Sonic Pi(読み方はソニックパイ)は、コードを書いて音楽を作り、そのまま演奏もできる無料のライブコーディング環境です。2012年にケンブリッジ大学のSam Aaron氏が教育用として作り始め、いまはオープンソースのコミュニティで開発が続いています。
2026年8月7日公開のアプリ版v5.0.0では、音声エンジンがSuperSonicに置き換わりました。2026年9月28日時点では、ブラウザだけで動く公式Web版も利用できます。旧来の解説記事には「Web版は無い」「最新は4.6」と書かれたものが残っているので注意してください。この記事ではv5.0.0を前提に、インストールの手順、最初に覚えるコマンド、Web版とアプリ版の違いを順に説明します。
まとめ:Sonic Pi(ソニックパイ)の要点
- 読み方:ソニックパイ。「パイソニック」「sonipe」は誤り。
- 正体:Rubyをベースにした音楽用の言語とエディタ。
play 60の1行で音が鳴る。 - 料金:無料。本体はMITライセンス(Web版とSuperSonicはAGPL-3.0-or-later)。
- 最新版:v5.0.0「SuperSonic」(2026年8月7日)。
- 入手:Windowsはmsi、macOSはdmg(macOS 13以降)、LinuxとRaspberry PiはAppImage。インストール不要のWeb版もある。
- Web版の制約:OSC・Ableton Link・低レイテンシのオーディオIOはアプリ版のみ。オフラインでは使えない。
- 最初に覚える命令:
play・sleep・sample・live_loop・with_fxの5つ。
Sonic Piの仕組みと開発の経緯
Sonic Piは、エディタに書いたコードを実行すると、その場で音が鳴るデスクトップアプリです。言語はRubyの文法をベースにした音楽向けのDSLで、play(音を鳴らす)やsleep(拍数だけ待つ)といった命令を並べて曲を組み立てます。Rubyそのものの知識は必須ではありませんが、do〜endのブロックやtimesによる繰り返しはRubyと同じ書き方です。本体のRubyの現行版はRubyの最新バージョンは4.0.7|Ruby 3系との違い・サポート期限・更新手順(2026年9月)で整理しています。
公式サイトによると、Sonic Piはケンブリッジ大学コンピュータ研究所の研究プロジェクトとしてRaspberry Piと協力して始まり、現在は独立したオープンソースプロジェクトです。2012年から開発が続き、コントリビューターは200人超、コミット数は1万2,000件を超えています。
音を合成する部分は、v4まで音響研究用のSuperCollider(scsynth)が担っていました。v5ではSam Aaron氏が1年かけて作ったSuperSonicに全面的に置き換わり、出力先やサンプルレートを演奏を止めずに切り替えられるようになりました。
ライブコーディングの意味
ライブコーディングとは、コードを書き換えながら音楽を演奏することです。Sonic Piではlive_loopの中身を編集してRunを押し直すと、再生中の音が拍を落とさずに新しいコードへ切り替わります。コードで作ったダンスミュージックを演奏するイベントは「Algorave(アルゴレイヴ)」と呼ばれ、Sonic Piはその代表的な道具の一つです。公式サイトは、ロイヤル・アルバート・ホールでの演奏や、国際宇宙ステーションで生徒の作品が再生された事例を紹介しています。
v5.0.0で変わった点(2026年8月)
v5.0.0は、v4.6.0(2025年6月26日)から約1年ぶりのメジャー更新です。リリースノートのうち、使い方に影響するものを抜き出しました。
| 項目 | v5.0.0での変化 |
|---|---|
| 音声エンジン | scsynth → SuperSonic |
| オーディオ設定 | 入出力・サンプルレートを再起動なしで変更 |
| MIDIクロック追従 | use_bpm :midiを追加 |
| Ableton Link | link_audioで他アプリの音を受信 |
| ゲームコントローラー | ボタン・スティックをsyncで受信 |
| 録画 | 画面と音を動画に記録(Windows・macOS) |
| 1バッファの上限 | 約64KB(約2,500行)に拡大 |
| 32bit Linux | i686用AppImageを配布 |
v4から移る際は、特に音量指定と設定ファイルの扱いを確認してください。set_volume!の範囲が0〜5から0〜1に変わったので、set_volume! 2のような旧コードは音量の意味が変わります。音を歪ませるほど押し込みたい場合は、新設のset_drive!を使います。もう一つは設定ファイルがv4と別管理になった点で、v4と並べて入れてもv4の設定は壊れませんが、環境設定は引き継がれません。
Sonic Piのインストール手順(Windows・macOS・Linux・Raspberry Pi)
アプリ版はSonic Piの公式サイトのGet Sonic Piから入手します。旧版はGitHubのReleasesに並んでいます。v5.0.0の配布形式は次のとおりです。
| OS | 形式 | 対象 | 条件 |
|---|---|---|---|
| Windows | .msi | x64(Intel・AMD) | Windows 10・11 |
| Windows | .msi | Arm64(Snapdragon等) | Windows 11 |
| macOS | .dmg | Apple silicon(M系) | macOS 13以降 |
| macOS | .dmg | Intel | macOS 13以降 |
| Linux | AppImage | x64・Arm64・x86(32bit) | インストール不要 |
Windowsでの導入と日本語ユーザー名の不具合
自分のPCがx64かArm64かは「設定 > システム > バージョン情報」で確かめ、対応するmsiを実行します。どちらも署名付きのインストーラーです。ホームフォルダのパスに日本語などASCII以外の文字が含まれるとWindowsで起動しない不具合は、v5.0.0のリリースノートで修正済みとされています。ユーザー名が日本語のPCでv4が起動しなかった人は、v5で入れ直すと解消する可能性があります。
macOSでの導入とチップの選び方
Appleメニューの「このMacについて」でチップを確認し、Apple silicon用かIntel用のdmgを選びます。v5.0.0はmacOS 13 Ventura以降が対象で、macOS 12以前のMacには公式サイトから旧版をたどる必要があります。
Linux・Raspberry PiでのAppImageの実行
Linux版はAppImageで配られており、インストール作業はありません。ダウンロードしたファイルに実行権限を付けて起動します。
chmod +x Sonic-Pi-*.AppImage
./Sonic-Pi-*.AppImage
Raspberry PiはArm64用のAppImageを使います。v5ではLinuxの音声経路がPipeWire直結になり、既定で有効です。旧版の公式FAQにある「JACKを起動しないと鳴らない」という対処はv4以前の構成を前提にしているので、v5ではまずPipeWireの出力先を確認してください。Ubuntuなどディストリビューションのパッケージは公式の版より遅れることがあるため、v5の機能を使うなら公式のAppImageを選ぶのが確実です。
Web版(ブラウザ版)でできること・できないこと
「インストールせずに試したい」「学校の端末にアプリを入れられない」という場合はWeb版が使えます。公式サイトの「Launch Sonic Pi」から起動し、Chrome・Safari・Edge・Firefoxで動きます。スマートフォンやタブレットでも動くのはWeb版だけです。
仕組みはアプリ版と異なり、言語処理はWebAssemblyにコンパイルしたmrubyで、音はSuperSonicで鳴らしています。サーバー側の処理は無く、静的ファイルとして配信されます。Web版のソースコードがGitHubのリポジトリに追加されたのは2026年9月23日で、v5.0.0のリリースノートには含まれていない新しい提供形態です。
| 機能 | アプリ版 | Web版 |
|---|---|---|
| live_loop・シンセ・サンプル・FX | ○ | ○ |
| インストール不要 | × | ○ |
| スマホ・タブレット | × | ○ |
| オフライン動作 | ○ | × |
| MIDI入出力 | ○ | ○(Safari以外) |
| OSC入出力 | ○ | × |
| Ableton Link | ○ | × |
| 低レイテンシのオーディオIO | ○ | × |
| 音声入出力 | 多チャンネル | ステレオ |
内蔵のシンセとサンプルで学ぶ・試すならWeb版で始められます。外部機器と同期させるライブ演奏や、DAWとの連携が目的ならアプリ版を選んでください。なお、Web版のソースコードはアプリ本体(MIT)と違いAGPL-3.0-or-laterで公開されており、Web版を自分でホストして他人に使わせる場合はソースの提供義務が生じます。
Sonic Piの使い方:最初に覚える5つの命令
起動すると、上部にRun・Stop・Save・Recなどのボタン、中央にコードを書くエディタが並びます。コードを書いてRun(Windows・LinuxはAlt+R、macOSはCmd+R)で実行し、Stopで止めます。この節では、アプリ版とWeb版に共通する基本命令のコード例を紹介します。
playとsleepによる音程と発音間隔の指定
playの数字はMIDIノート番号で、60が中央のド(C4)です。sleepを挟まないと音が同時に鳴って和音になります。
play 60
sleep 0.5
play 64
sleep 0.5
play 67
sleep 1
play chord(:c4, :major)
数字の代わりに:e4のような音名も書けます。sleep 1は1拍で、既定のテンポは60BPMなので1秒です。
use_synthによる音色選択とsampleによる素材再生
use_synthで以降のplayの音色を切り替え、sampleで同梱の録音素材を鳴らします。オプションはカンマ区切りで渡します。
use_bpm 120
use_synth :prophet
play :e2, release: 4, cutoff: 90
sample :bd_haus, amp: 1.5
sleep 1
sample :loop_amen, rate: 0.5
シンセとサンプルの一覧は、画面下部のヘルプ(ドキュメント)に試聴できる形で並んでいます。
live_loopによる演奏中のコード更新
live_loopは名前を付けた無限ループで、ライブコーディングの中心です。再生中にsleep 0.5をsleep 0.25に変えてRunを押すと、止まらずに倍速へ切り替わります。
live_loop :drums do
sample :bd_haus
sleep 0.5
end
live_loop :bass do
use_synth :tb303
play (ring :e1, :e1, :g1, :a1).tick, release: 0.3, cutoff: rrand(60, 110)
sleep 0.5
end
2つのlive_loopは並行して走ります。tickは呼ぶたびにリングの次の要素を返すので、4音のベースラインが循環します。
with_fxによるエフェクトの適用と直列接続
with_fxのブロックで囲んだ音にだけエフェクトがかかります。入れ子にすると直列につながります。
with_fx :reverb, room: 0.8 do
with_fx :echo, phase: 0.25 do
live_loop :bleeps do
play scale(:eb3, :major_pentatonic).choose, release: 0.1
sleep 0.25
end
end
end
syncによる複数ループの開始タイミングの同期
後から追加したループが拍の途中で鳴り始めると、リズムがずれます。syncで別のループの周回を待たせると、頭がそろいます。
live_loop :metro do
sleep 4
end
live_loop :chords, sync: :metro do
play chord(:a3, :minor7), release: 3
sleep 4
end
録音・MIDI・OSCなど外部との連携
作った曲はRecボタンでWAVファイルに録音できます。v5.0.0ではWindowsとmacOSに限り、画面とメイン出力の音をまとめて1本の動画に記録する機能も加わりました。
アプリ版はMIDIの入出力とOSCの送受信に対応しています。OSCは起動時からポート4560で待ち受けており、同じPC上の別のプログラムから届いたメッセージをsyncで受け取れます。Sonic Pi自体をPythonで書くことはできませんが、公式チュートリアルにはPythonからOSCを送って音を鳴らす例があります。
# Sonic Pi側(受信)
live_loop :listen do
use_real_time
a, b, c = sync "/osc*/trigger/prophet"
synth :prophet, note: a, cutoff: b, sustain: c
end
# Python側(送信・pip install python-osc)
from pythonosc import udp_client
sender = udp_client.SimpleUDPClient("127.0.0.1", 4560)
sender.send_message("/trigger/prophet", [70, 100, 8])
Sonic Piは受信したOSCのパスに/oscの接頭辞を付けます。コード中の*は、自動付加される文字ではなく、パスを照合するためのワイルドカードです。別のPCから送る場合は、環境設定のIOで「Allow OSC from other computers」を有効にします。Ableton Linkにも対応しているので、Ableton Liveとテンポを合わせたセッションが組めます。Ableton Live側をAIから操作する構成はAbleton MCPの導入と使い方|ClaudeでAbleton Liveを操作する手順で扱っています。
Sonic Piが向く用途・向かない用途
Sonic Piが最も力を発揮するのは、プログラミングと音楽を同時に教える授業と、コードでの即興演奏です。繰り返し・条件分岐・乱数・並行処理といった概念が「リズムの反復」「フレーズの分岐」「ランダムなメロディー」「複数パートの同時演奏」として耳で確認できるため、変数やループの意味を音で理解できます。ブロックを組み合わせる形のプログラミング学習と比べたい場合は、マインクラフトでプログラミング学習ができる理由を徹底解説も参考になります。
一方で、次の目的にはSonic Piを選ぶべきではありません。
- ピアノロールで細かく打ち込み、ミックスまで仕上げたい:Sonic Piにはトラックごとの波形編集やミキサー画面が無い。DAWを使う。
- 歌詞やジャンルを指定して曲を自動生成したい:Sonic Piは書いたコードどおりに鳴らす道具で、生成AIではない。音楽生成モデルの例はStable Audio 3.0とは?モデルの違い・使い方・ローカル実行・商用利用まで解説を参照。
- Web版だけで外部機器と同期して本番演奏したい:Web版はOSC・Ableton Link・低レイテンシIOに非対応。本番はアプリ版で組む。
日本語で体系的に学ぶなら、技術評論社の『Sonic Piではじめる 音と音楽のプログラミング』(立花宏著・2026年4月14日発売・192ページ)があります。インストールから乱数、平均律と純正律、データの可聴化まで扱っています。
Sonic Piに関するよくある質問
Sonic Piの読み方は何ですか?
ソニックパイと読みます。「パイソニック」「ソニックピー」は誤りです。開発初期はRaspberry Piと協力した研究プロジェクトでした。
Sonic Piは無料で使えますか?商用利用はできますか?
無料です。アプリ本体の主要ソースコードはMITライセンスで、自作曲は商用利用もできます。ただし、他人の楽曲や外部素材を使う場合は、それぞれの権利・利用条件に従ってください。ただしWeb版とSuperSonicのソースはAGPL-3.0-or-later、同梱サンプルはCC0です。改変して再配布する場合は、リポジトリのLICENSE.mdで各部分の条件を確認してください。
Sonic Piにブラウザで使えるWeb版はありますか?
あります。2026年9月28日時点で公式サイトのWeb版を利用でき、Chrome・Safari・Edge・Firefoxで動きます。OSC・Ableton Link・低レイテンシのオーディオIOはアプリ版だけの機能です。
Sonic PiはPythonで書けますか?
書けません。Sonic Piの言語はRubyベースのDSLです。PythonからはOSCでSonic Piにメッセージを送り、Sonic Pi側のコードで受け取って鳴らす形になります。公式チュートリアルにpython-oscを使った例があります。
Sonic Piの最新バージョンはいくつですか?
2026年9月28日時点の安定版はv5.0.0(2026年8月7日公開)です。GitHubの開発ブランチ(dev)のVERSIONファイルは2026年9月14日に5.1.0-beta1へ更新されており、次の版の開発が進んでいます。最新の版はGitHubのReleasesで確認してください。