購買プロセスとは?5段階モデルと購買行動フレームワークの使い分けと分析手順
購買プロセスとは、消費者が「何かを買いたい」と気づいてから、比較・検討を経て購入し、その後の満足や再購入に至るまでの一連の流れを指します。購買意思決定プロセスとも呼ばれ、マーケティングでは各段階のどこで消費者がつまずき、どこで背中を押せるかを見極める土台になります。この記事では、コトラーの5段階モデル、AIDMAやAISASといった購買行動フレームワークの使い分け、BtoB(組織購買)との違い、そして実務で分析して施策に落とし込む手順までを一気に整理します。
まとめ
- 購買プロセス(購買意思決定プロセス)の基本形は「問題認識→情報探索→代替品の評価→購買決定→購買後の行動」の5段階。
- 購買行動モデル(AIDMA・AISAS・SIPS・DECAXなど)は、時代とメディア環境の違いで使い分ける。万能な1つは存在しない。
- BtoBの購買プロセスは意思決定者が複数(購買センター)で検討期間が長く、BtoCの感情訴求がそのままでは通用しない。
- 分析の勘所は「どの段階で離脱しているか」の特定。カスタマージャーニーマップとファネルで可視化し、段階ごとに施策を割り当てる。
購買プロセスとは|購買行動・消費行動との違い
購買プロセスは、消費者の頭の中で進む意思決定の連なりを段階に分けて捉えるための枠組みです。混同されやすい類語との線引きを先に押さえておくと、後の分析でぶれがなくなります。
購買プロセス(購買意思決定プロセス)の定義
購買プロセスは、購入という1点の行為ではなく、そこに至る心理と行動の推移全体を指します。フィリップ・コトラーが体系化した購買意思決定プロセスがその代表で、購入前の「情報探索」や購入後の「満足度評価」まで含めるのが特徴です。購入して終わりではなく、購入後の体験が次の購買や口コミにつながる循環として捉える点が、単なる「買う瞬間」の分析と決定的に違います。
購買行動・消費行動・消費者行動の違い
言葉が近いため混ざりがちですが、対象範囲が異なります。購買行動は「買うかどうか」を決める前後の行動、消費行動は買った後に使い・消費する行動、消費者行動はその両方に情報収集や廃棄までを含めた最も広い概念です。購買プロセスを設計するときは、購入の意思決定に直結する購買行動を軸に据えつつ、購入後の消費行動が再購買のシグナルになる点を見落とさないことが、実務での設計精度を分けます。
購買意思決定プロセスの5段階|問題認識から購買後の行動まで
コトラーの5段階モデルは、購買プロセスを語るうえでの共通言語です。すべての購入がこの順に進むわけではなく、日用品では情報探索や評価がほぼ省略される一方、高額商品では各段階が長く濃くなります。段階ごとの消費者の状態と、企業が打つべき手を対応させると次のようになります。
| 段階 | 消費者の状態 | 企業の打ち手 |
|---|---|---|
| 1. 問題認識 | 理想と現実のギャップに気づく | 潜在ニーズの喚起・課題の言語化 |
| 2. 情報探索 | 検索・口コミ・店頭で情報を集める | 検索対策・比較コンテンツ・レビュー整備 |
| 3. 代替品の評価 | 候補を自分の基準で比較する | 差別化点・仕様・価格の明示 |
| 4. 購買決定 | 購入を決め、行動に移す | 不安の払拭・決済導線の最適化 |
| 5. 購買後の行動 | 満足・不満を評価する | アフターフォロー・レビュー促進 |
情報探索・代替品評価の段階で企業が介入する方法
マーケティングの成否が最も分かれるのが、2〜3段階目の情報探索と代替品評価です。ここでの消費者は複数の候補を並べ、自分なりの評価基準(価格・機能・信頼性・導入実績など)で絞り込みます。検索結果や比較記事、第三者レビューに自社が登場しなければ、そもそも比較の土俵に上がれません。競合と並んだときに選ばれる決め手を、抽象的な訴求ではなく具体的な仕様・数値・導入事例で提示することが、この段階の勝ち筋です。
再購買とロイヤルティを左右する購買後の行動
購入後の満足度は、次の購買プロセスの「問題認識」の質を決めます。満足した顧客は情報探索を省略して指名買いに向かい、口コミで他者の購買プロセスにも影響します。逆に期待と現実のズレ(認知的不協和)を放置すると、返品やネガティブレビューにつながります。購入直後のオンボーディングや使い方の案内、レビュー依頼のタイミング設計は、単なるアフターサービスではなく次の売上を作る投資として位置づけるべきです。
購買行動モデルの一覧|AIDMA・AISAS・SIPSなどの使い分け
購買行動モデル(購買行動フレームワーク)は、5段階モデルを時代やメディア環境に合わせて具体化したものです。マスメディア中心の時代に生まれたモデルと、検索やSNSが前提のモデルでは、消費者が情報に触れる順番そのものが違います。代表的なモデルを整理します。
| モデル | 段階 | 想定するメディア環境 |
|---|---|---|
| AIDA | Attention→Interest→Desire→Action | 広告黎明期の基本形 |
| AIDMA | Attention→Interest→Desire→Memory→Action | マスメディア時代 |
| AISAS | Attention→Interest→Search(検索)→Action→Share | Web検索時代(電通の登録商標) |
| SIPS | Sympathize→Identify→Participate→Share&Spread | SNS時代(電通・2011年) |
| DECAX | Discovery→Engage→Check→Action→eXperience | コンテンツマーケ(電通・2015年) |
| VISAS | Viral→Influence→Sympathy→Action→Share | SNS口コミ起点(大元隆志・2010年) |
| ULSSAS | UGC→Like→Search1→Search2→Action→Spread | SNS運用(ホットリンク・2010年代後半) |
マスメディア時代のモデル(AIDA・AIDMA)
AIDAとAIDMAは、テレビや新聞など一方向のマス広告を前提としたモデルです。企業が発信し、消費者が注意・興味・欲求を経て購入する流れを描きます。AIDMAはAIDAに「Memory(記憶)」を加え、広告接触から購入までに時間差がある商材を説明します。消費者が能動的に検索・発信しない前提なので、SNSで情報が横に広がる現在の購買プロセスをそのまま説明するには限界があります。ブランド認知を広く取りに行くマス施策の設計には今も有効です。
Web・SNS時代のモデル(AISAS・SIPS・DECAX・VISAS・ULSSAS)
AISASは購入前後に「Search(検索)」と「Share(共有)」を組み込み、消費者が自ら調べ、買った後に発信する行動を初めてモデル化しました。SIPSは共感(Sympathize)を起点に、DECAXは消費者による発見(Discovery)を起点に据え、企業起点から生活者起点へと重心が移っています。VISASやULSSASはSNSの口コミ・UGCを購買の入口とするモデルです。これらは競合ではなく、扱う商材と主戦場のメディアで選ぶものです。指名検索が起きる商材ならAISAS、口コミが購買を動かす商材ならULSSASという具合に、自社の実データと突き合わせて使い分けます。AIDMAモデルとAISASモデルの違いは、この使い分けの出発点として押さえておくと役立ちます。
購買心理の8段階(販売心理の法則)
対面販売や接客の現場でよく使われるのが、購買心理の8段階です。注目→興味→連想→欲望→比較→信頼(確信)→行動→満足という流れで、消費者の心理の移り変わりを細かく捉えます。5段階モデルが意思決定の「行動」を軸にするのに対し、8段階は「心理」を軸にする点が違いです。とくに「連想(使っている自分をイメージする)」と「信頼(この店・この人なら大丈夫という確信)」を分けて扱うため、接客トークや商品ページで、どの感情を今喚起すべきかを設計しやすくなります。
BtoB(組織購買)の購買プロセス|BtoCとの違い
BtoCのモデルをそのままBtoBに当てはめると、多くの場合うまくいきません。企業が何かを買うときの購買プロセスは、個人の購買とは意思決定の構造そのものが異なるためです。ここは競合記事でも手薄になりやすく、実務で最も差がつく論点です。
BtoBとBtoCの購買プロセスの違い
最大の違いは、決めるのが一人ではない点にあります。BtoBでは使う人・決裁する人・お金を出す人が別々で、それぞれの評価基準を同時に満たさなければ購入に至りません。感情や好みで動くBtoCと違い、投資対効果や導入後の運用負荷といった合理的な判断が前面に出ます。
| 観点 | BtoC | BtoB |
|---|---|---|
| 意思決定者 | 個人・家族 | 複数人(購買センター) |
| 主な判断基準 | 感情・嗜好・価格 | 費用対効果・仕様・実績 |
| 検討期間 | 短い(即決も多い) | 長い(数週間〜数か月) |
| 主な情報源 | 口コミ・SNS・広告 | 比較検討・提案書・導入事例 |
組織購買の関与者(購買センター)と意思決定の流れ
BtoBの購買プロセスに関わる複数の人物の集まりを購買センターと呼びます。実際に使う「使用者」、仕様に口を出す「影響者」、最終的に決める「決定者」、予算を承認する「承認者」、窓口となる「購買担当者」、情報を取捨選択する「ゲートキーパー」といった役割が並びます。売り手が窓口担当としか話せていないと、決裁者の判断基準を満たせず失注します。組織購買はおおむね「課題認識→要件定義→仕様の決定→候補の探索→提案評価→選定→発注→導入後の評価」と進むため、各関与者が何を重視するかを想定し、提案資料と導入事例をそれぞれ向けに用意することが受注確度を左右します。
購買プロセスを分析してマーケティングに活かす方法
モデルは地図であって、そのまま貼っても成果は出ません。自社の顧客が実際にどの段階でつまずいているかを可視化し、詰まっている段階に施策を集中させる——これが購買行動分析の実務です。
カスタマージャーニーマップとファネルによる可視化
まず、購買プロセスの各段階に沿って顧客の行動・接点・感情を並べたカスタマージャーニーマップを作り、離脱が起きている箇所を特定します。次に各段階を通過した人数を段階ごとに集計するファネル分析で、どこで数が大きく落ちているかを数値で押さえます。各段階の遷移率(CVR)と離脱率を並べると、どこで何割が落ちているかが一目で分かり、感覚ではなく数値で詰まりを特定できるため、施策の優先順位が定まります。ファネルの型と指標はマーケティングファネルの種類を、認識の変化を精緻に設計する手法はパーセプションフロー・モデルを参考にすると設計しやすくなります。
各段階に合わせた施策設計とペルソナ設定
詰まりを特定したら、その段階に効く施策だけを打ちます。認知が足りないなら広告やコンテンツで問題認識を喚起し、比較で負けているなら差別化点と導入事例を強化し、購入直前で落ちているなら不安要素と決済導線を見直します。この段階設計の精度は、誰の購買プロセスを描くかで決まります。属性を並べただけのペルソナではなく、その人が各段階で何に迷うかまで踏み込むことが鍵になります。N1マーケティングとペルソナ分析の違いを踏まえて設計すると、この精度が上がります。
デジタル時代の購買行動の変化とオムニチャネル対応
スマートフォンとSNSの普及で、購買プロセスは直線から往復運動へと変わりました。店頭で実物を見てからオンラインで買う、あるいはその逆も日常化し、消費者は複数のチャネルを行き来しながら情報探索と評価を続けます。購入は特定の瞬間ではなく、スキマ時間の検索で衝動的に起こる「パルス型」の動きも増えました。この環境では、オンラインとオフラインの体験を分断させないオムニチャネルの設計が前提になります。どのチャネルで接触しても同じ情報と価格、一貫した体験を提供できるかが、往復するパルス型の検索を取りこぼさない条件になります。
よくある質問
購買の5段階とは何ですか?
コトラーが提唱した購買意思決定プロセスの基本形で、「問題認識→情報探索→代替品の評価→購買決定→購買後の行動」の5つの段階を指します。すべての購入がこの順に進むわけではなく、日用品では情報探索や評価が省略され、高額商品では各段階が長くなります。
購買行動と消費行動の違いは何ですか?
購買行動は「買うかどうか」を決める前後の行動、消費行動は購入後に商品を使い・消費する行動を指します。両者に情報収集や廃棄まで含めた最も広い概念が消費者行動です。購買プロセスの設計では購買行動を軸にしつつ、購入後の消費行動が再購買につながる点を押さえます。
購買心理の8段階とは何ですか?
接客や販売の現場で使われる心理モデルで、注目→興味→連想→欲望→比較→信頼(確信)→行動→満足の8段階で消費者の心理の推移を捉えます。5段階モデルが「行動」を軸にするのに対し、8段階は「心理」を細かく分ける点が特徴で、どの感情を今喚起すべきかを設計しやすくなります。
BtoBの購買プロセスはBtoCと何が違いますか?
BtoBは意思決定者が複数(購買センター)で、費用対効果や仕様といった合理的な基準で判断され、検討期間が数週間〜数か月と長くなります。感情や好みで即決しやすいBtoCとは意思決定の構造が異なるため、決裁者・使用者それぞれの判断基準に向けた提案資料と導入事例を用意する必要があります。
AIDMAとAISASの違いは何ですか?
AIDMAはマスメディア時代のモデルで、注意・興味・欲求・記憶・行動と一方向に進みます。AISASは検索と共有のステップを組み込み、消費者が自ら調べ、購入後に発信する行動をモデル化した点が違いです。詳しくは関連記事で解説しています。