Activepiecesは、「フォームに回答が来たらSlackに通知し、表に1行足す」といった処理を、トリガーとステップをつなぐフローで組み立てるオープンソースのワークフロー自動化基盤です。この記事では2026年11月1日時点の公式ドキュメントとGitHubの実ファイルをもとに、フローとピースの仕組み、MITのコアと有償機能の境界、クレジット課金の数え方を整理します。そのうえで公式のDocker Composeで自社サーバに建てる手順、Webhookの呼び出し例、TypeScriptで書く独自ピースの最小例を示し、n8nとの違いと採否の条件を言い切ります。
まとめ:Activepiecesは社内セルフホストとMITの改変自由度で選ぶ基盤
Activepiecesが向くのは、非エンジニアの担当者が画面でフローを作り、データは自社サーバに置きたい案件です。コアはMITライセンスで、改変して社内向けに配る自由度はn8nのSustainable Use Licenseより広く取れます。連携先が公式のピースに無ければ、TypeScriptで社内システム用のピースを書き足せます。
公式のComposeを取得してそのまま本番に出すのは避けてください。.envの既定ではCodeステップが隔離なしのUNSANDBOXEDで動き、利用状況の送信も有効です。隔離モードの変更、公開URLの設定、ポートの限定を済ませてから起動します。SSO・監査ログ・細かな権限管理は有償版の機能なので、統制の要件が強い会社はライセンス費まで含めて比べる必要があります。
Activepiecesの定義とフロー・ピース・トリガーで処理を組む仕組み
Activepiecesでは、きっかけを決めるトリガーと、順に動くステップを1本のフローにまとめます。ステップの中身は「ピース」と呼ばれる連携部品が担います。
フロー・ピース・トリガーの3要素と760超のアプリ連携の中身
公式ドキュメントの概要ページは、フローを「トリガーと選んだステップで構成される自動化」、ピースを「フローやエージェントが外部サービスを操作するためのコネクタ」と定義しています。連携先は760以上のアプリとされ、GitHubのコミュニティ用ピースのディレクトリは2026年11月1日時点で744個ありました。ほかにフローから読み書きできる表(Tables)、チームを分けるプロジェクト、アプリを使って作業するAIエージェントの機能があります。
MCPサーバーも提供されており、MCPの説明ページのとおり、ClaudeやCursorなどのAIクライアントからフローやピースの操作を呼び出せます。ツールの位置づけは、ZapierのようなiPaaSの機能をOSSとして自社サーバに持つものと捉えると分かりやすいでしょう。
MITのコアとpackages配下のeeを分ける商用ライセンスの境界
リポジトリのLICENSEファイルは、packages/ee/とpackages/server/api/src/app/eeの配下を別ライセンスとし、それ以外をMIT Expatで公開しています。ライセンスの説明ページも、エンタープライズ版とクラウド版の機能は商用ライセンスで、セルフホストで使うにはライセンスが必要と書いています。
実務で効くのは、MITの範囲なら改変と再配布に利用目的の制限が無い点です。社内向けに画面の文言を変える、独自ピースを同梱したイメージを子会社へ配る、といった使い方は表示を残せば許されます。GitHubのリポジトリのスター数は25,314件でした(2026年11月1日時点)。
Activepiecesの料金体系とクレジット課金・セルフホストで使える範囲
費用はクラウド版のクレジット課金と、セルフホスト版のサーバ代+有償機能のライセンスの2系統で考えます。
Cloud版Free・Plus・Teamの月額とクレジットの数え方
公式の料金ページで2026年11月1日に確認した値です。
| プラン | 月額 | クレジット | ユーザー数 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | 1,000 | 5人まで |
| Plus | $20 | 月10,000 | 5人まで |
| Team | $200 | 月50,000 | 25人まで |
| Ultimate | 要相談 | 年単位で個別 | 無制限 |
フロー数はどのプランも無制限で、PlusとTeamは上限を超えると1クレジットあたり$0.007で課金されます。Freeのクレジットは、料金表では日次の補充、FAQでは翌月まで待つと書かれていて食い違っています。月に数千回動くフローをFreeで回す前提は置かないでください。課金単位の考え方はZapierのタスク課金と比べると差がつかみやすくなります。
セルフホストで無料になるコア機能と有償になるSSO・監査ログ
セルフホスト版のコアには、フローの作成と実行、ピース、Webhook、Codeステップが含まれ、実行回数による課金はありません。費用はサーバ代と更新作業の手間です。一方で概要ページは、SSOとSCIM、監査ログ、プロジェクトごとの権限をEnterpriseの機能に挙げています。
自社製品の画面にフロー作成機能を埋め込むEmbedも、料金ページでは年$36,000からの別商品です。自社SaaSに連携機能を持たせる方式の比較は、embedded iPaaSの解説で内製と調達の両面から整理しています。
公式ComposeとDeployスクリプトでのActivepiecesの自社サーバ構築手順
公式の導入方法は、検証用の単一コンテナと、本番向けのDocker Composeの2つです。本番を前提に、起動前に変える設定まで含めて示します。
PGLiteの単一コンテナとPostgreSQL・Redis構成の使い分け
単一コンテナの手順は、埋め込みのPGLiteとメモリ上のキューで動き、データをホストの~/.activepiecesに置きます。公式は1台の個人用途向けと明記し、スケールできず、Enterpriseへ移行するときは作り直しになると書いています。お試しはこちらで十分ですが、業務のフローを載せる環境には使えません。
本番はDocker Composeの手順に従います。mainブランチのdocker-compose.ymlは、画面とAPIのapp、フローを実行するworker(5台)、pgvector入りのPostgreSQL 14系、Redis 7.0系の4サービス構成です。必要なのは2 vCPU・メモリ4GB以上とCompose v2で、WindowsではWSL2の上で動かします。
deploy.shで秘密情報を生成し本番設定に書き換えて起動する手順
tools/deploy.shは.env.exampleを.envに写し、暗号鍵とパスワードを生成します。opensslが無い環境では値が空のまま成功扱いになると公式が注意しているため、grepで3つの値を確かめてから先へ進みます。
# 公式リポジトリを取得し、.env の暗号鍵とパスワードを生成する
git clone --depth 1 https://github.com/activepieces/activepieces.git
cd activepieces
sh tools/deploy.sh
grep -E '^(AP_ENCRYPTION_KEY|AP_JWT_SECRET|AP_POSTGRES_PASSWORD)=' .env # 3つとも値が入っているか
# Code ステップの隔離・公開 URL・利用状況の送信を本番向けに変える
sed -i 's|^AP_EXECUTION_MODE=.*|AP_EXECUTION_MODE=SANDBOX_CODE_ONLY|' .env
sed -i 's|^AP_FRONTEND_URL=.*|AP_FRONTEND_URL=https://flow.example.co.jp|' .env
sed -i 's|^AP_TELEMETRY_ENABLED=.*|AP_TELEMETRY_ENABLED=false|' .env
# 8080 番をサーバ自身に限り、前段の Nginx などで HTTPS を終端する
sed -i "s|'8080:80'|'127.0.0.1:8080:80'|" docker-compose.yml
docker compose -p activepieces up -d
curl http://localhost:8080/api/v1/health
環境変数の一覧によると、AP_FRONTEND_URLはリダイレクト先とWebhookのURLを組み立てる値です。ここがlocalhostのままだと、外部サービスに登録するWebhookのURLもlocalhostになります。AP_ENCRYPTION_KEYは接続情報の暗号鍵で、失うとバックアップから戻しても認証情報を復号できません。.envはDBのバックアップとは別の場所に保管してください。
既定UNSANDBOXEDのCodeをSANDBOX_CODE_ONLYで隔離する理由
mainの.env.exampleはAP_EXECUTION_MODE=UNSANDBOXEDで、環境変数の一覧でも既定値は同じです。この状態では、フローを作れる人がCodeステップに書いたJavaScriptが、隔離なしにworkerの上で動きます。作る人が自分1人なら問題は小さいものの、部署の担当者に作成権限を配るなら放置できません。
サンドボックスの説明は、企業の導入にはSANDBOX_CODE_ONLYを勧めています。CodeステップごとにV8の隔離環境を作り、requireやファイルシステムへのアクセスを防ぎます。特権コンテナを必要とせず、マルチテナントで安全とされる唯一のモードです。任意のnpmパッケージをCodeステップで使いたい場合だけSANDBOX_PROCESSを検討しますが、こちらはCAP_SYS_ADMINが必要で、専用のノードに分けて動かす前提です。
0.92系の版固定とpg_dumpで取る更新前のバックアップ
mainのComposeはイメージを0.92.2に固定しており、latestのような可変タグは使っていません。最新リリースの0.92.3-hotfix.2は10月28日公開で、翌29日には0.87系・0.86系・0.82系にも修正版が出ています。古い系列にも修正が届く一方、更新の頻度は高めです。
公式の更新手順は、docker compose -p activepieces exec postgres pg_dump -U postgres activepiecesでDBを退避し、破壊的な変更を確かめてから一括導入スクリプトに--upgradeを付けて流す流れです。版を指定したいときは.envのAP_VERSIONを書き換えます。フローの実体はリポジトリのフォルダではなく、Dockerボリュームのpostgres_dataに入っています。
Activepiecesで外部から処理を起動するWebhookと独自ピースの実装例
社内システムとつなぐときは、外から呼ばれる入口と、公式に無い連携先への出口の2つが要ります。
Catch Webhookにヘッダ認証を掛け応答を返すcurlの呼び出し例
公式のWebhookピースのcatch-hook.tsを読むと、認証はNone・Basic・Header・HMACの4種類で、既定はNoneです。URLの末尾に/syncを付けると、呼び出し側はフロー内の「Return Response」の結果を待ちます。/testを付けた呼び出しは、本番のフローを動かさずにサンプルデータだけを作ります。
# Catch Webhook の Live URL に /sync を付け、Return Response の結果を受け取る
# 事前にトリガーの Authentication を Header Auth(X-Api-Key)にしておく
curl -s -X POST "${AP_WEBHOOK_URL}/sync" \
-H "X-Api-Key: ${AP_WEBHOOK_SECRET}" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"order_id": "A-1024", "amount": 5400}'
同期の待ち時間はAP_WEBHOOK_TIMEOUT_SECONDSで決まり、既定は30秒、最大15分です。設定した待ち時間を超えた場合の応答は408です。Cloudflareを前段に置くと30秒で切られるため、重い処理は/syncを付けずに受け、結果は別の通知で返す設計にします。Webhookの認証をNoneのまま公開URLに出すと、URLを知った第三者がフローを動かせる点にも注意が要ります。
TypeScriptのcreateActionで社内システム用のピースを書く最小例
ピースはTypeScriptのパッケージで、プロパティの説明に入力欄の型が並んでいます。次は、公式のmath-helperのaddition.tsと同じ形で、税抜金額から税込金額を返すアクションです。
import { createAction, PieceAuth, Property } from '@activepieces/pieces-framework';
// 税抜金額と税率を受け取り、税込金額(円未満四捨五入)を返す
export const addTax = createAction({
name: 'add_tax',
displayName: 'Add Tax',
description: 'Return the tax-included amount.',
auth: PieceAuth.None(),
props: {
amount: Property.Number({ displayName: 'Amount', required: true }),
rate: Property.Number({ displayName: 'Tax Rate (%)', required: true }),
},
async run(context) {
const { amount, rate } = context.propsValue;
return Math.round(amount * (1 + rate / 100));
},
});
addition.tsにあるaudience・classification・aiMetadata・outputSchemaは省いています。リポジトリの版によって必須の項目が変わるので、ビルドで型エラーが出たらaddition.tsと同じ項目を足してください。社内APIを呼ぶ場合はauthに認証方式を定義し、APIキーをフローの接続情報として暗号化して持たせます。
n8nとの違いとActivepiecesを採る条件・見送る場面の判断基準
セルフホストできるOSSの自動化基盤として、最も比べられる相手はn8nです。違いはライセンスに最も強く出ます。
顧客向け提供時のライセンスと配布の自由度で比べるn8nとの違い
n8nのLICENSE.mdはSustainable Use Licenseで、利用と改変を自社の内部業務か非商用・個人利用に限り、他者への配布や提供は無償かつ非商用の場合だけ認めています。ファイル名に.ee.を含むソースは別のEnterprise Licenseです。ActivepiecesはMITのコアなら、改変版を顧客向けの製品に組み込む使い方も禁じていません。
社内の業務自動化だけが目的なら、どちらのライセンスでも無償で動かせるため、この差は決め手になりません。差が出るのは、受託先の顧客に改変した基盤を納める、自社サービスの一部として提供する、といった場面です。n8nのノード構成やセルフホストの始め方はn8nの解説記事で扱っています。
社内セルフホストと非エンジニアの作成でActivepiecesを採る判断基準
Activepiecesを選ぶのは、次の条件が2つ以上当てはまる案件です。1つ目は、顧客情報を含むデータを外部のSaaSに通したくない場合です。2つ目として、作る人が情報システム部門ではなく現場の担当者で、画面でフローを組めることを優先する案件が当てはまります。3つ目は、改変や再配布の可能性があり、MITで縛りの少ない基盤にしておきたい場合です。
逆に、ピースの開発やCodeステップの隔離、更新の追従を引き受ける人が社内にいないと、セルフホストの利点は保守の負担に変わります。業務の洗い出しからフローの構築、社内システム用ピースの開発や既存SaaSとの比較までまとめて任せたい場合は、iPaaS導入支援として相談いただけます。
SSO必須や単一コンテナでの本番運用でActivepiecesを見送る場面
Activepiecesを選ばないのは、SSOや監査ログが社内規程で必須なのに有償版の予算が無い場合と、単一コンテナの構成で本番を回そうとしている場合です。代替は次の表で選びます。
| 状況 | Activepiecesの扱い | 代替の候補 |
|---|---|---|
| 社内の自動化をセルフホストで始める | 採用 | n8nと並べて試作 |
| SSO・監査ログが必須で予算が無い | 見送り | 既存IdP対応のSaaS型iPaaS |
| サーバの保守要員がいない | 見送り | Zapier・Make等のクラウド |
| 自社SaaSに作成画面を埋め込む | Embedの費用で比較 | embedded iPaaS各社 |
| 開発者がコード中心で組みたい | 比較して決める | n8n |
クラウド型を含めた製品ごとの課金単位と接続数は、iPaaSの比較記事で9製品を並べています。保守要員がいない会社にとっては、月額を払ってサーバの運用を手放すほうが総額で安く済む場合が多いと考えてください。
よくある質問:Activepiecesの無料範囲・動作環境・データ保存先・AI対応
Activepiecesの導入検討でよく出る質問に、2026年11月1日時点の公式情報をもとに答えます。
Activepiecesは無料で使えますか?
使えます。セルフホスト版のコアはMITライセンスで、実行回数の課金はなく、費用はサーバ代と運用の手間だけです。クラウド版にもFreeがあり、1,000クレジットと5人までのユーザーで試せます。SSO・監査ログ・プロジェクトごとの権限などは有償版の機能で、セルフホストで使う場合もライセンスが必要です。
ActivepiecesはWindowsやMacで動きますか?
Dockerが動けば試せます。公式のCompose手順では、WindowsについてはWSL2の上で実行することが前提です。手早く触るなら単一コンテナの手順で、ホストの8080番ポートからブラウザで開けます。ただし単一コンテナは個人の検証用で、本番はLinuxサーバにPostgreSQLとRedisを含むCompose構成で建ててください。
Activepiecesのフローや接続情報はどこに保存されますか?
Compose構成では、フロー・実行履歴・接続情報がPostgreSQLに入り、Dockerボリュームのpostgres_dataに保存されます。キューはRedisです。接続情報はAP_ENCRYPTION_KEYで暗号化されるため、DBのバックアップと.envの両方がそろわないと復元できません。単一コンテナ構成ではホストの~/.activepiecesに置かれます。
ActivepiecesはAIエージェントやMCPに対応していますか?
対応しています。フローの中にAIエージェントのステップを置けるほか、ActivepiecesをMCPサーバーとしてClaudeやCursorなどのクライアントから呼べます。.env.exampleにはMCP向けのツール検索の設定AP_TOOL_SEARCH_ENABLEDがあり、既定は無効です。AIの呼び出しには自社で用意したAPIキーを使う形が基本です。
Activepiecesとn8nはどちらを選べばよいですか?
作る人とライセンスで選びます。現場の担当者が画面でフローを作り、改変や再配布の自由度も確保したいならActivepiecesです。開発者がコードを交えて複雑な処理を組み、社内利用に限るならn8nも候補に入ります。どちらもDockerで建てられるので、自動化したい業務を1本ずつ両方で試作し、保守の手間まで比べるのが確実です。
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