SharePoint MCPとは、SharePointのサイト・リスト・ファイルをAIエージェントからMCP(Model Context Protocol)のツールとして呼べるようにするサーバーの総称です。Microsoft公式のSharePoint MCPサーバーは2026年11月3日時点で「後方互換のみ」と位置付けが変わり、新規開発の入口はWork IQ MCPへ移りました。この記事では、公式2系統と自前・第三者サーバーの違い、Work IQ MCPでSharePointの文書を読むまでの接続手順、AIに読ませる範囲を委任権限・テナントポリシー・Sites.Selectedで絞る権限スコープの設計を、Microsoft Learnの記載とリクエスト例で整理します。
新しくSharePoint MCPを組むなら、MicrosoftのWork IQ MCP(エンドポイント https://workiq.svc.cloud.microsoft/mcp)を使います。Copilot Studio系のSharePoint専用サーバー(mcp_SharePointRemoteServer)は、Learnが本番利用と新規プロジェクトに使わないよう明記しているため、既存エージェントの移行対象として扱います。
権限は「委任権限は読み取り系」「テナントポリシーで書き込みを既定ブロックのまま」「検索は retrieve の OneDriveAndSharePoint 指定で1サイトに絞る」の3点から始めます。利用者のいない夜間処理や全社文書の一括取り込みはMCPに向かないので、Graphのアプリ権限とSites.Selectedで別に組みます。
「SharePoint MCP」で検索すると、公式と第三者製のサーバーが混ざって出てきます。認証の主体が系統ごとに違うため、まず3つを分けます。
Copilot StudioのドキュメントSharePoint reference (preview)には、サーバーID mcp_SharePointRemoteServer の専用サーバーが載っています。findSite・listListItems・readSmallTextFile・shareFileOrFolder・setSensitivityLabelOnFile など30を超えるツールを持ち、ファイル操作は5MB以下に制限されています。
同じページの注記は、Copilot・Calendar・Mail・SharePoint・OneDrive・Teams・User・Wordのアプリ別MCPツールを「後方互換のためだけ」とし、本番環境と新規プロジェクトでは使わないよう書いています。Understand MCP server options in Agent 365(2026年10月8日更新)も同じ扱いで、新規に選ぶ対象として案内されているのもWork IQ MCPです。プレビューのためツール名と引数が変わる可能性もあり、名前を決め打ちで組むと壊れます。
Work IQ MCP overviewによると、Work IQ MCPはSharePoint専用のツールを持ちません。fetch・fetch_blob・create_entity などのエンティティ系、ask・retrieve などのCopilot系、get_schema・search_paths のスキーマ系が、Microsoft Graphの相対パス(/sites/… や /drives/…)を引数に受け取って動きます。
ワークロードが増えてもツールは増えず、パスが増える設計です。Agent 365側の比較表は「10の汎用ツール」と書いていますが、Work IQ MCP tool reference(2026年10月13日更新)には12個のツール名が載っているため、接続後に tools/list で実物を確かめる前提で組みます。
第三者製の多くは、Entra IDに登録したアプリの資格情報でMicrosoft Graphを呼ぶ構成です。たとえばGitHubのbindresearch/sharepoint-mcpは読み取り専用のサーバーで、Graphのアプリケーション権限 Sites.Read.All と、対象サイトを列挙する環境変数 SHAREPOINT_SITE_URLS を前提にしています。
この型はサインインなしで動く反面、Sites.Read.All によりテナント内の全サイトを読めるアプリになります。
| 系統 | 認証の主体 | 読める範囲 | 2026年11月時点の扱い |
|---|---|---|---|
| Work IQ MCP | サインインした利用者(委任) | 利用者が元々アクセスできる範囲 | 新規開発の推奨先 |
| SharePoint専用サーバー | 利用者またはエージェントID | 付与したスコープの範囲 | 後方互換のみ・プレビュー |
| 自前・第三者サーバー | 登録アプリ(アプリ専用が多い) | アプリ権限の範囲 | 実装ごとに確認が必要 |
優先するのは利用者本人の権限で動くWork IQ MCPで、自前サーバーは課金条件やポリシーが合わない場合の代替です。MCPそのものの仕組みはMCP(Model Context Protocol)の仕組みとMCPサーバーの作り方で解説しています。
Work IQ MCPでSharePointの文書をエージェントに読ませるまでの作業は、テナントの有効化、MCPクライアントの接続、検索範囲を絞ったリクエストの3段階です。
テナントでWork IQを有効化するサービスプリンシパル作成と課金の前提
Enable your tenant for Work IQでは、前提としてCopilot Studioの従量課金プラン(Azureサブスクリプションとリソースグループを割り当てたもの)と、そのプランへの利用者の割り当て、1回だけ作業する全体管理者を挙げています。有効化はWork IQのサービスプリンシパルを作るだけで、Azure CLIなら次の1行です。
# Work IQ のサービスプリンシパルをテナントに作成する(全体管理者・テナントごとに1回)
az ad sp create --id fdcc1f02-fc51-4226-8753-f668596af7f7
競合エラーが返れば作成済みです。課金はCopilot Creditsの従量で、利用者を支出ポリシーに割り当てていないと retrieve が403で失敗します。
GitHub Copilot CLIにWork IQプラグインを入れて接続を確かめる手順
公式のクイックスタートConnect GitHub Copilot CLI to the Work IQ MCP server(2026年9月25日更新)は、プラグイン経由で接続する手順です。
# Copilot CLI を起動したあと、対話画面で実行する
/plugin marketplace add microsoft/work-iq
/plugin install workiq@work-iq
# 再起動後、MCPサーバーとスキルの読み込みを確認する
/mcp
/skills
再起動後にブラウザで Authorization Successful と出れば認可は完了で、/mcp の一覧に workiq とエンドポイントURLが表示されます。
retrieveで検索範囲を1サイトに絞るリクエストの指定例
このリクエストで検索対象に指定するのはOneDriveAndSharePointです。
社内文書の検索に使うのは retrieve ツールです。Use the retrieve tool in Work IQ MCP(2026年10月13日更新・パブリックプレビュー)によると、capabilities に OneDriveAndSharePoint と items_by_url を渡すと、検索対象を指定したサイトに限定できます。
{
"method": "tools/call",
"params": {
"name": "retrieve",
"arguments": {
"query": "経費精算の承認ルートが変わった時期と変更点",
"strategy": "grounding",
"capabilities": [
{
"name": "OneDriveAndSharePoint",
"items_by_url": [
{ "url": "https://contoso.sharepoint.com/sites/soumu" }
]
}
]
}
}
}
URLは共有リンクではなく、サイトの正規URLを渡します。応答の markdown をモデルへ渡し、retrievalHits の webUrl や秘密度ラベルは引用表示と監査ログに使う、と役割を分けるのがLearnの推奨です。capabilities を省くと、利用者がアクセスできるメール・Teams・会議まで検索対象に入ります。
fetchとfetch_blobでサイト・ライブラリ・ファイル本文を取るパス例
特定のライブラリの一覧やファイル本文が欲しいときは、fetch と fetch_blob にGraphのパスを渡します。既定で許可されるパスの接頭辞は /me/・/users/・/sites/ で、/authentication/ と /servicePrincipals/ は遮断されています。
{
"method": "tools/call",
"params": {
"name": "fetch",
"arguments": {
"entityUrls": [
"/sites/contoso.sharepoint.com:/sites/soumu",
"/sites/{site-id}/drive/root/children"
]
}
}
}
{
"method": "tools/call",
"params": {
"name": "fetch_blob",
"arguments": { "path": "/drives/{drive-id}/items/{item-id}/content" }
}
}
tool referenceの上限は、一覧取得が既定25件・最大100件、$skip と $skiptoken は使えず、fetch_blob の既定上限は4MBです。数千件のファイルを順に読む処理は、この制限の時点でMCPの守備範囲から外れます。
事故は、読めるはずのない文書が回答に混ざる形で起きます。権限を何層で絞るかを先に決めます。
委任権限WorkIQ.ReadとWorkIQ.Actを読み取り用途で選び分ける基準
Work IQ API permissions reference(2026年10月30日更新)に載る権限は、WorkIQAgent.Ask・WorkIQ.Act・WorkIQ.Read の3つで、いずれも委任のみ・管理者の同意が必要です。スコープは api://workiq.svc.cloud.microsoft/WorkIQ.Read のようにアプリケーションID URIを前に付けて要求します。
文書を読むだけのエージェントなら WorkIQ.Read を選び、Microsoft 365のデータを変更できる WorkIQ.Act は付けません。retrieve は WorkIQAgent.Ask を前提にしているため、検索を使う場合はこの2つの組み合わせになります。どの権限でも、利用者が元々アクセスできない文書は返りません。
テナントポリシーで書き込みを既定ブロックのまま運用する設定箇所
Policy governance for Work IQ MCPによると、Work IQ MCPにはRego(Open Policy Agentのポリシー言語)で書かれた層があり、作成・更新・削除・メール送信などの変更系の操作は既定で許可されていません。設定はMicrosoft 365管理センターの「エージェント」から「ツール」を開き、Work IQ MCPの詳細にある「ポリシー」タブで行います。
初回リリースの制御はテナント単位のオンとオフだけで、利用者別・エージェント別のテンプレートはありません。変更の反映には最大24時間かかります。1つのエージェントのために書き込みを開けると全エージェントに開くことになるため、社内文書の参照用途では既定のブロックを維持します。
自前サーバーのSites.Selectedによるread権限の限定
ここで比較する権限はSites.Read.AllとSites.Selectedで、対象サイトを絞る際には後者のreadを指定します。
アプリ専用で動く自前サーバーを置くなら、Sites.Read.All の代わりに Sites.Selected を同意し、対象サイトにだけ read ロールを割り当てます。Overview of Selected permissions in OneDrive and SharePointは、Selected系スコープは同意しただけではどのリソースにもアクセスできず、リソースごとの割り当てが必要だと説明しています。
# MCPサーバー用アプリに、総務部サイトの読み取りだけを割り当てる
POST https://graph.microsoft.com/v1.0/sites/{site-id}/permissions
Content-Type: application/json
{
"roles": ["read"],
"grantedToIdentities": [{
"application": { "id": "{MCPサーバー用アプリのクライアントID}", "displayName": "社内文書MCP" }
}]
}
この割り当てを呼ぶ側には Sites.FullControl.All が必要なので、管理用のアプリと実行用のアプリを分けます。ロールは read・write・owner・fullcontrol の4つで、MCPサーバーに渡すのは read だけです。サイトIDの取り方や取り消しの手順はSharePoint APIのSites.Selected権限と実装例にまとめています。
過剰共有のサイトをAIに読ませる前に行う棚卸しの理由と確認先
委任で動くWork IQ MCPでも、「全員」に共有された人事資料のように共有設定が広すぎる文書はそのまま検索結果に出ます。公開前に共有リンクの種別と継承を切ったフォルダーを棚卸しします。
PowerShellでの棚卸し手順はSharePointのアクセス権設定とPowerShell棚卸し、Copilotの過剰共有を可視化してRCDやDLPで止める設定はMicrosoft 365 Copilotの情報漏洩対策で扱っています。retrieveの応答には秘密度ラベルが含まれるため、「機密」ラベル付きの文書を回答に使わない処理をエージェント側に足す設計も取れます。
Agent 365やCopilot Studioでは専用サーバーを今も選べるため、組み込み済みのエージェントが残っています。
Agent 365 CLIのマニフェストに記載するスコープと管理者同意
Agent 365のAdd and manage toolsでは、a365 develop add-mcp-servers でサーバーを追加すると、プロジェクトの ToolingManifest.json にサーバー名・scope・audience が書き込まれます。このコマンドは権限を付与せず、全体管理者が a365 setup permissions mcp(初回は a365 setup all)を実行して初めてブループリントに権限が付きます。
# 現在エージェントに組み込んでいるMCPサーバーを確認する
a365 develop list-configured
# SharePoint専用サーバーを外す(Work IQ MCPへ移す場合)
a365 develop remove-mcp-servers mcp_SharePointRemoteServer
# 利用できるサーバーの一覧を見直す
a365 develop list-available
マニフェストからサーバーを外しても、ブループリントに付与済みの権限は管理者側で別に整理が必要です。エージェントの登録とSDKの全体像はMicrosoft Agent 365の登録手順と料金を参照してください。
移行を急ぐべきなのは、shareFileOrFolder・sendInviteForList・deleteList など共有や削除のツールが有効なままのエージェントです。専用サーバーはツール単位で共有招待まで送れるため、誤った指示一つで社外共有が起きます。Work IQ MCPなら変更系はテナントポリシーで既定ブロックされます。
読み取りだけの用途でも、プレビューのツール名は変更される可能性があるとLearnが明記しています。findFileOrFolder と readSmallTextFile で組んだ検索は retrieve に、listListItems は fetch の /sites/{site-id}/lists/{list-id}/items に置き換えられます。
MCPは「AIが必要なときに必要な文書を取りに行く」仕組みで、文書を大量に移す仕組みではありません。採用と見送りの線は、誰の権限で、どの量を扱うかで引きます。
採用する条件:利用者本人の権限で社内文書を探すエージェントの用途
採用するのは、社員がチャットで規程・議事録・手順書を探し、回答に出典リンクを付けたい場面です。Work IQ MCPなら権限判定をMicrosoft 365側に任せられ、独自のベクトルDBや権限同期の仕組みを作らずに済みます。対象サイトが数個に絞れ、書き込みが不要なら、retrieve の範囲指定とWorkIQ.Readだけで要件を満たせます。
SharePointを社内の文書基盤として使い始める段階の整理はSharePointとは何かと導入判断の基準で解説しています。
見送る場面:夜間バッチや全社横断の一括取り込みはGraphで組む
MCPを見送るのは、利用者がいない夜間に全社の文書を取り込む処理や、RAG用に数万件をベクトル化する処理です。Work IQ MCPは委任認証が前提で、一覧は最大100件・$skip不可という上限があり、一括取得には向きません。この場合はGraphのアプリ専用アクセスとSites.Selectedで専用のバッチを書きます。Graph側の認証方式とスロットリングはMicrosoft Graph APIの権限設計と呼び出し手順が参考になります。
Copilot Creditsを契約できない組織も、自前サーバーかGraph直呼びになります。権限の絞り込みから出典表示・監査ログまで含めると工数が膨らみやすい領域です。一創のAIエージェント開発では、SharePointを含む社内データへの接続と権限設計を要件定義から支援しています。
よくある質問
SharePoint MCPを検討するときに出やすい質問を、2026年11月3日時点のMicrosoft Learnの記載をもとにまとめます。
Microsoft公式のWork IQ MCPは、Copilot Creditsの従量課金が前提です。テナントの有効化にはCopilot Studioの従量課金プランとAzureサブスクリプションの割り当てが必要で、利用者を支出ポリシーに割り当てていないと403になります。第三者製のサーバーには無料のものもありますが、実行環境の費用とEntra IDアプリの管理は自社持ちです。課金条件は利用シナリオで変わるため、契約前にLearnの課金ページで確認してください。
公式のクイックスタートが用意されているのは、GitHub Copilot CLIやMicrosoft Foundryなどです。Work IQ MCPはリモートMCPサーバーで、認証設定を /.well-known/oauth-protected-resource から検出する方式のため、この方式に対応したMCPクライアントであれば接続先として登録できる構成です。ただしClaude系クライアントでの手順はMicrosoftから公開されていないため、検証環境で認証が通るかを先に確かめます。第三者の中継サービスを使う場合は、社外の事業者がトークンを扱う点を規程と照らし合わせます。
AIエージェントが閲覧権限のないファイルを読むことはありますか?
Work IQ MCPでは起きません。Learnのポリシー解説は、Entra ID認証・OAuth権限・利用者の権限・テナントポリシーの4層で判定し、利用者がアクセスできない資源の要求は失敗すると説明しています。注意が必要なのはアプリ専用権限の自前サーバーで、Sites.Read.All を付けると質問者が本来見られない文書まで回答に混ざります。自前で組む場合の対象サイトの限定には、Sites.Selectedによる権限設定が必要です。
別の製品です。SharePoint EmbeddedのMCPサーバーは、SharePoint Embeddedを使うアプリをコーディングエージェントと一緒に作るための開発者向けツールで、オープンソースのプレビューとして公開されています。社内のSharePointサイトの文書をエージェントに読ませる用途ではありません。なお、SharePoint Embeddedのコンテナに入った文書を検索したい場合は、Work IQ MCPの retrieve が OneDriveAndSharePoint 指定で対応しています。
書き込みや共有の操作もAIエージェントに任せられますか?
技術的には可能ですが、社内文書の参照用途では勧めません。Work IQ MCPの変更系の操作は既定ブロックで、開けるとテナント内の全エージェントに効きます。書き込みが必要な業務は承認フローを挟めるPower AutomateやGraphの専用処理に分け、エージェントには下書きの作成までを任せます。
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