AWS Global Acceleratorとは、2つの固定IPアドレスを世界中のAWSエッジロケーションからエニーキャストで広告し、利用者の通信を最寄りのエッジからAWSのバックボーン経由でアプリケーションへ運ぶネットワークサービスです。料金はアクセラレーター1台ごとの固定料金と、転送量に応じたDT-Premiumの2本立てですが、請求書にはこの2つに加えてパブリックIPv4アドレスの料金が載ります。公式の料金例はこの3つ目を含んでいません。
この記事では、2026年10月時点の料金ページとPrice List APIの単価をもとに、東京リージョン構成の月額を試算し、固定IPを得る別の手段(NLB+Elastic IP)とも金額で比べます。あわせて、仕組みと2種類のアクセラレーターの違い、CloudFront・Route 53との使い分け、そして見落とされがちな「API操作はオレゴン(us-west-2)限定」という制約を、手元で実行したCLIの結果付きで整理します。
まとめ:Global Acceleratorの料金と採用判断の要点
- 固定料金は1台あたり0.025ドル/時。30日(720時間)で18ドルです。アクセラレーターを無効化しても課金は続き、止めるには削除するしかありません。削除すると固定IPも失います。
- DT-Premiumは支配的な方向だけに課金されます。東京などアジア太平洋のリージョンからアジア太平洋のエッジへは0.010ドル/GBで、通常のデータ転送料に上乗せされます。
- IPv4アドレス2個分の料金が別途かかります。0.005ドル/時×2個で、30日あたり7.20ドルです。最小構成でも月25.20ドル+転送量となります。
- 固定IPを得る手段としての上乗せ額は、ALBの機能が要るかで変わります。L4で足りるならNLB+Elastic IPのほうが月18ドル安く、ALBのL7ルーティングを残すならNLB+内部ALBとの差は月約0.5ドル+DT-Premiumです。
- CloudFrontとの違いはキャッシュの有無とプロトコルです。HTTPのキャッシュ配信ならCloudFront、TCP/UDPの非HTTP通信や固定IP・高速なリージョン切り替えが要件ならGlobal Acceleratorを選びます。
- 作成・更新のAPIはus-west-2でしか受け付けません。AWS CLIでは東京のリソースを登録するときも
--region us-west-2が必要です。
以下、仕組みから順に根拠を示します。
AWS Global Acceleratorの仕組みと構成要素
エニーキャストの静的IPとエッジロケーションでの通信の入口と経路
アクセラレーターを作ると、IPv4タイプなら2個、デュアルスタックならIPv4とIPv6を2個ずつ、計4個の静的IPアドレスが割り当てられます。これらのアドレスはAWSのエッジネットワークからエニーキャストで広告されるため(開発者ガイドの概要ページ)、利用者のパケットは物理的に近いエッジロケーションでAWSのネットワークに入ります。エッジロケーションとは、CloudFrontやGlobal Acceleratorが利用者との接点として使う、リージョンとは別の拠点のことです。
エッジでは利用者からのTCP接続をいったん終端し、ほぼ同時にエンドポイントとの新しいTCP接続を張ります。利用者からAWSのエッジまでを公衆インターネット経由で接続し、エッジからエンドポイントまでをAWSのグローバルネットワークで運ぶのが高速化の原理です。どこでAWS網に引き込むかという経路の考え方は、ホットポテトルーティングとコールドポテトルーティングの違いで詳しく扱っています。
2個のIPアドレスは、アベイラビリティーゾーンに相当する独立した「ネットワークゾーン」から1個ずつ提供されます。片方のアドレスが経路上でブロックされても、クライアントはもう一方で再試行できる設計です。アドレスはアクセラレーターが存在する限り保持され、無効化しても変わりません。削除した時点で失われます。
各アクセラレーターには a1234567890abcdef.awsglobalaccelerator.com 形式の既定DNS名も付きます(デュアルスタックでは .dualstack.awsglobalaccelerator.com)。アクセスログやDNSの逆引きで awsglobalaccelerator.com というドメインを見かけたら、それはGlobal Accelerator経由の通信です。この名前は変更できず、独自ドメインを使う場合はRoute 53などで静的IPかDNS名へ向けます。
リスナー・エンドポイントグループ・エンドポイントの設定上の階層関係
設定は3階層です。
- リスナー:標準アクセラレーターでは、リスナーごとにTCPまたはUDPの一方とポート範囲を指定します。両方を受け付ける場合は、プロトコル別にリスナーを作成します。1台あたり既定で10個まで作れます。
- エンドポイントグループ:1つのAWSリージョンに対応します。アクセラレーター内の全リスナーに属するエンドポイントグループ数の合計は42が上限です(クォータの一覧、2026年10月時点)。
- エンドポイント:実際の転送先です。標準アクセラレーターではALB、NLB、EC2インスタンス、Elastic IPアドレスが対象で、ALBとNLBは内部向けのものも登録できます。
エンドポイントを置けるリージョンは、2026年10月時点の対応リージョン表で34あり、東京(ap-northeast-1)と大阪(ap-northeast-3)を含みます。ただし東京はAZ ID apne1-az3 が対象外です。AZ名(ap-northeast-1aなど)とAZ IDの対応はアカウントごとに違うので、エンドポイントのサブネットはAZ IDで確かめます。
内部ALBやプライベートサブネットのEC2を登録する場合、ロードバランサーやインスタンスにパブリックIPは要りません。そのVPCへのインターネットゲートウェイのアタッチは必要ですが、サブネットのルートテーブルにインターネットゲートウェイへのルートを足す必要はありません(VPC接続の解説)。クライアントIP保持を有効にする場合は、セキュリティグループやENIについての要件が別にあります。この性質は次の料金比較で効いてきます。
オンプレミスのサーバーは直接登録できません。公式FAQは、各リージョンにNLBを置いてオンプレミスを宛先にし、そのNLBをエンドポイントとして登録する構成を案内しています。
ヘルスチェックとフェイルオーバーの挙動:新規接続と既存接続の違い
標準アクセラレーターはエンドポイントを常時ヘルスチェックし、異常を検知すると新しい接続から正常なエンドポイントへ振り向けます。既存の接続はアイドルタイムアウトまで元のエンドポイントに流れ続けます。タイムアウトはTCPが340秒、UDPが30秒で、変更できません。TCPのキープアライブパケットでは延長されず、1バイト以上のデータ送受信が必要です。
リージョン内で正常かつ重みが0より大きいエンドポイントが無くなると、近い順に3つのエンドポイントグループを試して移ります。このときトラフィックダイヤルが0のグループも候補に入ります。それでも見つからなければ、最寄りのグループ内のランダムなエンドポイントへ送ります(フェイルオープン)。リージョンが回復すると、通常は約30秒で元の振り分けに戻ります。
振り分けの調整には2つのつまみがあります。エンドポイントグループ単位のトラフィックダイヤル(0〜100%、既定100%)は、そのリージョンに向かう予定だった通信のうち何割を受け入れるかを決めます。エンドポイント単位の重み(0〜255、既定128)は、グループ内での配分比です。Blue/Greenデプロイでリージョンごと切り替えるならダイヤル、同じリージョン内で新旧のALBに割り振るなら重み、と使い分けます。ダイヤルの変更は新しい接続にだけ効き、既存の接続は切られません。メンテナンス前にダイヤルを0にし、作業後に100へ戻す運用例がトラフィックダイヤルの解説ページに載っています。
AZ単位の障害への対応では、Global AcceleratorはARCのゾーンシフトによる迂回指示にも従います。リージョン間の切り替え設計まで含めるなら、Amazon Application Recovery Controller(ARC)の機能と料金もあわせて確認してください。
標準アクセラレーターとカスタムルーティングアクセラレーターの違い
Global Acceleratorには2種類のアクセラレーターがあります。Webアプリケーションや一般的なAPIの高速化・冗長化であれば、標準アクセラレーター一択です。
| 項目 | 標準 | カスタムルーティング |
|---|---|---|
| 転送先の決め方 | 位置・ヘルス・重みで自動選択 | ポートごとに固定マッピング |
| エンドポイント | ALB・NLB・EC2・EIP | VPCサブネット内のEC2 |
| ヘルスチェック | あり(自動フェイルオーバー) | なし(フェイルオーバーなし) |
| IPアドレスタイプ | IPv4・デュアルスタック | IPv4のみ |
| クライアントIPの保持 | ALB・EC2・SG付きNLBで可 | 常に保持 |
| アカウントあたり上限 | 20台(引き上げ可) | 10台(引き上げ可) |
カスタムルーティングは、マッチメイキングサービスが「このプレイヤーはこのゲームサーバーのこのポートへ」と決めるオンライン対戦ゲームや、通話ごとに特定のメディアサーバーへ割り当てるVoIPのための機能です。アプリケーションはAPIでポートと宛先(プライベートIPとポート)の対応表を取得し、利用者には外部IPとポートの組を渡します。サブネット内の宛先は既定ですべて受信拒否になっており、許可するソケットを明示する必要があります。
標準アクセラレーターでクライアントIPを保持すると、エンドポイント側のログやセキュリティグループで送信元の実IPを使えます。ただしElastic IPアドレス、セキュリティグループを持たないNLB、TLSを終端するNLBでは保持できません(クライアントIP保持の解説)。また、IPv4アクセラレーターにデュアルスタックNLBを登録する場合も、クライアントIP保持を有効にできません。デュアルスタックのアクセラレーターに登録するエンドポイントは、クライアントIP保持の有効化が必須です。
Global Acceleratorの料金体系と東京リージョンでの実額
固定料金とDT-Premiumの課金ルール:時間と転送方向の扱い
公式料金ページは固定料金、DT-Premium、パブリックIPv4アドレス料金の3項目を挙げています。まず、固定料金とDT-Premiumを説明します。
- 固定料金:アクセラレーターが存在する1時間(端数切り上げ)ごとに0.025ドル。有効・無効を問わず、削除するまで課金されます。
- DT-Premium:AWSネットワークを通ったデータ1GBあたりの料金です。単価は応答を返すリージョン(送信元)と、応答が向かうエッジロケーション(送信先)の組み合わせで決まります。
DT-Premiumには2つの注意点があります。第一に、課金されるのは1時間ごとに算出した支配的な方向(アプリへの受信か、利用者への送信の多いほう)だけです。ダウンロード中心のサービスなら送信側、アップロード中心なら受信側に課金されます。第二に、この料金は通常のEC2データ転送料(DTO)に上乗せされます。Global Acceleratorを挟むとデータ転送料がDT-Premiumに置き換わる、というわけではありません。
この「支配的な方向だけ」という規則は、Price List API(AWSGlobalAccelerator/current/index.json)にもそのまま表れています。DT-Premiumの各項目は Dominant と Non-dominant の2行に分かれ、Non-dominant 側の単価は0ドルです。送信元がインターネット上のクライアントかAWS上のクライアントかでも項目が分かれますが、単価は同じでした。
料金ページには標準とカスタムルーティングで別の単価は載っておらず、同じ体系で説明されています。別のAWSアカウントのALBなどをエンドポイントにすること自体の追加料金はなく、アクセラレーターに関連する費用はその所有者に請求されます(クロスアカウント時の請求)。
日本(アジア太平洋)発着のDT-Premium単価と送信先別の比較
東京・大阪リージョンは料金表の「Asia Pacific」に属します。この区分は韓国・インド・フィリピン・タイを含みません。東京リージョンのアプリケーションが各地域の利用者に応答を返すときの単価は次のとおりです(Price List APIの公開日 2026-09-11 の値。2026-10-26に再取得しても同じ版で、料金ページの表と一致)。
| 送信先のエッジ | DT-Premium(USD/GB) |
|---|---|
| アジア太平洋(日本など) | 0.010 |
| 米国・メキシコ・カナダ | 0.012 |
| インド・フィリピン・タイ・ベトナム | 0.032 |
| 欧州・イスラエル・トルコ | 0.043 |
| 南米 | 0.049 |
| 中東 | 0.055 |
| 韓国 | 0.058 |
| 南アフリカ・ケニア・ナイジェリア | 0.065 |
| オーストラリア・ニュージーランド | 0.080 |
表は方向で非対称になっています。東京から米国のエッジへは0.012ドルですが、米国リージョンからアジア太平洋のエッジへは0.035ドルです。海外リージョンに置いたアプリケーションを日本の利用者に届ける構成では、東京リージョンに置く場合の3倍以上の単価になります。単価は改定されることがあるため、見積もりの前に公式の料金ページで最新値を確認してください。
見落としやすいパブリックIPv4アドレスの料金とBYOIPの例外
AWSはパブリックIPv4アドレス1個につき0.005ドル/時を課金しています。VPCの料金ページは、Global Acceleratorに割り当てたIPv4アドレスも使用中のアドレスとして課金対象と明記しています。アクセラレーター1台で2個なので、30日で7.20ドルです。デュアルスタックでもIPv4は2個のままです。
例外はBYOIP(自社保有のIPv4アドレス範囲の持ち込み)で、持ち込んだアドレスにはこの料金がかかりません。ただしアクセラレーターに自社範囲から割り当てられるのは1範囲につき1個で、2個目はAmazonのプールから割り当てられます。IPv4料金を2個ともゼロにするには、BYOIPの範囲を2つ持ち込む必要があります。なお、BYOIPはIPv6に対応していません。
東京リージョン構成の月額試算:固定料金・転送量・IPv4料金の内訳
東京リージョンのALBを標準アクセラレーター1台の配下に置き、30日間(720時間)運用した場合の試算です。送信(利用者へのレスポンス)が常に支配的な方向で、かつALB・EC2側の通常のデータ転送料は含まない前提です。
| 項目 | 計算 | ケースA | ケースB |
|---|---|---|---|
| 固定料金 | 0.025×720時間 | 18.00 | 18.00 |
| IPv4料金 | 0.005×2個×720時間 | 7.20 | 7.20 |
| DT-Premium(日本向け) | 0.010×GB | 10.00 | 14.00 |
| DT-Premium(米国向け) | 0.012×GB | 0.00 | 7.20 |
| 月額合計(USD) | - | 35.20 | 46.40 |
ケースAは国内向けに1,000GBを送信する構成、ケースBは2,000GBのうち1,400GBを日本、600GBを米国の利用者へ送る構成です。転送量が少ないうちは、固定料金とIPv4料金の25.20ドルが請求の大半を占めます。
実際の請求では、支配的な方向を1時間ごとに判定します。日中は送信、夜間のバッチ時間帯は受信が多いといった構成では、月合計の比率から計算した額とずれます。
NLB+Elastic IP・ALB単体との月額比較:固定IPのための上乗せ額
「取引先に固定IPを伝えたい」という理由だけでGlobal Acceleratorを検討しているなら、東京リージョン内で固定IPを得る手段と月額を並べると判断しやすくなります。東京のロードバランサーの時間料金はALBもNLBも0.0243ドル/時(Price List APIのAWSELB、2026-09-11版)で、30日なら17.50ドルです。2AZ構成とし、LCU・NLCUと通常のデータ転送料は除いた比較です。
| 構成 | 固定IP | LB料金 | GA固定料金 | IPv4料金 | 月額(USD) |
|---|---|---|---|---|---|
| ALB単体(インターネット向け) | なし | 17.50 | - | 7.20(2個) | 24.70 |
| NLB+Elastic IP×2 | AZごとに1個 | 17.50 | - | 7.20(2個) | 24.70 |
| NLB+Elastic IP×2+内部ALB | AZごとに1個 | 34.99(2台) | - | 7.20(2個) | 42.19 |
| Global Accelerator+内部ALB | エニーキャスト2個 | 17.50 | 18.00 | 7.20(GAの2個) | 42.70+DT-Premium |
| Global Accelerator+インターネット向けALB | エニーキャスト2個 | 17.50 | 18.00 | 14.40(4個) | 49.90+DT-Premium |
ALB単体のIPv4料金は、2AZで各1個と仮定した最小値です(ALBは負荷に応じてIPアドレスが増えることがあります)。NLBのElastic IPは使用中のパブリックIPv4として同じ0.005ドル/時がかかります。3行目は、ALBをNLBのターゲットにする構成で、NLBのElastic IPで固定IPを持ちながらALBのL7ルーティングを使えます。
表から読み取れるのは3点です。第一に、Global Acceleratorの静的IPはNLBのElastic IPを置き換えるので、ALBの機能が不要なら、固定IPのための上乗せは実質的に固定料金の18ドル+DT-Premiumです。第二に、パスやホスト名による振り分けなどALBの機能を残すなら、比べる相手はNLB+内部ALBで、差は月約0.5ドル+DT-Premiumまで縮みます。この場合はロードバランサーを2段にする運用の手間と比べて、Global Acceleratorを選ぶ理由が十分にあります。第三に、Global Acceleratorの背後のALBは内部向けにできるため、インターネット向けのまま残すとIPv4料金を二重に払います。固定IPが唯一の要件で、L4の振り分けで足り、利用者が国内だけなら、NLB+Elastic IPが最も安上がりです。
無効化しても止まらない課金と削除の手順:検証環境の消し忘れ対策
検証用に作ったアクセラレーターを「無効」にして放置すると、固定料金もIPv4料金も発生し続けます。料金を止める手段は削除だけです。削除の前提はコンソールとAPIで違い、削除手順のページによれば、コンソールでは無効化すればリスナーやエンドポイントグループを残したまま削除できますが、APIやCLIでは無効化に加えてリスナーとエンドポイントグループを先に消す必要があります。一方、本番で使っているアクセラレーターを削除すると静的IPは戻ってきません。取引先のファイアウォールに許可登録してもらっているIPなら、再登録の依頼が発生します。公式ドキュメントは、タグベースのIAMポリシーで削除できる利用者を絞るよう勧めています。
放置されたアクセラレーターは、アカウント単位で一覧を取れば見つかります。list-acceleratorsのリファレンスどおり、出力の各要素は Enabled・Status・CreatedTime を持つので、無効のまま残っているものを絞り込めます。次の例は、CLIリファレンスの引数に沿って棚卸しから削除までを並べたものです。ARNは自分の環境の値に置き換えてください。
# 1. 無効のまま課金が続いているアクセラレーターを洗い出す(APIはus-west-2固定)
aws globalaccelerator list-accelerators --region us-west-2 \
--query 'Accelerators[?Enabled==`false`].[Name,AcceleratorArn,CreatedTime]' \
--output table
# 2. 無効化する(有効のままでは削除できない)
aws globalaccelerator update-accelerator \
--accelerator-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE \
--no-enabled --region us-west-2
# 3. CLIではエンドポイントグループ、リスナーの順に消してから本体へ進む
aws globalaccelerator list-listeners \
--accelerator-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE --region us-west-2
aws globalaccelerator list-endpoint-groups \
--listener-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE/listener/EXAMPLE --region us-west-2
aws globalaccelerator delete-endpoint-group \
--endpoint-group-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE/listener/EXAMPLE/endpoint-group/EXAMPLE --region us-west-2
aws globalaccelerator delete-listener \
--listener-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE/listener/EXAMPLE --region us-west-2
# 4. 状態がDEPLOYEDに戻ったのを確かめてからアクセラレーター本体を消す
aws globalaccelerator describe-accelerator \
--accelerator-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE \
--query 'Accelerator.Status' --region us-west-2
aws globalaccelerator delete-accelerator \
--accelerator-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE --region us-west-2
手順1の一覧に載ったものは、削除するまで1台につき月25.20ドルずつ請求に積み上がります。検証環境ではTerraformで作って terraform destroy で消す運用に寄せると、CLIの手作業による消し忘れを減らすことが可能です。なお、Enabled が true のアクセラレーターは削除できない仕様で、この点はupdate-acceleratorのリファレンスに明記されています。
CloudFront・Route 53との通信要件別の違いと使い分け
CloudFrontとの違い:キャッシュの有無と対応プロトコル
どちらもAWSのエッジロケーションとグローバルネットワークを使いますが、解決する問題が違います。
| 観点 | Global Accelerator | CloudFront |
|---|---|---|
| 対象プロトコル | TCP・UDP | HTTP・HTTPS |
| エッジでのキャッシュ | なし(パケットを中継) | あり |
| 入口 | エニーキャストの静的IP(既定) | DNS名(Anycast静的IPは申請制) |
| 主な課金 | 固定料金+DT-Premium | 転送量・リクエスト数または定額プラン |
| DDoS対策 | AWS Shieldと統合 | AWS Shieldと統合 |
公式FAQは、Global Acceleratorをゲーム(UDP)、IoT(MQTT)、VoIPのような非HTTP用途と、静的IPや決定的で速いリージョン切り替えが必要なHTTP用途に向くと位置づけています。画像や動画、静的ファイルはCloudFrontのキャッシュ配信に向きます。CloudFrontは動的なHTTPコンテンツやAPIの高速化にも対応するため、キャッシュの可否だけで採否を決めないでください。CloudFront側の日本向け単価と定額プランの分岐点はCloudFrontの料金を実額で計算するにまとめています。料金プランやエッジ機能はAmazon CloudFrontの仕組み・料金プランとエッジ機能で解説しています。DDoS対策の範囲を詰めるなら、AWS ShieldのStandardとAdvancedの違いも参照してください。
Route 53のルーティングとの違い:DNSキャッシュに依存しない切り替え
Route 53では、レイテンシーベースルーティングで遅延に基づく応答先を選び、フェイルオーバールーティングでプライマリの障害時にセカンダリへ応答先を切り替えます。違いは切り替えの仕組みです。Route 53はDNSの応答を変えるため、クライアントやリゾルバーに切り替え前の応答がキャッシュされている間は、新しい振り分け先が反映されないことがあります。TTLを超えて保持する実装ではさらに遅れます。Global Acceleratorでは利用者が同じIPアドレスに接続し続け、振り分け先はAWS側で変わるので、DNSキャッシュの影響を受けません。公式FAQは、異常なエンドポイントを検出して外すまで1分未満、設定変更の伝搬は数秒としています。
実務では対立ではなく併用します。独自ドメインをRoute 53のエイリアスレコードでアクセラレーターに向ける構成が一般的です。エイリアスに指定するホストゾーンIDはGlobal Accelerator共通の Z2BJ6XQ5FK7U4H で、Terraformではアクセラレーターの hosted_zone_id 属性がこの固定値を返します(後述のTerraform例に含めています)。DNS側の設計はAmazon Route 53のDNS・ルーティング設計に、ホストゾーンやクエリの月額はRoute 53の料金を実額で計算するにまとめています。
AWS CLIとTerraformでの構築手順:us-west-2固定の注意点
Global Acceleratorはグローバルサービスで、作成・更新のAPIはすべて米国西部(オレゴン)リージョンで実行する決まりです。CloudWatchのメトリクス(名前空間 AWS/GlobalAccelerator)も同じくus-west-2で参照します。一方、Service Quotasでの上限引き上げ申請はus-east-1で行います。エンドポイントが東京にあっても、この2つのリージョン指定は変わりません。
AWS CLIによるアクセラレーター・リスナー・エンドポイントグループの作成
EC2コンソールでALBやNLBを作るときは、アドオンとしてアクセラレーターを同時に作れます。ロードバランサーがエンドポイントとして登録された状態で作られますが、DNSを静的IPかアクセラレーターのDNS名へ向け直すまで、通信はアクセラレーターを通りません(ロードバランサー作成時の追加)。リスナーのポートや重みを自分で決めたい場合や、コードで管理する場合は次のCLIかTerraformで作ります。
作成済みの東京リージョンのALBを、ポート443のTCPリスナー経由で公開する最小手順です。ARNは各コマンドの出力に置き換えてください。
# 1. アクセラレーター(IPv4の静的IPが2個割り当てられる)
aws globalaccelerator create-accelerator \
--name web-app --ip-address-type IPV4 --region us-west-2
# 2. リスナー(送信元IPと宛先IPに基づく接続先の固定。経路変更時は維持されない場合がある)
aws globalaccelerator create-listener \
--accelerator-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE \
--port-ranges FromPort=443,ToPort=443 \
--protocol TCP --client-affinity SOURCE_IP --region us-west-2
# 3. 東京のエンドポイントグループとALB(クライアントIPを保持)
aws globalaccelerator create-endpoint-group \
--listener-arn arn:aws:globalaccelerator::123456789012:accelerator/EXAMPLE/listener/EXAMPLE \
--endpoint-group-region ap-northeast-1 \
--endpoint-configurations EndpointId=arn:aws:elasticloadbalancing:ap-northeast-1:123456789012:loadbalancer/app/web/EXAMPLE,Weight=128,ClientIPPreservationEnabled=true \
--traffic-dial-percentage 100 \
--region us-west-2
2026年10月26日にAWS CLI 1.46.2(botocore 1.43.62)で上のコマンドを実行したところ、パラメータ検証を通過してAPIへの送信まで進み、検証用のダミー認証情報に対する UnrecognizedClientException が返りました。一方、エンドポイントに合わせてリージョンを東京にすると、送信前に次のエラーで止まります。
$ aws globalaccelerator create-accelerator --name web-app --region ap-northeast-1
Could not connect to the endpoint URL: "https://globalaccelerator.ap-northeast-1.amazonaws.com/"
上の例にヘルスチェックの引数が無いのは、ALBとNLBのエンドポイントではElastic Load Balancing側のヘルスチェック設定が使われるためです。Global Accelerator側の間隔(--health-check-interval-seconds)やしきい値(--threshold-count)を調整する意味があるのは、EC2インスタンスとElastic IPアドレスをエンドポイントに指定した場合です。間隔に指定できるのは10秒か30秒(既定30秒)で、5 を渡すと valid min value: 10 で拒否されました。しきい値の既定は3回です。CLIのプロファイルやSSOの設定はAWS CLIの導入と運用を参照してください。
Terraformで書くときのリージョン指定とプロバイダーの上書き動作
Terraformでは事情が異なります。AWSプロバイダーは、標準のAWSパーティションではGlobal AcceleratorのAPIリージョンを内部でus-west-2に上書きします(プロバイダーのソース service_package_gen.go で確認)。リソースの引数はTerraform Registryのaws_globalaccelerator_acceleratorのページで確認できます。そのため provider のリージョンが東京のままでも作成でき、エイリアス付きのus-west-2プロバイダーを別に用意する必要はありません。
terraform {
required_providers {
aws = {
source = "hashicorp/aws"
version = "~> 6.0"
}
}
}
provider "aws" {
region = "ap-northeast-1"
}
variable "alb_arn" {
type = string
}
variable "zone_id" {
type = string
}
resource "aws_globalaccelerator_accelerator" "web" {
name = "web-app"
ip_address_type = "IPV4"
enabled = true
}
resource "aws_globalaccelerator_listener" "https" {
accelerator_arn = aws_globalaccelerator_accelerator.web.arn
protocol = "TCP"
client_affinity = "SOURCE_IP"
port_range {
from_port = 443
to_port = 443
}
}
resource "aws_globalaccelerator_endpoint_group" "tokyo" {
listener_arn = aws_globalaccelerator_listener.https.arn
endpoint_group_region = "ap-northeast-1"
traffic_dial_percentage = 100
endpoint_configuration {
endpoint_id = var.alb_arn
weight = 128
client_ip_preservation_enabled = true
}
}
resource "aws_route53_record" "app" {
zone_id = var.zone_id
name = "app.example.com"
type = "A"
alias {
name = aws_globalaccelerator_accelerator.web.dns_name
zone_id = aws_globalaccelerator_accelerator.web.hosted_zone_id
evaluate_target_health = false
}
}
output "static_ips" {
value = aws_globalaccelerator_accelerator.web.ip_sets[0].ip_addresses
}
この設定は、2026年10月26日にTerraform 1.17.0とAWSプロバイダー6.70.0(2026-10-21リリース)の組み合わせで terraform validate を実行し、終了コード0(Success! The configuration is valid.)を確認しています。terraform fmt -check も差分なしでした。ALBのARNとRoute 53のホストゾーンIDは変数で渡し、static_ips で取引先に伝える2個の固定IPを出力します。リージョンの上書き処理は、6.70.0のソースでも service_package_gen.go に残っていることを確かめました。
クライアントIP保持を有効にすると、Global AcceleratorはVPC内に GlobalAccelerator という名前のセキュリティグループを自動作成します。Terraformの管理外なので、terraform destroy でVPCを消すときに DependencyViolation で止まることがあり、このセキュリティグループを手動で削除する必要があります。
導入効果の目安とTCP通信での測定方法・構成別のSLA適用条件
公式FAQによると、第三者のリアルユーザー計測ツールでTCP通信の90パーセンタイルを測った場合、公衆インターネット経由と比べて初回バイトまでの遅延が最大49%、ジッターが最大58%減り、スループットが最大60%向上します。いずれも「最大」の値で、利用者とリージョンが近いほど改善幅は小さくなります。
自社の利用者で効果を見積もるときは、次の3点を押さえます。
- pingでは測れない:Global AcceleratorはICMPのecho(ping)にエッジで応答し、エンドポイントへ転送しません。pingの応答時間はエッジまでの距離しか表さないため、TCPやHTTPで計測します。
- 公式の比較ツール:
https://speedtest.globalaccelerator.awsでは、各リージョンのALBからのHTTPSダウンロード速度を直接接続と比較できます。結果はラストワンマイルの回線品質で変わるので、複数回測ります。 - 導入後の監視:CloudWatch(us-west-2)のメトリクスと、S3へ出力するフローログで通信を確認できます。フローログをS3へ直接出力しても、CloudWatch LogsのVended Logs料金がかかります。
SLAは構成で分かれます。すべてのエンドポイントを複数AZに置いたアクセラレーターは月間稼働率99.99%、一部のエンドポイントが単一AZのアクセラレーターは99.5%が基準で、対象障害がSLAの条件を満たし、期限内の申請がAWSに認められると、そのアクセラレーターの料金に対してサービスクレジットが適用されます(SLAの最終更新は2022年5月19日)。
Global Acceleratorを採用すべきでない構成と判断条件
次のいずれかに当てはまるなら、Global Acceleratorを入れる前に別の手段を検討してください。
- 利用者も配置先も国内だけのWebサイト:固定IPやリージョン間の切り替えが不要で、比較計測でも改善が小さいなら、月25.20ドルの固定費を足す理由がありません。キャッシュが効くならCloudFront、単一リージョンの冗長化ならALBで足ります。
- 静的コンテンツが通信量の大半を占める配信:Global Acceleratorはキャッシュしないため、毎回オリジンまで往復します。DT-Premiumが通常の転送料に上乗せされるため、キャッシュ可能な配信ではCloudFrontを先に比較します。費用は配信地域、転送量、リクエスト数、キャッシュヒット率、料金プランをそろえて試算してください。
- サーバーから外部へ出ていく通信の送信元IPを固定したい構成:公式FAQのとおり、Global AcceleratorのIPアドレスが受けられるのはクライアント側から始まる接続だけです。外部APIの許可リストに自社の送信元IPを登録する、といった用途にはNATゲートウェイとElastic IPを使います。
- Local ZonesのALB・NLBをエンドポイントにしたい構成:公式ドキュメントはリージョン内のロードバランサーとEC2しか対応しないと明記しています。
- 同じエンドポイントにインターネットから直接も接続させる構成:公式ドキュメントは、コネクションの衝突によるTCP接続の遅延を招くとして推奨していません。移行期間に両方の経路を開く場合は、この遅延を見込んだうえで短期間で片方に寄せます。
ロードバランサーの種類ごとの振り分け方式から整理し直す場合は、ロードバランサーの仕組みと種類が出発点になります。
Global Acceleratorを入れる前に確認する5つの判断項目
次の5項目は重みが違います。1〜3は機能の要件で、1つでも当てはまればGlobal Acceleratorを検討する理由になり、前述の比較表で代替構成と総額を比べます。4と5は高速化の見込みと実測で、海外利用者向けの高速化が目的なら5の数字で決めます。
- 取引先や端末に許可登録してもらう固定IPが必要か:IP許可リスト方式の連携先がある、ファームウェアに接続先IPを書き込むIoT機器がある、といった条件はALB単体では満たせません。
- TCPやUDPの非HTTP通信を海外の利用者へ届けるか:ゲーム、VoIP、MQTTのようにキャッシュの効かない通信は、CloudFrontでは受けられない領域です。
- リージョン障害時の切り替えをDNSのTTLに任せたくないか:数分単位の切り替え遅延を許容できない業務なら、静的IPのまま振り分け先を変えられる点に価値があります。
- 利用者の居住地とアプリの配置リージョンが離れているか:東京リージョンに国内利用者だけなら、経路短縮の余地は小さくなります。
- 比較ツールや自前の計測で改善が出たか:pingではなくTCPやHTTPSで測り、改善幅を数字で確認したうえで決めます。
判断が分かれるのは、固定IPは欲しいが利用者は国内だけ、というケースです。この場合は前述の比較表のとおり、ALBの機能が不要ならNLB+Elastic IPが月18ドル安く、ALBの機能を残すならNLB+内部ALBとの差は月約0.5ドル+DT-Premiumです。どちらも単一リージョンの構成なので、リージョン障害時の切り替えが要件にあるかを先に決め、そのうえで総額を比べます。リージョンをまたぐ冗長化、ALB・NLB・Route 53・CloudFrontとの組み合わせまで含めたネットワーク設計を外部に相談したい場合は、一創のインフラ構築(AWS・Google Cloud・Azure)で構成の比較と見積もりからお手伝いしています。
よくある質問
Global Acceleratorの料金は月いくらからですか?
アクセラレーター1台を30日間置いておくだけで、固定料金18ドルとIPv4アドレス2個分の7.20ドル、計25.20ドルがかかります。これに支配的な方向の転送量×DT-Premium(東京から国内向けなら0.010ドル/GB)と、通常のデータ転送料が加わります。
Global AcceleratorのIPアドレスは変わりますか?
アクセラレーターが存在する限り変わりません。無効化しても同じアドレスが保持されます。削除すると失われ、再作成しても同じアドレスは戻りません。IPを自社で管理したい場合は、IPv4に限りBYOIPで自社範囲を持ち込めます。
awsglobalaccelerator.comとは何のドメインですか?
Global Acceleratorが各アクセラレーターに自動で付けるDNS名のドメインです。a1234567890abcdef.awsglobalaccelerator.com のような形式で、アクセラレーターの静的IPを指します。AWSが割り当てた静的IPには逆引き用のPTRレコードも作られるため、ログの逆引きでこの名前が出ることがあります。BYOIPのアドレスにはGlobal AcceleratorによるPTRレコードは作られません。
AWSのエッジロケーションとは何ですか?
リージョンとは別に世界各地へ置かれた、利用者との接点となるAWSの拠点です。CloudFrontはここでコンテンツをキャッシュし、Global Acceleratorはここで利用者の通信をAWSのネットワークへ引き込みます。
Global AcceleratorはS3で使えますか?
標準アクセラレーターのエンドポイントはALB・NLB・EC2・Elastic IPで、S3バケットはその中にありません。公式FAQは、S3 Multi-Region Access Pointsを使う方法を案内しています。Multi-Region Access Pointsは内部でGlobal Acceleratorを使い、複数リージョンのバケットへの要求をAWSのネットワーク経由で最も近いバケットへ届けます。