TQMとは?TQCとの違い・進め方・ISO 9001との関係を一次情報で解説

TQM(Total Quality Management)は、品質を製造現場だけの課題から経営全体の課題へ引き上げるための組織運営の考え方です。ところが「全社で品質を良くする活動」という漠然とした説明が広まった結果、社内で言葉の意味が人によってずれたまま活動だけが走り、数年で形骸化するケースが後を絶ちません。この記事では、日本品質管理学会(JSQC)と日本科学技術連盟(日科技連)が公開している一次資料をもとに、TQMの定義・TQCとの違い・進め方・ISO 9001との接続点を整理します。あわせて、2026年9月に発行が予定されているISO 9001第6版の状況と、「TQMはもう時代遅れではないか」という問いにもデータで答えます。

まとめ:TQMで最初に押さえる6点

  • 定義は学会規格にある:JSQCの規格「品質管理用語」(2023年9月20日制定)が、TQMを「全部門・全階層の参加を得て、プロセス及びシステムの維持向上・改善・革新を行う活動」と定義している。社内の言葉合わせはこの原文から始める。
  • TQCとの違いは対象範囲:日科技連が1996年に呼称をTQCからTQMへ変更し、翌1997年に『TQM宣言』を刊行した。管理(Control)から経営のマネジメント(Management)へ拡張したのが本質。
  • 構成は原則・活動要素・手法・組織能力:JSQC-Std 11-001:2022「TQMの指針」が、この骨格を示している。方針管理・日常管理・小集団改善活動などが活動要素にあたる。
  • 進め方はQCストーリー:テーマ選定から標準化までの手順を、PDCAで回し続ける。単発の改善プロジェクトで終わらせないことが定着の条件。
  • ISO 9001は土台、TQMは上物:ISO 9001は認証を受けられる要求事項の規格、TQMは認証制度を持たない経営の考え方。ISO 9001は現在も2015年版が有効で、第6版は2026年9月に発行予定(2026年7月時点で未発行)。
  • 「時代遅れ」ではなく担い手が移った:組織を対象とするデミング賞は、2012年の賞名刷新以降の受賞48組織のうち30組織が海外。日本で語られなくなっただけで、TQMそのものは機能し続けている。

TQM(総合的品質管理)とは何か

日本品質管理学会規格が定めるTQMの定義

TQMの定義として最も参照すべきなのは、日本品質管理学会(JSQC)の学会規格「品質管理用語」(2023年9月20日制定)です。同規格 1.1 は、総合的品質管理/総合的品質マネジメント/TQMを次のように定義しています。

「品質/質を中核に,顧客及び社会のニーズを満たす製品・サービスの提供と,働く人々の満足を通した組織の長期的な成功を目的とし,プロセス及びシステムの維持向上,改善及び革新を全部門・全階層の参加を得て様々な手法を駆使して行うことで,経営環境の変化に適した効果的かつ効率的な組織運営を実現する活動.」

この一文は、Web上でよく見る「全社で品質を高める活動」という要約が落としている2つの要素を含んでいます。ひとつは目的が「組織の長期的な成功」であり、品質向上そのものは手段だという点。もうひとつは、対象が「維持向上・改善・革新」の3つに分かれている点です。今の水準を保つ(維持向上)、悪いところを直す(改善)、やり方を作り変える(革新)は、必要な体制も手法も違います。自社のTQMがどれを指しているのかを最初に決めておかないと、改善活動の報告会だけが増えて革新が起きない状態に陥ります。

QC・QA・QMS・TQM:品質管理まわりの英語表記と使い分け

品質管理の周辺は略語が多く、社内文書でも混用されがちです。読みは「ティーキューエム」、英語表記はTotal Quality Managementで、日本語では「総合的品質管理」または「総合的品質マネジメント」と訳されます。関連する用語との関係を整理すると次のようになります。

略語 英語表記 日本語 指すもの
QC Quality Control 品質管理 要求適合のための管理活動
QA Quality Assurance 品質保証 適合の確信を与える活動
TQC Total Quality Control 全社的品質管理 TQMの旧称(1996年に変更)
QMS Quality Management System 品質マネジメントシステム ISO 9001が要求する仕組み
TQM Total Quality Management 総合的品質管理 経営全体を対象とした考え方

QCとQAは活動の名前、QMSは仕組みの名前、TQMはそれらを束ねる経営の考え方、という層の違いで捉えると混乱しません。海外拠点や監査対応で英語を使う場面では、QCとQAを取り違えると責任範囲の議論がずれるため、この対応表を社内用語集に載せておくと実務が速くなります。

TQCとの違い:1996年の呼称変更が意味するもの

TQMとTQCは別々に生まれた手法ではなく、同じ活動の呼び名が変わったものです。日科技連が公開している年表には、1996年に「TQC」を「TQM」に呼称変更し、1997年に『TQM宣言』を刊行した、と2つの出来事が別項目で記録されています。Web上には「1996年にTQM宣言が出された」と書く記事が多くありますが、一次資料である年表では呼称変更と宣言の刊行は別の年です。

呼称変更の中身は、Control(管理)をManagement(マネジメント)に置き換えたことに尽きます。日科技連自身の説明では、活動の広がりに対して「管理」という限定的な表現が合わなくなり、より普遍的に使える「マネジメント」へ改められた、とされています。TQCの時代に主役だった製造現場の統計的品質管理やQCサークルは、TQMでは活動要素のひとつという位置づけになり、経営方針を現場の行動に落とす方針管理や、新製品開発のプロセス保証が並列で入ってきました。

実務上の使い分けはこうなります。製造ラインの不良を減らす話をしているならTQCの範囲で足りますが、「品質不正を起こさない組織にする」「顧客の不満を開発計画に反映する」という話になった瞬間、それはTQMの領域です。前者は品質保証部門の仕事として閉じますが、後者は経営会議の議題にしなければ動きません。社内で「TQMをやろう」と言うとき、実質はTQCの話をしていないかを点検すると、活動が現場の負担増だけで終わる事故を避けられます。

TQMの構成:原則・活動要素・手法

TQMの全体像は、JSQC-Std 11-001:2022「TQMの指針 - 組織能力の向上 -」(2022年5月23日制定)が示しています。同規格の第4章は、事業と組織能力とTQM(4.1)、TQMの原則(4.2)、TQMの中で中核となる活動及びTQM活動要素(4.3)、TQMの手法(4.4)、事業を支える組織能力(4.5)という構成です。Web上には「TQMの3要素は原則・手法・活動」といった整理も見られますが、学会規格の骨格は上記のとおりで、活動と手法は別レイヤーに置かれ、それらが支える組織能力まで射程に入っています。

活動要素:方針管理・日常管理・小集団改善活動

TQM活動要素は、JSQCが個別規格として展開しています。プロセス保証、新製品・新サービス開発管理、小集団改善活動、日常管理、方針管理、品質管理教育の各指針がそれにあたる。6つは役割が重ならないよう設計されており、どれか1つだけを取り出しても機能しません。

  • 方針管理:経営方針を部門・現場の目標へ展開し、達成状況を確認する。TQMがTQCと決定的に違うのはこの縦串があること。
  • 日常管理:決めた手順どおりに仕事が回っている状態を維持する。異常が出たら標準に戻す活動で、改善の前提になる。
  • 小集団改善活動:現場の数人単位で課題を選び、改善する。QCサークル活動がその代表で、日科技連の本部登録制度は1962年に始まっている。
  • プロセス保証・新製品開発管理:できたものを検査するのではなく、良いものができるプロセスを設計段階から作り込む。
  • 品質管理教育:手法を使える人を組織内に増やす。JSQCが2019年の提言で「品質管理教育が軽視されている」を品質力低下の要因に挙げている。

導入時にありがちな失敗は、小集団改善活動だけを始めて方針管理と日常管理を置き去りにすることです。改善テーマが現場の思いつきで決まり、経営が求める課題と噛み合わないまま発表会だけが年中行事になります。

手法:QC七つ道具・PDCA・シックスシグマの使い分け

手法は活動を支える道具です。土台にあるのがQC七つ道具――パレート図、特性要因図、ヒストグラム、散布図、管理図、チェックシート、層別――で、現状把握と要因解析の場面で使います。どれも集めたデータを目で見える形に変えるための道具であり、データがなければ1枚も描けない。ここが手法選びの出発点になる。

PDCAサイクルは改善の基本形として全活動要素の下敷きになっており、JSQCの「品質管理用語」は「事実に基づく管理」を「経験や勘に頼るのではなく,データに基づいてPDCAを回すこと」と定義しています。データを取らずに回すPDCAは、規格上のPDCAではありません。

シックスシグマもTQMの手法群のひとつとして位置づけられています。1986年にモトローラで提唱され、同社が全社展開したもので、ISO 13053-1:2011が5フェーズとして規定するDMAIC(define・measure・analyse・improve・control)に沿って、プロジェクト方式でプロセスを改善します。QCサークルが現場のボトムアップであるのに対し、シックスシグマは専任の推進者がプロジェクトとして回す点が違う。現場に改善の余力がない組織ほど、ボトムアップ型より専任者を置くシックスシグマ型のほうが立ち上がりが速いという判断はしてよく、両者は排他ではありません。

TQMの進め方:QCストーリーで回す

TQMの改善活動は、QCストーリーと呼ばれる手順で進めます。競合記事によってステップ数が5〜8と割れていますが、中身は共通で、次の流れです。

  • 1. テーマの選定:経営方針から降りてきた課題と、現場が困っている事象を突き合わせて決める。ここを現場任せにすると方針管理と切れる。
  • 2. 現状把握:不良率、クレーム件数、手戻り工数などをデータで測る。測れていない指標があれば、この段階で計測の仕組みを作る。
  • 3. 目標設定:「不良率を3か月で0.8%から0.3%へ」のように、数値と期限で書く。
  • 4. 要因の解析:特性要因図やパレート図で、影響の大きい原因を絞る。
  • 5. 対策の立案と実行:原因に対応する対策を打つ。人の注意力に頼る対策は再発するので、手順や治具の側で防ぐ。
  • 6. 効果の確認:手順2の指標を同じ方法で測り直す。目標未達なら手順4に戻る。
  • 7. 標準化と定着:効果が出た対策を標準作業書に反映し、日常管理の対象に移す。ここを飛ばすと、担当者の異動で元に戻る。

推進体制で決めるべきは、事務局を誰が担うかです。品質保証部門に兼任で持たせると、日常の不適合対応に押し流されて改善が止まります。効果測定の指標としては、不良率やクレーム件数に加えて、品質コスト(予防・評価・内部失敗・外部失敗の4区分)を四半期ごとに追うと、改善が金額で語れるようになり経営の関心が続きます。

ISO 9001とTQMの関係:2026年9月に第6版が発行予定

ISO 9001は要求事項、TQMは経営の考え方

両者は競合しません。ISO 9001は第三者認証を受けられる要求事項の規格で、「この仕組みを備えていること」を外部に証明するためのもの。対してTQMは認証制度を持たず、どこまでやるかを組織が自分で決めます。ISO 9001が土台、TQMがその上に載る経営の営み、という関係です。

接続点は具体的にあります。JIS Q 9000:2015 が定める品質マネジメントの7原則――顧客重視、リーダーシップ、人々の積極的参加、プロセスアプローチ、改善、客観的事実に基づく意思決定、関係性管理――は、そのままTQMの原則と重なる。とくに「客観的事実に基づく意思決定」は、JSQCの「事実に基づく管理」と同じことを言っています。なお、後継のISO 9000:2026では基本概念と品質マネジメントの原則が箇条2から箇条4へ移動しており、対応するJISが改正された時点で条項番号の読み替えが必要になります。

もうひとつの接続点が、リスクの扱いです。ISO 9001:2015では予防処置の独立した箇条が廃止され、附属書A.4に「予防処置の概念は、品質マネジメントシステム要求事項を策定する際に、リスクに基づく考え方を用いることで示されている」と明記されました。予防処置がなくなったのではなく、リスクベースの考え方として規格全体に溶け込んだということです。

ISO 9001の認証を持つ組織がTQMへ進む場合、箇条5(リーダーシップ)を方針管理へ、箇条9.1(監視・測定・分析・評価)を事実に基づく管理へ、箇条10.3(継続的改善)を小集団改善活動へ、というように既存の仕組みを読み替えるところから始められます。内部監査の指摘事項を改善テーマの供給源にすると、TQMのテーマ選定が回り始めます(報告書の書き方は内部監査報告書の書き方を参照してください)。

改訂スケジュール:2026年7月時点でISO 9001は未改訂、ISO 9000は改訂済み

ここは情報が錯綜しやすいので、ISO公式のステージで押さえます。2026年7月時点の状況は非対称です。

規格 2026年7月時点の状態 ISOステージ
ISO 9001:2015 現行・有効(改訂予定あり) 90.92(要改訂)
ISO 9001 第6版 未発行・2026年9月に発行予定 60.00(発行手続き中)
ISO 9000:2015 廃止済み 95.99(廃止)
ISO 9000:2026 2026年5月に発行済み 60.60(発行済み)

用語と基本を定めるISO 9000は2026年5月にすでに改訂され、規格名から「systems」が外れて「Quality management — Fundamentals and vocabulary」になりました。一方、認証の対象となるISO 9001はまだ2015年版が有効で、第6版はFDIS投票を通過して発行手続き中(ステージ60.00)です。「ISO 9001:2026 が出た」と書く解説を見かけたら誤りですし、「まだドラフト段階」も既に古い認識です。認証を持つ組織は、9月の発行後に移行期間が設定される前提で、2026年度中に差分の把握と内部監査計画の見直しに着手しておくのが現実的です。

認証件数が示す、日本の品質マネジメントの現在地

日本適合性認定協会(JAB)の集計では、JAB認定の認証機関35機関が発行したJIS Q 9001の認証件数は2024年12月31日時点で25,515件(うちJAB認定範囲は24,546件)でした。2020年28,274件、2021年27,634件、2022年26,232件(改訂版の値)、2024年25,515件と、公表されている年をたどるかぎり4年で約10%減っています。ただしJAB非認定の認証機関を含めた総計は約39,000件で、JABの集計ベースではほぼ横ばい。「日本企業が品質マネジメントを捨てた」とまでは読めず、認証の担い手が移動しているという読み方が妥当でしょう。なお国際的なISO Surveyの日本件数は集計母体が異なり数字が食い違うため、社内資料で引くならJABの数字に統一しておくと議論がぶれません。

品質データを支えるシステム:SAPのQMとMES

「事実に基づく管理」は、データが集まる仕組みがなければ標語で終わります。紙の検査記録とExcelの集計で回している組織では、パレート図を1枚作るのに数日かかり、改善のサイクルが月単位まで遅くなります。

ERPで品質を扱う場合、SAPで該当するのはQM(Quality Management)コンポーネントです。検査計画、検査ロット、結果記録、品質通知、品質証明書といった機能を持ち、SAP S/4HANAでも提供が続いています。調達・製造・出荷の伝票と検査結果が同じ基盤に載るため、「どの仕入先のどのロットで不良が出たか」を都度の集計作業なしに追える。なお、SAP ERP 6.0を含むBusiness Suite 7のメインストリームメンテナンスは2027年末までで、その後2030年末まで延長メンテナンスを選べますが、これは保守料率に2%ポイント上乗せされる有償オプションです。ECC上でQMを運用している組織は、品質データの移行方針もS/4HANA移行計画に含めておく必要があります。移行の進め方はSAPコンサルティング会社の選び方で整理しています。

製造現場側では、ISA-95(国際規格IEC 62264)が枠組みを与えます。IEC 62264-3:2016は、Level 3のオペレーション管理モデルとして生産・保全・品質・在庫の4つを定義しており、品質オペレーション管理はMESが担う正式な機能として標準化されている。TQMの導入検討をシステム抜きで進めると、活動が定着する頃にデータ収集の負荷で息切れします。改善テーマを決める前に、その指標が自動で取れるかを確認してください。手作業でしか取れない指標は、3か月後には誰も測らなくなります。

製造業以外への適用:医療とソフトウェア開発

TQMは製造業の専売ではありません。日本で最も明確に根づいているのは医療分野です。埼玉県立小児医療センターは2019年4月にTQM推進室を組織化し、各部門でQCサークルを編成して改善活動を回している。奈良県立医科大学附属病院は2015年度からTQM活動を推進し、年度ごとの成果を公開しています。国立がん研究センター中央病院や国保旭中央病院もTQMセンターを設置しており、部署名として定着していることがわかります。

ただし注意点があります。国の制度である「医療の質向上のための体制整備事業」は、QI(医療の質指標)を計測しPDCAで改善するという枠組みで組み立てられており、事業の枠組み用語としてTQMは使われていません(厚生労働省の資料にTQMが登場するのは、個別病院の取り組み事例の紹介としてです)。国がTQMを推進している、という書き方は事実に反します。医療のTQMは、あくまで各病院・学会レベルで自発的に採用されている呼び名です。

ソフトウェア開発でTQMを読み替える場合、「品質」の定義から始める必要があります。ISO/IEC 25010が定める品質特性(機能適合性、性能効率性、信頼性、セキュリティなど)を自社の重点特性へ絞り込み、それを測る指標を決める。バグ密度やテスト密度のように基準値と計算式がある指標を使えば、勘に頼らない現状把握ができます。製造業の不良率をそのまま持ち込もうとして失敗する組織が多いのは、ソフトウェアでは「不良1件」の重みが桁で違うためです。

TQMは時代遅れか:デミング賞のデータが示す担い手の移動

「TQMは時代遅れ」という見方には、根拠のある部分とない部分があります。まず、根拠のある部分から。

デミング賞は、TQMの実践で顕著な成果を上げた組織に贈られる賞で、1951年にデミング賞委員会(日科技連)が創設しました。2025年度時点で、組織を対象とするデミング賞の受賞は累計271組織(うち海外68組織)。そのうち2012年の賞名刷新以降に限ると、受賞48組織のうち30組織が海外です。2025年度のデミング賞(組織)はGlobal Indian International School TokyoとTata Autocomp Hendrickson Suspensions、2024年度はDMG森精機(伊賀)のほかインドのタタ系3社でした。2012年以降の受賞はインドをはじめとする海外に集中しており、日本発の経営手法の主戦場が海外へ移ったという指摘は、このデータで裏付けられます。

日本側の後退についても、学会自身が認めています。JSQCは2019年7月の「『品質立国日本再生』に向けての提言」で、「戦後日本の産業界が血道を上げて取り組んだ品質管理がこの30年間、多くの企業で忘れ去られようとしています」と述べ、プロセス保証の弱体化や品質管理教育の軽視を要因に挙げました。相次いだ品質不正はその帰結だという整理です。

一方で、根拠のない部分もあります。「QCサークルが激減した」という言説はよく見かけますが、日科技連やJSQCの公表資料からは、現在活動しているサークル数の時系列を確認できません(本部登録制度は1962年から続いているものの、登録数の統計は公開されていない)。数字が公開されていないものを「激減した」と語るのは、事実に基づく管理を掲げる分野で最もやってはいけない振る舞いでしょう。

結論を言えば、時代遅れなのはTQMという枠組みではなく、TQMを「発表会と標語の年中行事」として運用してきたやり方のほうです。JSQC-Std 11-001:2022の序文も、「形式重視で時代の変化に対応しきれない」と矮小化する見方と、「TQMは万能だ」と拡大解釈する見方の両方を、TQM普及を妨げる誤解として挙げています。逆に言えば、方針管理と日常管理を抜きにして小集団改善活動だけを続ける組織なら、その活動は本当にやめたほうがいい。TQMを再開する価値があるのは、経営が品質を数字で見る意思を持ち、データが自動で集まる基盤に投資できる組織だけです。

よくある質問

TQMとTQCの違いは何ですか?

別の手法ではなく、同じ活動の呼び名の変更です。日科技連は1996年にTQC(Total Quality Control)からTQM(Total Quality Management)へ呼称を変更し、1997年に『TQM宣言』を刊行しました。Control(管理)からManagement(マネジメント)に変わったことが示すとおり、製造現場中心の品質管理から、経営方針の展開や新製品開発を含む組織運営全体へと対象範囲が広がっています。

TQMは英語でどう書きますか。品質管理の英語表記は?

TQMはTotal Quality Management、読みは「ティーキューエム」で、日本語では総合的品質管理または総合的品質マネジメントと訳されます。品質管理はQC(Quality Control)、品質保証はQA(Quality Assurance)です。なお日本語の「品質管理部」を英訳する際、実態が検査・工程管理ならQuality Control、顧客・監査対応まで含むならQuality Assuranceが近く、組織図の英訳を取り違えると海外拠点との責任分界の議論がかみ合わなくなります。

TQMの進め方は何から始めればよいですか?

小集団改善活動から始める組織が多いのですが、先に方針管理と日常管理の枠を作ることをすすめます。経営方針から改善テーマが降りてくる経路(方針管理)と、決めた手順が守られている状態(日常管理)がないと、改善しても元に戻ります。そのうえで、テーマ選定→現状把握→目標設定→要因解析→対策→効果確認→標準化というQCストーリーで回します。着手前に、現状把握で使う指標がシステムから自動で取れるかを確認してください。

ISO 9001を取得していればTQMは不要ですか?

目的が違うため代替関係にはありません。ISO 9001は第三者認証を受けられる要求事項の規格で、仕組みが備わっていることを外部に示すもの。TQMは認証制度を持たず、品質を軸に組織の長期的な成功を目指す経営の考え方です。ISO 9001の箇条5(リーダーシップ)を方針管理へ、箇条10.3(継続的改善)を改善活動へ読み替えると、認証で作った仕組みをTQMの出発点として使えます。なお、ISO 9001は2026年7月時点で2015年版が現行で、第6版が2026年9月に発行予定です。

SAPにTQM専用のモジュールはありますか?

SAP公式のドキュメントに「TQM」という名称のモジュールはありません。品質管理を担うのはQM(Quality Management)コンポーネントです。TQMは経営の考え方であってソフトウェア製品ではないため、システム面で検討すべきなのは「TQMという製品を買うこと」ではなく、品質データが自動で集まり分析できる状態を作ることになります。ECC(SAP ERP 6.0)でQMを運用しているなら、2027年末のメインストリームメンテナンス終了に向けたS/4HANA移行の計画に、検査記録や品質通知の移行方針を含めておいてください。

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