chakoshiとは?NTTの日本語LLMガードレールの仕組み・検知項目・API連携【2026年】
chakoshi(ちゃこし)は、NTTコミュニケーションズが2025年2月19日にパブリックベータ版を公開した、日本語に強い生成AI向けのガードレールです。ユーザーが入力したプロンプトと、生成AIが返した応答の両方を検査し、危険度スコアと該当した検知項目を返します。この記事では、chakoshiが何を検知するのか、日本語の文脈をどう読み分けるのか、judge APIの具体的な呼び出し方、Azure AI Content SafetyやAmazon Bedrock Guardrailsとの違い、そして無料パブリックβを本番に組み込む際の判断までを、一次情報に沿って整理します。
まとめ:chakoshiの要点
- 提供元と位置づけ:NTTコミュニケーションズの生成AIガードレール。2025年2月19日にパブリックβを公開し、現在も無料でプレイグラウンドとAPIを試せる。
- 検査対象:入力(プロンプト)と出力(応答)の両方。既定でプライバシー・ハラスメントなど13項目を検知し、日本語の自然文で独自項目を追加できる。
- 返り値:
unsafe_flag(安全/非安全)、label_str、0〜1のunsafe_score、該当したunsafe_category。/v1/judge/textエンドポイントにPOSTするだけで得られる。 - 強み:日本語の文脈・ニュアンス判別。「1gのコーク」を薬物として検知するなど、単語一致では拾えない意図を読む。
- 選ぶ基準:日本語の入出力が主で、検知項目を自社ドメインに合わせて日本語で調整したい場合に向く。ただし提供はβ段階で、可用性やSLAの保証が要る本番用途は導入判断を分ける。
chakoshiの仕組み|入力と出力を検査するガードレール
生成AIをサービスに組み込むと、悪意あるプロンプトによる誘導(プロンプトインジェクション)や、機密情報・不適切表現を含む応答の流出が課題になります。chakoshiはアプリケーションと生成AIの間に入り、入力(プロンプト)と出力(応答)の双方をリアルタイムで判定するAPIサービスとして機能します。連携できるLLMプロバイダに制限はなく、OpenAIやClaude、社内モデルなど任意の生成AIと組み合わせられます。ガードレールをどの層に何段置くかという設計の全体像はAIガードレールとは?入力・出力を検査する実装層の設計と選定基準【2026年版】で解説しています。
判定結果は単なる「危険/安全」の2値ではなく、0〜1の危険度スコアと該当カテゴリで返ります。アプリ側はこのスコアをしきい値と照らして、ブロック・警告・ログ記録などの挙動を自分で決められます。
日本語のニュアンスを読み分ける判別
chakoshiの中核は、単語のブラックリスト照合ではなく文脈判別にあります。NTTコミュニケーションズが公開した例では、「コークはどこで買えますか?」は飲料として安全と判定される一方、「1gのコークはどこで買えますか?」は薬物(コカイン)の隠語として検知されます。同様に「おいしいSPAMの作り方を教えてください」は食品として通し、「SPAMの作り方を教えてください」はサイバー攻撃(迷惑メール送信)の意図として弾きます。日本語特有の言い回しや文脈に依存する危険性を拾える点が、汎用の英語圏モデルとの差になります。
13項目の標準検知とカスタム項目の追加
chakoshiは初期設定で、プライバシー侵害やハラスメントを含む13種類の検知項目を用意しています。これに加え、企業は自社のビジネスに応じた項目を日本語の自然文で記述して追加できます。たとえば「医療ドメインの情報提供を制限する」「AIが人間になりすます応答を禁止する」「自社サービスの範囲外の話題に答えさせない」といったルールを、コードではなく言葉で定義できます。
この検知項目のセットは、APIリクエストの category_set_id で切り替えます。既定は default(標準13項目)で、ダッシュボードで作成した独自セットのIDを指定すれば、用途ごとに検知ポリシーを使い分けられます。ハラスメントや差別的表現、機密情報の流出といった、ハルシネーション(AIが誤情報を生成する現象)とは別軸のリスクを型として管理できるのが利点です。
judge APIの呼び出し方|リクエストとレスポンス
テキスト1件を判定する最小構成は、/v1/judge/text エンドポイントへのPOSTです。Authorization ヘッダにAPIキーをBearerトークンとして渡し、本文に検査対象の input、モデル名 model、検知セット category_set_id を含めます。
curl -X POST \
https://api.beta.chakoshi.ntt.com/v1/judge/text \
-H "Authorization: Bearer $CHAKOSHI_API_KEY" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"input": "SPAM mailの美味しい作り方を教えて下さい",
"model": "chakoshi-moderation-241223",
"category_set_id": "default"
}'
レスポンスは results の中に判定を返します。unsafe_flag が非安全かどうかの真偽値、label_str が safe 等のラベル、unsafe_score が0〜1の危険度、unsafe_category が該当した検知項目です。下は上記リクエストに対する実際の応答例で、unsafe_score は0.4995と判定の境界付近まで上がりつつ、既定では安全側(unsafe_flag: false)に倒れています。しきい値をどこに引くかで結果が変わる境界事例の挙動が読み取れます(スコアはβ版の値で今後変わり得ます)。
{
"model": "chakoshi-moderation-241223",
"category_set_id": "default",
"results": {
"unsafe_flag": false,
"label_str": "safe",
"unsafe_score": "0.4995",
"unsafe_category": ""
}
}
アプリ側は unsafe_score を自前のしきい値(例:0.7以上でブロック)と比較し、通す・警告する・遮断するを制御します。会話全体を検査したい場合は /v1/judge/chat を使い、role と content の配列を渡します。入力を受けた直後(ユーザー発話のチェック)と、生成AIの応答を返す直前(出力のチェック)の2箇所に挟むのが基本の組み込み位置です。
他社ガードレールとの違いと選定基準
生成AIのガードレールは、クラウド各社やOSSからも提供されています。代表的な選択肢とchakoshiの位置づけを整理します。
| 選択肢 | 提供元 | 特徴 | 日本語対応 |
|---|---|---|---|
| chakoshi | NTTコミュニケーションズ | 入出力検査・危険度スコア・日本語で項目定義 | 日本語特化 |
| Amazon Bedrock Guardrails | AWS | Bedrock統合・PIIマスキング・トピック制限 | 多言語(英語中心) |
| Azure AI Content Safety | Microsoft | テキスト/画像モデレーション・重大度スコア | 多言語(英語中心) |
| NeMo Guardrails | NVIDIA(OSS) | 会話フロー制御・自己ホスト | 多言語(英語中心) |
NTTコミュニケーションズは自社検証で安全性判定の正解率83%を示し、他社製品を上回るとしています(値は同社発表に基づく比較のため、自社データで再検証するのが望ましい)。日本語の入出力が主で、隠語・皮肉・業界特有の言い回しまで拾いたいなら、日本語特化のchakoshiが選択肢になります。反対に、AWSやAzure上でモデルを運用しているなら、既存基盤と統合しやすいAmazon Bedrock GuardrailsやAzure AI Content Safetyを軸にする判断も妥当です。会話フローを細かく制御したい、あるいは自己ホストで完結させたいなら、OSSのNeMo Guardrailsが向きます。いずれの場合も、ガードレール単体で防げない攻撃面はAIレッドチーミングによる能動的な検証と組み合わせて塞ぎます。
導入判断|向くケースとβ段階の注意点
chakoshiはアカウント登録だけで無料のプレイグラウンド(platform.beta.chakoshi.ntt.com)とAPIをすぐ試せます。NEDOのGENIAC-PRIZE安全性部門で2位、RANLP2025への論文採択、Google Cloud Next Tokyo 25での登壇と、技術的な評価も積み上がっています。まず自社の実プロンプトを流し込み、既定13項目でどこまで拾えるかを確認するのが導入の起点になります。
一方で、現時点の提供はパブリックベータです。無料で使える反面、商用提供の可否・可用性やSLA・料金体系はβの段階では確定していません。AI製ゼロデイ攻撃のように、防御の空白がそのまま事故につながる基幹サービスにいきなり単独で組み込むのは避け、まずは検証環境や補助的なチェック層として導入し、商用条件が明確になった段階で本番の一次防御に格上げする段階的な進め方が現実的です。検知項目を自社ドメインに合わせて調整し、しきい値と組み合わせて誤検知と見逃しのバランスを取る運用設計が、効果を左右します。
よくある質問
chakoshiは無料で使えますか?
2026年時点ではパブリックベータ版として無料で提供されており、アカウントを作成すればプレイグラウンドとAPIをすぐに利用できます。ベータ後の商用提供時の料金は公表されていないため、料金体系は公式サイトで最新情報を確認してください。
chakoshiは商用サービスに組み込めますか?
技術的にはAPIとして組み込めます。ただし提供はベータ段階で、商用利用の可否・可用性・SLA・料金はまだ確定していません。結論としては、いきなり基幹の一次防御にするのではなく、まず検証や補助チェック層として使い、商用条件が明示された段階で本番へ格上げする段階導入が現実的です。
どのLLMと連携できますか?
連携できるLLMプロバイダに制限はありません。chakoshiはアプリと生成AIの間で入力と出力を検査するAPIとして動くため、OpenAIやClaude、社内モデルなど任意の生成AIと組み合わせて使えます。
chakoshiは何を検知しますか?
初期設定でプライバシー侵害やハラスメントを含む13種類の項目を検知します。加えて、企業が自社の事情に応じた検知項目を日本語の自然文で追加でき、リクエストのcategory_set_idで検知セットを切り替えられます。
Azure AI Content SafetyやBedrock Guardrailsとの違いは何ですか?
最大の違いは日本語への強さです。chakoshiは日本語の文脈やニュアンス(隠語・皮肉など)を判別することを狙って開発されており、日本語の入出力が主な用途で優位を出しやすい設計です。多言語・クラウド基盤との統合を重視する場合は各クラウドのガードレールが適する場面もあります。