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Dynamics 365とは?CRM・ERPアプリの機能一覧と料金・選び方を解説

Dynamics 365(Microsoft Dynamics 365、日本語ではダイナミクス365、英字ではdynamics365とも表記されます)は、Microsoftが提供する業務アプリケーションの総称です。営業支援や顧客対応といったCRM領域と、会計・在庫・人事といったERP領域が、用途別の独立したアプリとして販売されています。名前に「365」が付くためMicrosoft 365と混同されやすく、さらに2023年以降にアプリの改称と機能廃止が続いたため、検索上位の解説記事とMicrosoftの現行資料が食い違うことも珍しくありません。定義、2026年時点のアプリ構成、公開価格、採用可否の判断材料を順に整理します。

まとめ:Dynamics 365の定義・アプリ11本・料金の要点

わかりやすく言えば、Dynamics 365は「営業・顧客対応・会計・在庫・人事などの業務ソフトを、Microsoftが用途別にバラ売りしているシリーズ名」です。Microsoft自身は「AI 搭載の ERP および CRM アプリケーション」と位置づけており、2016年11月1日にDynamics CRM OnlineとDynamics AXの後継として提供が始まりました。価格ページに独立製品として並ぶアプリは2026年7月時点で11本あり、Sales Enterpriseは1ユーザー月額15,742円、中小企業向けのBusiness Central Essentialsは11,994円(いずれも税抜・年払いの月額換算)と、アプリごとに単価が異なります。

CRM系アプリはDataverseという共通基盤の上で動き、Power AppsやPower BIから同じデータを直接扱えます。財務・運用系アプリは自前のデータストアを持つため連携の作り方が変わり、この違いが設計時の前提になります。向かないのは、標準機能から大きく外れる独自業務が中心の企業と、ユーザー数だけ多く利用頻度が低い業務です。オンプレミス版のCustomer Engagement アプリ v9はメインストリームサポートが2027年1月12日で終わるため、その系統を使い続けている場合は移行時期を逆算する必要があります。

Dynamics 365の定義とD365という略称が指す範囲

CRMとERPを同じ基盤に載せたMicrosoftの業務アプリ群という位置づけ

Microsoftは公式サイトでDynamics 365を「AI 搭載の ERP および CRM アプリケーション」と説明し、製品をCRM側とERP側に分けて並べています。従来はCRM製品とERP製品が別ブランドで売られていましたが、2016年11月1日にDynamics CRM OnlineとDynamics AXを統合する形でDynamics 365として提供が始まり、データモデルとUIを共通化したうえで用途別アプリに再編されました。

この構造を押さえると、「Dynamics 365を導入する」という言い方が実務では成立しにくいことが分かります。実際に契約するのはSalesなのかFinanceなのかBusiness Centralなのかであり、出発点は製品名ではなく、どの業務をどのアプリに載せるかの割り当てです。CRMとERPの守備範囲そのものは、ERPと基幹システム・CRMの違いを整理した記事が前提知識になります。

なお「D365」はDynamics 365の略記で、Microsoftのパートナーや技術者が文書やチケットで日常的に使う表記です。D365という別ラインの製品が存在するわけではありません。

Microsoft 365との違いと、名称が紛らわしくなった経緯

Microsoft 365はWord・Excel・Outlook・Teamsなど、社員が日々使う個人生産性ツールのサブスクリプションです。対してDynamics 365は、案件・受注・在庫・会計といった業務データそのものを管理する基幹寄りのアプリ群で、Microsoft 365が全社員に配られるのに対し、こちらは営業部門や経理部門など業務に関わるユーザーにだけ配ります。紛らわしさの原因は、Microsoftが2017年に企業向けバンドルへMicrosoft 365という名称を使い始め、「365」が両ブランドに残ったことです。実務上は「Dynamics 365を入れればExcelやTeamsも使える」わけではない、と理解しておけば取り違えを避けられます。両者は連携する関係であり、包含する関係ではありません。

Dataverseを共通基盤にPower Platformとつながる仕組み

Dynamics 365のCRM系アプリは、Dataverseと呼ばれる共通データ基盤の上で動きます。ここが競合製品との差が出る部分で、同じDataverseを参照するPower Appsで独自の入力画面を作ったり、Power Automateで承認フローを回したり、Power BIで営業データを可視化したりする際に、データ連携用の追加開発をほとんど必要としません。ノーコード側でどこまで賄えるかを見極めたい場合は、Power Platformの5つのサービスと料金を整理した記事と、Power BIでできることと他BIツールとの違いを解説した記事が判断材料になります。

ただしこの構造はDynamics 365全体に当てはまるわけではありません。Finance、Supply Chain Management、Commerce、Project Operations、Human Resourcesの財務・運用系アプリは自前のデータストアで動き、Dataverseとはdual-write(双方向レプリケーション)や仮想テーブルを介してつながります。Business Centralもまた別の仕組みです。CRM側の感覚でERP側の連携工数を見積もると差が出るため、この違いは要件定義の段階で押さえておく価値があります。

Dynamics 365でできること:2026年時点の機能一覧

CRM系とERP系に分かれるアプリと機能一覧(2026年7月時点)

Dynamics 365の機能一覧を製品単位で見ると、Microsoftの価格ページに独立した製品として並んでいるアプリは次の11本です。

区分 アプリ名 主な担当業務
CRM Sales 営業案件・商談管理
CRM Customer Insights 顧客データ統合・配信
CRM Customer Service 問い合わせのケース管理
CRM Contact Center コンタクトセンター運用
CRM Field Service 作業指示・技術者派遣
ERP Finance 会計・財務管理
ERP Supply Chain Management 在庫・生産・需給計画
ERP Commerce 店舗・EC販売管理
ERP Project Operations 案件別の原価・請求
ERP Human Resources 人事・採用・従業員管理
統合 Business Central 中小企業向け業務全般

価格ページには単体で並びませんが、2026年リリースサイクル1の計画にはMicrosoft Sustainability Manager(温室効果ガス排出量などの算定・報告)も含まれ、Customer InsightsはCustomer Insights – DataとCustomer Insights – Journeysの2機能に分かれて計画が公開されています。「Dynamics 365で何ができるか」を一言でまとめるなら、営業から会計・在庫・人事までの業務を、必要なアプリ単位で切り出して載せられる、というのが実態に近い答えです。

中小企業はBusiness Central、大企業はFinance・Supply Chainという分かれ方

アプリ一覧だけでは選べないため、実務では規模による住み分けを先に押さえます。Business Centralは財務・販売・購買・在庫を1本で賄う中小企業向けの統合ERPで、複数アプリの組み合わせが要りません。対してFinanceとSupply Chain Managementは、複数法人・多通貨・複雑な生産計画を扱う大企業向けで、両方を組み合わせて基幹を構成するのが標準的な形です。

このうちBusiness Centralについては、EssentialsとPremiumを分ける機能差、公式価格にもとづく料金の読み方、そしてどの条件でDynamics 365 Finance側に線を引くのかをDynamics 365 Business Centralとは?機能・料金とF&Oとの選び分けを解説で個別に整理しています。

見落とされやすいのは、この2系統が源流から違うことです。Business Centralは2018年4月に提供が始まった製品で、Dynamics AXではなく中堅企業向けのDynamics NAVの後継にあたります。AX系のFinance・Supply Chain Managementとは設計思想もアーキテクチャも別系統で、「後からBusiness CentralをFinanceへ乗り換える」のは製品グレードの変更ではなく別製品への移行になります。将来の拡張を見込むなら、この分岐は初期選定の時点で決めておくべきものです。クラウド型ERB全般の選び方はクラウドERPとオンプレミスの違いを整理した記事で確認できます。

2026年リリースサイクル1で進むAIエージェント機能

Microsoftは現在のDynamics 365を、入力してためる業務システムから、エージェントが処理を進める基盤へ寄せています。2026年4月1日に一般提供が始まった2026年リリースサイクル1(対象期間は2026年4月〜9月)では、Customer Serviceがケース管理・メール・顧客の意図の把握・品質評価・ナレッジマネージメントでエージェント機能を強化し、Business Centralは販売・購買シナリオをAIエージェントで自動化する方向に投資しています。財務と運用のクロスアプリ機能では、Microsoft 365 Copilotと連携するチャット体験と「イマーシブ ホーム」の一般提供が挙げられています。

注意したいのは、リリース計画に載る機能が自社のテナントですぐ全部使えるわけではない点です。Microsoftは各機能を「自動的に有効化される」ものと「管理者による有効化・構成が必要」なものに区分して公開しています。AI機能を導入判断の根拠にするなら、機能名ではなく、自社の地域・ライセンス・有効化条件で使えるかまで確認が要ります。

旧Marketing・旧Dynamics CRMからの改称と機能廃止で情報が食い違う点

Dynamics 365を調べると、いまだに「Dynamics 365 Marketing」というアプリ名を挙げている解説記事が検索上位に残っています。これは2026年時点では存在しない名称です。2023年9月1日にDynamics 365 MarketingはDynamics 365 Customer Insights – Journeysへ、従来のCustomer InsightsはCustomer Insights – Dataへ改称され、両者は1つのSKUとして販売される形になりました。

名称以上に影響が大きいのは機能の廃止です。旧Marketingの中心だったアウトバウンドマーケティング(メール配信、セグメント、マーケティングページ)は、2023年7月に新規顧客への提供停止が発表され、2024年8月に2025年6月30日以降の廃止が告知され、そして2026年5月にすべての環境からモジュールが削除されました。メールやフォーム、セグメントのテーブルとデータ自体は残っていますが、リアルタイムの体験からは使えず、更新もされません。現在Customer Insights – Journeysで使えるのはリアルタイムジャーニーだけです。「Dynamics 365でメール配信ができる」と書かれた古い記事を根拠に検討を進めると、前提から崩れます。

「Dynamics CRM」も現行の製品名ではなく、Dynamics 365以前のブランド、あるいはオンプレミス版のCustomer Engagement アプリを指す呼び方として残っているだけです。アプリ名と機能の有無は、Microsoftの価格ページかリリース計画で現行の状態を確認してから社内資料に載せるのが安全です。

Dynamics 365の料金:アプリ単位のユーザー課金と費用の積み上がり方

主要アプリの公開価格(年払い・税抜の月額換算)

Dynamics 365はアプリごとに単価が決まっており、同じアプリでもプランによって数倍の開きがあります。Microsoftが公開している主要プランの価格は、2026年7月時点で次のとおりです。

アプリ プラン 1ユーザー月額相当(年払い・税抜)
Sales Professional 9,745円
Sales Enterprise 15,742円
Sales Premium 22,488円
Customer Service Professional 7,496円
Customer Service Enterprise 15,742円
Customer Service Premium 29,235円
Contact Center 単一プラン 16,491円
Business Central Essentials 11,994円
Business Central Premium 16,491円
Business Central Team Members 1,199円

いずれも年間サブスクリプションを月額換算した金額で、消費税は含まれません。価格は改定されるため、見積もり時点でMicrosoftの各製品の価格ページを確認してください。表から読み取れるのは、営業部門40名にSales Enterpriseを配ると年間で約756万円(15,742円×40名×12か月)のライセンス費が発生するということで、導入支援費用や周辺開発費はこれとは別に積み上がります。

全員に同じライセンスを買わないという費用の抑え方

費用が想定を超える典型は、システムに触れる全員へ同じプランを配ってしまうケースです。Business CentralのTeam Membersが月額1,199円と、Essentialsの10分の1で設定されているのは、データの参照や自分の申請入力しか行わないユーザーを想定しているためです。日々レコードを作成・更新するコアユーザーと、承認や閲覧しかしない周辺ユーザーを最初に切り分け、後者に軽量ライセンスを充てる設計にすると総額が変わります。

もう一段踏み込むなら、参照や簡易入力の一部をPower Appsで作った画面に逃がす選択肢もあります。DataverseのデータをPower Apps側から扱えるため、Dynamics 365のライセンスを増やさずに周辺業務を回せる場合がありますが、Dataverseの容量やPower Platform側のライセンスが別途必要になるので、どちらが安いかは人数と利用頻度で逆転します。既存の基幹システムやMAツールとの接続まで含めて設計する場合は、MA・SFA・基幹をつなぐCRM連携の設計を解説した記事が参考になります。

SalesforceやSAPと比べたときのDynamics 365の立ち位置

Salesforce(セールスフォース)との違い:既存のMicrosoft資産で決まる定着率

CRM単体で比較されるSalesforceに対しては、Dynamics 365は「ExcelとTeamsとOutlookが業務の中心にある企業で強い」という整理が実態に合います。営業担当が結局Excelで案件表を作り直してしまう組織では、Dataverse上のデータをそのままExcelやPower BIで扱える構造が定着率に効きます。逆に、他社SaaSとの連携アプリの数や外部パートナーの導入事例の蓄積ではSalesforceが厚く、CRM単体で最短距離を求めるならそちらが有利な場面もあります。

SAPとの違い:保守期限が移行時期を縛るかどうか

ERP領域でのSAPとの比較は、判断軸がまったく別になります。SAPは製造業の複雑な原価計算やグローバル連結に強く、大企業の基幹刷新では第一候補に挙がりますが、標準保守の期限という外部要因で移行時期が縛られる点が特徴です。対してDynamics 365のクラウド版は年2回のリリースサイクルで自動更新されるため、保守期限に向けた一斉移行は発生しません。代わりに、年2回の更新へ追随し続ける運用が前提になります。SAP側の事情を含めて比較したい場合はSAP S/4HANAの導入形態と2027年問題を整理した記事を、3製品をまとめて選定軸で比べるならSalesforce・SAP・Dynamicsの選定軸と進め方をまとめた記事を参照してください。

Dynamics 365を選ぶべきでない場面と、オンプレミス継続に残された期限

標準から大きく外れる業務が中心なら適さない理由

Dynamics 365が向かないのは、業務の中核が業界固有の独自ルールで、標準機能で置き換えられる部分が少ない企業です。カスタマイズの余地は大きい製品ですが、作り込みを積み上げるほど年2回のリリースサイクルごとに回帰テストの負荷が増え、クラウドで運用する利点が薄れます。現行要件のうち標準機能で満たせる割合が半分を下回るなら、パッケージ導入そのものを見直すか、業務側を標準に寄せる前提で計画すべきです。この判断の型はFit to StandardとFit&Gapの違いを整理した記事で確認できます。

もう一つ適さないのは、ユーザー数だけが多く、1人あたりの利用頻度が低いケースです。ユーザー課金である以上、月に数回しか触らない社員にもライセンス費が等しくかかります。この形の業務は、Power Appsやkintoneのようなノーコードツールでフォームとワークフローだけを作るほうが総額で下回る場合があり、Dynamics 365を選ぶ合理性は乏しくなります。

オンプレミス版v9のサポート期限(2027年1月12日)からの移行時期の逆算

旧来のDynamics CRM系をオンプレミスで運用している企業には、明確な期限があります。Dynamics 365 for Customer Engagement アプリ バージョン9(オンプレミス)は、メインストリームサポートが2027年1月12日まで、延長サポートが2029年1月9日までと公表されています。延長サポート期間はセキュリティ更新が中心となるため、機能改善を前提にした計画は立てられません。

基幹に近いシステムの刷新は、要件定義から本番稼働まで規模次第で年単位の期間を見込むのが一般的です。メインストリームサポートの終了を基準に置くなら、2026年内には検討を開始しておく計算になります。移行計画の中心作業は、既存のカスタマイズをどこまでクラウド版の標準へ寄せられるかの棚卸しです。当社でもMicrosoft Dynamics 365の導入支援として、要件整理から既存システムとの連携・移行までを支援しています。

よくある質問

検討初期の問い合わせで実際に多い順に並べています。

Dynamics 365とMicrosoft 365は何が違いますか?

扱う対象が違います。Microsoft 365はWord・Excel・Outlook・Teamsといった個人の作業ツールで原則全社員に配るもの、Dynamics 365は営業案件・受注・在庫・会計といった業務データを管理するCRM/ERPアプリ群で該当業務のユーザーにだけ配るものです。Dynamics 365を契約してもOfficeアプリは付いてきません。

D365とは何の略ですか?

Dynamics 365の略記です。パートナー企業や技術者が社内文書、チケット、求人票などで日常的に使う表記で、D365という別製品が存在するわけではありません。「D365 CE」と書かれていればCustomer Engagement系(Sales、Customer Serviceなど)、「D365 F&O」であればFinance & Operations系(Finance、Supply Chain Management)を指すのが通例です。

Dynamics 365では何ができますか?

営業案件管理、問い合わせ対応、コンタクトセンター運用、現場作業員の派遣管理、会計、在庫・生産計画、店舗販売、案件別原価管理、人事管理を、それぞれ専用アプリで扱えます。2026年7月時点で価格ページに並ぶ独立アプリは11本あり、必要なものだけを選んで契約する形なので、検討時は「どの業務をどのアプリに載せるか」を先に決めます。

Dynamics 365の料金はいくらですか?

アプリとプラン単位のユーザー課金です。Microsoftの公開価格では、Sales Professionalが1ユーザー月額9,745円、Sales Enterpriseが15,742円、Business Central Essentialsが11,994円(いずれも税抜・年払いの月額換算、2026年7月時点)で、この他に導入支援費や連携開発費が別途発生します。価格は改定されるため、見積もり時点で各製品の価格ページを確認してください。

Dynamics 365とSalesforceはどちらを選ぶべきですか?

既存のIT資産で決まる部分が大きい判断です。ExcelやTeams、Outlookが業務の中心にあり、Power BIやPower Automateも併用したい企業は、CRM系アプリが同じDataverse上でデータを扱えるDynamics 365が定着しやすくなります。CRM単体で早く立ち上げたい、他社SaaSとの連携アプリを幅広く使いたいという要件が強いならSalesforce(セールスフォース)に分があります。ERPまで一体で考えるなら、SAPやBusiness Centralも含めて比較対象を広げるのが実務的です。

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