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Noetra(旧・日本AI基盤モデル開発)とは|出資企業とNTT・富士通の立ち位置

ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループが中核となる国産AIの新会社は、2026年6月1日に社名を「日本AI基盤モデル開発」からNoetra(ノエトラ)へ変更しました。6月30日には経済産業省・NEDOの事業に採択され、初年度だけで約3,873億円という支援額が確定しています。検索では「NTTや富士通も組んでいるのか」「出資比率と資本金はいくらか」「関連銘柄として買えるのか」という疑問が並びますが、確定した事実と未公表の事項が混ざったまま語られがちです。出資企業の顔ぶれ、NTTと富士通それぞれの立ち位置、政府支援の中身、そして「株」として見るときの限界を切り分けます。

まとめ

  • 社名はNoetra(ノエトラ)。2026年1月7日設立、6月1日に旧社名「日本AI基盤モデル開発」から変更。代表は丹波廣寅氏。
  • 経産省・NEDOが初年度約3,873億円を拠出。産業技術総合研究所との共同提案が採択され、事業期間は2026年6月〜2031年3月、総事業規模は約1兆円。
  • 中核はソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループの4社。設立時の株主はこれに日本製鉄・神戸製鋼所・3メガバンクを加えた9社(設立者ソフトバンクを除く出資8社)で、その後40社超へ拡大する見通し。
  • NTTは参画していない。自社LLM「tsuzumi 2」で独自路線を走っており、株主ではない。
  • 富士通は2026年5月時点で「出資検討」。旭化成・安川電機とともに検討中と報じられた段階で、当初の8社には含まれない。
  • Noetraは非上場。株式を直接買うことはできず、市場で関与できるのは出資側の上場企業に限られる。

Noetraの会社概要と出資企業の広がり

設立から社名変更までの経緯

法人としての設立は2026年1月7日で、4月12日に「日本AI基盤モデル開発」として設立が報じられました。6月1日に社名をNoetraへ変更し、6月30日の経産省発表で新名称が公になり、7月1日から事業を開始しています。代表取締役社長は丹波廣寅(たんば・ひろのぶ)氏です。ソフトバンク傘下で国産生成AI開発を担うSB Intuitionsの代表取締役を2026年2月に退任し、ソフトバンク本体を経て新会社の指揮に移りました。国内に分散していた高度なAI開発技術者を約100人規模で集約する方針も示されています。フルスクラッチでの国産モデル開発実績を持つプリファードネットワークス(PFN)も開発に参画します(株主に含まれるかどうかは報道によって扱いが分かれます)。

検索でいまだに旧社名が使われるのは、社名変更が設立報道の2か月後だったためです。同一の会社を指すので、旧社名で報じられた4月時点の記事と、Noetra名義の6月以降の発表を突き合わせて読む必要があります。

中核4社と少数株主という二層構造

株主構成は、経営責任を負う中核4社と、事業を支える少数株主に分かれます。日本経済新聞は設立時に「NECやホンダなど8社出資」と伝えました。この8社は設立者であるソフトバンクを除いた数え方で、ソフトバンクを含む設立時の株主9社の内訳は次のとおりです。

区分 企業 担当
中核 ソフトバンク 基盤モデル構築・計算基盤
中核 NEC 基盤モデル構築
中核 ホンダ 自動運転・ロボットへ実装
中核 ソニーグループ ゲーム・センサー・半導体へ実装
少数株主 日本製鉄 製造現場データ提供
少数株主 神戸製鋼所 製造現場データ提供
少数株主 三菱UFJ銀行 金融領域での利用
少数株主 三井住友銀行 金融領域での利用
少数株主 みずほ銀行 金融領域での利用

中核4社の出資比率は報道ベースで各十数%です。この構造の要点は、モデルを作る側と使う側が同じ株主テーブルに座っていることです。ホンダとソニーは開発された基盤モデルの受け皿であり、鉄鋼2社とメガバンクは自社データと業務でモデルを回す立場になります。売り先を先に確保した設計と言い換えてもよく、技術先行で顧客が付かなかった過去の国策プロジェクトとの違いはここにあります。株主はその後さらに広がり、2026年7月時点では製造業を中心に40社超が出資に加わる見通しと報じられています(製造28社・非製造16社の計44社という数字も出ています)。

資本金・出資比率が「未公表」であるという事実

「資本金は?」「出資比率」を直接尋ねる検索が目立ちますが、2026年7月時点でNoetraは資本金と株主別の出資比率を正式発表していません。会社の公式開示として確認できるものはなく、報道ベースで「中核4社がそれぞれ十数%」「資本金は約100億円規模」と伝えられている水準です。正式発表と報道観測は別物として扱ってください。確度が要る場面では、登記情報や出資各社のIR開示を待つのが妥当です。

NTT・富士通・トヨタの参画状況

NTT不参加の理由は自前のtsuzumi

「NTT 富士通 NEC ソフトバンクが共同で協業」という検索が多い一方で、NTTはNoetraの株主ではありません。NTTは2025年10月20日に自社開発LLM「tsuzumi 2」の提供を開始しています。40GB以下のGPU1枚で動く軽量・高セキュアな純国産モデルという差別化で、企業DX市場を単独で取りに行く戦略です。フルスクラッチの技術資産を自社で抱える以上、他社連合に基盤モデル開発を委ねる合理性は薄い。国内の基盤モデル開発は「連合を組む陣営(Noetra)」と「自社で完結する陣営(NTT、およびPFNのような独立系)」に割れていると理解したほうが、報道の読み違いが減ります。

富士通・旭化成・安川電機は出資検討の段階

富士通の扱いは、2026年5月28日の共同通信報道で更新されました。旭化成・富士通・安川電機の3社が出資を検討していると伝えられたもので、設立時の8社には含まれていません。富士通はCohereのモデルを土台に日本語特化を進める「Takane」路線を持っており、自社モデルを持ちながら連合にも足を掛ける二正面の構えになります。その後7月にかけて出資社は40社超へ広がる見通しと報じられているため、この3社が確定側に回った可能性はありますが、各社の正式発表は確認できません。「富士通も参加した」と断定する記事は、5月の検討報道を確定情報として扱っている可能性が高いので、出典の日付を見てください。

製造業30社へ「1社数千万円」で声を掛ける狙い

日本経済新聞によれば、Noetraは30社程度の製造業に出資を呼びかけており、1社あたりの出資額は数千万円と少額になる見通しです。トヨタ、ファナック、三菱電機といった企業名を絡めた検索が起きるのも、この製造業連合の輪郭が動き続けているためです。少額に設定する意図は資金調達ではありません。狙いは現場データの供給ラインを増やすことで、出資を「データ提供と利用の約束」に変える設計です。工場の稼働ログや設備の制御データは、金額の大小ではなく提供元の数と多様性がモデルの実力を決めます。ここに名を連ねる企業がどこまで増えるかが、Noetraの成否を測る最初の実務指標になります。

経産省・NEDOの支援額と、ソフトバンク2兆円との別勘定構造

NEDO採択で初年度約3,873億円が確定

2026年6月30日、経産省はNoetraと産業技術総合研究所(産総研)の共同提案をNEDOの事業として採択したと発表しました。確定した条件は次のとおりです。

  • 初年度(2026年度)の委託費:約3,873億円
  • 事業期間:2026年6月〜2031年3月
  • 総事業規模:2030年度までに約1兆円を見込む
  • 開発対象:日本語の理解・論理推論・指示遂行、画像/動画/音声/物理特性を扱うマルチモーダル能力、実世界ネイティブなフィジカルAIへの拡張性と評価手法

一括交付ではなく、成果を見ながら段階的に投じる設計である点が過去の補助金政策との違いです。学習済みモデルの重みは事業期間内から国内に順次公開される方針も示されています。国家としてAIを内製化する考え方そのものはソブリンAIとは?国産AI戦略の定義とメリット・国内外の最新動向を解説で整理した各国の潮流と同じ文脈にあります。

苫小牧・堺のデータセンターはNoetraの資産ではない

計算基盤を担うのはソフトバンクのデータセンターです。北海道・苫小牧の拠点は敷地面積70万平方メートル・受電容量300MW超まで拡張する計画で2026年度の開業、大阪・堺の拠点は約45万平方メートル・電力140MW・計算能力110エクサFLOPS(NVIDIA H200換算で約10万枚相当)で2027年度の稼働を目指すと報じられています。ソフトバンクは2026年度から6年間でデータセンターに2兆円を投じる計画です。

ここで注意したいのが「官民3兆円」という言い回しです。これは政府支援の約1兆円とソフトバンクのデータセンター投資2兆円を足した数え方であり、Noetraに3兆円が入るわけではありません。データセンター投資はソフトバンクの自社設備投資で、AI以外の用途にも使われ、外部顧客にも貸し出されます。GPUを大量に抱えて計算資源を販売する事業形態はGPU特化で従来型と一線を画すネオクラウドの定義と3つの技術的優位性で解説したネオクラウドそのもので、Noetraはその最大顧客の一社という関係に近いと見るのが実態に合います。

マルチモーダル基盤モデルとフィジカルAIという勝ち筋

汎用チャットを避けフィジカルAIに賭ける理由

Noetraが掲げる目標は、1兆パラメーター級のマルチモーダル基盤モデルと、それを使ってロボットや工場設備を自律制御するフィジカルAIの確立です。テキスト生成の汎用モデルで米国勢と正面衝突しても、学習データ量と資金力の差は埋まりません。一方、製造ラインの制御ログ、設備の異常検知データ、熟練工の作業手順といった現実世界の産業データは日本国内に偏在しており、ウェブをいくらクロールしても手に入りません。日本製鉄や神戸製鋼所、ホンダ、安川電機といった名前が並ぶのは、この非公開データこそが交換価値だからです。物理世界で動くAIの技術的な位置づけはエンボディドAI(Embodied AI)とは|意味・読み方から生成AI・フィジカルAIとの違い、活用事例までわかりやすく解説で整理しています。

成否を分けるのはパラメーター数ではなくデータ整備

この構想の弱点をはっきり書きます。最大のリスクはGPU調達ではなく、産業データが学習可能な形になっていないことです。工場の現場データは装置メーカーごとにフォーマットが異なり、ラベル付けもされておらず、そもそも社外に出す許諾が取れていないケースが大半です。1社数千万円の出資でデータ提供を約束しても、実際に使える形へ整形する工数は各社の現場が負います。ここが動かなければ、初年度3,873億円で1兆パラメーターの器だけができて中身が入らない事態になりかねません。ソフトバンク自身の国産LLM系列はSarashinaとは?モデル一覧(TTS・OCR・Vision)と使い方・ライセンス・API提供形態、政府が選定した国産モデル群はデジタル庁が国産AI7モデルを選定した背景とAI主権確立への政策転換で扱っていますが、公開データで学習できる範囲の性能には国内勢がすでに到達しつつあります。Noetraの存在意義は、その先の「公開されていないデータ」を扱えるかどうかに懸かっています。

「関連銘柄」として見るときの事実と限界

Noetraは非上場で直接買える株は存在しない

「日本AI基盤モデル開発 株」「ソブリンAI 銘柄」といった検索が多いため、事実だけを置きます。Noetraは非上場の合弁会社であり、その株式を市場で売買することはできません。株式市場を通じて関与できるのは、ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループという中核の上場企業、および日本製鉄・神戸製鋼所・メガバンクなど少数株主に限られます。中核4社の出資比率は報道ベースで各十数%、製造業連合の出資は1社数千万円規模という金額感です。当サイトは個別銘柄の株価見通しや投資助言を扱いません。判断材料として使うなら、各社のIR資料で出資額と会計処理を確認してください。

PFNが非上場を続ける事業構造

開発に参画するプリファードネットワークスも非上場です。同社は事業会社との共同開発と、半導体を含む長期の研究開発に資金を投じる経営を続けており、四半期ごとの業績開示に縛られる上場のメリットが薄い構造にあります。国産AIの中核技術を持つ企業がそろって非上場であることは、この分野の投資機会が公開市場にほとんど出てこないという現実を示しています。

よくある質問

社名がNoetraに変わったのはいつですか?

2026年6月1日です。旧社名は「株式会社日本AI基盤モデル開発」で、法人の設立自体は2026年1月7日、設立が広く報じられたのは4月12日でした。同一の会社であり、6月30日の経産省発表以降はNoetra名義で扱われています。

経産省はいくら支援するのですか?

2026年6月30日に採択が発表され、初年度(2026年度)の委託費は約3,873億円です。事業期間は2026年6月から2031年3月まで、2030年度までの総事業規模は約1兆円を見込みます。Noetraと産業技術総合研究所の共同提案という形です。

NTTと富士通は参画していますか?

NTTは参画していません。自社LLM「tsuzumi 2」で独自路線を取っています。富士通は2026年5月28日の共同通信報道で、旭化成・安川電機とともに出資を検討していると伝えられた段階で、設立時の出資8社には含まれていません。

Noetraの資本金と出資比率は?

2026年7月時点で正式には公表されていません。報道で確認できるのは、中核4社がそれぞれ十数%を出資し、資本金は約100億円規模とされる水準までです。会社の正式発表ではないため、確定情報としては扱わないでください。

トヨタやファナック、三菱電機は出資していますか?

設立時の株主には含まれていません。Noetraは製造業を中心に出資を呼びかけており、2026年7月時点で出資社は40社超へ広がる見通しと報じられています。個別企業の参加は各社の公表を確認してください。

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