AIDMAとAISASの違いとは?5段階の対応関係・使い分けと後継モデルを解説

AIDMAとAISASは、どちらも消費者が商品を知ってから買うまでを5段階に分けたモデルです。並べて語られることが多い一方で、「結局どこが違うのか」「AISASはもう古いのではないか」という疑問が残りやすいところでもあります。この記事では2つのモデルの対応関係を段階ごとに突き合わせ、どちらを土台にすべきかの判断基準と、段階を何の数字で測るかまでを整理します。

まとめ

AIDMAは1924年の書籍で示された古典的なモデルで、購買行動が広告接触から時間をおいて起こることを前提に、Memory(記憶)を段階として置いています。AISASは電通が2004年から提唱するモデルで、Desire・Memoryという内面の2段階が、Search(検索)という観測できる行動に置き換わっている点が最大の違いです。さらに購買後のShare(共有)が次の人のSearchの材料になるため、AIDMAが購買で終わる一本道なのに対し、AISASは循環します。

「AISASは古い」と言われがちですが、提唱者である電通は2011年にSIPSを発表した際、AISASを「コミュニケーションの土台となる重要な消費行動モデル」として引き続き提唱すると明記しています。後発モデルは置き換えではなく特定領域の深掘りです。使い分けの分かれ目は業種ではなく、購入前に検索が発生している商材かどうかにあります。

AIDMAとAISASの違い|3段階目以降で分かれる構造

5段階の対応関係

役割 AIDMA AISAS
認知 Attention(注意) Attention(気づく)
関心 Interest(興味) Interest(興味をもつ)
購買前 Desire(欲求)・Memory(記憶) Search(情報収集する)
購買 Action(行動) Action(購入する)
購買後 段階なし Share(情報共有する)

どちらも5段階ですが、順番に一対一で並べると対応関係を読み違えます。両モデルのActionはいずれも購買そのものを指し、AISASはその先にShareが続く構造だからです。表は段階の番号ではなく役割で揃えています。AISAS側の日本語表記は、電通が2011年1月31日のニュースリリースで示した定義文に合わせました。

前半2段階は共通で、購買前の扱いから性質が分かれます。AIDMAのDesire・Memoryは消費者の頭の中で起きる心理状態であり、外からは直接観測できません。AISASはこの2つの心理段階を、Searchという1つの行動段階に置き換えました。検索という行動はログに残るため、企業側が把握できる対象に変わります。

SearchとShareが変える情報の流れ

もう一つの違いは、購買のあとに段階が続くかどうかです。AIDMAはAction(購買)が終点で、そこから先は範囲外です。AISASはActionのあとにShareが置かれ、購入者の投稿やレビューが、まだ買っていない人がSearchする際の判断材料になります。電通は2011年のリリースでAISASを「Attention(気づく)⇒Interest(興味をもつ)⇒Search(情報収集する)⇒Action(購入する)⇒Share(情報共有する)」と定義していますが、この並びには、消費者が自ら情報を収集し発信し他者と共有するという行動の変化が前提として置かれています。企業が発信した情報だけでなく、購入者が残した情報が次の購買を動かす点が、インターネット普及後のモデルたるゆえんです。

この差は施策の設計にそのまま効いてきます。AIDMAの発想では「どれだけ多くの人に届けて記憶に残すか」が中心になり、予算はマス広告や店頭の露出に向かいます。AISASの発想では「検索されたときに何が見つかるか」「買った人が共有したくなる状態か」が争点になり、検索結果の中身とレビューの管理が主戦場になります。

AIDMAの5段階と提唱の背景

AIDMAは、1924年刊の『Retail Advertising and Selling』でアメリカの実務家サミュエル・ローランド・ホールが示したモデルとされています。原型はセント・エルモ・ルイスによるAIDA(Attention・Interest・Desire・Action)で、AIDMAはそこにMemory(記憶)を加えた派生です。広告に触れた瞬間と実際に店で買う瞬間の間には時間と距離の隔たりがあり、その間をつなぐものとして記憶が要る、という発想でMemoryが差し込まれました。

各段階は、Attention(商品を知る)、Interest(自分に関係がありそうだと感じる)、Desire(欲しいと思う)、Memory(買う場面まで覚えている)、Action(購入する)と進みます。100年前のモデルですが、Memoryの位置づけは今も実務的な意味を持ちます。現代のマーケティングで言えば、購入を検討する場面で候補として頭に浮かぶかどうか、つまり純粋想起が取れているかに相当します。ブランド名を挙げてもらう調査で名前が出てこない商材は、認知率が高くてもMemoryの段階で脱落していると読めます。

AISASの5段階と購買行動の具体例

AISASは、電通が2004年から提唱している消費行動モデルです。AISASは電通の登録商標で、公式リリースでも「AISAS(R)」と登録商標マーク付きで表記されています。段階はAttention(気づく)、Interest(興味をもつ)、Search(情報収集する)、Action(購入する)、Share(情報共有する)です。

消費財での動き方を追うと、SNS広告でスニーカーを見かけて認知し(Attention)、デザインが好みだと感じ(Interest)、商品名にサイズ感やレビューを添えた語で検索して他の人の評価を確かめ(Search)、ECサイトで購入し(Action)、着用写真を投稿する(Share)という流れになります。最後の投稿が、次に同じ商品を検索した人の検索結果に並ぶことで循環が生まれます。

BtoBでも構造は変わりません。展示会やウェビナーで製品を知り、課題に合いそうだと感じ、製品名に「導入事例」「料金」を足して検索し、稟議を通して導入し、その後に導入事例インタビューとして社名が公開される、という順です。BtoBのShareは個人のSNS投稿ではなく事例記事や業界内の口コミという形を取りますが、他社の検討材料になるという役割は同じです。ここを理解しておくと、事例取材の依頼が単なる広報活動ではなく、AISASのShare段階を自社で作りにいく施策だと位置づけられます。

「AISASはもう古い」への答え

SIPS発表時に電通が示したAISASの位置づけ

AISASの提唱から20年以上が経ち、SNSや動画が主要な情報源になったことで、「AISASは時代遅れではないか」という議論が繰り返されています。この問いには、提唱者である電通自身の説明が残っています。

電通は2011年1月31日、社内ユニット「サトナオ・オープン・ラボ」(リーダーは佐藤尚之氏)が、ソーシャルメディアに対応した消費行動モデル概念SIPSを発表しました。そのニュースリリースの注釈には、SIPSとAISASの関係が明記されています。SIPSについては「進化したソーシャルメディアの視点を重視して、生活者の行動を深掘りした概念」と説明したうえで、AISASについては「今後も電通では、『AISAS(R)』を、コミュニケーションの土台となる重要な消費行動モデルとして、グローバルで提唱してまいります」と述べています。

新しいモデルを出した当人が、旧モデルを土台として維持すると同じ文書で宣言しているわけです。したがって「AISASが後継モデルに置き換えられた」という理解は、少なくとも提唱者の説明とは一致しません。実務上も、AISASを捨てて別のモデルに乗り換える必要はほとんどなく、変わったのはSearchが行われる場所です。検索エンジンだけでなくSNS内の検索や動画プラットフォームでも情報収集が起きるようになったため、Searchの段階で押さえるべき接点が増えました。モデルの骨格ではなく、各段階で見るべきチャネルを更新するのが実態に合った対応です。

AISCEAS・SIPS・DECAX・ULSSASの守備範囲

モデル 起点 特徴 提唱
AISCEAS Attention 比較・検討を独立段階に 2005年・望野和美氏
SIPS Sympathize 非購買の参加も評価 2011年・電通
DECAX Discovery 発見が起点
ULSSAS UGC フライホイール型 ホットリンク

AISCEASは、2005年5月1日売の『宣伝会議』でアンヴィコミュニケーションズの望野和美氏が発表したモデルです。AISASのSearchとActionの間に、Comparison(比較)とExamination(検討)を独立した段階として差し込んでいます。複数商品を並べて比べる行動が長い商材、たとえば家電や保険では、この2段階を分けたほうが施策が具体化します。

SIPSの4つのステップは、Sympathize(共感する)、Identify(確認する)、Participate(参加する)、Share&Spread(共有・拡散する)です。購買に至らない行動も「参加」として評価する点が特徴で、コミュニティ運営やファンマーケティングの評価軸に向きます。DECAXモデルは起点をAttention(気づかされる)ではなくDiscovery(自ら発見する)に置き換えたモデルで、広告で割り込むのではなくコンテンツを見つけてもらう前提に立ちます。ULSSASはホットリンクが提唱したモデルで、UGC(ユーザーの投稿)を起点に据え、段階が一方向に落ちていくファネルではなくフライホイールとして循環させる構造を取ります。

なおDECAXについては、提唱した年と提唱元を一次資料で確認できなかったため、表では空欄にしています。AIDMA側の派生としては、Memory(記憶)をConviction(確信)に差し替え、購買後にSatisfaction(満足)を足した6段階のAIDCASもあります。リピート購入まで視野に入れる商材では、購買で切れないこの形が扱いやすくなります。

いずれも、AISASやAIDMAの特定の段階を拡大鏡で見たものだと捉えると位置づけを間違えません。比較検討が長いならAISCEAS、共感と拡散が売上を左右するならSIPSやULSSAS、購買後の満足とリピートを追うならAIDCAS、というように、自社で伸ばしたい段階に合わせて補助的に使うのが実務的な扱い方です。

商材とチャネル別の使い分け基準

どちらを土台にするかは、業種ではなく「購入前に検索されるかどうか」で決めるのが最も外しにくい基準です。指名検索や比較検索が発生している商材ならAISASを軸にします。Google Search Consoleの検索パフォーマンスで自社名・商品名を含むクエリの表示回数を見れば、Searchが実際に起きているかは数分で確認できます。

一方、対面販売や訪問営業が主で、購買の場に検索が挟まらない商材ではAIDMAの骨格が今も使えます。地域密着の店舗や、営業担当が説明して決まる商材では、Memory(想起)を高める施策のほうが効きます。BtoBでも、検討期間が長く比較資料が作られる商材はAISCEASのように比較・検討を分けたほうが施策に落ちます。

逆に、AISASを当てはめるべきでない場面もはっきりしています。単価が低く関与度も低い商材、たとえばコンビニで買う飲料や日用品では、Search(検索)もShare(共有)もほとんど発生しません。そこにAISASを当てはめて「検索対策」「口コミ設計」の施策を組んでも、動いていない段階に予算を投じることになります。この帯の商材は、棚の位置・価格・パッケージという購買時点の要素が結果を決めます。モデルは万能の型ではなく、自社の顧客に該当する段階が実在するかを先に確かめる道具だと考えてください。購買行動モデル全般をどう選び分けるかは購買プロセスの5段階モデルと購買行動フレームワークの使い分けで扱っています。

段階別の施策とKPI設計

AIDMA側の施策と指標

Attentionはリーチ数や広告の到達率、Interestはサイトの滞在時間や回遊ページ数で見ます。Desireは資料請求やカート投入といった、購入の一歩手前の行動数に置き換えると測れます。Memoryは助成なし認知率、つまり商品カテゴリを提示したときに自社名が挙がる割合で、ブランド調査でしか取れないためBtoCの大型商材以外では代替指標を使うのが現実的です。Actionは購入率です。

AISAS側の施策と指標

AISASで最も測りやすいのがSearchです。Google Search Consoleの検索パフォーマンスで自社ブランド名や商品名を含むクエリの表示回数・クリック数を追えば、認知施策がSearchまで到達しているかを判定できます。テレビCMやSNS広告を打った直後に指名検索が伸びなければ、AttentionからInterestへの転換が起きていないと読めます。

Shareは、SNS上の言及数やレビュー投稿数、UGCの件数で測ります。ここで重要なのは、Shareを増やす施策とSearchで見つかる情報を整える施策が対になっている点です。投稿が増えても、検索したときに古い情報や否定的なレビューしか出てこなければSearchの段階で離脱します。Share施策の成果は、Searchの段階で表示される内容の質に跳ね返ると考えて設計します。

カスタマージャーニーへの落とし込み

AIDMAやAISASの段階は、カスタマージャーニーマップの横軸(フェーズ)の雛形として使えます。マップは横軸に段階、縦軸に顧客の思考・感情・接点・課題を置いて埋めていく形式なので、段階の定義があると作業が始めやすくなります。検索が挟まる商材ならAISASの5段階を、対面が中心ならAIDMAの5段階を横軸に据えるのが素直です。

ただしモデルの段階をそのまま使うと、自社固有の工程が抜け落ちることがあります。BtoBの稟議・相見積もり、住宅の内見や現地確認のように、5段階のどこにも収まらない工程がある場合は段階を足してください。モデルは出発点であって完成形ではありません。具体的な作成手順はカスタマージャーニーを活用したマーケティング戦略で解説しています。

よくある質問

AIDMAとAISASの一番大きな違いは何ですか。

購買前の段階の中身です。AIDMAのDesire・Memoryという2つの心理段階が、AISASではSearchという1つの行動段階に置き換わっています。加えてAIDMAはAction(購買)で終わりますが、AISASは購買後のShareが次の人のSearchの材料になるため循環します。

AISASモデルは古いのですか。

提唱者の電通は、2011年1月31日のSIPS発表リリースの中で、AISASを「コミュニケーションの土台となる重要な消費行動モデル」として今後もグローバルで提唱すると明記しています。後発モデルは置き換えではなく特定領域の深掘りという位置づけです。古くなったのはモデルの骨格ではなく、Searchが行われる場所が検索エンジン以外にも広がった点です。

AISASの具体例を教えてください。

BtoBでは、展示会やウェビナーで製品を知り(Attention)、自社の課題に合いそうだと感じ(Interest)、製品名に「導入事例」「料金」を足して検索し(Search)、稟議を通して導入し(Action)、導入事例インタビューとして社名が公開される(Share)という流れが典型です。消費財なら、SNSで見かけた商品をレビュー検索してECで購入し、使用写真を投稿するまでが1周にあたります。

AIDMAは何の略で、誰が提唱したのですか。

Attention・Interest・Desire・Memory・Actionの頭文字です。1924年刊の『Retail Advertising and Selling』でサミュエル・ローランド・ホールが示したモデルとされ、セント・エルモ・ルイスによるAIDAにMemoryを加えた派生にあたります。

AIDMAとAISASはどちらを使えばよいですか。

購入前に検索が発生しているかで判断します。指名検索や比較検索が起きている商材はAISAS、対面販売や訪問営業が中心で購買の場に検索が挟まらない商材はAIDMAの骨格が適します。比較検討の期間が長い商材では、Comparison(比較)・Examination(検討)を独立させたAISCEASのほうが施策に落としやすくなります。

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