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ChatGPTのファインチューニングとGPTs|学習されない理由と2026年の実行手順

ChatGPTのファインチューニングとGPTs|学習されない理由と2026年の実行手順

「GPTsに社内資料を読ませれば、モデルが自社仕様に育つ」と考えて作り始めた方は多いはずです。しかしGPTsはモデルを学習させる機能ではありません。加えて、本来のファインチューニングにあたるOpenAIのセルフサービス型プラットフォームは2026年5月7日から新規の受け入れを止めており、これから始める組織はそもそも入口に立てません。この記事では、GPTsとファインチューニングの境界、2026年8月時点で何ができて何ができないのか、そして自社仕様のChatGPTを作る現実的な道筋を、OpenAIの公式ドキュメントから確認できる事実だけで整理します。

まとめ

  • GPTsはファインチューニングではありません。OpenAIの公式ドキュメントはカスタムGPTを「指示を与え、ドキュメントをナレッジとして添付し、外部サービスに接続する」ものと定義しており、いずれも推論時の入力です。会話やナレッジファイルを追加してもモデルの重みは変わりません。
  • OpenAIのファインチューニングは縮小フェーズに入りました。2026年5月7日以降、過去に一度もファインチューニングを実行していない組織はジョブを作成できません。2027年1月6日には既存利用組織も新規ジョブを作れなくなります。
  • ファインチューニング済みモデルのうち ft-gpt-3.5-turboft-gpt-4ft-gpt-4.1-nano-2025-04-14ft-o4-mini-2025-04-16 などは2026年10月23日に停止します。公式ガイドのサンプルが使っているモデルもこの停止対象です。
  • 推論単価も上乗せされます。gpt-4.1 は標準が入力2.00ドル/出力8.00ドル(100万トークンあたり)に対し、ファインチューニング済みは3.00ドル/12.00ドルで1.5倍です。
  • これから自社仕様のChatGPTを作る道筋は3系統です。プロンプトとカスタムGPT、RAG、そして重み更新(Microsoft FoundryまたはOSSモデル+LoRA)という順で検討します。

以降では、まず旧来の記事が取り違えてきたGPTsとファインチューニングの関係を切り分け、次に公式の期日と料金、既存組織向けの実行手順、最後に新規に始める場合の選び方を扱います。

GPTsが学習されない理由|更新されるのは重みではなく入力

カスタムGPTの構成要素|指示・ナレッジ・アクション

OpenAIのGPT Actions公式ドキュメントは、カスタムGPTを「providing instructions, attaching documents as knowledge, and connecting to 3rd party services」によってChatGPTをカスタマイズする仕組みだと説明しています。指示(Instructions)は振る舞いの定義、ナレッジ(Knowledge)は会話中に参照させる資料、アクション(Actions)は外部APIの呼び出しです。アクションの実体はFunction Callingで、GPTが「どのAPI呼び出しが質問に関連するか」を判断し、必要なJSONを生成してAPIを実行します。

この3つはいずれも推論時に与える入力であり、モデルのパラメータには触れません。GPTsにどれだけPDFを添付しても、ベースモデルのパラメータは1つも更新されません。ナレッジファイルは会話のたびに参照される外部資料であって、学習データではないからです。ユーザーとの会話がそのGPTの重みに反映されることもありません。

事前学習・ファインチューニング・GPTsの守備範囲

「プレトレーニング」「AIのカスタマイズ」といった言葉が同じ文脈で語られるため混同されがちですが、3者は変更する対象がまったく違います。

手法 変わるもの 実行する場所 データ量の目安
事前学習 重み(ゼロから) モデル提供者 数兆トークン
ファインチューニング 重み(追加学習) OpenAI Platform(API) 最小10件・推奨50件
GPTs 入力のみ(重みは不変) ChatGPT画面 ナレッジ添付のみ

ファインチューニングだけがAPI側の機能です。OpenAIの手順はすべてPlatform APIへのリクエストとして記述されており(/v1/files/v1/fine_tuning/jobs)、ChatGPT側の機能としては案内されていません。GPTsのビルダー画面をいくら探してもファインチューニングの項目が見つからないのは、別レイヤーの機能だからです。手法の選び分けそのものを整理したい場合は、RAGとファインチューニングの違いと使い分け|判断基準とコストで選ぶ2026年の実装方針で判断基準とコストの観点をまとめています。

OpenAIセルフサービス型ファインチューニングの新規受付終了

公式Deprecationsページが示す3段階の期日

OpenAIは2026年5月7日、セルフサービス型ファインチューニングを利用する開発者へ提供状況の変更を通知しました。料金ページのFine-tuning節にも「OpenAI is winding down the fine-tuning platform. The platform is no longer accessible to new users」と明記されています。段階は次の3つです。

期日 できなくなること 対象
2026年5月7日 新規ジョブ作成・学習 過去に未実行の組織
2026年7月2日 新規ジョブ作成 60日間推論なしの組織
2027年1月6日 新規ジョブ作成 既存の利用組織すべて

順に読むと、入口が閉じたのが5月7日、休眠していた組織が締め出されたのが7月2日、そして完全終了が2027年1月6日という流れです。既に作成したファインチューニング済みモデルでの推論は、ベースモデルが廃止されるまで継続できます。つまり「今日からChatGPTをファインチューニングしてみよう」という記事の前提は、2026年8月時点の新規組織には成立しません。

ファインチューニング済みモデルの2026年10月23日停止

推論が続けられるといっても無期限ではありません。2026年4月22日に告知された停止一覧には、ファインチューニング済みモデルとして ft-gpt-3.5-turboft-gpt-4ft-gpt-4.1-nano-2025-04-14ft-o4-mini-2025-04-16ft-babbage-002ft-davinci-002 が並び、いずれも停止日は2026年10月23日です。移行先として gpt-5.6-solgpt-5.6-terragpt-5.6-luna が案内されていますが、料金ページのFine-tuning節に gpt-5.6 系の行は無く、プラットフォーム自体が新規受付を終えています。移行は実質的に「ファインチューニングをやめる」ことを意味します。重み更新そのものを続けたい場合の受け皿は、後述のMicrosoft FoundryかOSSモデルになります。

ここで注意したいのが、OpenAI自身の教師ありファインチューニングガイドのサンプルコードが gpt-4.1-nano-2025-04-14 を指定している点です。素直に写経すると、2026年10月23日に停止するモデルへ学習コストを投じることになります。同じ停止一覧にベースモデルの o4-mini-2025-04-16 も載っているため、既存組織が今から学習するなら、停止一覧に載っていない gpt-4.1 か gpt-4.1-mini、gpt-4o-2024-08-06 を選んでください。公式サンプルのモデルIDをそのまま使わない、というのが2026年後半のこの領域での実務的な作法です。

既存組織がファインチューニングを実行する手順

学習データの形式と件数|JSONL・最小10件・推奨50件

学習データはChat Completions形式のJSONLです。1行が1つの会話サンプルにあたり、messages 配列にユーザー発話と期待する応答を並べた形です。公式ガイドは「The minimum number of examples you can provide for fine-tuning is 10」と最小件数を示したうえで、「starting with 50 well-crafted demonstrations」=丁寧に作った50件から始めることを勧めています。ツール呼び出しを学習させる場合は、同じ行に toolsparallel_tool_calls を含めます。

件数よりも効くのは一貫性です。同じ問いに対して行ごとに書式や語調が揺れていると、モデルは「揺れること」を学びます。件数の設計、フォーマットの揃え方、品質チェックの具体はファインチューニング用データセットの作り方|サンプル形式・件数・品質の要件で扱っています。

ファイルのアップロードとジョブ作成

実行は2ステップです。まずJSONLを purpose="fine-tune" でアップロードし、返ってきたファイルIDを指定してジョブを作成します。公式ガイドが示すcurlは次のとおりです(モデルIDも公式の記載どおり)。

curl https://api.openai.com/v1/files \
  -H "Authorization: Bearer $OPENAI_API_KEY" \
  -F purpose="fine-tune" \
  -F file="@mydata.jsonl"

curl https://api.openai.com/v1/fine_tuning/jobs \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -H "Authorization: Bearer $OPENAI_API_KEY" \
  -d '{
    "training_file": "file-RCnFCYRhFDcq1aHxiYkBHw",
    "model": "gpt-4.1-nano-2025-04-14"
  }'

前章のとおり、この gpt-4.1-nano-2025-04-14 は2026年10月23日に停止します。実際に流すときは gpt-4.1-2025-04-14 のような存続モデルへ差し替えてください。Python SDKなら client.fine_tuning.jobs.create() が現行の呼び出しです。

client.fine_tuning.jobs.create(
    model="gpt-4.1-2025-04-14",
    training_file="file-abc123",
)

日本語の解説記事には openai.FineTune.create()davinci を使う2023年時点の記述が今も多く残っていますが、現行のエンドポイントは /v1/fine_tuning/jobs なので、そのままでは動きません。学習にかかる時間は公式に「Depending on the size of your training data, the training process may take several minutes or hours」とあり、データ量次第で数分から数時間です。完成したモデルには ft: で始まるIDが払い出され、以後はそのIDを通常のモデル指定と同じように使います。自前のGPUで学習する場合の環境要件やコードはファインチューニングの実行環境と実装|必要GPUと学習コードを参照してください。

ファインチューニングの料金|学習費と推論単価1.5倍の二段構え

費用は「学習時に1回かかる額」と「その後ずっとかかる推論単価の上乗せ」に分かれます。以下は公式料金ページの標準(非バッチ)価格で、単位は100万トークンあたりのドルです。ただしo4-miniの学習だけは1時間あたりの課金で、体系が違います。

モデル 学習 入力 キャッシュ入力 出力
gpt-4.1-2025-04-14 25.00 3.00 0.75 12.00
gpt-4.1-mini-2025-04-14 5.00 0.80 0.20 3.20
gpt-4o-2024-08-06 25.00 3.75 1.875 15.00
gpt-4o-mini-2024-07-18 3.00 0.30 0.15 1.20
gpt-4.1-nano-2025-04-14(10月23日停止) 1.50 0.20 0.05 0.80
o4-mini-2025-04-16(10月23日停止) 100.00/時間 4.00 1.00 16.00

公式表にはこのほかレガシー枠の gpt-3.5-turbo・davinci-002・babbage-002 と、o4-miniのデータ共有割引行がありますが、上の表からは外しました。停止日が近いためです。gpt-3.5-turbo と o4-mini は2026年10月23日、davinci-002 と babbage-002 はそれより早い2026年9月28日に止まります。なお表を斜め読みして「学習は全部トークン課金」と受け取ると、o4-miniで見積りを外します。

見落としやすいのは推論側です。標準の gpt-4.1 は入力2.00ドル/出力8.00ドルですが、ファインチューニング済みは3.00ドル/12.00ドルで1.5倍になります。学習費は一度きりでも、この差はリクエストのたびに乗り続ける性質のものです。月に数億トークンを流す用途では、学習費25.00ドルよりこちらの積み上がりのほうがはるかに大きくなります。

自社仕様のChatGPTを作る3系統と選び方

OpenAIのファインチューニングが新規に使えない以上、上から順に試し、要件を満たせなかったときだけ下へ降りるのが費用対効果の面で妥当です。

プロンプトとカスタムGPTで足りるかの判定

出力の口調、書式、禁止事項といった「振る舞い」の固定は、Instructionsで十分に届く範囲です。この層の変更コストはゼロで、気に入らなければ書き換えるだけで即座に反映されます。対して学習を伴う手法は、一度データを作ると修正のたびに再学習が必要になり、そのつど学習費と評価工数が発生する構造です。まずここで要件を潰しておくと後戻りのコストが違います。なお、カスタムGPTを新規作成できるプランと権限の条件は変わることがあるため、着手前にOpenAIの公式ヘルプで最新の条件を確認してください。ChatGPT自体をどの製品と比べて選ぶかという段階なら、ChatGPT・Gemini・Claude・Copilotを徹底比較|対話型AIの違い・料金・選び方【2026年版】が判断材料になります。

社内文書を参照させる場合のRAG

「自社の規程集に沿って答えてほしい」という要件は、ファインチューニングではなくRAGの領域です。知識を重みに焼き込むと、規程が改訂されるたびに gpt-4.1 で100万トークンあたり25.00ドルの学習費と評価工数が再発生しますが、RAGなら参照先の文書を差し替えるだけで反映され、出典も提示できる点が違いです。GPTsのナレッジ添付は、公式ドキュメントの言う「attaching documents as knowledge」そのものなので、小規模なRAGとしてそのまま使えます。どちらを選ぶかの判断基準とコスト試算はRAGとファインチューニングの違いと使い分け|判断基準とコストで選ぶ2026年の実装方針に整理しています。

重み更新が必要な場合のMicrosoft FoundryとOSSモデル

それでも重みを変える必要がある場合、OpenAIモデルの追加学習はMicrosoft Foundryが受け皿になります。Microsoft Foundry(classicポータル)のドキュメントでは、教師ありファインチューニング(SFT)、DPO、強化学習ベースのRFTの3方式が案内されています。SFTの対応はGPT 4o/4o-mini/4.1/4.1-mini/4.1-nano、Llama 2およびLlama 3.1、Phi 4/Phi-4-mini-instruct、Mistral Nemo/Ministral-3B/Mistral Large (2411)、NTT tsuzumi-7b です。DPOはGPT 4o/4.1/4.1-mini/4.1-nano、RFTはo4-miniが対象。

サーバーレス構成なら入力100万トークンあたり1.70ドルからで、GPUクォータを自前で確保する必要はありません。なお新ポータル側の対応状況は別ページのため、着手前に該当ドキュメントを確認してください。

モデルの重みを自社の管理下に置きたい、あるいは学習データを外部に出せない場合はOSSモデルを自前で調整する道になります。フルパラメータ更新ではなく低ランク行列だけを学習するLoRAが現実的な選択で、仕組みと実装はPEFTとLoRAの違いとは?仕組み・使い方・QLoRA/DoRAとの比較を実装例つきで解説にまとめています。

ファインチューニングを選ぶべきでない場面

次の条件のいずれかに当てはまるなら、ファインチューニングは選ばないほうがよい、と言い切れます。覚えさせたい内容が四半期に一度でも更新される場合は、再学習のたびに学習費と検証工数が発生し、更新が止まった瞬間に古い知識を自信満々に答えるモデルが残ります。回答の根拠を提示する必要がある場合も向きません。重みに溶けた知識は出典を辿れないからです。学習サンプルを50件そろえるのが難しい場合も見送りが妥当で、件数が足りないまま学習すると癖だけを覚えて汎化しないモデルができます。

逆に向いているのは、出力形式が厳密に決まっていて、その形式が年単位で変わらず、プロンプトで指示すると毎回長大な前置きが必要になる、という条件が揃ったときです。この場合はプロンプトの短縮分で推論コストの1.5倍を相殺できる可能性があります。

よくある質問

GPTのファインチューニングの料金はいくらですか?

公式料金ページの標準価格で、gpt-4.1 の学習が100万トークンあたり25.00ドル、gpt-4.1-mini が5.00ドル、gpt-4o-mini が3.00ドルです。o4-mini だけは1時間あたり100.00ドルという別体系です。加えて推論単価が上乗せされ、gpt-4.1 は標準の入力2.00ドル/出力8.00ドルに対しファインチューニング済みが3.00ドル/12.00ドルになります。

ChatGPTのファインチューニングのやり方は?

ChatGPTの画面ではなくOpenAI PlatformのAPIで実行します。JSONL形式の学習データを /v1/files にアップロードし、そのファイルIDを指定して /v1/fine_tuning/jobs にジョブを作成する2ステップです。ただし2026年5月7日以降、過去にファインチューニングを実行したことがない組織はジョブを作成できません。

ファインチューニングの欠点は何ですか?

知識の更新に再学習が必要なこと、回答の根拠を提示できないこと、推論単価が上がること(gpt-4.1 で1.5倍)が主な欠点です。さらにOpenAIの場合は、料金ページのFine-tuning節に載る対象が gpt-4.1 系・gpt-4o 系・o4-mini とレガシー枠に限られ、gpt-5.6 系の行はありません。選んだ時点で1世代前のモデルに固定されます。

GPTsに資料をアップロードすれば、そのGPTは賢くなりますか?

賢くなるのは会話の中だけです。ナレッジとして添付したファイルは推論時に参照される資料であって、モデルの重みには反映されません。したがって、そのGPT以外の場所には効果が及ばず、ファイルを外せば元の状態に戻ります。会話内容がそのGPTの重みに反映されることもありません(OpenAIによるモデル改善への利用可否は、アカウント側のデータ管理設定の問題であり、GPTsの学習とは別の話です)。

ファインチューニング済みのモデルはいつまで使えますか?

ベースモデルが廃止されるまでです。具体的には ft-gpt-3.5-turboft-gpt-4ft-gpt-4.1-nano-2025-04-14ft-o4-mini-2025-04-16ft-babbage-002ft-davinci-002 が2026年10月23日に停止します。新規ジョブの作成は既存の利用組織でも2027年1月6日で終了します。

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