Vibe Kanbanは、Claude CodeやCodexなどのAIコーディングエージェントを、タスクごとに別のGitワークツリーで並列に動かし、差分をレビューしてマージするためのオープンソースツールです。2026年4月10日に開発元のBloopが事業を終了し、その2週間後に出たv0.1.44では、名前の由来であるカンバン画面がデータのエクスポート専用の画面に置き換わりました。2025年に書かれた解説記事の「カードを作ってエージェントに渡す」手順は、今の版ではそのまま再現できません。この記事は、2026年10月19日にnpx vibe-kanbanを手元で起動して確かめた結果と公式ドキュメント・ソースコードをもとに、今の版で何ができて何ができないかを整理します。
まとめ:Vibe Kanbanの現状と使い方の要点
- 今も起動する:
npx vibe-kanbanで入るのはv0.1.44(2026年4月24日公開)。2026年10月19日時点で本体バイナリの配布元は応答しており、Intel Macで約14秒で起動した。 - カンバンは使えない:課題(issue)・プロジェクト・組織はクラウド側の機能で、撤退後に提供を終えた。v0.1.44でプロジェクト画面はエクスポート専用になり、残っているのはワークスペース(worktree上でエージェントを走らせる作業場所)。
- 更新は止まっている:GitHubのmainには2026年9月にもコミットがあるが、npmの
latestは0.1.44のまま。 - 既定の権限設定に注意:9種類のエージェント全てが、確認なしでコマンドを実行する設定で起動する。Claude Codeは2.1.119、Codexは0.124.0という2026年4月時点の版に固定されている。
- 判断:既に慣れている個人が手元で使い続けるのは可。新規導入やチーム利用なら、更新が続くClaude Squad・herdr・Conductorなどを先に検討する。
Vibe Kanbanとは:AIエージェントをworktreeで並列実行するOSS
Vibe Kanbanは、開発会社Bloop(Bloop AI Limited)が2025年6月に公開したツールです。ライセンスはApache-2.0で、GitHubのBloopAI/vibe-kanbanは2026年10月19日時点でスター28,389・フォーク3,036を集めています。中身はRust製のローカルサーバーとWeb画面で、npmパッケージは起動用の薄いラッパーにすぎません。npx vibe-kanbanを実行すると、ラッパーがOSに合った本体バイナリをダウンロードして起動し、ブラウザでhttp://127.0.0.1:<ポート>を開きます。
解こうとしている問題は、複数のエージェントを同時に動かすと、ターミナル・ログ・ブランチ・差分の管理が人の手に負えなくなることです。Vibe Kanbanは作業単位を「ワークスペース」として切り出し、作業対象のリポジトリとブランチ・ターミナル・開発サーバーをまとめて管理します。ワークスペースを作るとリポジトリのGitワークツリーが自動で作られ、ブランチ名は既定でvk/1a2b-implement-authのようにvk/で始まります。同じリポジトリで別々の作業を同時に進めても、作業ディレクトリが分かれているのでファイルを奪い合いません。ワークツリー自体の仕組みはGit Worktree(ワークツリー)とは|使い方・削除(remove/prune)とsubmodule併用の注意点で解説しています。
開発元Bloopの撤退(2026年4月10日)で止まった機能
撤退告知の内容と30日後に消えた機能
Bloopのルイス・ナイト=ウェブCEOは、2026年4月10日の告知「Goodbye bloop」で会社の終了を発表しました。理由は、毎日数千人の開発者が使っていたものの利用者の大半が無料で、納得できる事業モデルを見つけられなかったためです。プロジェクト自体はオープンソース・コミュニティ運営で続けると明記しています。
同じ告知で、リモートサービスは30日間だけ続け、その後は完全にローカルの構成へ移ると説明しています。削除対象として挙げられたのはカンバンの課題(issue)・コメント・プロジェクト・組織の4つです。一方で「ローカルのワークスペースは引き続き動く」とも書かれています。直近30日に支払われた請求は返金され、サブスクリプションは解約されました。同じ日に出たv0.1.42には、データのエクスポート機能が入っています。
v0.1.44のカンバン画面終了とエクスポート専用化
カンバン(課題を並べたボード)は、2025年の公開当初はローカルのプロジェクトとして動いていましたが、2026年2月3日のVibe Kanban Cloud発表以降は、課題をクラウドに保存して同期する形へ移っていました。公式のGet Startedにも、サインインを飛ばすとワークスペースは作れるが、カンバンボード・課題・チーム機能は使えないと書かれています。2026年4月24日に出たv0.1.44では、PR #3387でプロジェクト画面がカンバンを表示しなくなり、「機能は終了した」という説明と「Export data」ボタンだけを出す画面に置き換えられました。既存のプロジェクトURLを開いても、行き着く先はこの画面です。
結果として、今のVibe Kanbanで使えるのは「ワークスペースを作り、エージェントに作業させ、差分を見てマージする」部分だけです。ツール名に反して、カード型のタスク管理は残っていません。
npmの更新は0.1.44で停止、mainにはコミュニティのコミット
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2026-04-10 | 撤退告知・v0.1.42(エクスポート機能) |
| 2026-04-17 | v0.1.43 |
| 2026-04-24 | v0.1.44(プロジェクト画面を終了) |
| 2026-09-15〜19 | mainに10件のコミット |
| 2026-09-19 | 0.1.45をnpmへ公開後、配布対象から外れる |
9月のコミットには、日本語入力で変換候補を確定するEnterが送信と誤認される不具合の修正(#3459)も含まれます。ただし、npmのvibe-kanbanは2026年10月19日時点でlatestが0.1.44です。0.1.45は公開履歴に記録が残っていますが、配布できる版の一覧にはありません。npm pack [email protected]は「No matching version」で失敗しました。mainの修正を使いたい場合は、READMEの手順でRust・Node.js・pnpmを用意してソースからビルドする必要があります。
インストールと起動:npx vibe-kanbanを2026年10月に実行した結果
必要なものは3つです。Node.jsは、npmパッケージのengines指定どおり20.19.0以上が要ります(20系でも古いと要件を満たしません)。対象はGit管理下のリポジトリで、ほかに認証を済ませたエージェントCLIを1つ以上用意します。Vibe Kanban自身はAIモデルもAPIキー入力欄も持たず、各エージェントのCLIを子プロセスとして起動するだけです。
npx vibe-kanban
# ポートを固定する場合(bash・zshの書き方。既定は自動割当)
PORT=3010 npx vibe-kanban
# 詳細ログを出す場合
RUST_LOG=debug npx vibe-kanban
2026年10月19日に、Intel Mac(macOS 26.6.2・Node.js 26.5.0)で、空のホームディレクトリを用意して起動した結果は次のとおりです。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 起動した版 | 0.1.44 |
| 本体の取得元 | npm-cdn.vibekanban.com |
| ダウンロード量 | 47.4MB |
| 起動まで(初回) | 約14秒 |
| 起動まで(2回目) | 約9秒 |
| ~/.vibe-kanban の容量 | 178MB |
| サインイン状態 | loggedout |
注意したいのは、本体バイナリの配布元がnpmではなく、Bloopのドメイン(npm-cdn.vibekanban.com)だという点です。npmに残っているのはダウンロード用のスクリプトだけなので、このCDNが止まるとnpx vibe-kanbanは新しい環境で起動できなくなります。業務で使い続けるなら、ダウンロード済みの~/.vibe-kanban/binを退避しておくか、ソースからビルドできるようにしておくと安全です。
設定と履歴は、macOSでは~/Library/Application Support/ai.bloop.vibe-kanban/に保存されます(Linuxは~/.local/share/vibe-kanban/)。config.jsonとdb.v2.sqliteがここに置かれます。設定のanalytics_enabledは既定でtrueなので、送信を止めたい場合は設定画面のTelemetryをオフにします。エージェントが「コードベースが空」と答える場合は、リポジトリのsparse-checkoutが原因になっていることがあり、公式のトラブルシューティングはgit sparse-checkout disableを案内しています。
ワークスペースでエージェントに作業させてマージするまでの手順
今の版での作業の流れは、公式ドキュメントのワークスペースの章に沿うと次のとおりです。初回起動時は、既定のエージェント・エディタ(VS Codeなど)・通知の設定を求められます。
- ワークスペースを作る:作業対象のリポジトリと、ワークツリーの元にするブランチを選ぶ。複数のリポジトリをまとめて1つのワークスペースに入れることもできる。
- エージェントと設定を選ぶ:エージェント(Claude Code・Codexなど)、モデル、推論の強さ、プランモードの有無を指定し、依頼文を書く。作成と同時にエージェントが走り出す。
- 差分をレビューする:Changesパネルで変更行を確認し、行ごとにコメントを付けて、そのままエージェントへ指摘として返せる。Webアプリなら内蔵ブラウザでプレビューし、開発者ツールで画面を確かめられる。
- マージする:GitHubのプルリクエストを作る(説明文はAIで自動生成できる)か、ワークスペースのブランチをローカルでマージする。
- 片付ける:後で戻る可能性があればArchive、不要ならDeleteを選ぶ。
削除の影響はワークスペース管理のドキュメントに表で示されています。Deleteで消えるのはワークツリーと会話履歴で、ブランチとコミットは元のリポジトリに残ります。裏を返すと、コミットしていない変更はワークツリーと一緒に消えます。エージェントの作業をコミットしないまま削除しないことが、データを失わないための最低条件です。
| 操作 | ワークツリー | 会話履歴 | ブランチ・コミット |
|---|---|---|---|
| Archive | 残る | 残る | 残る |
| Delete | 削除 | 削除 | 残る |
エージェントから操作したい場合は、npx vibe-kanban mcpでMCPサーバーを起動できます。ワークスペースの作成と開始(start_workspace)や一覧(list_workspaces)はローカルで完結する機能です。一方、create_issueやlist_projectsなど課題・組織を扱うツールはクラウドの課題を前提にしているため、撤退後は当てにできません。
対応エージェントと既定の権限設定
対応する9種類のエージェントと既定の権限設定
起動したサーバーの/api/infoが返す既定の設定を見ると、対応する9種類のエージェント全てで、操作のたびに確認を求める仕組みが外されています。公式ドキュメントが「Claude Code Router」として数える10番目は、Claude Codeのclaude_code_routerオプションです。
| エージェント | 起動される版 | 既定の設定 |
|---|---|---|
| Claude Code | 2.1.119(固定) | dangerously_skip_permissions |
| Codex | 0.124.0(固定) | sandbox: danger-full-access |
| Gemini CLI | 0.29.3(固定) | yolo |
| GitHub Copilot CLI | 0.0.403(固定) | allow_all_tools |
| OpenCode | 1.4.7(固定) | auto_approve |
| Qwen Code | 0.9.1(固定) | yolo |
| Amp | latest | dangerously_allow_all |
| Cursor Agent CLI | インストール済みの版 | force |
| Droid | インストール済みの版 | skip-permissions-unsafe |
問題は2つあります。1つは、ワークツリーに隔離していても、エージェントはシェルコマンドをホスト上でそのまま実行できることです。ワークツリーが分けるのは作業ディレクトリだけで、ホームディレクトリの認証情報やネットワークには手が届きます。もう1つは版の固定です。Vibe KanbanはClaude Codeをnpx -y @anthropic-ai/[email protected]で起動するため、手元に新しいClaude Codeを入れていても使われません。2026年10月19日時点のnpm上の最新版は、Claude Codeが2.1.303、Codexが0.163.0です。並列実行そのものをClaude Codeだけで組む方法はClaude Codeのgit worktreeで並列エージェント開発を行う方法にまとめています。
profiles.jsonによる承認設定と起動CLIの変更
エージェントの設定は、画面の設定ダイアログにあるAgentsで変えるか、データ保存先にprofiles.jsonを置いて上書きします。ドキュメントの項目一覧には載っていませんが、ソースのCmdOverridesにはbase_command_override(起動コマンドの差し替え)があり、各エージェントの設定と同じ階層に書けます。次の内容で起動し直したところ、ログに「Loaded user profile overrides from profiles.json」と出て、/api/infoの値も書いたとおりに変わりました。確かめたのは設定の読み込みまでで、差し替えたCLIでエージェントを実際に走らせた動作は検証していません。
{
"executors": {
"CLAUDE_CODE": {
"DEFAULT": {
"CLAUDE_CODE": {
"dangerously_skip_permissions": false,
"approvals": true,
"base_command_override": "npx -y @anthropic-ai/[email protected]"
}
}
}
}
}
approvals: trueにすると、Claude CodeのPreToolUseフック経由で承認を求める設定になります。ただし、v0.1.44の実装ではGlob・Grep・NotebookRead・Read・Task・TodoWriteはこの承認フックの対象外です。Codexならsandboxをworkspace-writeにする、Gemini CLIならyoloを外す、という具合に、使うエージェントごとに既定を戻してから業務のリポジトリをつなぐべきです。書かなかったエージェントは既定のままなので、使うものは全て明示します。Agent Profiles & Configurationには、プロファイルごとに環境変数を注入して別のAPIエンドポイントへ向ける方法も載っています。
Claude Squad・herdr・Conductorとの比較
撤退後に乗り換え先を探すなら、同じく「worktreeで隔離して複数のエージェントを並列に動かす」ツールが候補になります。2026年10月19日時点の状況は次のとおりです。
| ツール | 形態 | ライセンス・料金 | 最新の更新 |
|---|---|---|---|
| Vibe Kanban | Web画面(ローカル) | Apache-2.0・無料 | npm 0.1.44(2026-04-24) |
| Claude Squad | TUI | AGPL-3.0・無料 | v1.0.20(2026-08-20) |
| herdr | TUI | Apache-2.0・無料 | v0.9.5(2026-10-14) |
| Conductor | macOSアプリ | Free $0 / Pro $50 / Teams $60(月・1人) | デスクトップはmacOSのみ(iOSアプリあり) |
| Crystal | デスクトップアプリ | MIT・無料 | 2026年2月に非推奨 |
Claude Squadはターミナル上の画面でセッションを切り替える方式で、公式サイトはClaude Code・Codex・Aiderを挙げ、READMEにはcs -p "gemini"の起動例もあります。herdrはペインごとにエージェントの状態(作業中・完了・入力待ち)を出すターミナル多重化ツールで、Windowsにも正式対応しています。GUIで差分レビューまで済ませたいという、Vibe Kanbanに近い使い勝手を求めるならConductorが最も近いものの、Windows・Linux版は出ていません。Crystalは2026年2月にNimbalystへ移行し、Crystal自体は今後更新しないとリリースノートに書かれています。
選び方ははっきりしています。画面でのレビューを重視するMacユーザーはConductor、ターミナルで完結させたい人はClaude Squadかherdr、ツールを増やしたくなければClaude Code単体のworktree運用です。Vibe Kanbanをわざわざ新規に入れる理由は、無料のWeb画面でプレビュー付きの差分レビューをしたい場合くらいしか残っていません。
Vibe Kanbanを使うべき人・避けるべき場面
使い続けてよいのは、既にVibe Kanbanのワークスペースに慣れていて、手元の1台で個人の開発に使う人です。v0.1.44はワークスペース・差分レビュー・プレビュー・PR作成という中核の機能を残しており、ローカルで完結する範囲では今も動きます。その場合も、上で示したとおり権限の既定を戻し、エージェントの版を差し替えることが前提です。
避けるべきなのは次の場面です。
- チームで課題を共有したい:課題・プロジェクト・組織の機能はクラウドとともに終了した。自前でCloudを立てるDocker Composeの手順は公開されているが、Linuxサーバー(メモリ2GB以上)・独自ドメイン・TLS・OAuthまたは管理者1人分の認証情報が要り、自前で立てた環境の運用・保守は導入者が担う。
- 会社のPCで既定のまま動かす:確認なしで動くエージェントが、ホスト上の認証情報に触れられる状態になる。
- エージェントの新機能を使いたい:固定版は2026年4月時点のもので、差し替えない限り新しいモデルやオプションは使えない。差し替えた新しいCLIの出力形式に、0.1.44側の解析が追従している保証もない。
よくある質問
Vibe Kanbanは無料で使えますか?
本体はApache-2.0のオープンソースで無料です。費用がかかるのは、呼び出すClaude CodeやCodexなどのエージェント側の利用料です。かつての有料クラウドは2026年4月の撤退で終了し、直近30日分の請求は返金されました。
Vibe Kanbanはサービス終了しましたか?今も使えますか?
終了したのは開発会社Bloopとクラウドの機能で、ソフトウェア自体はオープンソースとして公開が続いています。2026年10月19日時点でnpx vibe-kanbanはv0.1.44を取得して起動しましたが、npmの版は2026年4月から更新されていません。
カンバン(プロジェクト)の画面が表示されないのはなぜですか?
v0.1.44でプロジェクト画面が終了し、データのエクスポートだけを行う画面に置き換えられたためです。課題を管理するカンバンはクラウド側の機能で、撤退後は使えません。今の版ではワークスペースの一覧から作業を始めます。
Claude CodeやCodexとはどう連携しますか?
Vibe Kanbanは各エージェントのCLIを子プロセスとして起動します。事前にCLI側でログインかAPIキーの設定を済ませておけば、ワークスペースを作るときにエージェントとモデルを選べます。既定ではClaude Code 2.1.119・Codex 0.124.0がnpxで起動され、確認なしで動く設定になっている点に注意してください。
Vibe KanbanのMCPサーバーでは何ができますか?
npx vibe-kanban mcpで起動し、エージェントからワークスペースの作成・開始、一覧、リポジトリのセットアップスクリプト更新などを呼び出せます。課題・プロジェクト・組織を扱うツールも一覧に残っていますが、クラウドの課題を前提とした機能なので、撤退後の環境では使えないものとして扱ってください。