リースとは、物件の所有者である貸手が、合意した期間その物件を使う権利を借手に与え、借手がリース料を払う取引です。一般的なファイナンス・リースでは、借手が選んだ物件をリース会社が販売会社から購入して貸し出し、借手が毎月リース料を払います。会計ではこの取引を「リース取引」と呼び、現行の企業会計基準第13号のもとでは、そのうち一定の条件を満たすものだけが借手の貸借対照表に「リース資産」として載ります。
この記事では、リース取引の定義、リース料の中身、リース資産として計上される範囲、判定に使う解約不能・フルペイアウトの2要件と90%・75%基準、割賦購入との違いを、企業会計基準と法人税法の条文に沿って整理します。区分と会計処理の説明は、末尾の新基準の節を除き第13号を前提にしています。
まとめ:リース取引とリース資産の要点
- リース取引は、貸手が物件を使う権利を借手に与え、借手が合意したリース料を払う取引です。法形式は賃貸借ですが、中身で会計処理が決まります。
- リース資産は、ファイナンス・リース取引で借手が計上する資産です。オペレーティング・リース取引は資産に載せず、支払ったリース料を費用にします。
- ファイナンス・リースの判定は解約不能とフルペイアウトの2要件で、フルペイアウトの目安が現在価値90%・経済的耐用年数75%です。90%と75%はいずれか一方を満たせば足ります。
- 少額・短期の要件を満たすファイナンス・リースでは賃貸借処理を選べます。また、中小企業の会計に関する指針では、所有権移転外ファイナンス・リースについて、未経過リース料の注記を伴う賃貸借処理を選べます。
- 2027年4月1日以後に始まる事業年度からは企業会計基準第34号が強制適用となり、借手はオペレーティング・リースも含めて原則「使用権資産」を計上します。
リース取引の定義:会計基準と法人税法の条文
現行の企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」は、第4項でリース取引を「特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(以下「リース期間」という。)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」という。)を貸手に支払う取引」と定義しています。ポイントは、物件の所有者はあくまで貸手(リース会社)であり、借手が手にするのは「使う権利」だという点です。
法形式は民法の賃貸借に近いものの、民法に「リース」という契約類型の条文はありません。賃貸借契約との法的な線引きはリースと賃貸借の違いで、短期間の貸し借りであるレンタルとの違いはリースとレンタルの違いで詳しく扱っています。
税務では、法人税法第64条の2第3項が「リース取引」を独自に定義し、中途解約できないこと、借手が資産からの経済的利益を実質的に享受し使用に伴う費用を実質的に負担することの2要件を置いています。この要件を満たす取引は、引渡しの時に売買があったものとして所得を計算します(同条第1項)。
当事者は借手・リース会社・販売会社の3者
一般的なファイナンス・リースは、次の3者で成り立ちます。
- 借手(ユーザー企業)が、使いたい機械や販売会社を自分で選び、条件を交渉する
- リース会社が、その物件を販売会社から購入し、代金を支払う
- リース会社と借手がリース契約を結び、物件は販売会社から借手へ直接納品される
公益社団法人リース事業協会の「リース契約の特徴」は、借手とリース会社のリース契約と、リース会社と販売会社の売買契約は別個の契約だと説明しています。物件を選んだのは借手なので、品質等に不適合があった場合は借手が販売会社に損害賠償等を請求し、リース会社はその請求に協力する形になります。「リース会社から借りた物件だから、不具合はリース会社が直す」と考えるのは誤りで、保守は販売会社との保守契約で手当てします。
リース料の内訳:物件価格・金利・税・保険料
リース事業協会は、月額リース料を「(物件価格+金利+固定資産税+保険料+管理費・利益)÷リース期間(月数)」と示しています。保険料は動産総合保険などです。リース期間について同協会は「税法上の規定により、リース期間は、耐用年数の70%以上(パソコンの場合、2年以上)で設定する」と説明しています。これは、法定耐用年数の70%(耐用年数10年以上は60%)に相当する年数(1年未満の端数は切捨て)を下回る期間が、税務上「相当短いもの」とされることによる目安で、契約期間そのものを禁止する規定ではありません。リース物件の固定資産税(償却資産)は原則としてリース会社が申告し、その分がリース料に含まれます。ただし岡山市のFAQは、リース期間終了後に借主へ無償譲渡される資産など実質的に所有権留保付割賦販売とみなされるものは借主が申告するとしています。課税の考え方はリース資産の償却資産税で解説しています。
リース料総額が物件を現金で買う価格を上回るのは、この金利・税・保険料が乗っているためです。消費税は、所有権移転外ファイナンス・リース取引であれば、国税庁の質疑応答事例のとおりリース資産の引渡しを受けた日に資産の譲受けがあったものとして一括で仕入控除税額を計算するのが原則です。借手が賃貸借処理をしている場合は、その処理に応じた取扱い(支払ごとの控除)も認められています。詳細はリース取引における消費税にまとめています。
リース資産とは:貸借対照表に載るリースの範囲
リース資産とは、ファイナンス・リース取引で借手が計上する資産です。企業会計基準第13号は、借手がファイナンス・リース取引について通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行い、リース物件とこれに係る債務を「リース資産」「リース債務」として計上すると定めています。反対に、オペレーティング・リース取引は通常の賃貸借取引に係る方法に準じて処理するため、リース資産は生じません。
| 区分(現行基準) | 借手の貸借対照表 | 借手の費用 |
|---|---|---|
| 所有権移転ファイナンス・リース | リース資産・リース債務 | 減価償却費+支払利息 |
| 所有権移転外ファイナンス・リース | リース資産・リース債務 | 減価償却費+支払利息 |
| 上記のうち少額・短期 | 計上しないことも可 | 支払リース料 |
| オペレーティング・リース | 計上しない | 支払リース料 |
貸借対照表では、第13号第16項により、原則として有形固定資産・無形固定資産の別に一括して「リース資産」と表示します。ただし、機械装置やソフトウェアなど、有形・無形固定資産に属する各科目に含めることもできます。計上したリース債務の中身や流動・固定の区分はリース債務とはで扱っています。
少額・短期リースの資産計上省略の要件
ファイナンス・リースであっても、個々のリース資産に重要性が乏しいものは賃貸借処理が認められています。適用指針第16号第35項は、所有権移転外ファイナンス・リース取引で重要性が乏しい場合として、次の3つを挙げています。
- 購入時に費用処理している減価償却資産の基準額以下(利息相当額だけ高めに設定可)
- リース期間が1年以内
- 事業内容に照らして重要性が乏しく、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下
コピー機やパソコンのリースでも、上記の要件を満たし、簡便的な取扱いを適用する場合には、リース資産を計上せずに処理できます。
中小企業の会計指針・基本要領による賃貸借処理
「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」を適用する会社は、所有権移転外ファイナンス・リース取引についても賃貸借処理を選べます。その場合は、未経過リース料を注記するのが指針の定めです。中小企業の決算書にリース資産が無くても処理の誤りとは限りませんが、資金計画では、注記の未経過リース料を将来の支払予定に含め、借入返済と合わせて資金残高を確認します。
ファイナンス・リースの判定:解約不能とフルペイアウト
ファイナンス・リース取引は、次の2要件をどちらも満たすリース取引です。1つでも欠ければオペレーティング・リース取引になります。
| 要件 | 中身 | 数値の目安 |
|---|---|---|
| 解約不能(ノンキャンセラブル) | 中途解約できない、または実質的にできない | なし |
| フルペイアウト | 経済的利益を享受し、コストを実質的に負担 | 90%基準・75%基準 |
解約不能:解約金で実質的に縛られていれば該当
契約書に「解約できない」と書かれている場合だけでなく、法的形式上は解約できても相当の違約金を払わなければならない契約は「解約不能のリース取引に準ずるリース取引」として扱われます。適用指針第16号第6項は、その例として解約時に未経過のリース期間に係るリース料の概ね全額を規定損害金として払う契約を挙げています。「中途解約条項があるからオペレーティング・リース」と契約書の文言だけで判断すると、区分を誤ります。
フルペイアウト:90%基準と75%基準のいずれか
フルペイアウトとは、借手がリース物件を自分で買った場合と同じように使い、その取得価額や維持管理費などのコストをリース料でほぼ全額負担している状態を指します。「ペイアウト(pay out)」は投資額を回収するという意味で、貸手の側から見ると、物件代金と金利をリース料だけで回収しきる契約です。
企業会計基準適用指針第16号第9項は、フルペイアウトの具体的な判定として次の2つを示し、「(1)又は(2)のいずれかに該当する場合」にファイナンス・リース取引と判定します。
- 現在価値基準:解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、見積現金購入価額の概ね90パーセント以上
- 経済的耐用年数基準:解約不能のリース期間が、リース物件の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上
経済的耐用年数基準にはただし書があり、物件の特性、経済的耐用年数の長さ、中古市場の存在などから、現在価値基準の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合は除かれます。中古市場で高く売れる物件を長期間借りても、それだけでフルペイアウトにはならないということです。
見積現金購入価額1,000万円の設備について、解約不能期間5年(60か月)、毎月末払い、月利0.25%(年3%÷12)で計算します。月額は税抜きで、維持管理費用等と残価保証はないものとします。
| 項目 | ケースA | ケースB |
|---|---|---|
| 月額リース料 | 18万円 | 15万円 |
| リース料総額 | 1,080万円 | 900万円 |
| 現在価値(年3%) | 約1,002万円 | 約835万円 |
| 現在価値基準 | 100.2%で該当 | 83.5%で非該当 |
| 経済的耐用年数6年の場合 | 5÷6=83%で該当 | 5÷6=83%で該当 |
| 判定 | ファイナンス | ファイナンス |
ケースBは現在価値が90%に届きませんが、リース期間が経済的耐用年数の75%を超えるため、ただし書に当たらない限りフルペイアウトに該当します。「90%と75%の両方を満たさなければオペレーティング・リース」と覚えていると、この契約を資産計上から漏らします。また、数値はあくまで「おおむね」の目安で、89%に抑えた契約でも実態がフルペイアウトなら判定は変わりません。
税務の判定と償却方法
法人税法の判定は会計と同じではありません。法人税法施行令第131条の2第2項は、契約の解除ができない期間に支払う賃借料の合計額が、その資産の取得のために通常要する価額の「おおむね百分の九十に相当する金額を超える場合」に、費用を実質的に負担する要件(法人税法第64条の2第3項第2号)に該当するとしています。会計の経済的耐用年数75%基準に当たる数値は法人税法と同施行令の条文にはありませんが、令和7年に追加された法人税基本通達12の5-1-3は、賃貸人の会計リース料の現在価値が原資産の現金購入価額のおおむね90%以上、または賃貸人の会計リース期間が原資産の経済的耐用年数のおおむね75%以上であれば、この要件に該当するとしています(75%には、90%を大きく下回ることが明らかな場合の除外があります)。
税務上のリース取引のうち所有権移転外リース取引に当たる資産は、リース期間を償却期間とする「リース期間定額法」で償却します。借手が会計上は賃貸借処理をしてリース料を費用にしていても、その金額は償却費として損金経理した額に含まれる扱いです。決算対策としてのリースの効き目は法人向けリースのメリット・デメリットで検証しています。
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの仕訳例や貸手側の処理は、ファイナンスリースとオペレーティングリースの違いで詳しく解説しています。
所有権移転と所有権移転外で変わる償却期間
ファイナンス・リース取引は、さらに「所有権移転」と「所有権移転外」に分かれます。適用指針第16号第10項の(1)から(3)のいずれかに当たると所有権移転ファイナンス・リースで、それ以外は所有権移転外ファイナンス・リースです。
| 所有権移転の要件 | 典型例 |
|---|---|
| 所有権移転条項 | 期間満了時に無償で借手へ移転 |
| 割安購入選択権 | 著しく有利な価額の買取権で行使が確実 |
| 特別仕様物件 | 借手専用に製作され借手だけが使う |
区分で変わるのは減価償却の期間です。所有権移転ファイナンス・リースは自社で買った資産と同じく経済的耐用年数で償却し、所有権移転外ファイナンス・リースはリース期間を耐用年数、残存価額をゼロ(残価保証があればその額)として償却します。期間満了後に物件を買い取る契約の注意点は購入選択権付リースで扱っています。
リースと割賦購入の違い
割賦購入(割賦販売)は、物件を購入し、代金を分割で払う取引です。月々定額を払う点はリースと同じですが、法的に「買っている」か「借りている」かが根本から違います。
| 比較項目 | リース | 割賦購入 |
|---|---|---|
| 契約の性質 | 使用権の貸与 | 売買(代金の分割払い) |
| 所有者 | リース会社 | 完済時に買主(所有権留保が一般的) |
| 期間満了後 | 返却・再リース・買取 | 買主の資産として使い続ける |
| 借手・買主の資産計上 | ファイナンス・リースのみ | 取得時に固定資産として計上 |
| 償却資産の申告 | 原則リース会社(リース料に含む) | 原則買主(所有権留保付でも) |
| 中途解約 | 原則不可 | 繰上げ返済が可能な契約が多い |
判断の軸は「期間満了後もその物件を使い続けるか」です。耐用年数いっぱい使い、最後に自社の資産として残したいなら、割賦購入と、満了後の買取を前提にしたリースの総支払額(金利・税・保険料・買取代金を含む)を見積もって比べます。数年で入れ替える機器なら、予定する使用期間と解約不能期間が合うリースが候補になりますが、途中で不要になる可能性が高い機器は、残リース料相当の違約金を払う契約になる点に注意が必要です。
2027年4月からの新リース会計基準で変わる点
企業会計基準委員会(ASBJ)は2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を公表しました。2027年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後に開始する年度から早期適用もできます。
最大の変更は借手の区分の廃止です。借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区別せず、原則としてすべてのリースについて「使用権資産」と「リース負債」を計上します。一方、貸手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を維持し、90%・75%の数値基準は貸手の判定に残ります。借手が契約にリースが含まれるかを決める手順は、新リース会計基準の判定フローで解説しています。
国税庁の「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」は、監査対象法人以外の法人(中小企業など)について、引き続き中小企業の会計に関する指針または中小企業の会計に関する基本要領に則った会計処理も可能と注記しています。免除規定や経過措置、IFRS第16号との違いは新リース会計基準とはで解説しています。
よくある質問
リース資産は誰の資産ですか?
法律上の所有者はリース会社です。ただし会計上は、ファイナンス・リース取引であれば借手が自社の貸借対照表に「リース資産」として計上し、減価償却します。所有者と資産計上する会社が一致しない点がリースの特徴です。
リース資産はなぜ減価償却が必要なのですか?
ファイナンス・リースは、解約不能で、借手が物件からの経済的利益を実質的に享受し、その使用に伴うコストを実質的に負担するため、会計上は分割払いで買ったのと同じ売買取引として扱うからです。資産として計上した以上、使った期間に応じて費用配分する減価償却が必要になります。
リース料は何費で処理しますか?
賃貸借処理をするオペレーティング・リースや少額・短期のリース、中小企業が賃貸借処理を選んだ場合は「支払リース料」や「賃借料」などの費用科目で処理します。売買処理をするファイナンス・リースは、リース料の支払をリース債務の返済と支払利息に分け、別途リース資産の減価償却費を計上します。
フルペイアウトをわかりやすく言うと何ですか?
リース料だけで物件代金と金利をほぼ全額払い切る契約のことです。解約不能期間のリース料の現在価値が見積現金購入価額のおおむね90%以上、または解約不能期間が経済的耐用年数のおおむね75%以上であることが目安です。ただし後者は、現在価値が90%を大きく下回ることが明らかな場合を除きます。
リースとレンタルは何が違いますか?
リースは借手が選んだ物件をリース会社が購入して長期間貸す取引で、中途解約は原則できません。レンタルはレンタル会社が保有する在庫の物件を不特定多数に短期間貸す取引で、比較的自由に解約できます。