP)の各層の発表で具体化しました。MCPについては、MicrosoftとGitHubがMCP Steering Committeeに参加したことも同日に発表されています。
主要発表の一覧と2026年10月時点の提供状況
Build当日の段階と、2026年10月2日に公式ブログ・changelog・Microsoft Learnで確認した段階を並べます。「GA」は一般提供、「プレビュー」は機能や仕様が変わりうる試用段階です。
| 発表 | Build 2025時点 | 2026年10月時点 |
|---|---|---|
| GitHub Copilot coding agent(現cloud agent) | パブリックプレビュー | GA(2025年9月25日) |
| Copilot Chat拡張のオープンソース化 | 方針の発表 | 2025年6月30日に公開、VS Code本体へ統合 |
| WSLのオープンソース化 | 公開 | Microsoft/WSLで開発継続 |
| Azure AI Foundry Agent Service | GA | GA(Microsoft Foundryの一部) |
| Model router | プレビュー | GA(2025-11-18版) |
| Foundry Local | パブリックプレビュー | GA(2026年4月9日) |
| WindowsのMCPネイティブ対応 | 限定プレビューの予定 | パブリックプレビュー |
| Copilot StudioのMCP統合 | パブリックプレビュー | GA(2025年5月29日) |
| Copilot Studioのマルチエージェント | パブリックプレビュー | 2026年4月に対象顧客へ全面提供 |
| Microsoft 365 Copilot Tuning | early access | 限定提供(GA告知なし) |
| Microsoft Entra Agent ID | パブリックプレビュー | GA(2026年4月) |
| NLWeb | オープンプロジェクトの発表 | nlweb-ai組織へ移管 |
| Microsoft Discovery | プライベートプレビュー | GA(2026年6月2日) |
| SQL Server 2025 | パブリックプレビュー | GA(2025年11月18日) |
16か月でGAに届いた発表が多い一方、Windows側のMCP対応はプレビュー、Copilot Tuningは限定提供にとどまっています。Build 2025の発表を根拠に導入を検討する場合は、表の右列の段階を前提にしてください。
GitHub Copilotのエージェント化とオープンソース化
Copilot coding agent(現Copilot cloud agent)のプレビューからGAまで
Copilot coding agentは、Issueを割り当てると自分の開発環境(GitHub Actions上)でコードを書き、ドラフトのプルリクエストを開いてレビューを依頼する非同期型のエージェントです。Build初日の2025年5月19日にパブリックプレビューとなり、当初の対象はCopilot Pro+とCopilot Enterpriseでした。2025年6月24日にCopilot Businessへ広がり、9月25日にすべての有料Copilotプランで一般提供になっています。BusinessとEnterpriseでは、管理者が「Policies」ページで有効化するまで利用者は使えません。2026年4月1日には名称がCopilot cloud agentに変わり、プルリクエストを開かずにブランチ上で作業させたり、実装計画やコードベースの調査だけを依頼したりできるようになりました。
VS CodeのCopilot Chat拡張のオープンソース化
同じ5月19日、MicrosoftはVS Code用のGitHub Copilot Chat拡張をMITライセンスでオープンソース化する方針を発表しました。ソースは2025年6月30日にmicrosoft/vscode-copilot-chatとして公開されましたが、このリポジトリは2026年5月20日にアーカイブされ、READMEは開発がVS Code本体のリポジトリ(microsoft/vscode)へ移ったと案内しています。2025年の解説記事にあるリポジトリのリンク先は、現在は読み取り専用です。
Azure AI Foundryの発表とMicrosoft Foundryへの改称
Foundry Agent ServiceのGAとModel router
エージェントを構築・運用するマネージドサービスのAzure AI Foundry Agent Serviceは、Build初日にGAが発表されました。プロンプトごとに適したモデルへ振り分けるModel routerはこのときプレビューで登場し、モデルバージョン2025-11-18でGAになっています。モデルカタログには、xAIのGrok 3が開催中に追加されました。Agent Serviceはその後OpenAIのResponses APIを土台に作り直されており、現行の仕様と移行手順はFoundry Agent Serviceの解説記事にまとめています。
Foundry LocalのGA
Foundry Localは、モデルのダウンロードから推論までを利用者の端末内で完結させるオンデバイス推論の仕組みです。Build 2025ではパブリックプレビューとして発表され、2026年4月9日にWindows・macOS・Linux向けにGAとなりました。対応モデルとSDKの使い方はFoundry Localの解説記事で扱っています。
「Azure AI Foundry」から「Microsoft Foundry」への名称変更
Build 2025で使われた「Azure AI Foundry」の名称は、2025年11月18日のIgnite 2025の発表から「Microsoft Foundry」に置き換わりました。Windows向けの「Windows AI Foundry」も同じ日に「Microsoft Foundry on Windows」へ改称されています。旧名で検索すると2025年の情報が先に出るため、現行のドキュメントは新名で探すほうが確実です。旧名と現名称の対応はAzure AI Foundryとは、現行の機能と料金はMicrosoft Foundryとはで解説しています。
WindowsのMCPネイティブ対応とOn-device Agent Registry
Windows 11がMCP(Model Context Protocol)をOSの機能として扱う構想もBuild 2025で発表されました。AIエージェントが、OSに登録されたMCPサーバー経由でファイル操作や設定変更などを呼び出せるようにするものです。発表時点では「今後数か月のうちに、選ばれたパートナー向けのプライベート開発者プレビューとして提供する」とされていました。
この機能は2025年11月18日にパブリックプレビューとなり、現在のMicrosoft Learnでは「Windows On-device Agent Registry(ODR)」として説明されています。ODRに登録されたMCPサーバーは既定で分離された環境で動き、許可されたリソースにだけアクセスできます。利用者や管理者はWindowsの設定やMicrosoft Intuneで、エージェントごとにMCPサーバーへのアクセスを制御できます。Windowsには標準でエクスプローラーのMCPサーバーが含まれます。ただし、ホストアプリのクイックスタートは前提条件をWindows build 26220.7262以上としており、ホストアプリにパッケージID(MSIX)を求める要件はパブリックプレビュー版では強制されず、安定版で強制されるとも注記しています。製品環境に組み込む段階にはまだ達していません。
Copilot StudioのMCP統合は先行して2025年5月29日にGAとなりました。Microsoft製品のなかでMCPを本番で使える入口は、Windowsより先にCopilot Studioに整っています。
NLWeb:Webサイトを会話型の窓口にするオープンプロジェクト
NLWebは、Webサイトに自然言語の問い合わせ窓口を付けるためのオープンなプロトコルとサンプル実装です。Schema.orgやRSSのような既存の構造化データを使って問い合わせに答え、応答もSchema.orgの語彙を使ったJSONで返します。Microsoftが2025年5月19日に発表し、RSS・RDF・Schema.orgを生み出したR.V. Guhaが考案・開発しました。すべてのNLWebインスタンスはMCPサーバーとしても動作し、自然言語の質問を受け付ける中心のメソッドaskを持つため、人間の利用者とAIエージェントが同じ入口を使えます。
リポジトリはgithub.com/microsoft/NLWebからnlweb-ai/NLWebへ移管され、旧URLは転送されます。2026年10月2日時点でスターは6,256、ライセンスはMIT、最後のコミットは2026年6月10日で、リリースタグは1つも作られていません。READMEも実装を「最終的な解決策ではなく概念実証」と位置づけています。NLWebの仕組みと導入の考え方はNLWebとは?仕組みとMCPとの関係、仕様v0.55と導入手順を解説で、仕様と参照実装の差分まで扱っています。
Microsoft 365 CopilotとCopilot Studioのエージェント関連の発表
Copilot Tuningとマルチエージェントオーケストレーション
Microsoft 365 Copilot Tuningは、自社のデータ・ワークフロー・業務手順でモデルを学習させ、業務に特化したエージェントをローコードで作る機能として発表されました。2026年10月時点のLearnのFAQも「early accessプログラムを通じて限られた顧客に提供中」としています。同じ注記には、Frontierプログラム経由での提供を2026年4月に予定すると書かれていますが、一般提供(GA)の告知は確認できません。現在のLearnでは製品名が「Microsoft Copilot Tuning」になっています。Copilot Studioで複数のエージェントに仕事を分担させるマルチエージェントオーケストレーションは、Buildでパブリックプレビューとなり、2026年4月に対象となる全顧客へ提供されました。Microsoft 365 Copilot自体の機能はMicrosoft 365 Copilotとは何かで整理しています。
Microsoft Entra Agent IDと、その後のAgent 365
Microsoft Entra Agent IDは、Copilot StudioやAzure AI Foundryで作ったエージェントにEntra IDのIDを自動で割り当て、人間のアカウントと同じように管理する仕組みです。Build 2025でパブリックプレビューとなり、2026年4月にプラットフォームとしてGAになりました。エージェントを組織全体で登録・統制する層は、2025年11月のIgnite 2025で発表されたMicrosoft Agent 365が担っています。Ignite側の発表はMicrosoft Ignite 2025で発表されたAI戦略や新技術、Agent 365への登録手順はMicrosoft Agent 365とはで解説しています。
その他の発表:WSL・Microsoft Discovery・SQL Server 2025
- WSLのオープンソース化:2025年5月19日、Windows Subsystem for Linuxのソースが公開されました。リポジトリはMicrosoft/WSL(MITライセンス)で、2026年10月時点も開発が続いています。WSL自体の仕組みはWSL2とは|WSL1との違い・仕組み・インストール方法を参照してください。
- Microsoft Discovery:研究開発向けのエージェント基盤としてプライベートプレビューで発表され、2026年6月2日のBuild 2026でGAが告知されました。詳細はMicrosoft Discoveryとはにまとめています。
- SQL Server 2025:開催初日の2025年5月19日にパブリックプレビューとなり、2025年11月18日のIgnite 2025でGAになりました。
Build 2025の発表を2026年に参照するときの3つの落とし穴
Build 2025の発表資料と当時の解説記事は、2026年の導入判断の根拠にそのままは使えません。理由は次の3点で、いずれも上の発表で実際に起きています。
- 名称が変わっている:Azure AI FoundryはMicrosoft Foundryへ、Windows AI FoundryはMicrosoft Foundry on Windowsへ、Copilot coding agentはCopilot cloud agentへ変わりました。旧名のまま検索すると、当時のプレビュー仕様の記事に行き着きます。
- リポジトリが動いている:Copilot Chat拡張のリポジトリはアーカイブされ、NLWebは別組織へ移りました。当時のリンクをたどっても最新のコードにはたどり着きません。
- 「発表」と「使える」は違う:Copilot Tuningは16か月たってもGAの告知がなく限定提供のままで、WindowsのMCP対応は限定プレビューの予定からパブリックプレビューへ1段進んだだけです。
導入を判断するなら、当時の発表資料ではなく、その機能の現行のMicrosoft Learnの記述とGitHub changelogを正にしてください。Book of Newsや当時の公式ブログは「何が発表されたか」の一次資料としては確かですが、「いま何が使えるか」には答えていません。プレビュー段階の機能は、本番の業務フローに組み込まないのが妥当です。
よくある質問
Microsoft Buildとは何ですか?
Microsoftが毎年開く開発者向けの年次カンファレンスです。Azure・GitHub・Windows・Microsoft 365の開発者向け機能が発表されます。IT部門向けの製品発表が中心のMicrosoft Igniteは、秋に別途開かれます。
Microsoft Build 2025はいつ、どこで開催されましたか?
2025年5月19日から22日まで、米シアトルのSeattle Convention Centerとオンラインのハイブリッド形式で開催されました。
Microsoft Build 2025の発表内容は公式にはどこで確認できますか?
Book of Newsは当時news.microsoft.com/build-2025-book-of-news/で公開されていましたが、このURLは現在Build 2026のページへ転送されます。発表の全体像は、Microsoftの最高コミュニケーション責任者Frank X. Shawによる2025年5月19日の公式ブログ記事「Microsoft Build 2025: The age of AI agents and building the open agentic web」で読めます。
Microsoft Build 2026はいつ開催されましたか?
2026年6月2日から3日まで、米サンフランシスコのFort Mason Centerとオンラインで開催されました。会場はシアトルから移っています。GitHub関連の発表はMicrosoft Build 2026のGitHub・GitHub Copilot発表まとめで整理しています。
Build 2025で発表されたAzure AI Foundryと、現在のMicrosoft Foundryは同じ製品ですか?
同じ製品です。2025年11月18日のIgnite 2025の発表から、名称がMicrosoft Foundryに変わりました。Build 2025でGAになったAgent Serviceも、現在はMicrosoft Foundryの一部として提供されています。