セキュリティ

CVSSとは?脆弱性の深刻度スコアの見方・計算方法とv4.0の変更点を解説

CVSS(Common Vulnerability Scoring System/共通脆弱性評価システム)とは、ソフトウェアの脆弱性の深刻度を 0.0〜10.0 の数値で表す、ベンダー中立の国際標準です。米国の非営利団体 FIRST(Forum of Incident Response and Security Teams)が策定・維持しており、同じ脆弱性を誰が評価しても近い基準でスコア化できるため、脆弱性対応の優先順位付けに広く使われています。この記事では、CVSSスコアの見方(深刻度の目安)・3つの評価基準・計算方法・最新版 CVSS v4.0 の変更点・CVE/CWEとの違い・実務での活用方法までを簡潔に整理します。

まとめ:CVSSの要点

CVSS(共通脆弱性評価システム)は、脆弱性の深刻度を 0.0〜10.0 で表す国際標準で、FIRST が策定・維持しています。要点は次のとおりです。

  • スコアは None(0.0)/Low/Medium/High/Critical(9.0〜10.0) の5段階で深刻度を判断する。
  • 評価は基本・脅威(現状)・環境の3基準からなり、公開値は多くの場合「基本値」。
  • 最新版 CVSS v4.0(2023年11月)では Scope 廃止・影響評価の分離・補足評価基準の追加などが行われた。
  • CVE(識別番号)・CWE(種類分類)・CVSS(深刻度)は役割が異なり、連携して使う。
  • 優先順位付けでは基本値だけに頼らず、環境評価・KEV・EPSS を併用するのが実践的。

CVSSとは?脆弱性の深刻度を数値化する国際標準

CVSS は、脆弱性が悪用された場合の攻撃のしやすさと影響の大きさを、共通の指標で 0.0〜10.0 のスコアに換算する仕組みです。数値が大きいほど深刻で、10.0 が最も危険度が高いことを示します。特定の製品ベンダーに依存しない「ものさし」として、脆弱性情報データベースの NVD(米国)や JVN(日本)でも採用されています。

スコアは単なる数字ではなく、どの条件でその値になったかを示す「ベクトル文字列」とセットで公開されるのが特徴です。これにより、評価の再現性・透明性が担保されます。

バージョンの変遷は次のとおりで、現在の最新版は 2023年11月に公開された CVSS v4.0 です。ただし NVD などでは v3.1 のスコアも併記されており、当面は v3.1 と v4.0 が併存します。

  • CVSS v1.0:2005年
  • CVSS v2.0:2007年
  • CVSS v3.0:2015年 / v3.1:2019年
  • CVSS v4.0:2023年11月(最新版)

CVSSスコアの見方|深刻度レベルの目安(None〜Critical)

CVSS v3.x・v4.0 では、スコアの範囲に応じて深刻度(Severity)を5段階に分類します。まず押さえるべきは、この対応表です。

深刻度(Severity) CVSSスコア 目安
緊急(Critical) 9.0〜10.0 最優先で即時対応
重要(High) 7.0〜8.9 速やかに対応
警告(Medium) 4.0〜6.9 計画的に対応
注意(Low) 0.1〜3.9 影響を見て対応
なし(None) 0.0 実質的な影響なし

注意したいのは、この目安はあくまで技術的な深刻度であり「自組織にとっての緊急度」とは必ずしも一致しない点です。同じ CVSS 9.8 でも、対象システムがインターネットに公開されているか、実際に攻撃コードが出回っているかで、実務上の危険度は大きく変わります。後述する環境評価基準や EPSS を併用して補正するのが実践的です。

CVSSの3つの評価基準(基本・脅威/現状・環境)

CVSS のスコアは、性質の異なる3つの評価基準(メトリクスグループ)から構成されます。脆弱性そのものの特性を表す「基本評価基準」を土台に、時間経過や利用環境に応じて補正する2つの基準が加わる構造です。

基本評価基準(Base Metrics)

脆弱性固有の、時間や環境で変化しない特性を評価します。CVSS スコアの中核で、一般に公開される「CVSSスコア」は多くの場合この基本値です。大きく「攻撃のしやすさ(Exploitability)」と「影響(Impact)」に分かれます。

  • 攻撃元区分(Attack Vector:AV):ネットワーク/隣接/ローカル/物理のどこから攻撃可能か
  • 攻撃条件の複雑さ(Attack Complexity:AC):攻撃成立に特別な条件が必要か
  • 必要な特権レベル(Privileges Required:PR):攻撃に必要な権限の高さ
  • 利用者の関与(User Interaction:UI):被害者の操作(クリック等)が必要か
  • 影響(機密性C・完全性I・可用性A):情報セキュリティの3要素それぞれへの影響度

影響は、情報セキュリティの3要素である機密性(Confidentiality)・完全性(Integrity)・可用性(Availability)、いわゆる「CIA」への影響として評価されます。3要素すべてに High の影響があれば、スコアは高くなります。

脅威(現状)評価基準(Threat/Temporal Metrics)

時間の経過とともに変化する要素を反映して補正します。v3.1 では「現状評価基準(Temporal)」と呼ばれ、攻撃コードの成熟度・修正状況・情報の信頼性の3項目でした。v4.0 では「脅威評価基準(Threat)」に整理され、攻撃コードの成熟度(Exploit Maturity:E)のみに簡素化されています。実際に悪用されているかどうかが反映されるため、対応の緊急度判断に役立ちます。

環境評価基準(Environmental Metrics)

脆弱性を抱えるシステムが、自組織にとってどれだけ重要かを加味して補正する基準です。基本評価基準の各項目を自環境向けに上書きできるほか、対象システムに求める機密性・完全性・可用性の重要度(Security Requirements)を設定できます。同じ脆弱性でも、基幹システムか検証環境かでリスクは異なるため、実務では環境評価まで加味した値が最も意味を持ちます。

CVSSスコアの計算方法|ベクトル文字列と計算ツール

CVSS スコアは、各メトリクスの選択肢を組み合わせて算出します。手計算する必要はなく、通常は各項目を選ぶと自動でスコアが出る「計算機」を使います。選んだ条件は、次のようなベクトル文字列で表現されます。

CVSS:3.1/AV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H

この例は「ネットワーク経由(AV:N)で、攻撃条件が容易(AC:L)、権限・利用者操作とも不要(PR:N/UI:N)、機密性・完全性・可用性すべてに高い影響(C:H/I:H/A:H)」を意味し、基本値は 9.8(Critical)になります。認証も操作も不要でリモートから完全に侵害できる、最も危険なパターンです。

公式および国内の計算機は次から利用できます。ベクトル文字列を貼り付ければ、スコアの再計算・検証も可能です。

CVSS v4.0の主な変更点(v3.1との違い)

2023年11月公開の CVSS v4.0 は、v3.1 に対して評価の粒度と実用性を高める見直しが行われました。主な変更点は次のとおりです。

  • 名称の細分化:どの評価基準まで含めた値かを、CVSS-B(基本のみ)/CVSS-BT(基本+脅威)/CVSS-BE(基本+環境)/CVSS-BTE(全部)と明示するようになりました。「基本値だけに頼らない」ことを促す設計です。
  • 攻撃要件(Attack Requirements:AT)の新設:攻撃成立に必要な前提条件を、攻撃条件の複雑さ(AC)と切り分けて評価できるようになりました。
  • 利用者の関与(UI)の細分化:None/Passive(受動)/Active(能動)の3段階になり、どの程度の操作が必要かをより正確に表せます。
  • スコープ(Scope)の廃止と影響評価の分離:v3.1 の Scope に代わり、影響を「脆弱性のあるシステム自体(VC/VI/VA)」と「その先の後続システム(SC/SI/SA)」に分けて評価する方式になりました。
  • 補足評価基準(Supplemental Metrics)の追加:安全性(Safety)・自動化可能性(Automatable)・復旧性(Recovery)などの情報を付与できます。スコアには影響しませんが、対応判断の材料になります。

CVSSとCVE・CWEの違い

脆弱性管理の文脈で CVSS・CVE・CWE はセットで登場しますが、役割はそれぞれ異なります。混同しやすいので、区別を整理します。

用語 役割
CVE 個々の脆弱性に付ける「識別番号」(例:CVE-2021-44228)
CWE 脆弱性の「種類・原因」を分類する体系(例:SQLインジェクション)
CVSS 脆弱性の「深刻度」を数値化するスコア(0.0〜10.0)

つまり「どの脆弱性か(CVE)」「どんな種類の弱点か(CWE)」「どれくらい深刻か(CVSS)」を、それぞれ別の物差しで表しているわけです。実務では、CVE 番号でひもづいた脆弱性に CVSS スコアが付与され、CWE でその根本原因を分類する、という形で連携します。詳しくは CVE(共通脆弱性識別子)とは?仕組み・CVSS/CWE/NVDとの違いCVEとCWEの違いとは?脆弱性管理の基礎 で解説しています。

CVSSスコアを脆弱性対応の優先順位付けに活用する方法

CVSS の本来の目的は、限られたリソースの中で「どの脆弱性から対処すべきか」を判断することです。ただし、CVSS スコア(特に基本値)だけで優先順位を決めると判断を誤ることがあるため、FIRST 自身も基本値のみに依存しないことを推奨しています。実務では次の観点を組み合わせます。

  • 環境評価まで加味する:公開スコア(基本値)をそのまま使わず、対象システムの重要度・公開範囲を反映した値で判断する。
  • 実際に悪用されているかを確認する:CISA の KEV(Known Exploited Vulnerabilities:悪用が確認された脆弱性カタログ)に載っている脆弱性は、スコアにかかわらず最優先で対処する。
  • EPSS を併用する:EPSS(Exploit Prediction Scoring System)は、今後30日以内に悪用される「確率」を予測する指標です。深刻度を表す CVSS と、悪用の起きやすさを表す EPSS を掛け合わせると、より現実的な優先順位付けができます。
  • 検出・管理を自動化するDependabotGitHub Code Scanning などのツールで脆弱性を継続的に検出し、CVSS スコアを起点に対応フローへ乗せる。

よくある質問(FAQ)

CVSSスコアはいくつから危険ですか?

一般に 7.0 以上(High)が速やかな対応を要する水準、9.0 以上(Critical)は最優先で即時対応すべき水準とされます。ただし技術的な深刻度であり、自組織での緊急度は公開範囲や悪用状況で補正して判断します。

CVSSの最新バージョンは何ですか?

2023年11月に公開された CVSS v4.0 が最新です。ただし NVD などでは v3.1 のスコアも併記されており、当面は両バージョンが併存します。

CVSSとCVEの違いは何ですか?

CVE は個々の脆弱性を識別する「番号」、CVSS はその脆弱性の「深刻度」を表すスコアです。CVE でひもづいた脆弱性に CVSS スコアが付与される、という関係になります。

CVSSスコアは誰が計算していますか?

製品ベンダーや NVD・JVN などの脆弱性情報データベースが、FIRST の定めた基準に沿って算出・公開します。ベクトル文字列を使えば、利用者側でも計算機で検証・再計算できます。

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