リース債務とは、リース契約にもとづいて将来支払うリース料の支払義務を表す負債です。設備をリースで借りたとき、「これから支払う分」から利息相当額を除いた元本部分を貸借対照表に載せたもので、実態は借入金で資産を買って分割返済するのに近い。混乱しやすいのは「リース負債」との関係です。新リース会計基準の適用企業では、2027年4月1日以後開始する事業年度から、早期適用企業ではそれ以前から、基準上の名称が「リース負債」になりますが、名前だけでなく対象となるリースの範囲と金額の決め方も変わります。この記事では、条文にさかのぼった用語の整理、計上額の決まり方、開始時・支払時・決算時の仕訳、1年基準による流動/固定の区分、長期リース債務や長期未払金といった科目名、新基準での変更点までをまとめます。
まとめ:リース債務の要点
- リース債務とは、リース契約で将来支払うリース料の支払義務を表す負債。ファイナンス・リースを売買に準じて処理したときに、リース資産と両建てで計上します。
- 「リース債務」は企業会計基準第13号の科目名、「リース負債」は企業会計基準第34号(新リース会計基準)の科目名。対応する科目ですが、第13号はファイナンス・リースだけ、第34号は借手のすべてのリース(短期・少額の簡便法を除く)が対象で、中身は同じではありません。
- 現行基準の所有権移転外ファイナンス・リースでは、原則として現在価値と購入価額等の低い額を計上します。所有権移転ファイナンス・リースでは、貸手の購入価額等が明らかなら、その価額を用います。新基準では購入価額との比較をやめ、未払リース料の現在価値になります。
- リース料の支払いは、利息部分(支払利息)と元本部分(リース債務の減少)に分けて仕訳します。配分方法は原則として利息法。
- 貸借対照表では1年基準で区分。決算日後1年以内に支払期限が来る元本部分が流動負債、1年超が固定負債です。固定負債側を「長期リース債務」と表示する会社もあります。
- 新リース会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用。2025年4月1日以後開始する期首からの早期適用も可能です。
リース債務とは?将来のリース料の支払義務を負債にしたもの
リース債務は、リース取引を「賃貸借」ではなく「売買」として会計処理するときに現れる負債です。企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」第10項は、借手の処理をこう定めています。「借手は、リース取引開始日に、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により、リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として計上する。」借りているだけに見える設備でも、実質的に買ったものとみなして資産(リース資産)と負債(リース債務)を両建てで計上する、という考え方です。
負債が立つ理由は単純です。途中解約できず、その物件から得られる経済的利益を借手が実質的に享受し、使用に伴うコストも実質的に負担するなら、経済的には借金をして買ったのと変わらない。銀行から5,000万円借りて機械を買った会社と、同じ機械を5年リースで使う会社が、片方だけ負債ゼロに見えるのはおかしい。この不均衡を埋めるのがリース債務の役割です。ファイナンス・リースかどうかの判定基準はファイナンスリースとオペレーティングリースの違いで整理しています。
リース債務の勘定科目と貸借対照表での位置
リース債務は負債の勘定科目で、貸借対照表の負債の部に載ります。資産側の相手科目は「リース資産」。損益計算書に出てくるのはリース債務そのものではなく、支払利息と減価償却費です。リース資産は有形固定資産・無形固定資産の別にまとめて「リース資産」と表示するのが原則で(第13号第16項)、負債側は後述の1年基準で流動と固定に分けます。
「リース債務」と「リース負債」の違いは、根拠となる会計基準の世代差
借手の負債という点で両者は対応する科目です。新リース会計基準である企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月13日公表)第33項は、「借手は、リース開始日に、第34項に従い算定された額によりリース負債を計上する」と定めており、科目名を「リース負債」としています。旧基準の「リース資産/リース債務」が、新基準では「使用権資産/リース負債」になる、という対応です。条文はASBJの企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表ページで読めます。
ただし「呼び方が変わるだけ」と読むのは危険です。対象範囲が違います。第13号のリース債務が立つのはファイナンス・リースだけですが、第34号のリース負債は借手のすべてのリースが対象(短期・少額の簡便法を除く)。測定の起点も、第13号第11項が「リース契約締結時に合意されたリース料総額」なのに対し、第34号第34項は「リース開始日において未払である借手のリース料」です。同じ契約でも計上額が変わり得ます。
読み分けの目安として、決算書に「リース債務」とあれば企業会計基準第13号ベース、「リース負債」とあれば第34号ベースの処理と考えられます。ただしIFRS任意適用企業はIFRS第16号により以前から「リース負債」を用いているため、第34号の早期適用とは限りません。第34号第59項により、第34号を適用した企業は第13号等の適用を終了するので、両方が並存することはありません。英語では lease liability と表記され、IFRS第16号もこの語を用いています。
| 項目 | 企業会計基準第13号(現行) | 企業会計基準第34号(新基準) |
|---|---|---|
| 借手の資産 | リース資産 | 使用権資産 |
| 借手の負債 | リース債務 | リース負債 |
| 計上の起点 | リース取引開始日 | リース開始日 |
| オンバランスの範囲 | ファイナンス・リースのみ | 借手のすべてのリース |
| 当初の計上額(移転外) | 現在価値と購入価額等の低い方 | 未払リース料の現在価値 |
| 当初の計上額(移転) | 購入価額等が明らかならその価額 | 未払リース料の現在価値 |
| 適用時期 | 2008年4月1日以後開始事業年度 | 2027年4月1日以後開始事業年度 |
リース料・リース債権との違い
リース料は各期に支払う金額そのもの、リース債務はまだ支払っていない分の元本残高です。5年契約で年120万円なら、リース料は120万円、リース債務は残り期間分の現在価値。損益計算書に費用として出るのは支払利息と減価償却費であって、支払ったリース料の全額ではありません(賃貸借処理をする場合を除く)。
リース債権は貸手側の科目で、借手のリース債務とは立場が逆です。企業会計基準第34号第46項は、貸手について「所有権移転ファイナンス・リースについてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リースについてはリース投資資産として計上する」と定めています。同じファイナンス・リースでも、所有権が移転するかどうかで貸手の科目が分かれる点は見落とされがちです。
リース債務の金額の決まり方|現在価値と割引率
リース債務は支払総額そのものではありません。将来支払うリース料から利息相当額を取り除いた元本相当額が、負債になる金額です。金額の決め方は適用する基準によって異なります。新基準は2027年4月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用もあるため、決算期だけでなく自社の適用開始年度を確認します。
現行基準:現在価値と購入価額等の「いずれか低い額」
現行の企業会計基準適用指針第16号第22項は、所有権移転外ファイナンス・リースの計上額を2通りに分けています。貸手の購入価額等が借手に明らかな場合は、リース料総額を割り引いた現在価値と貸手の購入価額等の「いずれか低い額」。明らかでない場合は、現在価値と見積現金購入価額の「いずれか低い額」です。現在価値だけで決まるわけではありません。一方、所有権移転ファイナンス・リースは第16号第37項により、貸手の購入価額等が明らかならその価額を用い、不明なら現在価値と見積現金購入価額の低い額を用います。
購入価額側を採った場合は、利率も決め直します。第16号第24項は、利息法に使う利率を「リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率」としています。後述の設例(年120万円×5年、割引率4%の現在価値5,342,187円)で、見積現金購入価額が5,200,000円だった場合、計上額は5,200,000円になり、利息法の利率は約4.97%、1年目の支払利息は258,325円です。割引率4%のまま計算した213,687円より4万円ほど多くなり、利息の総額は支払総額600万円との差額80万円に一致します。
新基準のリース負債の測定原則|未払リース料の現在価値
企業会計基準第34号第34項は「リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定する方法による」と定めています。購入価額との比較はなくなりました。適用指針第33号BC36はその理由を、借手のすべてのリースについて資産と負債を計上することとしたため、第16号の「貸手の購入価額又は借手の見積現金購入価額と比較を行う方法を踏襲せず」、IFRS第16号と整合的にしたと説明しています。事務所の賃借のように「見積現金購入価額」をそもそも観念しにくいリースまで対象に入るので、比較の方法は使えないということです。開始日までに支払済みの分は負債ではなく、使用権資産の取得価額側に加算されます。
割引率と利息の配分
割引率は自由に決められません。企業会計基準適用指針第33号第37項が2段階で指定しています。貸手の計算利子率を知り得る場合はその利率、知り得ない場合は「借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率」です。ここを低く見積もるほど現在価値は大きく、高く見積もるほど負債は小さく出ます。監査でも新基準の注記でも利率の妥当性は問われるため、見積りに使った金利水準の根拠は残しておくべきです。追加借入利子率の決め方と見直す場面は新リース会計基準の割引率:追加借入利子率の決め方で詳しく解説しています。
利息相当額の各期への配分は、企業会計基準第34号第36項により原則として利息法。適用指針第33号第39項は「各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する」としています。例外として、適用指針第41項は「使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合」を、未経過の借手のリース料の期末残高が「当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合」と定義し、利息相当額を区分しない方法や定額配分を認めています(第40項)。10パーセントという線が引かれている以上、自社が簡便法を使えるかどうかは計算すれば判定できます。
リース債務の仕訳|開始時・支払時・決算時
以下の仕訳は現行(企業会計基準第13号)の科目名で示し、括弧内に新基準(第34号)の科目名を併記します。金額は消費税を捨象し、計上額は現在価値5,342,187円を採った場合で示します。
リース開始日:リース資産とリース債務を両建てで計上
リース開始日には、算定した計上額でリース債務を計上し、同額を資産側に立てます。新基準では資産側について、企業会計基準第34号第33項が「当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上する」と定めています。付随費用があれば資産だけが増えるため、資産と負債は当初から一致しないことがあります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| リース資産(使用権資産) | 5,342,187 | リース債務(リース負債) | 5,342,187 |
リース料支払時の仕訳|支払利息と元本返済の区分
支払ったリース料をそのまま費用にするのではなく、利息法で算定した利息を支払利息、残りをリース債務の減少として処理します。残高が減るにつれて利息は毎期小さくなり、元本返済部分が大きくなります。初年度に費用が多く出て後半に減っていくのは、この構造によるものです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| リース債務(リース負債) | 986,313 | 現金預金 | 1,200,000 |
| 支払利息 | 213,687 |
決算時:減価償却と、翌期支払分の流動負債への振替
決算では資産側の減価償却を計上します。企業会計基準第34号第38項は、所有権が借手に移転すると認められるリース以外について「原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとする」と定めています。所有権が移転すると認められるリースの場合は第37項により、耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額です。経済的使用可能予測期間がリース期間を超える場合は、リース期間終了後も償却が続きます。期間が同じでも、減価償却と元本返済の配分が異なれば残高は一致しません。償却方法そのものの選び方は減価償却とは?仕組み・計算方法・対象資産で解説しています。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 1,068,437 | 減価償却累計額 | 1,068,437 |
あわせて、リース債務残高のうち翌期に支払う元本部分を流動負債へ振り替えます。この振替を毎期忘れると、貸借対照表の流動比率が実態より良く見えてしまいます。
具体例:リース期間5年・年額120万円・割引率4%の5期分
年1回期末払い、リース料年額120万円、リース期間5年、貸手の計算利子率が不明なため借手の追加借入利率4%を用いた場合の現在価値は5,342,187円です。各期の内訳は次のとおりで、利息の合計657,813円は支払総額600万円と当初計上額の差額に一致します。
| 期 | 期首残高 | 支払額 | 利息 | 元本返済 | 期末残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 5,342,187 | 1,200,000 | 213,687 | 986,313 | 4,355,874 |
| 2年目 | 4,355,874 | 1,200,000 | 174,235 | 1,025,765 | 3,330,109 |
| 3年目 | 3,330,109 | 1,200,000 | 133,204 | 1,066,796 | 2,263,313 |
| 4年目 | 2,263,313 | 1,200,000 | 90,533 | 1,109,467 | 1,153,846 |
| 5年目 | 1,153,846 | 1,200,000 | 46,154 | 1,153,846 | 0 |
1年目の決算では、期末残高4,355,874円のうち翌期に返済される元本1,025,765円が流動負債、残る3,330,109円が固定負債です。減価償却は所有権移転外を前提に5年定額で年1,068,437円(端数は最終年度で調整)。1年目の費用は減価償却費と支払利息を合わせて1,282,124円となり、支払ったリース料120万円より多くなります。賃貸借処理との差はここに出ます。
賃貸借処理が認められる範囲:少額・短期と中小企業
リース債務を計上しなくてよい場面は2つあり、根拠が別です。1つ目は会社の規模を問わない少額・短期の簡便法。現行の適用指針第16号第34項は、所有権移転外ファイナンス・リースについて、個々のリース資産に重要性が乏しい場合に通常の賃貸借取引に準じた処理を認め、第35項がその場合として、リース期間が1年以内のリース取引や、事業内容に照らして重要性が乏しくリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引などを挙げています。
2つ目は中小企業です。中小企業の会計に関する指針(最新は2025年9月19日修正版)は、金融商品取引法の適用を受ける会社や会計監査人を設置する会社とそれらの子会社などを除く株式会社が対象で、第75-3項で所有権移転外ファイナンス・リース取引を売買処理するのを原則としつつ、通常の賃貸借取引に準じた処理も認めています。この場合は第75-4項により未経過リース料を注記します(重要性がなければ省略可)。2025年の修正は項番号や関係法令の更新にとどまり、リース取引の項は変わっていません。新リース会計基準が始まっても、この指針に拠る会社がリース債務を計上しない扱いはそのまま続きます。
貸借対照表での区分と科目名|長期リース債務・長期未払金
1年基準による流動/固定の区分
区分の基準は明快です。現行の第13号第17項も、新基準の第34号第50項も、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものは流動負債、1年を超えて支払の期限が到来するものは固定負債とする1年基準で、この点は新旧で変わりません。区分するのは、将来の支払リース料総額ではなく、利息相当額を除いた元本残高です。翌期の支払額120万円をそのまま流動負債にすると、利息分だけ負債を過大に計上することになります。
新基準で追加されたのは表示の要求です。第50項はリース負債を「区分して表示する又はリース負債が含まれる科目及び金額を注記する」ことを求め、第51項は利息費用について同様の区分表示または注記を新設しました。旧基準に利息費用の表示規定はありませんでした。
「長期リース債務」「1年内返済予定のリース債務」という表示
「長期リース債務」は会計基準が定めた科目名ではありません。1年基準で固定負債側に振り分けたリース債務に、実務上つけている表示名です。同じ意味で「リース債務(固定)」「長期リース負債」と表示する会社もあります。流動負債側は「リース債務」のほか「1年内返済予定のリース債務」「1年内支払予定のリース債務」といった表記が使われます。前述の設例なら、1年目末の流動側が1,025,765円、長期リース債務が3,330,109円です。決算書を横並びで比較するときは、科目名の違いが処理の違いを意味しているとは限らない、と考えたほうが安全です。
リース負債を「長期未払金」に含める表示と注記
リース債務に代えて「未払金」「長期未払金」を用いる処理も、現行基準のもとで実務では行われています。新基準の適用後は、第50項がリース負債について「区分して表示する又はリース負債が含まれる科目及び金額を注記する」としているため、他科目に含める表示が条文上も明示的に許容されます。
ただし表示先を変えても負債であることは変わりません。第34号第55項(1)③は借手の注記として「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」を求めており、他の未払金と混ざって内訳が追えなくなると、この注記に必要な金額を後から拾えません。補助科目で分けておくべきです。契約変更の反映漏れや台帳と仕訳の不一致が繰り返し発生する会社では、会計・経理システムの開発でリース台帳と仕訳を連動させる選択肢も出てきます。
有利子負債への算入と財務指標への影響
リース債務は現在価値で計上され、以後の残高に対して利息法で支払利息が発生するため、資金調達としての性格は借入金と同じです。有利子負債を用いるD/EレシオやEBITDA有利子負債倍率では、リース債務を集計対象に含めるかを確認します。自己資本比率は自己資本を総資産で割る指標で、有利子負債への分類とは別の論点です。
なお「有利子負債」という語は企業会計基準第34号にも第13号にも適用指針第33号にも登場せず、会計基準上の定義がありません。集計する主体によってリース債務を含めるかどうかが分かれるため、他社比較の数値を使うときは定義を確認する必要があります。影響が大きいのは新基準の適用後で、これまで注記のみだったオペレーティング・リースの分まで負債に乗り、財務指標が悪化して見える会社が出ます。基準変更による見た目の変化であって事業の実態が変わったわけではないため、取引金融機関に説明できるようにしておくべきです。
リース資産とリース債務が一致しない5つの理由
当初は同額で計上しても、減価償却と元本返済の進み方によって期末残高は異なります。付随費用などにより当初から異なる場合もあり、以下では主な5つの要因を整理します。
第一に、当初計上額の時点でずれるケース。企業会計基準第34号第33項のとおり、使用権資産はリース負債に開始日までに支払ったリース料・付随費用・除去費用を加算し、リース・インセンティブを控除した額です。据付費用を負担していれば、その分だけ資産が大きくなります。
第二に、消費税の経理方式。税抜経理で、利息相当額を除いたリース債務に未払の消費税相当額を含め、資産を税抜額で計上する場合、その消費税相当額が当初の差額になります。
第三に、減り方のペース差。リース債務は元本返済で減り、資産は減価償却で減ります。所有権が移転すると認められるリースでは、第37項により経済的使用可能予測期間で償却します。その期間がリース期間を超える場合などには、債務の返済後も資産の帳簿価額が残ります。支払いが年1回か月次かでも、期末時点の残高はずれます。
第四に、減損。使用権資産に減損損失を計上して簿価を切り下げても、リース料の支払義務は消えないため負債は動きません。
第五に、新基準でのリース負債の見直し。修正額は使用権資産に加減するのが原則ですが、適用指針第33号第46項は、使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなおリース負債の減額があるときは、残額を損益に計上するとしています。見直し後に使用権資産がゼロでリース負債が残れば残高は一致しませんが、リース負債もゼロになれば両者は一致します。資産側の計上額の内訳・償却・減損は使用権資産とは:リース資産との違いと計上額の内訳・仕訳・償却・減損を条文で解説で整理しています。
2027年4月以後開始年度からの新リース会計基準|負債計上の変更点
企業会計基準第34号第58項が適用時期を定めています。「本会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができる。」3月決算の会社であれば2027年4月1日開始の事業年度から強制適用、2025年4月1日開始の事業年度から早期適用できる、という読み方になります。基準そのものの背景や全体像は新リース会計基準とは?2027年4月適用の変更点にまとめています。
借手のリースのオンバランス化と短期・少額リースの簡便法
最大の変更は、借手のオペレーティング・リースも資産と負債に計上する点です(貸手は第48項により引き続き賃貸借処理)。これまで注記だけで済んでいた事務所の賃借や車両リースが、使用権資産とリース負債として貸借対照表に載ります。負債総額が増えるため、影響が大きいのは不動産を多く賃借している業種です。
ただし全件を計上する必要はありません。適用指針第33号第4項(2)は短期リースを「リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリース」と定義し、第20項でこれらについて使用権資産およびリース負債を計上せず、リース料を原則として定額法により費用として計上できるとしています。少額リースについても第22項が同様の簡便的取扱いを定めています。
契約の途中でリース負債の額が変わる「見直し」
現行基準でも中途解約時にはリース債務残高を取り崩すため、残高が当初の返済予定表どおりに減るとは限りません。これに対して新基準のリース負債は、解約がなくても契約の途中で計上額そのものが変わることがあります。第34号第40項は、契約条件の変更がなくても、借手のリース期間に変更がある場合と、リース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合にリース負債の計上額を見直すと定めています。延長オプションを行使することが「合理的に確実」かどうかの判断が、借手の統制下にある重要な事象で変わったとき(第41項)が前者の典型です。
後者の例として、適用指針第33号第47項は、購入オプションの行使判定の変更、残価保証に基づく支払見込額の変動、指数又はレートに応じて決まる変動リース料の変動を挙げています。第24項は、市場の賃料変動を反映するよう当事者間の協議で見直すと契約に定めたリース料もこの変動リース料に含めています。賃料改定条項のある事務所の賃借なら、改定で今後のリース料が変わった時点で、残りの期間にわたってリース負債を修正し、修正額を使用権資産に加減します(第48項)。予定表は見直し事由が生じた時点で更新できるよう管理します。第49項の将来の指数・レートの変動を見積もる方法を採用する場合は、決算日ごとの再見積りが必要です。
少額リースの300万円基準|第22項と結論の背景BC43の関係
少額リースの簡便法を「リース料総額300万円以下」と説明する解説を見かけますが、新基準の条文を読むと事情が違います。適用指針第33号第22項(2)①が定めるのは「企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース」という定性的な要件で、金額基準は本文に示されていません。300万円という具体額と旧基準の方法を踏襲する趣旨は、結論の背景BC41・BC43に示されています。BC43は、この定めが旧適用指針第16号の「リース料総額が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れた」ものだと説明しています。
同じBC43には見落としやすい制約も書かれています。この方法は「リース契約1件ごとにこの方法を適用するか否かを選択することは想定しておらず」、金額判定にあたって複数の契約を結合することも想定されていません。都合の良い契約だけ簡便法を選ぶ運用はできない、ということです。なお第22項(2)②には「新品時の原資産の価値が少額であるリース」という別ルートがあり、こちらはリース1件ごとの選択が可能です。①と②はいずれかを選択し、選んだ方法を首尾一貫して適用します。新品時の原資産の価値が少額で、リースごとに簡便法の適用を選ぶ必要がある会社には②が候補になります。①を継続する場合との管理負担を比較して選びます。①を選ぶ場合も、事業内容に照らした重要性と契約1件当たりの金額の要件を満たす必要があり、契約件数が少ないだけでは簡便法を適用できません。
税務上の取扱い|法人税と消費税
税務は会計基準の改正に自動的には追随しません。法人税法第64条の2第3項は、中途解約できないこと(またはこれに準ずること)と、経済的利益の享受と使用コストの負担という2要件を満たす資産の賃貸借を「リース取引」とし、引渡しの時に売買があったものとして所得を計算させます。この要件を満たさない賃貸借については、令和7年度税制改正で新設された法人税法第53条が、賃借人が支払うこととされている金額のうち「当該各事業年度において債務の確定した部分の金額」を損金に算入すると定めました。令和7年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています(条文はe-Govの法人税法)。新リース会計基準で事務所の賃借を使用権資産とリース負債に計上しても、税務上は支払賃料ベースの損金のままで、償却費・支払利息との差は申告調整と税効果会計の対象になります。
実務で間違いやすいのは消費税です。国税庁の質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人における仕入控除税額の計算」は、「所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する場合には、リース資産の引渡しを受けた日に資産の譲受けがあったものとして、仕入控除税額の計算を行います」としています。消費税基本通達11-3-2にもとづき、引渡しを受けた日の属する課税期間で一括控除するのが原則です。リース料を毎月払っていても、消費税の控除は初年度に全額、という点が会計処理と食い違います。
例外として、別の質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」は、賃貸借処理をしている場合にリース料の支払期日の属する課税期間で控除する分割控除を「これによって差し支えありません」と認めています。同事例には、令和7年度税制改正でリース譲渡に係る延払基準が廃止された後も、賃借人において会計上賃貸借処理が可能な場合は引き続き分割控除して差し支えない旨が明記されています。一括控除と分割控除の選び方や途中解約時の扱いはリースの消費税はいつ課税されるかで詳しく扱っています。
よくある質問
リース債務とは何ですか?
リース契約にもとづいて借手が将来支払うリース料の支払義務を表す負債です。企業会計基準第13号第10項が、ファイナンス・リースについてリース物件とこれに係る債務をリース資産およびリース債務として計上すると定めています。金額は将来のリース料から利息相当額を控除した元本相当額です。
リース債務とリース負債は何が違いますか?
どちらも借手の負債を表す対応する科目ですが、根拠となる会計基準と対象範囲が違います。「リース債務」は企業会計基準第13号の科目名でファイナンス・リースだけが対象、「リース負債」は2027年4月1日以後開始事業年度から適用される企業会計基準第34号の科目名で、短期・少額の簡便法を除く借手のすべてのリースが対象です。当初計上額は、新基準では原則として未払リース料の現在価値です。現行基準では、所有権移転外は原則として現在価値と購入価額等の低い額、所有権移転は貸手の購入価額等が明らかならその価額を用います。
リース債務の勘定科目はどこに表示しますか?
「リース債務」という負債の勘定科目で、貸借対照表の負債の部に表示します。相手科目はリース資産(新基準では使用権資産)で、損益計算書に出るのはリース債務ではなく支払利息と減価償却費です。会社によっては未払金・長期未払金に含めて表示する例もあります。
リース債務は流動負債と固定負債のどちらに区分しますか?
両方に分けます。企業会計基準第13号第17項(新基準では第34号第50項)は、貸借対照表日後1年以内に支払期限が到来する分を流動負債、1年を超える分を固定負債とすると定めています。分ける対象は支払額ではなく元本部分なので、翌期の支払リース料から利息相当額を除いた金額を流動負債にします。
長期リース債務とは何ですか?
1年基準で固定負債に区分されたリース債務に対して、実務上つけられている表示科目名です。会計基準が定めた正式な科目名ではないため、「リース債務(固定)」「長期リース負債」など会社によって表記が異なります。流動負債側は「1年内返済予定のリース債務」などと表示されます。
リース資産とリース債務が一致しないのはなぜですか?
付随費用を資産側に加算する当初計上、税抜経理での消費税相当額、減価償却と元本返済のペース差、減損損失の計上、新基準でのリース負債の見直しという5つの観点で確認します。ただし、見直しで使用権資産とリース負債がともにゼロになれば、残高は一致します。所有権が移転すると認められるリースでは、経済的使用可能予測期間がリース期間を超える場合などに、債務の返済後も資産の帳簿価額が残ります。
リース債務の消費税はいつ控除しますか?
所有権移転外ファイナンス・リース取引では、リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間に一括控除するのが原則です(消費税基本通達11-3-2)。ただし会計上で賃貸借処理をしている場合は、リース料の支払期日の属する課税期間ごとに控除する分割控除も認められます。
リース債務は英語で何といいますか?
lease liability が一般的で、IFRS第16号でもこの語が使われます。lease obligation と表記される場合もあります。使用権資産は right-of-use asset です。