派遣社員とは、派遣会社(派遣元)と雇用契約を結んだうえで、別の会社(派遣先)に出向いて働く働き方です。給与の支払いや社会保険の手続きは派遣会社が行い、日々の仕事の指示は派遣先から受けます。この「雇用主と指揮命令者が分かれる」構造が、正社員や契約社員との最大の違いです。厚生労働省が2026年3月31日に公表した令和6年度の集計(速報)によると、派遣労働者数は約220万人。内訳は無期雇用が908,956人、有期雇用が1,290,683人でした。この記事では、仕組みと他の雇用形態との違い、給与とマージン率の実態、3年ルールを迎えたあとの選択肢、そして2026年10月1日に施行される待遇説明の制度変更までを、公的統計と条文に沿って整理します。
まとめ:派遣社員と他の働き方の比較早見表
先に全体像を押さえます。雇用形態は「誰と契約するか」「期間の定めがあるか」で性格が大きく変わります。
| 項目 | 正社員 | 契約社員 | パート・アルバイト | 登録型派遣 | 無期雇用派遣 |
|---|---|---|---|---|---|
| 雇用主 | 勤務先 | 勤務先 | 勤務先 | 派遣会社 | 派遣会社 |
| 指揮命令 | 勤務先 | 勤務先 | 勤務先 | 派遣先 | 派遣先 |
| 雇用期間 | 無期 | 有期 | 有期が多い | 有期(派遣期間のみ) | 無期 |
| 3年ルール(個人単位) | 対象外 | 対象外 | 対象外 | 対象 | 対象外 |
| 賞与・退職金 | 原則あり | 会社による | 会社による | 原則なし | 会社による |
| 1契約の期間の目安 | 無期 | 有期(更新制) | 有期(更新制) | 3か月以下が85.7% | 無期 |
表の評価は一般的な傾向です。派遣の賞与・退職金は原則ありませんが、後述の労使協定方式では賞与相当分が時給に上乗せされる場合があり、実際の待遇は派遣会社が選んだ待遇決定方式で変わります。「派遣は不安定」と一括りにはできず、無期雇用派遣のように安定性を高めた形もあります。押さえるべき要点は次の4つです。
- 契約相手は派遣会社、指示を出すのは派遣先。給与・社会保険・有給はすべて派遣会社が担う
- 同じ派遣先の同じ部署で働けるのは原則3年まで(労働者派遣法第35条の3)。無期雇用派遣は対象外
- 派遣料金と賃金の差(マージン)は派遣会社ごとに公開が義務。就業前に確認できる
- 2026年10月1日から、待遇差の説明を求められる旨の明示が派遣会社の義務に加わる
派遣社員の仕組み:派遣会社・派遣先・労働者の三者関係
派遣は、労働者・派遣会社・派遣先の三者で成り立ちます。労働者は派遣会社と雇用契約を結び、派遣会社は派遣先と労働者派遣契約を結ぶ形です。給与の支払い、社会保険・雇用保険の加入手続き、有給休暇の付与といった雇用主としての責任は派遣会社が負い、派遣先は業務内容・勤務場所・就業時間を提供して指揮命令を行います。アルバイトやパートが働く会社と直接契約するのに対し、派遣は契約相手と指示を出す相手が異なる点が構造上の特徴です。制度の全体像は労働者派遣法とは?派遣元・派遣先の義務と2026年10月改正をシステム要件に翻訳で条文単位に整理しています。
登録型派遣と無期雇用派遣(常用型)の違い
派遣には大きく2種類あります。登録型派遣は、派遣会社に登録し、仕事が決まった期間だけ雇用契約を結ぶ形で、派遣期間が終われば雇用契約も終了します。一般に「派遣」と呼ばれるのはこちらで、令和6年度の有期雇用派遣労働者は1,290,683人でした。無期雇用派遣(常用型派遣)は、派遣会社と期間の定めなく雇用契約を結び、派遣先が決まっていない待機期間も給与が支払われる形態。同年度は908,956人で、全体の4割を超えています。無期雇用派遣は後述する3年ルール(個人単位)の対象外で、同じ派遣先に3年を超えて就業できる点が登録型との決定的な違いです。
派遣で働けない業務と日雇い派遣の制限
派遣はどんな仕事にも使えるわけではありません。労働者派遣法第4条第1項は、港湾運送業務・建設業務・警備業務、および政令で定める業務(病院等における医療関係業務の一部)について労働者派遣事業を禁じています。求人サイトで建設現場の作業員や警備員の「派遣」を名乗る募集を見かけたら、それは請負や直接雇用の募集か、違法な派遣かのどちらかです。
また同法第35条の4は、日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣(日雇い派遣)を原則として禁じています。例外は、政令で定める専門的な業務のほか、60歳以上の人、昼間学生(施行令第4条第2項第2号により、定時制の課程に在学する者などは除かれ、日雇い派遣で働けます)、本業の年収が500万円以上ある人の副業、世帯収入500万円以上で主たる生計者でない人といった限定的な場合だけです。単発の仕事を探しているなら、この例外に該当するかを先に確認してください。
派遣社員と正社員・契約社員・パート・アルバイトの違い
正社員は勤務先と無期で雇用契約を結ぶ正規雇用で、昇給・賞与・退職金や福利厚生が手厚い反面、転勤や責任の重さを伴います。契約社員は勤務先と有期で契約する点が正社員と異なり、契約更新の可否が不安要素になります。パート・アルバイトも勤務先と直接契約しますが、短時間・短日数の勤務が中心です。
派遣社員がこれらと決定的に違うのは、契約相手が派遣会社である点です。派遣先の職場で不満があっても、賃金や契約条件の交渉相手は派遣先ではなく派遣会社になります。なお契約社員として同一の使用者と通算5年を超えて有期契約を更新した場合は、労働契約法第18条にもとづき無期労働契約への転換を申し込めます。詳しくは無期転換ルールとは?法律改正で導入された制度の目的、適用要件、導入背景などを詳しく解説を参照してください。通算5年で無期転換を申し込める労働契約法第18条と、3年で組織単位を移らねばならない労働者派遣法第35条の3は、根拠法も効果も別の制度です。混同すると3年目の判断を誤ります。
派遣社員の給与とマージン率:時給が決まる仕組み
派遣の給与は、派遣先が派遣会社に支払う「派遣料金」から、派遣会社の取り分を差し引いた額が原資になります。厚生労働省の令和6年度集計(速報)では、8時間換算の全業務平均で派遣料金が26,257円、派遣労働者の賃金が16,735円でした。差額は9,522円で、派遣料金に占める割合は約36%です。ただし派遣料金は消費税込みの額のため、税抜きに引き直すと差は約30%になります。
| 職種(令和6年度・8時間換算) | 派遣料金 | 派遣労働者の賃金 | 賃金の時給換算 |
|---|---|---|---|
| 全業務平均 | 26,257円 | 16,735円 | 約2,092円 |
| 情報処理・通信技術者 | 34,382円 | 21,032円 | 約2,629円 |
| 一般事務従事者 | 18,112円 | 12,231円 | 約1,529円 |
| 介護サービス職業従事者 | 16,282円 | 11,093円 | 約1,387円 |
時給換算は8時間換算額を8で割った参考値です。この数字は職種区分ごとの単純平均であり、派遣会社が労働者派遣法第23条第5項にもとづき事業所ごとに算定・公表するマージン率そのものではありません。
マージン率の内訳と就業前の確認先
差額部分がマージンです。内訳は派遣会社の利益だけではなく、社会保険料の事業主負担分、有給休暇の原資、教育訓練費、募集や労務管理の費用を含みます。したがって率が低いほど良いとは限らず、教育訓練やキャリアコンサルティングに投資している会社ほど率は高く出ます。
重要なのは、この数字を求職者が事前に見られることです。労働者派遣法第23条第5項にもとづき、派遣元事業主は派遣労働者数・派遣先件数・派遣料金の平均額・賃金の平均額・マージン率・労使協定の締結状況・キャリア形成支援制度などの情報提供を義務づけられており、2021年4月1日からは原則としてインターネットで常時提供することとされています。令和6年度に報告した事業所のうち、インターネットで情報提供していたのは77.5%。登録前に派遣会社のサイトでマージン率のページを探し、見つからない会社は情報提供義務の履行状況を疑って構いません。
社会保険・雇用保険・有給休暇・通勤手当の扱い
加入手続きを行うのは派遣先ではなく派遣会社です。健康保険・厚生年金は、1週の所定労働時間と1か月の所定労働日数がいずれも通常の労働者の4分の3以上であれば加入します。それ未満でも、週20時間以上・所定内賃金が月額8.8万円以上・2か月を超える雇用見込み・学生でない・勤め先の被保険者数51人以上という条件を満たせば対象です。令和7年度の地域別最低賃金が全都道府県で時給1,016円を超えたため、週20時間働けば月額賃金は自動的に8.8万円以上になります。従業員51人以上の派遣会社に雇用されるなら、週20時間以上で社会保険に入る前提で手取りを計算してください。
賃金要件(いわゆる年収106万円の壁)は、令和7年年金制度改正法にもとづき2026年10月に撤廃される予定です。企業規模要件も段階的に縮小し、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上となり、2035年10月に撤廃されます。51人未満の派遣会社に雇用されている場合は、自分の勤め先がどの段階で対象になるかを確認しておくと計画が立てやすくなります。
雇用保険は、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで加入します(2028年10月からは週10時間以上に拡大)。有給休暇は労働基準法にもとづき派遣会社から付与されるため、派遣会社との雇用契約が続いている限り、派遣先が変わっても勤続年数は途切れません(登録型派遣で契約が終了し、次の就業まで間が空く場合は継続勤務と扱われないことがあります)。通勤手当は、労使協定方式では実費を別途支給する方法と、一般通勤手当に相当する額を時給に含める方法があり、後者では求人票の時給が高く見えます。時給に交通費が含まれているかは、雇用契約前に必ず確認してください。
派遣のメリット・デメリット:自由度と不安定さのトレードオフ
自由度の高さと雇用の不安定さは同じ構造から生じており、どちらを重く見るかで評価が変わります。
派遣で働くメリット:時間の裁量と教育訓練の法的裏づけ
勤務地・期間・職種を希望から選びやすく、残業の少ない求人も探せるため、育児や介護、学習との両立がしやすい点が第一のメリットです。未経験の職種に挑戦して複数の企業で経験を積める点、派遣会社の教育訓練で実務力を磨ける点も利点。この教育訓練は労働者派遣法第30条の2で派遣会社の義務とされ、同条第2項では労働者が求めた場合のキャリアコンサルティングなどの援助も義務づけられています。令和6年度にキャリアコンサルティングを希望した465,798人のうち、実際に受けたのは454,449人(97.6%)でした。給与交渉や就業条件の確認、職場トラブルの相談を派遣会社が引き受けるため、一人で就職活動するより負担は軽くなります。
デメリットと「デメリットしかない」と言われる理由
登録型派遣は雇用が有期で、契約満了時に更新されない可能性があります。賞与・退職金が原則支給されず、同職種の正社員より生涯賃金が低くなりやすいのも事実。責任の重い業務や管理職を任される機会は限られ、派遣先が変わるたびに人間関係を作り直す負担もあります。
「デメリットしかない」という表現が広まる背景には、契約期間の短さがあります。令和6年度の労働者派遣契約(派遣会社と派遣先が結ぶ契約)の期間は、3か月以下が85.7%、1年を超えるものは0.8%でした。登録型派遣では通常、この契約期間がそのまま雇用契約の期間になるため、3か月ごとに就業が続くかどうかを確認することになります。半年先の予定が立てにくい構造は、他の雇用形態には無い負担です。ただし、これは登録型派遣を前提にした話。無期雇用派遣を選ぶ、後述の雇用安定措置を使う、紹介予定派遣から直接雇用を狙うといった選択肢を取れば、同じ「派遣」でも安定性は大きく変わります。
無期雇用派遣で先に確認すべき制約
無期雇用派遣は雇用が途切れない代わりに、派遣先・勤務地・職種を自分で選ぶ自由度が登録型より下がります。待機期間の給与は、休業手当(労働基準法第26条の平均賃金6割以上)にとどまる場合と満額支給の場合があり、派遣会社の就業規則で扱いが分かれるため、雇用契約前に支給率を書面で確認してください。就業先の紹介を繰り返し断れば、退職勧奨や解雇の理由にされる余地もあります。賞与・退職金の有無も派遣会社の制度次第で、無期であることが正社員並みの待遇を意味するわけではありません。選考も登録型より厳しく、書類選考と面接を経る派遣会社が一般的です。
契約期間の実態と3年ルール(抵触日)
期間制限の仕組みを先に理解しておくと、3年目に突然選択を迫られる展開を避けられます。
3年ルールと抵触日(事業所単位・個人単位)
期間制限は2種類あります。事業所単位の制限は、同じ派遣先の事業所が派遣を受け入れられる期間を原則3年とするもので(労働者派遣法第40条の2)、派遣先が過半数労働組合等から意見を聴けば3年を限度に延長できます。個人単位の制限は、同じ人を同じ課などの組織単位に置ける期間を3年までとするもので(同法第35条の3)、こちらに延長の規定はありません。制限に抵触する最初の日が抵触日です。
無期雇用派遣労働者、60歳以上の人、産前産後休業・育児休業・介護休業の代替として就業する場合、事業の開始や終了に伴う有期プロジェクト業務、日数限定業務は、この期間制限の対象外です。通知や意見聴取の実務は派遣の抵触日とは?事業所単位と個人単位の期間制限・意見聴取と通知の実務で詳しく扱っています。
3年経ったらどうなる:雇用安定措置の実績
同じ組織単位に3年間就業する見込みになると、派遣会社は労働者派遣法第30条の雇用安定措置を「講じなければならない」義務を負います(1年以上3年未満の見込みでは努力義務)。措置は4つ。派遣先への直接雇用の依頼、新たな就業機会の提供、派遣元で派遣労働者以外の労働者として無期雇用すること、教育訓練など雇用の安定に資する措置です。
実績を見ると、この制度への期待値は現実的に見積もる必要があります。令和6年度に3年見込みで対象となった92,809人のうち、派遣先への直接雇用の依頼(第1号措置)が行われたのは21,495人で、実際に派遣先で雇用されたのは9,174人。依頼が行われても直接雇用に至るのは4割強にとどまり、対象者全体では約1割です。最も多いのは新たな就業機会の提供(第2号措置)で48,451人でした。3年ルールは正社員への入口ではなく、多くの場合は別の派遣先へ移る仕組みとして機能しています。抵触日の半年前には、どの措置を希望するかを派遣会社の担当者へ明確に伝えてください。
同一労働同一賃金と2026年10月からの制度変更
2020年4月1日から、派遣労働者の待遇は企業規模を問わず同一労働同一賃金の対象です。派遣会社は、派遣先の通常の労働者と均等・均衡を図る「派遣先均等・均衡方式」か、過半数代表と労使協定を結び一般の賃金水準以上を確保する「労使協定方式」のいずれかを選びます。労使協定方式では、賞与相当分を含めた水準が時給に織り込まれるため、額面時給が同職種の相場より高く見えることがあります。
ここからが最新の変更点です。2026年4月28日に公布・告示された労働者派遣法施行規則の改正(令和8年厚生労働省令第87号)、派遣元指針の改正(同年厚生労働省告示第200号)、同一労働同一賃金ガイドラインの改正(同第203号)により、2026年10月1日から次の3点が施行・適用されます。
- 雇入れ時と派遣時の明示事項に、「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」が追加されます(労働者派遣法施行規則第25条の16第5号)。求職者側から質問しなくても、説明を求める権利があること自体が書面等で示されます。
- 同一労働同一賃金ガイドラインが明確化され、賞与・退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞について、不合理と判断されうる具体例が示されました。たとえば派遣先均等・均衡方式であれば、派遣先の通常の労働者に夏季冬季休暇があるなら派遣労働者にも同一の休暇を付与しなければなりません(労使協定方式では、賃金と派遣先の教育訓練・福利厚生施設を除く待遇は派遣元の通常の労働者と比較します)。
- 労使協定に定めた事項を守っていない場合や、公正な評価に取り組んでいない場合、過半数代表者が適切に選出されていない場合には、労使協定方式は適用されず派遣先均等・均衡方式が適用されます(派遣元指針第2の8(8)イ)。
説明を求めたことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁じられています。派遣先の正社員に支給されている家族手当や夏季休暇が自分には無い場合、その理由を説明させるのは制度上認められた行為です。契約更新の面談は、これを持ち出す自然な機会になります。
派遣から正社員・直接雇用への移行ルート
狙う経路によって準備は変わります。もっとも確度が高いのは、直接雇用を前提に始める紹介予定派遣です。
紹介予定派遣の到達率
紹介予定派遣は、最長6か月の派遣期間を経て、双方が合意すれば派遣先に直接雇用される仕組みです(派遣元指針・派遣先指針により、同一の派遣労働者について6か月を超える労働者派遣は行えません)。令和6年度は25,535人が紹介予定派遣として派遣され、職業紹介が実施されたのが18,219人、直接雇用に結びついたのが13,881人。派遣された人を分母にすると54.4%、職業紹介まで進んだ人を分母にすると76.2%が直接雇用に至っています。派遣期間中は選考が続いていると考えるべきですが、通常の派遣から直接雇用へ移るより到達率は明確に高い経路です。
紹介予定派遣では、通常の派遣と違って派遣開始前の面接や履歴書の送付が認められています。派遣先が職業紹介を受けることを希望しなかった場合や、紹介を受けた人を雇用しなかった場合には、派遣先は派遣会社の求めに応じて理由を書面等で明示する義務があり、この旨は労働者派遣契約の書面に記載しなければなりません(労働者派遣法施行規則第22条の2第1号)。見送られたときは、派遣会社の担当者を通じて理由を確認できると考えてください。
注意点は、直接雇用が正社員とは限らないことです。契約社員としての直接雇用も件数に含まれます。求人票の「直接雇用後の雇用形態」欄を必ず確認し、無期か有期か、試用期間の条件はどうかを、派遣開始前に文書で押さえてください。
直接雇用に向けた派遣期間中の準備
通常の派遣からでも、派遣先での実績と資格取得、正社員登用への明確な意思表示によって登用される例があります。効くのは、担当業務の周辺まで引き受けて代替が効かない範囲を作ること、業務の属人化を解消する手順書などの成果物を残すことです。派遣会社の担当者に正社員志望を早い段階で伝えておくと、直接雇用の可能性がある求人を優先して紹介してもらいやすくなります。
派遣が向いている人・向いていない人
派遣を勧められるのは、次の条件に当てはまる人です。働く期間や勤務地に自分側の制約があり、それを最優先したい人。特定の職種の実務経験を短期間で複数社ぶん積みたい人。専門性が確立していて、時給換算の収入が正社員の月給を上回る職種(情報処理・通信技術者の賃金は8時間換算21,032円で全業務平均を4,297円上回ります)で働ける人です。
逆に、勧められないのは次の場合です。まず、住宅ローンや教育費など今後10年の固定支出が決まっている人。労働者派遣契約の85.7%が3か月以下という構造は、返済計画と相性が悪すぎます。次に、管理職や事業責任者としてのキャリアを目指す人。派遣先の指揮命令下で働く前提上、組織の意思決定に関わる役割は基本的に回ってきません。そして、正社員採用の選考に通る見込みがある20代で、「まず派遣で経験を積んでから」と考えている人。3年見込みで雇用安定措置の対象になった人のうち派遣先で直接雇用されたのは約1割という実績を踏まえると、派遣経由の正社員化を既定路線として計画するのは危険です。この場合は紹介予定派遣に絞るのが合理的でしょう。
派遣会社の選び方と登録から就業までの流れ
許可の有無とマージン率で見る派遣会社の選び方
派遣会社は労働者派遣事業の許可を受けた事業者に限られます。許可の有無や事業所情報、マージン率などは厚生労働省の人材サービス総合サイトで確認できます。選ぶ際は、希望職種の求人数だけでなく、マージン率の公開状況、待遇決定方式(労使協定方式か派遣先均等・均衡方式か)、教育訓練とキャリアコンサルティングの実施体制を比べてください。労使協定方式を採る会社では、通勤手当が時給に含まれているかどうかで手取りが変わります。
登録から就業開始までの5ステップと就業条件明示書
- 派遣会社に登録する(職務経歴・希望条件・スキルの申告)
- 登録面談やスキルチェックを受ける
- 仕事を紹介され、職場見学や顔合わせに参加する(選考の場ではないとされています。後述)
- 雇用契約を結ぶ(このとき就業条件明示書を受け取る)
- 就業開始。以後は派遣会社の担当者が定期的に就業状況を確認する
職場見学と履歴書提出の扱いには注意が必要です。労働者派遣法第26条第6項は、紹介予定派遣を除き、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないよう努めなければならないと定めています。条文上は努力義務ですが、事前面接や履歴書の事前送付を求めることは特定行為にあたるため、職場見学の場で選考のような質問を受けたら派遣会社に報告してください。就業条件明示書では、業務内容と組織単位、抵触日、待遇決定方式、時間外労働の有無、契約更新の判断基準を確認します。時間外労働の上限は派遣先の36協定に従うため、残業を避けたい場合は事前の確認が要ります(特別条項付き36協定とは何か?労働時間の限度を超えて残業を可能にする特別な労使協定の概要と目的を解説)。
派遣社員のよくあるトラブルと相談先
相談先の第一は派遣会社です。契約に無い業務の指示、契約更新の一方的な打ち切り、就業条件と実態の相違は、まず派遣会社の担当者に事実を伝えます。派遣会社は苦情の処理体制を持つことが義務づけられており、派遣先にも苦情を適切に処理する責任があります。派遣先が就業状況を記録する派遣先管理台帳の仕組みは派遣先管理台帳とは?記載事項・3年保存・派遣元への通知と台帳運用の仕組み化で解説しています。
ハラスメントについては、派遣先も責任を負う立場です。労働者派遣法第47条の4により、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなして労働施策総合推進法が適用されるため、パワーハラスメント防止の措置義務は派遣先にもかかります。さらに2026年10月1日からは、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)への雇用管理上の措置も事業主の義務となり、派遣先の職場で受けたカスタマーハラスメントについても、派遣先が相談体制を整える対象になります。
派遣会社と派遣先のどちらに相談しても解決しない場合は、都道府県労働局の需給調整事業部門に申告できます。無料で相談でき、必要に応じて派遣会社や派遣先への指導が行われます。
よくある質問
派遣社員とは何かをわかりやすく言うとどうなりますか?
給料をくれる会社と、仕事を指示する会社が別々の働き方です。雇用契約は派遣会社と結ぶので、給与の支払い、社会保険の手続き、有給休暇の付与はすべて派遣会社が担当します。一方で毎日の業務指示や勤務時間の管理は、実際に働く派遣先から受ける形。この二重構造を押さえておけば、賃金の相談は派遣会社、業務内容の相談は派遣先という切り分けが自然に判断できます。
派遣の3年ルールとは何ですか?3年経つとどうなりますか?
同じ派遣先の同じ組織単位で働ける期間を原則3年までとする制限です(労働者派遣法第35条の3)。事業所単位の3年制限(同法第40条の2)は意見聴取で延長できますが、個人単位に延長はありません。3年見込みになると派遣会社は雇用安定措置を講じる義務を負い、派遣先への直接雇用の依頼、新たな就業機会の提供、派遣元で派遣労働者以外の労働者としての無期雇用などを行います。令和6年度は3年見込みの対象者92,809人のうち9,174人が派遣先で雇用されました。
「派遣社員はデメリットしかない」というのは本当ですか?
登録型派遣に限れば、労働者派遣契約の85.7%が3か月以下という短さは実際に大きな負担です。ただし2020年4月から同一労働同一賃金の対象となり、2026年10月からは待遇差の説明を求められる旨の明示も義務化されます。無期雇用派遣を選べば待機期間も給与が出ますが、勤務地や職種を選ぶ自由度は下がります。安定や昇進を最優先する人には不向きで、働く時間や場所を自分で決めたい人には合理的な選択肢です。
派遣会社のマージン率はどこで確認できますか?
派遣会社の自社サイトのマージン率のページか、厚生労働省の人材サービス総合サイトで確認できます。見つからない場合は、労働者派遣法第23条第5項が定める情報提供義務の履行状況を担当者に確認してください。率の高低だけで選ぶ判断は避けるべきです。マージンには社会保険料の事業主負担や教育訓練費が含まれます。
無期雇用派遣と正社員はどう違いますか?
どちらも期間の定めのない雇用ですが、無期雇用派遣の雇用主は派遣会社で、働く先は派遣先です。正社員の契約相手は勤務先そのもの。無期雇用派遣は個人単位の3年ルールの対象外で同じ派遣先に長く就業でき、派遣先が決まっていない待機期間も給与が支払われます。ただし賞与や退職金の有無は派遣会社の制度によります。令和6年度の無期雇用派遣労働者は908,956人で、前年度から7.9%増えました。