NetBox(ネットボックス)は、IPアドレス・VLAN・ラック・機器・ケーブル配線といったネットワークとデータセンターの構成情報を1つのデータベースで管理する、オープンソースのインフラ台帳です。Excelの台帳と違い、REST APIやAnsibleから同じデータを読み書きできるため、自動化の「正しい構成の出どころ(Source of Truth)」として使われます。この記事では、2026年10月23日時点の最新版v4.7.3を公式のDocker構成で起動し、空きIPの払い出し・APIトークン・GraphQL・Ansible連携を実際に動かした結果をもとに、機能、無料版と商用版の違い、構築手順、使い方を説明します。
まとめ:NetBoxでできることと導入の要点
- NetBoxはIPAM(IPアドレス管理)とDCIM(データセンター基盤管理)を中心に、回線・仮想マシン・VPNまで1つのデータモデルで記録するツールです。ライセンスはApache 2.0で、本体は無料です。
- 監視・設定投入・DNSサーバーの機能は持ちません。ZabbixやAnsibleにデータを渡す側として使います。
- 最新版はv4.7.3(2026年10月13日)。自前で動かすにはPython 3.12以上、PostgreSQL 15以上、Redis 6.0以上が必要です。画面を見るだけなら公式デモ、手元で試すならnetbox-dockerが早道です。
- APIは
nbt_で始まるv2トークンで呼びます。v2トークンは設定のAPI_TOKEN_PEPPERSが無いと発行も認証もできません。 - v4.7へ上げる前に、PostgreSQL 14・Redis 5の非対応と、Zabbix連携のnbxsyncやTerraformプロバイダーがまだv4.6系までの対応である点を確認してください。
NetBoxとは:ネットワークの「あるべき構成」を記録するSource of Truth
NetBoxは、DigitalOceanのネットワークエンジニアだったJeremy Stretch氏が2015年にネットワーク構築の自動化のために開発し、2016年6月にオープンソースとして公開されたツールです。現在はNetBox Labs社とボランティアのメンテナーが開発を担い、GitHubのスター数は21,748です(2026年10月23日時点)。PythonのWebフレームワークであるDjangoで作られ、データはPostgreSQLに、バックグラウンド処理のキューはRedisに置きます。
設計の軸は「実際のネットワークを正確に写せるデータモデル」です。IPアドレスは機器そのものではなく機器のインターフェースに割り当て、1つのインターフェースに複数のIPを持たせることもできます。もう1つの軸が、NetBoxは稼働中の状態ではなくあるべき状態(desired state)を記録するという考え方です。公式ドキュメントのIntroductionは、実機の状態を自動で取り込むことを強く非推奨とし、人が確認したデータを正として監視や構築のシステムへ流す使い方を示しています。情報を1か所に寄せる設計の考え方はSSOTとは?信頼できる唯一の情報源の意味とデータ一元化の設計・実装を実装者向けに解説【2026年】、ITILの構成管理との違いはCMDBとは?構成管理データベースの仕組み・ITILとの関係・導入判断を解説で整理しています。
NetBoxが提供しない機能:監視・設定管理・DNSは別ツール
公式ドキュメントは、NetBoxが提供しない機能として、ネットワーク監視、DNSサーバー、RADIUSサーバー、設定管理(コンフィグ投入)、ファシリティ管理の5つを挙げています。SNMPで機器をポーリングして死活を見る、といった用途はNetBoxの範囲外です。NetBoxに記録した構成を正として、監視ツールや構成管理ツールにデータを配るのが本来の使い方です。
NetBoxでできること:IPAM・DCIMと業務での使いどころ
v4.7.3の公式ドキュメントが挙げる主な機能を、管理対象ごとにまとめると次のとおりです。
| 領域 | 主なオブジェクト |
|---|---|
| IPAM | プレフィックス、IPアドレス、IPレンジ、VRF、VLAN、ASN |
| DCIM | サイト、ラック、デバイス、モジュール、ケーブル、電源 |
| 回線 | 回線事業者、回線、回線終端 |
| 仮想化 | クラスター、仮想マシン、VMインターフェース |
| VPN・無線 | トンネル、IKE・IPSecポリシー、L2VPN、無線LAN |
| 拡張 | カスタムフィールド、スクリプト、Webhook、プラグイン |
IPAM:プレフィックス内の空きIP計算と払い出し
IPAMはIPv4とIPv6を同等に扱い、プレフィックスの配下で使用中のIPと空きを自動で計算します。v4.7.3で10.10.0.0/29を登録すると、空きIPとして返るのはネットワークアドレスとブロードキャストアドレスを除いた6件でした。「このプレフィックスから次の空きIPを割り当てる」操作がAPIで用意されている点が、スプレッドシートやKea DHCPとは?構築手順とkea-ctrl-agent廃止後のHTTP API移行【Kea 3.2対応】のようなDHCPサーバー側の管理との大きな違いです。VRFごとにアドレス空間を分けられるので、顧客ごとに同じプライベートアドレスを使うマルチテナント環境も記録できます。
DCIM:ラック・機器・配線の台帳
DCIMでは、サイト・ロケーション・ラックの階層に機器を配置し、ラックの正面図・背面図を表示します。機器の型番ごとにインターフェースや電源ポートをテンプレート化でき、ケーブルの両端をつなぐと配線経路をたどれます。v4.7では冷却設備のモデルも加わりました。データモデルの詳細と配線・電源の登録例はNetBox DCIMとは?ラック・配線・電源・冷却を台帳化する設計とAPI実例【v4.7】で扱っています。
ユースケース:IP払い出し・機器の棚卸し・自動化の入力
- サーバー構築時のIP払い出し:構築スクリプトがAPIで空きIPを確保して設定する。払い出しをNetBoxに集約すれば、台帳の手入力と台帳上の二重割り当てを減らせます。
- 拠点・ラックの棚卸し:設置場所、シリアル番号、保守期限(カスタムフィールド)とラックの空きを1画面で引く。
- Ansibleの入力:登録した機器と役割をそのままインベントリにする。台帳の更新が自動化対象の更新を兼ねます。
拡張:カスタムフィールド・イベントルール・変更履歴
標準のモデルに無い項目は、カスタムフィールドで追加します。オブジェクトの作成・変更をきっかけにWebhookやスクリプトを実行するイベントルールもあり、「IPが割り当てられたらDNS登録ツールに通知する」といった連携をコードなしで組めます。足りなければDjangoアプリとして書くプラグインで画面やモデルごと追加できます。作成・更新・削除は変更履歴に実行ユーザー付きで残りますが、保持期間の既定は90日(CHANGELOG_RETENTION)なので、監査に使う場合は延長しておきます。
Excel台帳・phpIPAM・Nautobotとの違いと選び方
| 比較対象 | 最新版(2026年10月) | 管理範囲 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| NetBox | v4.7.3 | IPAM+DCIM+回線・仮想化 | 構成全体をAPIで自動化 |
| phpIPAM | v1.8.3 | IPAM中心 | IP台帳だけを置き換えたい |
| Nautobot | v3.2.7 | NetBox系+自動化アプリ基盤 | ジョブやアプリを作り込む |
| Excel台帳 | — | 自由形式 | 数十台規模・自動化なし |
Excel台帳との差は、入力値の検証と参照関係にあります。NetBoxでは存在しないステータスや未登録のサイトを入力するとエラーになり、IPは実在するインターフェースにしか結び付きません。IPアドレスの台帳だけが課題ならphpIPAMでも足ります。ラック・配線・回線まで1つのデータで持ち、APIで自動化につなげたいならNetBoxが第一候補です。Nautobotは2021年にNetBox v2.10.4からフォークしたプロジェクトで、データモデルは近いものの、フォーク後は別々に開発が進んでいます。両者で迷った場合は、使いたいプラグインや連携ツールがどちらに対応しているかで決めるのが確実です。
NetBoxの試し方と提供形態:デモ・NetBox Cloud・Enterprise
公式デモ(demo.netbox.dev)の画面確認と利用条件
インストール前に画面と操作感を確かめるなら、公式のデモ環境が手軽です。2026年10月23日に確認した時点でv4.7.3が動いており、ログイン画面からユーザーを作成して使えます。データは毎日04:00 UTC(日本時間13時)にリセットされるので、本番の情報は入れないでください。
無料版と商用版の違い:Community・Cloud・Enterprise
| 提供形態 | 運用 | 料金 |
|---|---|---|
| NetBox Community | 自社サーバーに構築 | 無料(Apache 2.0) |
| NetBox Cloud Free | NetBox LabsのSaaS | 無料(上限あり) |
| NetBox Cloud 有償 | NetBox LabsのSaaS | 非公開(要問い合わせ) |
| NetBox Enterprise | 自社環境に商用版を構築 | 非公開(要問い合わせ) |
NetBox Cloudの無料プランの上限は、デバイス100台、IPアドレス500件、APIリクエスト月1万回、ブランチ(変更を本番に反映する前の作業領域)2つです(2026年10月23日確認)。検証や小規模な拠点では、デバイス数・IP数に加え、連携処理の月間APIリクエスト数が上限内かを確認して選びます。NetBox Labsは別製品として、ネットワークから情報を収集してNetBoxへ取り込むNetBox Discovery、設計と実機のずれを検出するNetBox Assurance、画面に組み込むAIアシスタントのNetBox Copilotも提供しています。
NetBoxのインストール:Dockerで試す手順と本番の構築
システム要件(v4.7.3)
| 依存ソフトウェア | 対応バージョン |
|---|---|
| Python | 3.12、3.13、3.14 |
| PostgreSQL | 15以上(MySQLは非対応) |
| Redis | 6.0以上 |
公式の手順はUbuntu 24.04で検証されています。Windowsへの直接インストール手順は公式に無いため、Windowsで試すならDocker DesktopかWSL2上でnetbox-dockerを動かします。
netbox-dockerによる評価環境の起動手順
netbox-communityが提供するnetbox-dockerの最新版は5.1.1で、対応範囲はNetBox v4.7.x以降です。READMEのクイックスタートは次のとおりです。
git clone -b release https://github.com/netbox-community/netbox-docker.git
cd netbox-docker
cp docker-compose.override.yml.example docker-compose.override.yml
docker compose pull
docker compose up
起動後にブラウザでhttp://0.0.0.0:8000/を開きます。初期ユーザーは無いので、別のターミナルで管理者を作成します。
docker compose exec netbox /opt/netbox/netbox/manage.py createsuperuser
x86_64の仮想マシン上のDockerでv4.7.3-5.1.1のイメージを起動すると、初回のデータベース作成に約4分かかり、ヘルスチェックの猶予(90秒)を超えたためdocker compose upは「unhealthy」で止まりました。netbox本体はそのまま処理を続けて画面が開くようになりますが、バックグラウンドワーカー(netbox-worker)は起動しないままです。この状態ではバックグラウンド処理を使う操作が失敗するので、画面が開いたらdocker compose up -dをもう一度実行してワーカーを起動してください。画面はユーザー設定で日本語に切り替えられます。
本番環境の構築手順
本番環境では、公式のインストール手順の順に次の6段階で構築します。
- PostgreSQLをインストールし、データベース
netboxと同名のユーザーを作る(文字コードはUTF8) - Redisをインストールする(
localhostにだけ待ち受けさせる) - リリースアーカイブを
/opt/netbox-4.7.3/に展開し、/opt/netboxへシンボリックリンクを張る configuration.pyにALLOWED_HOSTS・DATABASES・REDIS・SECRET_KEY・API_TOKEN_PEPPERSを書き、upgrade.shを実行する- Gunicornとバックグラウンドワーカー(netbox-rq)をsystemdのサービスとして常駐させる
- nginxかApacheをリバースプロキシにしてHTTPSで公開する
v4.7からはPyPIでもnetboxパッケージが公開され、pipでインストールする方法が加わりました。ただし公式ドキュメントはv4.7では試験的な扱いで本番には推奨しないと明記しており、PostgreSQL・Redis・Webサーバーの設定も別途必要です。本番は上のリリースアーカイブかGitの方法で構築します。社内にサーバーを置けない場合はクラウドの仮想マシンにも載せられます。基盤の設計から任せたい場合は、弊社のAWS・Google Cloud・Azureのインフラ構築支援でも相談を受けています。
API_TOKEN_PEPPERSの設定要件とv2トークンへの影響
API_TOKEN_PEPPERSは、v4.5で導入されたv2トークンをハッシュ化するための秘密値です。公式の設定リファレンスは、50文字以上のランダムな文字列を定義することを求め、最初のIDを1にすることを推奨しています。
API_TOKEN_PEPPERS = {
1: '<generate_secret_key.pyで作った50文字以上の値>',
}
この値を空にしてv4.7.3を起動すると、NetBox自体は動きますが、起動ログに「API_TOKEN_PEPPERS is not defined. v2 API tokens cannot be used.」と警告が出ました。その状態ではトークンの発行APIが500エラー(API_TOKEN_PEPPERS is not defined)を返し、発行済みのv2トークンも403(Invalid v2 token)になります。pepperを別の値に変えたときも、既存のv2トークンはすべて403になり、元の値に戻すと通りました。既存トークンが参照するpepperを削除・上書きすると、そのトークンは認証できなくなります。値を切り替えたいときは、既存のIDを残したまま別のIDで新しいpepperを追加します(公式はこれをトークンのハッシュをローテーションする方法として案内しています)。pepperは環境変数や秘密情報の管理基盤に置き、サーバー移行時にも引き継いでください。
NetBoxの使い方:登録の順序とAPIでの自動化
登録の順序とデバイスロール
デバイスは、メーカー・デバイスタイプ(型番)・デバイスロール(役割)・サイトを参照して作るため、これらを先に登録します。デバイスロールは「コアスイッチ」「アクセススイッチ」のように機器の役割を表す分類で、Ansibleのグループ分けにもそのまま使われます。ロールを指定せずにデバイスを作ると、APIは{"role": ["This field is required."]}を返して登録を拒否しました。ロールには仮想マシンにも割り当てられるかどうかの設定(VM Role)があり、APIでロールを作成した結果は有効になっていました。一方、IPAMは親子関係をアドレス範囲から自動で決めるため、親プレフィックスが無くても192.0.2.10/24のようなIPアドレスは登録できます。実務では、サイト→メーカー→デバイスタイプ→ロール→デバイス→プレフィックス→IPアドレスの順に入れると迷いません。
既存台帳のCSV取り込みと入力エラー時の挙動
数百件以上ある既存台帳は、一覧画面の「Import」にCSVを貼り付けるほうが早く済みます。1行目にaddress,status,dns_name,descriptionのような項目名を書き、2行目以降にデータを並べます。3行のうち1行だけステータスに存在しない値を入れると、v4.7.3では画面に「Select a valid choice」と表示され、正しい2行も含めて1件も取り込まれませんでした。誤りのある1行を除き、正常な2行だけで再実行すると「Imported 2 IP addresses」となり、その2件が登録されました。途中まで入って台帳が中途半端になることは無いので、エラーが出たら該当行を直して丸ごと再投入すれば済みます。
REST APIによる空きIPの払い出しと認証
APIトークンはユーザーのプロフィール画面で作成します。v4.5からはnbt_で始まるv2トークンが導入され、公式の書式はAuthorization: Bearer nbt_<key>.<token>です。次の例は、IDが1のプレフィックスから次の空きIPを1つ割り当てるリクエストです。
curl -X POST \
-H "Authorization: Bearer nbt_<key>.<token>" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"description": "web01"}' \
https://netbox.example.com/api/ipam/prefixes/1/available-ips/
v4.7.3で試した結果は次のとおりです。
- 本文を配列(
[{...},{...},{...}])で送ると、連続する3つのIPが1回で割り当てられた - 空きが2件しか無いプレフィックスに3件を要求すると、409(
Insufficient resources are available to satisfy the request)が返り、1件も割り当てられなかった - 認証ヘッダーは、
nbt_<key>.<token>の形ならBearerでもTokenでも200で通った。nbt_とkeyを付けずトークン本体だけを渡すと、どちらの書式でも403になった
v2トークンで403が返るときは、まずヘッダーの値がnbt_から始まる完全な形になっているかを確認してください。全エンドポイントの仕様は、稼働中のNetBoxの/api/schema/swagger-ui/で確認できます。
pynetboxによるIP割り当てと変更履歴への記録
Pythonから操作するなら公式クライアントのpynetboxを使います。最新の7.9.0はNetBox 4.7でのテストが明記され、Python 3.12以上が必要です。また、作成や更新のときに変更履歴へ残すメッセージ(changelog_message)を指定できるようになりました。実行前にpip install pynetbox==7.9.0で導入し、URLとトークンを自分の環境の値に置き換えてください。
import pynetbox
nb = pynetbox.api("https://netbox.example.com", token="nbt_<key>.<token>")
# 同じプレフィックスが複数のVRFに存在する場合は、対象VRFのIDも指定する
prefix = nb.ipam.prefixes.get(prefix="10.20.0.0/24")
if prefix is None:
raise ValueError("指定したプレフィックスが見つかりません")
new_ip = prefix.available_ips.create({
"dns_name": "web01.example.com",
"status": "active",
})
print(new_ip.address) # 10.20.0.1/24
# 変更履歴に作業番号を残す(pynetbox 7.9.0以降)
nb.ipam.ip_addresses.create(
address="10.20.0.50/24", status="active",
changelog_message="CR-1234 web05 構築",
)
v4.7.3に対して実行すると、1つ目の呼び出しで10.20.0.1/24が割り当てられ、2つ目の作成は変更履歴のメッセージ欄に「CR-1234 web05 構築」と記録されました。変更管理の番号を残しておくと、誰がどの申請でIPを取ったかを後から追えます。
GraphQL APIによる関連情報の一括取得
NetBoxは/graphql/にGraphQL APIも持ちます。REST APIでは機器・インターフェース・IPを別々に取得するところを、1回の問い合わせでまとめて読めます。
{
device_list(filters: {name: {exact: "sw01"}}) {
name
role { name }
primary_ip4 { address }
interfaces { name ip_addresses { address } }
}
}
v4.7.3ではこの問い合わせでロール名・主IP・インターフェースごとのIPが1回で返りました。ただし公式ドキュメントのとおりGraphQLは読み取り専用で、mutationを送ると「The mutation operation is not supported by the schema.」が返ります。書き込みはREST API、関連をたどる読み取りはGraphQLと使い分けます。
Zabbix・Ansible・Terraformとの連携方法
NetBoxは監視も設定投入もしないため、外部ツールとの連携が実運用の中心になります。連携ツールはNetBox本体より更新が遅れることが多いので、v4.7を使う場合は対応版を先に確認します。
Ansible:NetBoxによる動的インベントリの構成
公式コレクションnetbox.netbox(最新3.23.1)のインベントリプラグインを使うと、NetBoxの機器をそのままAnsibleの管理対象にできます。次の設定ファイルをnetbox_inv.ymlとして保存し、環境変数NETBOX_TOKENにnbt_付きのトークンを入れて実行します。
plugin: netbox.netbox.nb_inventory
api_endpoint: https://netbox.example.com
group_by:
- device_roles
- sites
python -m pip install pytz packaging pynetbox==7.9.0
ansible-galaxy collection install netbox.netbox:==3.23.1
ansible-inventory -i netbox_inv.yml --graph
ansible-core 2.21.5とv4.7.3の組み合わせで実行すると、sites_tokyo-dc1とdevice_roles_access-switchの2つのグループにsw01が入り、ansible_hostには主IPからマスクを外した10.10.0.1が自動で設定されました。このプラグインはトークンを文字列で渡すとTokenヘッダーで送りますが、値がnbt_付きの完全な形なら前述のとおり通ります。取得したインベントリで機器の設定を変える手順はAnsibleネットワーク自動化の始め方:network_cliで設定変更とバックアップを自動化する手順【2.21系】で解説しています。
Zabbix:nbxsyncはv4.6系まで対応
NetBox本体にZabbix連携機能は無く、プラグインを使います。Opensource ICT Solutions社のnbxsync(AGPL-3.0)は、ZabbixのテンプレートとマクロをNetBox側でメーカーや役割ごとに割り当て、NetBoxのデバイスや仮想マシンをZabbixのホストとして同期します。ホストの定義はNetBoxが正になります。ただし最新の1.0.5(2026年8月11日)の互換表はNetBox 4.2.6〜4.6.xで、2026年10月23日時点でv4.7は含まれていません。Zabbix連携を使っている環境は、対応版が出るまでv4.6系にとどめるのが安全です。監視側の仕組みはZabbixとは?仕組み・監視できること・他ツールとの違いをわかりやすく解説を参照してください。
Terraform:e-breuninger/netboxプロバイダー
第三者が保守するe-breuninger/netboxプロバイダーで、プレフィックスやIPの割り当てをコードで管理できます。安定版の5.8.0(2026年9月4日)の対応表はNetBox 4.3.0〜4.6.5、作り直し中の6.0.0-rc.3(2026年10月22日)もNetBox 4.6.8〜4.6.10が対象で、v4.7対応の版はまだありません。
SNMPでの自動収集:Discovery・Diodeと公式の考え方
NetBox自身は機器をSNMPで読みに行きません。既存機器を取り込むには、NetBox LabsのNetBox Discovery(収集エージェントのOrbと、取り込みサービスのDiodeで構成)を使う方法と、自前のスクリプトでREST APIに登録する方法があります。ただし前述のとおり、NetBox本体の設計は「人が確認したあるべき構成」を記録する前提です。収集した結果は初回の台帳作りや差分の確認に使い、実機の状態で台帳を上書きし続ける運用は避けてください。NetBoxの構成データと機器の設定が矛盾していないかを投入前に確かめたい場合は、Batfishとは?ネットワーク設定を本番前に検証するOSSの仕組みと使い方と組み合わせる方法もあります。
v4.5〜v4.7.3へのアップグレードで注意する変更点
数年前に構築したNetBoxを使い続けている場合、次の変更が影響します。いずれも公式リリースノートに記載されています。
- PostgreSQL 14とRedis 5.xが非対応(v4.7.0):PostgreSQL 14に接続した状態では、アップグレードスクリプトが途中で停止します。先にデータベースを15以上へ上げます。
- Python 3.12以上が必須(v4.5以降):Ubuntu 22.04標準のPython 3.10では動きません。
- APIトークンのv2移行(v4.5で導入、v1はv4.6で非推奨・v5.0で廃止予定):
Token <平文>で呼んでいるスクリプトは、v2トークンに作り直します。あわせてAPI_TOKEN_PEPPERSを設定します。 - 選択式カスタムフィールドの応答形式(v4.7.0):APIの戻り値が文字列から
{"value": ..., "label": ...}形式のオブジェクトに変わりました。値を文字列として比較しているコードは壊れます。pynetboxは7.9.0でこの形式に合わせた修正が入っています。 - サービスのポート指定(v4.7.0):
protocolとportsがport_mappingsに統合されました。 - トークン平文の記録(v4.7.0・v4.7.1):バックグラウンドの一括リクエストで作成したAPIトークンの平文が、ジョブの結果に記録されていました。v4.7.2で修正され、この方法で作ったトークンは漏えいしたものとして作り直すよう案内されています。v4.7系を使うならv4.7.2以降に上げてください。
v4.7.0では階層を持つモデル(リージョンやロケーションなど)の内部実装がPostgreSQLのltreeに置き換わり、アップグレード時に機器ごとの設定コンテキストのキャッシュ生成も走ります。台数が多い環境では作業時間が延びるため、本番の前に複製環境で所要時間を測ってください。
NetBoxを導入すべきでない場面
NetBoxは「台帳を正として自動化につなげる」ための道具です。次の条件に当てはまるなら、導入しても手間に見合いません。
- 台帳を更新する運用を決められない:実機の変更をNetBoxへ反映する担当や手順が無いと、台帳と実態のずれが積み上がり、誰も台帳を信用しなくなります。
- 機器が数十台で自動化の予定も無い:PostgreSQL・Redis・Webサーバー・pepperの保守のほうが重くなります。試すならNetBox Cloudの無料プランで足ります。
- 欲しいのが監視やコンフィグのバックアップ:どちらもNetBoxの範囲外です。ZabbixやOxidizedなど、目的の機能を持つツールを先に選んでください。
よくある質問
NetBoxは無料で使えますか?
使えます。本体はApache 2.0ライセンスのオープンソースで、ソフトウェアのライセンス料は無料です。自社サーバーに構築する場合の設備費や構築・保守の費用は別途必要です。NetBox Cloudにもデバイス100台・IPアドレス500件までの無料プランがあります。
NetBoxはWindowsで動きますか?
公式の手順はUbuntu 24.04向けで、Windowsへの直接インストール手順はありません。WindowsではDocker DesktopかWSL2の上でnetbox-dockerを使って動かします。画面を見るだけなら公式デモでも足ります。
NetBoxとZabbixは連携できますか?
本体に連携機能は無く、nbxsyncなどのプラグインで、NetBoxのデバイスをテンプレート付きでZabbixのホストとして同期します。nbxsync 1.0.5の対応はNetBox 4.6.xまでです。
NetBoxはSNMPで機器情報を自動取得できますか?
NetBox本体にはSNMPのポーリング機能がありません。既存機器の情報を取り込むには、NetBox Discovery(OrbとDiode)を使うか、収集スクリプトからREST APIに登録します。
NetBoxの公式マニュアルはどこにありますか?
公式ドキュメントはnetboxlabs.com/docs/netbox/にあります。版ごとの内容はGitHubのリポジトリのdocsフォルダをタグで切り替えると確認できます。英語のみですが、画面自体はユーザー設定で日本語表示に切り替えられます。