改正電子帳簿保存法とは?2024年完全義務化の変更点と企業のシステム対応を解説【2026年版】
改正電子帳簿保存法とは、令和3年度税制改正で成立し2022年1月1日に施行された、電子データによる帳簿・書類の保存ルールを定めた法律です。最大の変更点は、メールやクラウドで受け取った請求書などの電子取引データを、2024年1月1日から紙に印刷して保存する運用が認められなくなったことにあります。この記事では、改正で何がどう変わったのか、2024年からの完全義務化と相当の理由による猶予措置、スキャナ保存や検索要件の緩和までを整理し、法人が今とるべき会計・基幹システムの対応判断まで踏み込んで解説します。
目次
まとめ:改正電子帳簿保存法で企業が押さえる3つの結論
結論は3点に集約されます。第一に、電子取引データの電子保存は2024年1月1日から義務であり、紙保存だけの運用は法令違反にあたります。宥恕期間はすでに過去のものです。
第二に、システム整備が間に合わない企業には「相当の理由」による猶予措置が残っており、期限の定めはありません。ただし、データのダウンロードの求めと書面提示に応じられることが条件で、何もしなくてよいわけではありません。
第三に、スキャナ保存や検索要件は改正で緩和されており、対応のハードルは下がっています。基準期間の売上高5,000万円以下なら検索機能の確保は不要です。自社の取引書類の流れを棚卸しし、会計・基幹システムが保存要件を満たすかどうかを起点に対応方針を決めるのが実務の近道になります。
改正電子帳簿保存法の全体像と2022年施行・2024年義務化の時系列
改正電帳法を正しく捉えるには、いつの改正を指すのかと、3つの保存区分のどれが義務なのかを分けて考える必要があります。ここで土台を固めておきます。
令和3年度改正で2022年1月施行、義務化は2024年1月という時系列
現在「改正電子帳簿保存法」と呼ばれるものの本体は、令和3年度税制改正で成立し2022年1月1日に施行された内容です。このとき電子取引データの電子保存が義務化されましたが、企業の準備が追いつかない実態を受け、2022年1月から2023年12月31日までの2年間は宥恕期間として紙保存も容認されました。この宥恕が終わり、2024年1月1日から電子取引データ保存が完全義務化された、という流れになります。改正の条文そのものは2022年、実務上の締め切りは2024年、と時点を分けて理解するのが混乱を避けるコツです。
電子帳簿等・スキャナ・電子取引の3区分と義務/任意の切り分け
電子帳簿保存法の保存ルールは3つの区分に分かれます。任意で選べる制度と、全事業者に課される義務とが混在しているため、区別しないまま「電帳法対応」と一括りにすると過剰投資を招きます。
| 区分 | 対象 | 義務/任意 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で作成した帳簿・決算書類の電子保存 | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書をスキャンして保存 | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メール・クラウド等で授受した電子データの保存 | 義務(2024年1月〜) |
義務にあたるのは電子取引データ保存の区分だけです。3区分それぞれの要件と対象書類の全体像は、親記事の電子帳簿保存法とは?3区分の要件・対象書類と自社システム対応で詳しく整理しています。本記事は、このうち改正で変わった点と義務化への対応に絞って掘り下げます。
2024年完全義務化で変わった電子取引データの紙保存廃止の中身
改正の核心は電子取引データの取り扱いです。紙に出力して原本とみなす従来の実務が使えなくなった点が、企業の経理フローに直接効いてきます。
電子取引データの紙のみ保存の廃止と対象となる書類の具体的な範囲
電子取引とは、注文書・契約書・請求書・領収書などの取引情報を電子データでやり取りする行為を指します。具体的には、メール添付のPDF請求書、ECサイトや経費精算システムからダウンロードする領収書、クラウド上で受領する契約書などが該当します。2024年1月以降、これらデータで受け取った書類は、印刷した紙だけを保存する運用が認められません。受け取った電子データそのものを、真実性と可視性の要件に沿って保存する必要があります。紙で郵送された請求書は従来どおり紙保存でも構わず、あくまで電子で授受したものが対象です。この線引きを取り違えると、対応範囲を過大にも過小にも見積もってしまいます。義務化された電子取引データ保存の要件と具体的な対応手順は、電子取引データ保存とは?2024年完全義務化の保存要件と対応方法で実務目線に絞って解説しています。
相当の理由による猶予措置で認められる2つの要件と期限の考え方
令和4年度税制改正で、宥恕期間の後継として恒久的な猶予措置が2024年1月1日に設けられました。システムやワークフローの整備が間に合わない、資金繰りや人手不足で対応できないといった「相当の理由」がある場合、次の2要件を満たせば、電子データを要件どおりに整えられなくても保存が認められます。
- 相当の理由があると所轄の税務署長に認められること
- 税務調査時に、電子データのダウンロードの求めに応じられ、かつ整然・明瞭な状態で書面の提示または提出に応じられること
この猶予措置には、宥恕期間と違って終了期限が定められていません。2026年7月時点でも有効です。ただし「相当の理由」は事前申請ではなく税務調査で個別に判断されるため、恒久的な逃げ道と捉えるのは危険です。電子データ自体は捨てずに保存し、少なくともダウンロードと書面提示に応じられる体制を整えておくのが安全な線引きになります。真実性を担保する事務処理規程の作り方は、事務処理規程とは?電子帳簿保存法の真実性要件を満たす作成方法にまとめています。
スキャナ保存・検索要件・優良帳簿で緩和された企業の対応ハードル
義務化ばかりが注目されますが、改正では任意区分の要件が大きく緩和されました。対応コストを下げる方向の変更なので、システム選定の前に把握しておく価値があります。
スキャナ保存で廃止・緩和された要件と証憑電子化の実務メリット
紙の請求書や領収書をスキャンして保存するスキャナ保存は、改正前の厳格な要件が刷新されました。タイムスタンプの付与期限が最長約2か月+7営業日に延び、訂正・削除の履歴が残るクラウドなら要件自体を満たせるようになりました。あわせて、複数人での相互けん制などを求めた適正事務処理要件が廃止され、解像度・階調・大きさに関する情報の保存も不要となっています。入力者等の情報を確認する要件もなくなり、帳簿との相互関連性の確保は契約書・領収書などの重要書類に限定されました。運用負荷が下がったことで、紙で届く証憑をスキャンして電子で一元管理する体制が現実的な選択肢になっています。
検索要件の3項目と基準期間の売上高5,000万円以下の検索不要の特例
電子データの保存では、検索できる状態にしておく可視性要件が課されます。検索の条件は取引年月日・取引金額・取引先の3項目に絞られ、改正前より簡素になりました。さらに、基準期間(原則2期前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じることを条件に、検索機能そのものの確保が不要です。この基準額は改正前の1,000万円以下から2024年1月施行で引き上げられており、中小企業ほど恩恵が大きい変更です。売上規模によって求められる水準が変わるため、自社がどちらに該当するかを先に確認しておくと、システムに求める機能を絞り込めます。
優良な電子帳簿の届出による過少申告加算税5%軽減という見返り
任意区分の電子帳簿等保存には、一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」という上乗せの制度があります。訂正・削除履歴の保存、帳簿間の相互関連性、検索機能の確保といった要件を満たして届出をすると、過少申告があった場合の加算税は原則10%から5%軽減されるしくみです。これ自体は義務ではありません。それでも会計システムを刷新するタイミングなら、要件を満たしておく判断も選択肢に入ります。ペナルティの軽減という具体的な見返りがあるため、システム更改の投資対効果を測る材料になるはずです。
改正電帳法で企業が今とるべき会計・基幹システム対応の判断基準
ここからは制度解説にとどまらず、法人が実際に何をどこまで整えるべきかを言い切ります。全社一律の大規模改修が正解とは限りません。
すぐ対応すべき企業と、当面は現行の運用で足りる場面の切り分け
優先度は取引の電子化率で決まります。メールやクラウドで請求書・領収書を日常的に授受している企業は、紙保存だけでは即座に法令違反となるため、電子データの保存体制を先に整える対象です。一方、取引書類がほぼ紙の郵送で、電子での授受がごく少数にとどまる企業は、まず該当データを漏れなく保存する運用ルールを決めるだけで足り、システム投資を急ぐ必要はありません。ここで「全社でシステムを入れ替える」判断に飛ぶのは過剰投資です。まず電子取引の件数と種類を棚卸しし、月数件なら手作業+事務処理規程で回し、月数百件を超えて手作業が破綻する規模になって初めてシステム化を検討する、という段階設計が現実的です。
既存の会計・基幹システムを改修するか、専用サービスを足すかの判断
対応方法は、既存の会計・基幹システムを改修して電帳法要件に対応させる道と、電子取引データ保存に特化したサービスを追加する道に分かれます。判断の分岐点は、証憑と会計仕訳をひとつの基幹システムで一元管理したいかどうかです。販売管理・在庫管理・会計を含む基幹業務が複数システムに分散し、証憑と仕訳の突合に手間がかかっている企業では、電帳法対応を機に基幹システム側で保存要件を満たす改修が、長期の運用コストを下げます。逆に、既存の会計ソフトが標準で電帳法対応をうたっているなら、無理な自社開発より設定と運用ルールの整備を優先すべきです。自社の基幹業務に合わせて保存要件と証憑管理を組み込みたい場合は、基幹システム開発で会計・販売・在庫を含む業務要件からの設計を相談できます。要件が固まらないうちにパッケージを選ぶより、取引フローの棚卸しを先に済ませるほうが失敗を避けられます。
よくある質問
改正電子帳簿保存法について、実務でよく寄せられる質問に回答します。
改正電子帳簿保存法はいつから義務化されたのですか?
電子取引データの電子保存は2024年1月1日から完全義務化されました。改正の条文自体は令和3年度税制改正で2022年1月1日に施行済みですが、2023年12月31日までは宥恕期間として紙保存も認められていました。この宥恕が終わったのが2024年1月で、以降は電子で受け取った書類を紙保存だけで済ませることはできません。
紙で受け取った請求書も電子データで保存する必要がありますか?
いいえ、紙で郵送された請求書は従来どおり紙のまま保存して問題ありません。義務化の対象は、メールやクラウドなど電子でやり取りした取引データに限られます。ただし、紙の証憑をスキャナ保存で電子化して一元管理する選択肢もあり、こちらは任意で採用できます。
対応が間に合わない場合の猶予措置とは何ですか?
システム整備や資金・人手の面で「相当の理由」がある場合に認められる猶予措置です。所轄税務署長に相当の理由が認められ、かつ税務調査時にデータのダウンロードの求めと書面の提示・提出に応じられることが条件です。期限の定めはありませんが、電子データ自体は保存しておく必要があり、何もしなくてよいわけではありません。
検索機能がないと違反になりますか?
基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じることを条件に、検索機能の確保が不要です。それを超える規模の事業者は、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態を整える必要があります。まず自社の売上規模がどちらに該当するかを確認するのが先決です。
会計システムを新しく入れないと対応できませんか?
必ずしも新規導入は必要ありません。電子取引が月数件程度なら、規則的なファイル名付けと事務処理規程の整備で対応できます。手作業での管理が破綻する取引量になった段階で、既存の会計・基幹システムの改修や専用サービスの追加を検討するのが費用対効果の高い進め方です。
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