ISO/IEC 25010は、ソフトウェアやICT製品の品質を「機能適合性」「セキュリティ」「保守性」などの観点に分けて定義した国際規格(製品品質モデル)です。現行版は2023年11月発行の第2版で、品質特性は2011年版の8つから9つに増え、副特性は31から40になりました。日本では2025年12月22日にJIS X 25010:2025として訳され、使用性は「インタラクション容易性(対話性)」に、移植性は「柔軟性」に置き換えられています。この記事では、25010の意味、2023年版の一覧、2011年版との対応、非機能要件への使い方を順に整理します。
まとめ:ISO/IEC 25010の要点
- ISO/IEC 25010は、品質規格群SQuaRE(ISO/IEC 25000シリーズ)のうち製品品質モデルを定める規格。番号の「2501n」は品質モデル部門を表す。
- 現行はISO/IEC 25010:2023(第2版・2023年11月15日発行)。対応JISはJIS X 25010:2025(2025年12月22日改正)で、JIS X 25010:2013を置き換えた。
- 2023年版の品質特性は9つ(機能適合性・性能効率性・互換性・インタラクション容易性・信頼性・セキュリティ・保守性・柔軟性・安全性)、副特性は40。
- 2011年版から、安全性の新設、使用性→インタラクション容易性、移植性→柔軟性、成熟性→無障害性、アクセシビリティの2分割などが変わった。
- 2011年版にあった利用時品質モデルはISO/IEC 25019、品質モデルの概要と使い方はISO/IEC 25002へ移った。
- 実務では、品質特性ごとに「測定量」と「合格基準」を数値で決めて非機能要件や受入基準に落とす。特性名を並べただけの要件書は検証できない。
ISO/IEC 25010の意味とSQuaREでの位置づけ
「25010」は規格の番号で、それ自体に意味はありません。ただし番号の並びには規則があり、SQuaRE(Systems and software Quality Requirements and Evaluation)規格群は2500n=品質マネジメント、2501n=品質モデル、2502n=品質測定、2503n=品質要求、2504n=品質評価の部門に分かれています。25010は品質モデル部門の中心で、同じ部門にデータ品質モデルのISO/IEC 25012や利用時品質モデルのISO/IEC 25019が並びます。
2023年版の適用範囲(箇条1)は、規格の役割を次のように書いています。ISO/IEC 25010:2023の公開プレビューで読めます。
The product quality model is composed of nine characteristics (which are further subdivided into subcharacteristics) that relate to quality properties of the products.
つまり25010は「品質をどう分類するか」の物差しで、測り方(2502n)や要求の書き方(2503n)は別の規格が受け持ちます。25010だけを読んでも、何をどこまで測れば合格かは決まりません。
版の早見表:現行はISO/IEC 25010:2023とJIS X 25010:2025
検索では2011年版の解説がまだ多く出ます。どの版を前提にした説明かを最初に確かめてください。
| 規格 | 発行・改正 | 内容 |
|---|---|---|
| ISO/IEC 9126-1 | 2001年 | 品質特性6つ(前身) |
| ISO/IEC 25010:2011 | 2011年 | 製品品質8特性・利用時品質5特性 |
| JIS X 25010:2013 | 2013年6月20日制定 | 2011年版の翻訳 |
| ISO/IEC 25010:2023 | 2023年11月15日 | 製品品質9特性のみ(現行) |
| ISO/IEC 25019:2023 | 2023年11月 | 利用時品質モデル |
| ISO/IEC 25002:2024 | 2024年3月 | 品質モデルの概要と使い方 |
| JIS X 25010:2025 | 2025年12月22日改正 | 2023年版の翻訳(現行JIS) |
| JIS X 25019:2025 | 2025年12月22日制定 | 25019:2023の翻訳 |
| JIS X 25002:2025 | 2025年12月22日制定 | 25002:2024の翻訳 |
2023年版の発行日と、規格を主導した作業グループ(SC 7/WG 6)を日本がコンビーナとして率いてきた経緯は、日本規格協会の「日本提案のISO/IEC規格」に掲載されています。JIS X 25010:2025の改正日と、JIS X 25010:2013を置き換えたことはJIS X 25010:2025のプレビュー(まえがき・序文)で確かめられます。2025年3月時点では「JISでの規格化も含め国内での導入は途上」とする解説記事もありましたが、JIS X 25010:2025が改正された今は前提が違います。
ISO/IEC 9126からの流れ:6特性から8特性へ
前身のISO/IEC 9126-1は、機能性・信頼性・使用性・効率性・保守性・移植性の6特性でした。「ソフトウェア品質の6特性」という言い方はこの9126を指します。2011年の25010では、機能性の副特性だったセキュリティが独立してセキュリティに、機能性の相互運用性と移植性の共存性をまとめて互換性になり、8特性に増えました。あわせて9126と評価の規格ISO/IEC 14598はSQuaRE規格群に統合され、評価の部分は2504n(品質評価部門)が引き継いでいます。
2023年版の製品品質モデル:9つの品質特性と40の副特性
ISO/IEC 25010:2023の品質特性と副特性を一覧にします。JISの訳語はJIS X 25010:2025のもので、太字は2023年版で新設・置換された語です。2025年版では、可用性・障害許容性・試験性・設置性に別名が併記されるようになりました(JIS X 25010の公衆意見募集時の原案の箇条3と附属書A「JIS X 25010:2013の製品品質モデルとの対比」で確認できます)。
| 品質特性(英語) | JISの訳語 | 副特性(JISの訳語) | 数 |
|---|---|---|---|
| Functional suitability | 機能適合性 | 機能完全性・機能正確性・機能適切性 | 3 |
| Performance efficiency | 性能効率性 | 時間効率性・資源効率性・容量満足性 | 3 |
| Compatibility | 互換性 | 共存性・相互運用性 | 2 |
| Interaction capability | インタラクション容易性(対話性) | 下の表を参照 | 8 |
| Reliability | 信頼性 | 無障害性・可用性(アベイラビリティ)・障害許容性(耐故障性)・回復性 | 4 |
| Security | セキュリティ | 機密性・インテグリティ・否認防止性・責任追跡性・真正性・耐攻撃性 | 6 |
| Maintainability | 保守性 | モジュール性・再利用性・解析性・修正性・テスト可能性(試験性) | 5 |
| Flexibility | 柔軟性 | 適応性・拡張性・インストール性(設置性)・置換性 | 4 |
| Safety | 安全性 | 運用制約性・リスク識別性・フェールセーフ・危険警告性・統合時安全性 | 5 |
機能適合性・性能効率性・互換性・保守性の4特性は、副特性の構成が2011年版から変わっていません。変わったのは残りの5特性です。以下の3つが、2011年版の知識のままだと読み違える箇所です。
安全性:新設された特性と5つの副特性
安全性(Safety)は2023年版で新設された特性で、副特性は運用制約性・リスク識別性・フェールセーフ・危険警告性・統合時安全性の5つです(JIS X 25010:2025序文の訳語)。製品品質モデルの対象が「ソフトウェア製品」から「ICT製品と情報システム」に広がり、ハードウェアや通信設備を含む製品が人の生命・健康・財産・環境を危険にさらさないかを、セキュリティ(情報の保護)とは別に扱うようになりました。業務システムでも、工場設備や医療機器と連携する場合は検討対象になります。
インタラクション容易性(対話性):使用性を置き換えた8副特性
2011年版の使用性(Usability)は、製品品質モデルではInteraction capabilityに置き換わりました。2023年版の定義の注記は、使用性(usability)を利用時品質モデル(ISO/IEC 25019)側の概念とし、インタラクション容易性をその前提条件と位置づけています(Interaction capability is a prerequisite for usability.)。usability(JIS X 25019ではユーザビリティ)という概念が消えたのではなく、測る場所が製品から利用時へ移った、という整理です。
| 副特性(英語) | JISの訳語 | 2011年版からの変化 |
|---|---|---|
| Appropriateness recognizability | 適切度認識性 | 継続 |
| Learnability | 習得性 | 継続 |
| Operability | 運用操作性 | 継続 |
| User error protection | ユーザエラー防止性 | 継続 |
| User engagement | ユーザエンゲージメント(利用者関与性) | UI快美性から置換 |
| Inclusivity | インクルーシビティ(包摂性) | アクセシビリティを分割 |
| User assistance | ユーザ支援性 | アクセシビリティを分割 |
| Self-descriptiveness | 自己記述性 | 新設 |
アクセシビリティ要件を2011年版の1項目で管理していたチェックリストは、包摂性(年齢・文化・言語などの多様な利用者が使えるか)とユーザ支援性(幅広い特性・能力の人が目標を達成できるか)の2項目に分けて書き直す必要があります。画面のユーザビリティ評価の進め方はユーザビリティエンジニアリングとは?定義・工程・評価手法とIEC 62366-1の要求で扱っています。
柔軟性・信頼性・セキュリティ:改称と追加された副特性
移植性(Portability)は柔軟性(Flexibility)に置き換わり、副特性に拡張性(scalability)が加わりました。別の環境へ移せるかだけでなく、負荷や規模の変化に合わせて伸縮できるかも同じ特性で見ます。信頼性では成熟性(maturity)が無障害性(faultlessness)に、セキュリティには耐攻撃性(resistance)が追加されています。可用性の数値化(稼働率の計算)は可用性とは?稼働率の計算と高可用性の設計をインフラ実装目線で解説が詳しいです。
2011年版との対応:31副特性から40副特性への移し替え
2011年版で作った品質チェックリストやテスト観点表を2023年版へ移すときに見る名前と構成の変化は、次の5種類です。ISO/IEC 25010:2023のForeword(JISでは序文に収録)が挙げる変更点を、作業単位に並べ直しました。このほか多くの特性・副特性で定義の文言が改められているため、合否基準を定義に寄せて書いている項目は2023年版の定義と読み合わせてください。
| 変化 | 2011年版 | 2023年版 |
|---|---|---|
| 特性の置換 | 使用性 | インタラクション容易性(対話性) |
| 特性の置換 | 移植性 | 柔軟性 |
| 特性の新設 | ― | 安全性(副特性5) |
| 副特性の置換 | ユーザインタフェース快美性 | ユーザエンゲージメント |
| 副特性の置換 | 成熟性 | 無障害性 |
| 副特性の分割 | アクセシビリティ | 包摂性+ユーザ支援性 |
| 副特性の追加 | ― | 自己記述性・耐攻撃性・拡張性 |
チェックリストを2023年版へ移すスクリプト
副特性を表計算やYAMLで管理しているなら、対応を機械的に当てると漏れません。次のPythonは2011年版の8特性31副特性を入力に、置換・分割・新設を適用して2023年版の構成を出力します(Python 3.9で動作を確認)。
# ISO/IEC 25010:2011 の副特性チェックリストを 2023年版へ移すときの対応表
V2011 = {
"Functional suitability": ["Functional completeness", "Functional correctness", "Functional appropriateness"],
"Performance efficiency": ["Time behaviour", "Resource utilization", "Capacity"],
"Compatibility": ["Co-existence", "Interoperability"],
"Usability": ["Appropriateness recognizability", "Learnability", "Operability",
"User error protection", "User interface aesthetics", "Accessibility"],
"Reliability": ["Maturity", "Availability", "Fault tolerance", "Recoverability"],
"Security": ["Confidentiality", "Integrity", "Non-repudiation", "Accountability", "Authenticity"],
"Maintainability": ["Modularity", "Reusability", "Analysability", "Modifiability", "Testability"],
"Portability": ["Adaptability", "Installability", "Replaceability"],
}
# 2011 -> 2023 で名前が変わる・分割されるもの(Foreword の変更点より)
RENAME = {
"Usability": ["Interaction capability"],
"Portability": ["Flexibility"],
"User interface aesthetics": ["User engagement"],
"Maturity": ["Faultlessness"],
"Accessibility": ["Inclusivity", "User assistance"],
}
# 2023 で新設されたもの(特性名: 追加される副特性)
ADDED = {
"Interaction capability": ["Self-descriptiveness"],
"Security": ["Resistance"],
"Flexibility": ["Scalability"],
"Safety": ["Operational constraint", "Risk identification", "Fail safe",
"Hazard warning", "Safe integration"],
}
def migrate(v2011):
v2023 = {}
for ch, subs in v2011.items():
new_ch = RENAME.get(ch, [ch])[0]
v2023[new_ch] = [n for s in subs for n in RENAME.get(s, [s])]
for ch, subs in ADDED.items():
v2023.setdefault(ch, []).extend(subs)
return v2023
v2023 = migrate(V2011)
print("2011:", len(V2011), "characteristics /", sum(map(len, V2011.values())), "subcharacteristics")
print("2023:", len(v2023), "characteristics /", sum(map(len, v2023.values())), "subcharacteristics")
for ch, subs in v2023.items():
print(f" {ch} ({len(subs)})")
実行結果です。2011年版の31副特性に、Forewordの変更点だけを当てると40副特性になり、2023年版の一覧と一致します。
2011: 8 characteristics / 31 subcharacteristics
2023: 9 characteristics / 40 subcharacteristics
Functional suitability (3)
Performance efficiency (3)
Compatibility (2)
Interaction capability (8)
Reliability (4)
Security (6)
Maintainability (5)
Flexibility (4)
Safety (5)
スクリプトが変えるのは名前だけです。手作業が残るのは3つあります。アクセシビリティの分割(1行の要件を2行に割り、どちらの副特性に属するかを判断し直す)、2011年版に対応項目の無い新設8副特性(自己記述性・耐攻撃性・拡張性と安全性の5副特性)のチェック項目起こし、定義が改められた項目の読み直しです。テスト観点表への展開はテストマトリクスとは?作り方・サンプル表・観点とパターン削減の観点の立て方が使えます。
利用時品質モデル:2011年版の5特性とISO/IEC 25019への分離
2011年版の25010には、製品品質とは別に「利用時品質モデル」が同居していました。2023年の改訂でこの部分はISO/IEC 25019:2023(2023年11月発行)へ移り、構成も変わっています。2011年版の利用状況網羅性は削除されました(JIS X 25019:2025のプレビューの序文)。2011年版の知識で「利用時品質は5特性」と答えると、現行版とは合いません。
| 版 | 特性 | 副特性 |
|---|---|---|
| 25010:2011 | 有効性 | ― |
| 25010:2011 | 効率性 | ― |
| 25010:2011 | 満足性 | 実用性・信用性・快感性・快適性 |
| 25010:2011 | リスク回避性 | 経済・健康安全・環境のリスク緩和性 |
| 25010:2011 | 利用状況網羅性 | 利用状況完全性・柔軟性 |
| 25019:2023 | 便益性 | ユーザビリティ・アクセシビリティ・適合性 |
| 25019:2023 | リスク回避性 | 経済・環境及び社会・健康・人間生命及び生活の各リスク回避性 |
| 25019:2023 | 受容性 | 経験保有性・トラストワージネス・遵守性 |
25019:2023は3特性・10副特性で、英語名は順に beneficialness・freedom from risk・acceptability です。2011年版で独立した特性だった有効性・効率性・満足性は、便益性の下のユーザビリティ(usability)の定義(effectiveness, efficiency and satisfaction)に収まりました。なお表の2011年版「柔軟性」は利用時品質の副特性で、2023年版の製品品質の特性「柔軟性」とは名前が同じで中身が違います。リリース後の利用者調査や運用データで測るのは25019の利用時品質で、開発中のテストや静的解析で測るのは25010の製品品質、という役割分担は2011年版と同じです。JISではJIS X 25019:2025(ISO/IEC 25019:2023と一致)が、25010と同じ2025年12月22日に発行されました。表の訳語はJIS X 25019の公衆意見募集時の原案の箇条3によります。
非機能要件・受入基準へISO/IEC 25010を落とし込む手順
25010の適用範囲には、使い道として「要求事項の引き出し及び定義」「要求事項定義の包括性の妥当性確認」「受入れ基準の明確化」が挙がっています(JIS X 25010:2025の箇条1の文言)。ただし規格が出すのは観点の一覧だけで、数値は利用者が決めます。非機能要件そのものの書き方は非機能要件とは?6大項目の数値化とk6での閾値テストまで実装目線で解説、機能要件との区別は機能要件とは?非機能要件・業務要件との違いと定義する5つの事項で扱っています。
品質特性→測定量→合格基準の3段で書く
要件書に「信頼性が高いこと」と書いても、受入時に合否を判定できません。IPAのSEC journal Vol.10 No.5(2015年1月)も、品質要求を25010の品質(副)特性を参照して仕様化し、「最初に要求事項を明確にし、測定・評価する品質特性(副特性)を選択する」順で測定法を設計する手順を示しています。副特性ごとに、何を測るか(測定量)と、いくつなら合格か(基準)を並べます。次は社内の要件書テンプレートとして使える記述例で、数値は例です(測定量の定義の体系はISO/IEC 25023にあります)。
quality_requirements:
- characteristic: 性能効率性
subcharacteristic: 時間効率性
measure: 検索APIの応答時間 p95
target: "<= 800ms(同時50ユーザー)"
verified_by: 負荷試験(受入テスト)
- characteristic: 信頼性
subcharacteristic: 可用性
measure: 月間稼働率(計画停止を除く)
target: ">= 99.9%"
verified_by: 運用監視の月次レポート
- characteristic: セキュリティ
subcharacteristic: 耐攻撃性
measure: 攻撃相当の負荷(大量リクエスト)をかけている間の主要APIの成功率
target: ">= 95%"
verified_by: 負荷試験ツールによる攻撃シナリオ試験
- characteristic: 保守性
subcharacteristic: テスト可能性
measure: 受入基準を自動テストで判定できる要件の割合
target: ">= 90%"
verified_by: 要件とテストのトレーサビリティ表
測定量を決めると、検証手段(どのテストで確かめるか)も同時に決まります。保守性の測り方はコード品質とは?測る指標と品質ゲートでCIに組み込む手順、不具合の量で品質を見る方法はバグ密度・テスト密度の目安|IPA基準値・品質指標値と計算式、ゾーン分析で詳しく扱っています。
IPA非機能要求グレードとの使い分け
IPAの非機能要求グレードは、可用性/性能・拡張性/運用・保守性/移行性/セキュリティ/システム環境・エコロジーの6大項目と238のメトリクスで、レベル(グレード)を選ばせる形式をとります。25010が「品質の観点の一覧」なのに対し、非機能要求グレードは「発注者と受注者が段階値で合意する道具」です。業務システムの発注では、非機能要求グレードで項目と水準を決めてから25010の特性に当てて抜けを確かめる順に進めます。たとえばインタラクション容易性や安全性に当たる項目は、グレードの6大項目の名前には出てきません。詳細はIPAの非機能要求グレードとは?6大項目238メトリクスとグレード表の使い方を参照してください。
全40副特性を要件書に写すのを避ける場面
全40副特性を要件書の章立てにそのまま使うのは避けてください。社内向けの小さなツールで安全性や包摂性の要件を無理に書くと、検証できない空欄の要件が増えるだけです。25010は「抜けがないかを点検する表」として使い、要件として書くのは、その製品で合否が問題になる副特性に絞ります。逆に、受託開発の受入基準、医療・製造など危害につながるシステム、公共の調達では、副特性の単位まで下ろして書くべきです。データそのものの品質(正確性や完全性)は25010ではなくISO/IEC 25012の範囲で、データ品質のテスト方法とAIテストの実務|評価指標・品質ガイドラインで扱っています。
よくある質問
ISO/IEC 25010の意味は何ですか?
ソフトウェアやICT製品の品質を9つの品質特性と40の副特性に分類した国際規格(製品品質モデル)です。「25010」は規格番号で、SQuaRE規格群のうち2501n=品質モデル部門に属します。
ISO/IEC 25010の非機能要件とは何ですか?
25010自体は非機能要件を定めていません。性能効率性・信頼性・セキュリティなどの品質特性を観点として使い、副特性ごとに測定量と合格基準を決めたものが非機能要件になります。
品質特性の8特性とは何ですか?
ISO/IEC 25010:2011(JIS X 25010:2013)の製品品質8特性で、機能適合性・性能効率性・互換性・使用性・信頼性・セキュリティ・保守性・移植性です。2023年版では安全性が加わって9特性になり、使用性と移植性は別の名称に置き換わりました。
ソフトウェア品質の6特性とは何ですか?
前身のISO/IEC 9126の品質特性で、機能性・信頼性・使用性・効率性・保守性・移植性の6つです。25010:2011では機能性からセキュリティが独立し、機能性の相互運用性と移植性の共存性をまとめた互換性が加わって8特性になりました。
2011年版と2023年版のどちらを使えばよいですか?
新しく要件書やチェックリストを作るなら2023年版(JIS X 25010:2025)です。既存の資料が2011年版で作られている場合は、取引先と版を合意したうえで、上の対応表に沿って移し替えます。