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AWS Control Towerとは?ランディングゾーン4.0の仕組み・料金の実額と導入判断をCLI例つきで解説

AWS Control Towerとは?ランディングゾーン4.0の仕組み・料金の実額と導入判断をCLI例つきで解説

AWS Control Towerは、複数のAWSアカウントを安全な初期構成のまま一括でセットアップし、統制を効かせ続けるためのマネージドサービスです。この記事では、Control Towerが自動生成する「ランディングゾーン」、ルールを強制する「コントロール(旧ガードレール)」、アカウントを払い出す「Account Factory」、構成のずれを見張る「ドリフト検知」という4つの中核を、AWS公式ユーザーガイドの記述に沿って実装者の目線で整理します。あわせて、2025年11月に出たランディングゾーン4.0でサービス統合が任意になった点、マニフェストJSONとAWS CLIで立ち上げる手順、公式料金例が示す月額の実額、自社が導入すべき場面・見送るべき場面までを条件付きで示すのが本記事の狙いです。

まとめ:Control Towerが自動化する範囲と、導入が見合う組織の条件

AWS Control Towerは、AWS OrganizationsやAWS Config、CloudTrail、CloudFormation StackSetsといった複数サービスを裏側で束ね、マルチアカウント環境の初期構築とガバナンスを標準化するマネージドサービスです。管理コンソールから数十分でランディングゾーンを立ち上げ、ログ集約用と監査用の共有アカウントを含むベースラインを一度に整えられます。サービスの位置づけは公式のWhat Is AWS Control Tower?に定義があります。

2025年11月17日に出たランディングゾーン4.0で、この「一式まとめて」の前提が変わりました。AWS Config・CloudTrail・Security Roles・AWS Backupの各統合を個別に有効化/無効化できます。「Control Towerは全部入りだから重い」という2024年までの前提で見送った組織は、判断をやり直す価値があります。

Control Tower本体に追加料金はかかりません。課金されるのは、内部で有効になるAWS ConfigやCloudTrail、S3、SNSなどの基盤サービス側です。公式の料金例では、10アカウント・1リージョンの小規模プロファイルで月額3.75ドル、25アカウント・3リージョンの大規模プロファイルで月額60.625ドルという水準が示されています。つまり「無料でマルチアカウント統制の枠組みが手に入るが、その枠組みが回すサービスの従量課金は発生する」という費用構造になります。

導入が見合うのは、3アカウント以上を運用し、部門やプロジェクトごとにアカウントを増やしていく計画がある組織です。逆に、1〜2アカウントで完結し当面増える予定がない環境では、Control Towerが敷くガバナンス層は過剰になりやすく、素のAWS Organizationsによるマルチアカウント管理とIaCで足ります。判断基準は本文後半の独自章で条件を分けて示します。

AWS Control Towerとは:Organizations上に敷く統制の型

まず、Control Towerが「何を代行するサービスなのか」を、単体のAWS Organizationsとの役割分担から押さえます。

Control Towerの定義とAWS Organizations単体との役割の違い

AWS Control Towerは、マルチアカウント環境の設計・構築・運用を、AWSのベストプラクティスに沿った形で自動化するマネージドサービスです。土台にはアカウントをOU(組織単位)でまとめるAWS Organizationsがありますが、Organizations単体が提供するのは「アカウントをツリー状に束ねる器」と、SCP・RCPによるポリシー適用、一括請求までにとどまります。そこにログ集約・監査・ルール強制・アカウント払い出しといった運用の型を載せ、コンソール上のダッシュボードで可視化するのがControl Towerの役割になります。

言い換えると、Organizationsが土台、Control Towerがその上に敷く「統制のテンプレート」にあたります。用語の一つひとつ、たとえばOUや共有アカウント、コントロールの意味を先に固めたい場合は、基本用語をまとめたAWS Control Towerにおける基本用語の解説記事を先に読むと本記事の各章が入りやすくなります。

ランディングゾーンとして自動生成される初期のマルチアカウント構成

Control Towerを有効化すると、最初に「ランディングゾーン」と呼ばれるマルチアカウントのベースラインが自動生成されます。ここには、操作の起点になる管理アカウントに加えて、全アカウントのログを集約するログアーカイブアカウントと、セキュリティ監査用の監査アカウントという2つの共有アカウントが作られます。3.x系ではこれらを専用のSecurity OUの下に置く必要がありましたが、4.0では「サービス統合用のアカウントがルート直下の同一OUにある」ことだけが要件になりました。

これらを手動で設計するなら、S3のログバケット設計、クロスアカウントのIAMロール、CloudTrailの証跡集約、AWS Configのアグリゲータ設定などを個別に組む必要が生じます。ランディングゾーンは、その定型作業をCloudFormation StackSetsによるマルチアカウント展開の仕組み経由でまとめて配る仕掛けです。版が上がると監査系OUの扱いやドリフト通知の経路が変わる点にも留意が要ります。構成要素とバージョンごとの差分はLanding Zoneの構成とv4.0変更点を解説した記事で詳しく扱っています。

Control Towerを使わず統制基盤を自作する場合の責任分界

Control Towerを使わずに同等の統制を実現する道もあります。AWS OrganizationsにSCP(サービスコントロールポリシー)を書き、Terraformなどで監査基盤を構築し、アカウント作成を自動化スクリプトで回す構成です。この自作路線は自由度が高い反面、設計と保守の責任がすべて自社に残ります。Control Towerは、この定型部分をAWSがマネージドで面倒を見る代わりに、構成の自由度をある程度手放す取引だと捉えると選定の軸がぶれません。4.0で統合が任意化された今、この取引は「全部預けるか全部自作するか」の二択から、統合単位で預け先を選ぶ形へ動きました。

ランディングゾーンとコントロールを支える構成要素と課金の発生源

Control Towerの中身は、大きく「ランディングゾーン」「コントロール」「Account Factory」「ドリフト検知」の4要素に分けられます。それぞれが裏でどのAWSサービスを動かしているかまで押さえると、料金とトラブル対応の見通しが立ちます。

管理・ログアーカイブ・監査という3アカウントの役割と権限分離

ランディングゾーンの中核は、管理アカウント・ログアーカイブアカウント・監査アカウントの3者です。管理アカウントはControl Tower自体を操作する起点で、コントロールの適用やアカウント払い出しの指示はここから行います。ログアーカイブアカウントはCloudTrailやAWS Configのログを一元的に受け取り、監査アカウントはセキュリティ担当がクロスアカウントで各アカウントを点検するための入口になります。運用権限を分離できる点が、単一アカウントに全ログを溜める構成との違いです。4.0ではAWS Config用とCloudTrail用のS3バケットが分かれ、ログの保持期間や暗号化キーをサービス単位で変えられます。証跡側の設計はCloudTrailの証跡設計と料金を解説した記事と突き合わせて決めると漏れが減ります。

予防的・検知的・プロアクティブという3種のコントロールの効き方

コントロールは、以前ガードレールと呼ばれていた統制ルールです。適用の効き方で3タイプに分かれます。

タイプ 効き方 実現手段 例
予防的(Preventive) 違反する操作自体を拒否 SCP・RCP・宣言型ポリシー 特定リージョンでの作成を禁止
検知的(Detective) 違反した状態を後から検出 サービスリンクConfigルール 暗号化されないボリュームを検出
プロアクティブ(Proactive) 作成前に非準拠リソースを停止 CloudFormation Hooks 準拠しないデプロイをブロック

予防的は「そもそもやらせない」、検知的は「やった後に気づく」、プロアクティブは「デプロイ直前で止める」と役割が異なります。予防的コントロールは管理アカウントには適用されないため、管理アカウントを日常運用の作業場にしない設計が前提になります。なお、2025年11月14日に279件のAWS Configコントロールがコントロールカタログへ追加され、選べる検知的コントロールの幅は2024年時点から大きく広がりました。追加分の一覧は公式のIntegrated AWS Config controlsで確認できます。

検知的コントロールがサービスリンクConfigルールへ変わった影響

2025年6月12日、検知的コントロールの配り方が変わりました。それまでCloudFormation StackSets経由でAWS Configルールを配っていたのが、AWS Config APIを直接呼ぶサービスリンクConfigルールへ切り替わっています。配布が速くなる代わりに、無視できない制約が付きました。サービスリンクConfigルールには修復設定(PutRemediationConfigurations)を追加できません。Control Tower外でConfigルールに独自の自動修復を足していた環境では、その独自設定は移行時に外れます。

見分け方はARNの形です。ランディングゾーンが3.2以上なら、UpdateまたはResetの後に各検知的コントロールをResetするか、OUを再登録するところまでやって切り替えが完了します。

# サービスリンクConfigルールはARNの形で見分けられる
arn:aws:config:*:*:config-rule/aws-service-rule/controltower.*/*

# 有効化済みコントロールをOU単位で一覧する
aws controltower list-enabled-controls \
  --target-identifier arn:aws:organizations::123456789012:ou/o-s64ryxxxxx/ou-oqxx-i5wnxxxx

Configそのものの記録単位や料金の考え方はAWS Configの記録・ルール評価・料金を解説した記事に整理しています。

Account Factoryによるアカウント払い出しの標準化が効く条件

Account Factoryは、新規アカウントを標準化された設定で払い出す仕組みです。払い出したアカウントへサードパーティ製品を行き渡らせる経路は、AWS Marketplaceの購入権限とライセンス共有の設計で扱っています。ネットワークの初期設定やコントロールの適用済み状態でアカウントが生成されるため、部門やプロジェクトが増えるたびに手作業でベースラインを組み直す必要がなくなります。IaCから扱う場合は、Account Factory for Terraform(AFT)を併用して、アカウント発行そのものをコード管理する構成も選択肢の一つです。AFTはaws-ia/terraform-aws-control_tower_account_factoryで公開されており、2025年7月28日にバージョン1.15.0が出ています。アカウントの増加ペースが速い組織ほど、この払い出しの標準化が効いてくる場面です。払い出す中身そのものをカタログ化して統制するなら、AWS Service Catalogの仕組みと組み合わせると、アカウントの器と中身の両面を標準化できます。

ドリフト検知の対象と2025年8月に除外された2種類のドリフト

ランディングゾーンを立ち上げた後、誰かがOU構成や共有アカウントの設定を手で変えると、Control Towerが想定する状態と実態がずれます。この乖離が「ドリフト」です。ドリフトが出たまま放置すると、ランディングゾーンの更新や新機能の適用が滞る原因になります。ここで実務上の変化がありました。2025年8月20日、「管理対象OUへのSCPアタッチ」と「メンバーアカウントへのSCPアタッチ」の2種類が、ドリフトとして扱われなくなっています。コンソール外からOUを触るたびにドリフト警告が上がっていた運用は、この更新で静かになりました。検知の対象範囲と解消手順は公式のDetect and resolve drift in AWS Control Towerが一次情報です。

ランディングゾーン4.0で任意になったサービス統合とCLIでの構築手順

2025年11月17日のランディングゾーン4.0は、単なる版上げではなく構成の前提が入れ替わった更新です。何が任意になり、どこをマニフェストで指定するのかを、実行できる形で追います。

ランディングゾーン4.0で任意になった4つのサービス統合の中身

4.0で任意化されたのは、AWS Config・AWS CloudTrail・Security Roles・AWS Backupの4つの統合です。無効にすると、その統合のためにControl Towerが配ったリソースは管理対象アカウントと集約先アカウントの双方から片づけられます。依存関係が1つだけあります。AWS Config統合を無効にするなら、Security Roles・IAM Identity Center・AWS Backupの各統合もあわせて無効にしてください。さらに、マニフェスト自体が任意になったため、AWS Organizations連携とコントロール有効化だけを持つ最小構成のランディングゾーンも作れます。変更点の全体像は公式のLanding Zone v4.0 migration guideにまとまっています。

マニフェストJSONで指定する統合単位の設定項目と必須フラグ

4.0のマニフェストでは、5つの統合ブロック(accessManagement・backup・centralizedLogging・config・securityRoles)すべてにenabledの真偽値を明示します。既定値は用意されていないため、書き忘れるとエラーになります。3.x系にあったorganizationStructureの定義は削除されました。ログとConfigのバケットは保持日数を別々に指定でき、最小値は1日です。

{
  "accessManagement": { "enabled": true },
  "securityRoles": { "enabled": true, "accountId": "111122226666" },
  "centralizedLogging": {
    "accountId": "111122225555",
    "enabled": true,
    "configurations": {
      "loggingBucket": { "retentionDays": 365 },
      "accessLoggingBucket": { "retentionDays": 3650 }
    }
  },
  "config": {
    "accountId": "111122226666",
    "enabled": true,
    "configurations": {
      "loggingBucket": { "retentionDays": 365 },
      "accessLoggingBucket": { "retentionDays": 3650 }
    }
  },
  "backup": { "enabled": false },
  "governedRegions": ["ap-northeast-1", "us-east-1"]
}

governedRegionsに並べたリージョンが、そのままAWS Configの課金対象範囲になります。使う予定のないリージョンをここに入れないでください。マニフェストの全キーは公式のLaunch your landing zone using the AWS Control Tower APIsに一覧があります。

CLIでランディングゾーンを作成し操作完了を待つまでのコマンド

コンソールを使わずAPIから立ち上げる場合、create-landing-zoneにバージョンとマニフェストを渡します。戻り値のoperationIdentifierで進捗を追い、SUCCEEDED・FAILED・IN_PROGRESSのどれかが返る形です。ベースラインの適用状況を機械的に点検したいなら、list-enabled-baselinesに--include-childrenを付けるとアカウント単位まで降りて状態を取れます。

# ランディングゾーンを4.0で作成する(manifest.json は上のJSON)
aws controltower create-landing-zone \
  --landing-zone-version 4.0 \
  --manifest file://manifest.json

# 返ってきた operationIdentifier で進捗を確認する
aws controltower get-landing-zone-operation \
  --operation-identifier 55XXXXXX-e2XX-41XX-a7XX-446XXXXXXXXX

# ベースラインの適用状況をアカウント単位まで降りて確認する
aws controltower list-enabled-baselines --include-children

サブコマンドは2026年9月時点で26個あり、ランディングゾーン系・コントロール系・ベースライン系・タグ系に分かれます。全量はAWS CLIのcontroltowerリファレンスで確認できます。

ランディングゾーンのバージョン選択とアカウント更新が要る条件

3.1以降を使っているなら、UpdateやResetの操作時に配置する版を選べます。ドリフトの修復にはResetが向きます。ここで見落とされやすいのがベースラインの世代です。ランディングゾーンの版とベースラインの版は1対1ではありません。3.1から3.2へ上げるならベースラインが同じなのでアカウント更新は不要ですが、3.1から3.3へ飛ばすとベースラインが4.0世代へ変わるため、ランディングゾーン更新の後にアカウント側の更新(登録済みOUの再登録)が要ります。版を選ぶ条件は公式のSelect a landing zone versionが一次情報です。中間の版を飛ばした場合、Control Towerが間の版を自動で適用してから目的の版へ進めます。

AWS Control Towerの料金構造と公式料金例で見る月額の実額

費用は「Control Tower本体」と「裏で動く基盤サービス」を分けて考えると誤解しません。

Control Tower本体は無料で課金は基盤サービス側に寄る構造

AWSのAWS Control Tower Pricingには「There is no additional charge to use AWS Control Tower.」と明記されています。料金がかかるのは、Control Towerが有効化・利用するAWSサービス側です。公式が名指ししているのは、AWS Service Catalog、AWS CloudTrail、AWS Config、Amazon CloudWatch、Amazon SNS、Amazon S3、Amazon VPCの7つになります。「Control Towerを入れると別料金が上乗せされる」のではなく、「Control Towerが動かす部品の実費を払う」構造です。4.0で統合を無効化できるようになったため、この実費の発生源を構成で削る余地も生まれました。

公式の料金例が示す10アカウントと25アカウントの月額の実額

公式料金ページは、前提条件つきの試算を4本載せています。金額の桁感を掴むのに使えます。

プロファイル 前提 初期費用 月額
セットアップ直後 追加コントロールなし 0.033ドル ほぼ0ドル
小規模 10アカウント・1リージョン 0.31ドル 3.75ドル
大規模 25アカウント・3リージョン 3.775ドル 60.625ドル
エフェメラル 1アカウント・1リージョン — 372ドル

大規模プロファイルの月額60.625ドルは、AWS Configの設定項目記録16,875件で50.625ドル、ルール評価10,000件で10.00ドルという内訳です。単価は継続的な設定項目が1件0.003ドル、ルール評価が最初の10万件まで1件0.001ドルになります。アカウント数とリージョン数の掛け算でConfigが伸びる構造が、この内訳から読み取れます。

AWS Configの設定項目が跳ねる場面で請求が崩れる条件と抑え方

桁が変わるのは4本目のエフェメラルワークロードの例です。EC2スポットインスタンス100台とAuto Scalingリソース100個があり、24時間で10回スケールする環境では、1アカウント・1リージョンあたり24時間で4,000件の設定項目が記録され、1日12ドル・月372ドルに達します。25アカウント・3リージョンの定常運用が月60.625ドルだったことと並べると、アカウント数ではなく「構成変更の回数」が請求を決める場面があると分かります。

抑え方は3つです。第一に、統制対象リージョンをgovernedRegionsで実際に使う範囲へ絞ります。第二に、Config用バケットとCloudTrail用バケットへ別々の保持日数を割り当てる設計です。第三に、スケールが激しいワークロードは統制対象のOUから外すか、Config統合を無効にした最小構成のランディングゾーン配下へ置きます。アカウントを増やす前にこの3点を決めておくと、請求額のぶれを防げます。

既存Organizations環境への登録手順と移行前に決める設計事項

Control Towerのセットアップ自体はコンソールから進みますが、後戻りしにくい設計判断が最初に集中します。

新規にランディングゾーンを立ち上げるセットアップの流れと設計事項

新規に立ち上げる場合、概ね次の流れになります。

  1. 管理アカウントを用意し、Control Towerのホームリージョンを決める
  2. ログアーカイブ・監査の共有アカウント用メールアドレスを指定する
  3. 有効化するサービス統合(Config・CloudTrail・Security Roles・Backup)を選ぶ
  4. 適用するコントロールと統制対象リージョンを選ぶ
  5. ランディングゾーンを起動し、生成された構成をダッシュボードで確認する

ホームリージョンと共有アカウントのメールアドレスは後から変えにくいため、社内の命名規則や請求管理の方針と突き合わせて先に確定させます。ここを仮置きのまま進めると、後の作り直しコストが膨らむ原因になりがちです。4.0では3番目のサービス統合の選択が新たに加わり、ここでの取捨選択がそのまま毎月の請求額に効いてきます。

既存OrganizationsのOU構成とSCPの衝突を登録前に点検する観点

すでにAWS Organizationsで複数アカウントを運用している環境にControl Towerを重ねる場合、既存のOU構成やSCPと、Control Towerが敷こうとするベースラインが衝突しないかを事前に点検します。既存アカウントはControl Towerの管理下に「登録(Enroll)」して取り込みますが、登録時にコントロールが一斉に適用されるため、現行の運用を止めるルールが混ざっていないかをステージング的に確認してから本適用するのが安全です。移行の設計を誤ると本番アカウントに予期しない制約がかかるため、この工程は自作のIaC移行と同じ慎重さで扱います。4.0でSecurity OUの必須要件が外れ、既存のOU階層を崩さずに重ねられる余地は3.x系より広がりました。

自動アカウント登録を有効にしたときのOU移動と統制の入れ替わり

2025年10月15日、ランディングゾーン3.1以上を対象に、アカウントの自動登録が使えるようになりました。有効にすると、アカウントを新しいOUへ移した時点で、そのOUのベースラインとコントロールが適用され、移動元OUのコントロールとベースラインは外れます。多くの場合、この入れ替わりでドリフトは発生しません。設定はCreateLandingZoneまたはUpdateLandingZoneのAPIでRemediationTypeにInheritance Driftを指定するか、コンソールの設定画面から切り替えます。登録済みOUの外へアカウントを動かせば、配られたベースラインリソースとコントロールは自動で撤収されます。OUの移動が統制の切り替えと直結する以上、OUを運用都合で頻繁に触る組織では、移動のたびに何が入れ替わるかを手順書に書き下してください。2025年の更新履歴は公式のJanuary 2025 – December 2025にまとまっています。

AWS Control Towerを採用すべき企業と見送るべき場面の線引き

ここは公式ドキュメントには書かれない、導入可否の線引きです。条件を分けて言い切ります。

AWS Control Towerの採用が投資に見合う組織の条件

採用が投資に見合うのは、次のいずれかに当てはまる組織です。アカウントを3つ以上運用し、今後も部門・環境(本番/検証)・プロジェクト単位でアカウントを増やす計画がある。監査やセキュリティの担当を運用アカウントから分離したい。マルチアカウントのログ集約とガバナンスを自前で設計・保守する人的リソースを割きたくない。これらに複数当てはまるなら、ランディングゾーンとAccount Factoryが敷く標準化の効果が、Config等の従量課金を上回りやすくなります。25アカウント・3リージョンで月60.625ドルという公式試算を、同等の統制を自作した場合の工数と並べて比べてください。

Control Towerの導入を見送るべき・過剰投資になる場面

逆に、次の状況ではControl Towerは過剰です。運用アカウントが1〜2個で、当面増える見込みがない。すでにTerraformなどでマルチアカウント基盤を自作し、SCP・ログ集約・アカウント発行までコードで回せている。検証専用の短命な環境で、統制よりも作っては壊す速度を優先したい。こうしたケースでは、Control Towerのガバナンス層はAWS Configの費用と運用制約だけが残り、見返りが小さくなります。素のAWS OrganizationsとIaCで足りるなら、無理に載せ替えない判断が妥当です。ただし4.0以降は、Config統合を切った最小構成でコントロールだけを載せる選択肢が増えたため、「費用が読めないから丸ごと見送る」という結論は、いったん構成を分解してから出し直す価値があります。

Control Towerの設計と移行を内製しきれない場合の委託基準

Control Towerは初期セットアップこそコンソールで進みますが、既存Organizationsからの移行、コントロールの取捨選択、Config費用を抑えるリージョン設計、4.0へのマニフェスト移行とランディングゾーン更新の運用まで含めると、設計判断の総量は小さくありません。ここを内製で背負いきれない場合は、マルチアカウント設計から運用定着までを外部に委ねる選択があります。株式会社一創では、AWS・Google Cloud・Azureのインフラ構築として、Control Towerを含むクラウド基盤の設計・移行を受託しています。自社の要件に合う統制の形を、費用構造まで含めて設計したい場合の相談先です。構築を外部に委託したときに、OU・権限セット・組織の証跡などの納品物をAWS CLIで検収する手順はAWS導入支援の中身:初期構築の範囲と成果物をCLIで検収する手順・委託先の選び方にまとめています。

よくある質問

AWS Control Towerの導入検討で実際に挙がりやすい疑問に答えます。

AWS Control Towerとランディングゾーンは何が違いますか?

Control Towerはマルチアカウント環境を統制するマネージドサービスの名称で、ランディングゾーンはそのControl Towerが自動生成する「マルチアカウントのベースライン構成」を指します。サービスがControl Tower、そのサービスが作り出す初期環境がランディングゾーン、という包含関係です。ランディングゾーンには版があり、2025年11月17日に出た4.0が2026年9月時点の最新になります。版を上げると構成の一部が変わります。

AWS Control Towerの利用に料金はかかりますか?

Control Tower本体の利用に追加料金はかかりません。課金されるのは、Control Towerが内部で有効化するAWS ConfigやCloudTrail、S3、SNSなどの基盤サービスの従量料金です。公式の料金例では、10アカウント・1リージョンで月額3.75ドル、25アカウント・3リージョンで月額60.625ドルという水準が示されています。とくにAWS Configは対象アカウント数とリージョン数、そして構成変更の回数に比例して増えるため、請求の中心になりやすい項目になります。

ランディングゾーン4.0では何が変わりましたか?

AWS Config・CloudTrail・Security Roles・AWS Backupの各サービス統合が任意になり、必要なものだけを有効化できます。Security OUを置く必須要件も外れ、サービス統合用アカウントがルート直下の同一OUにあれば要件を満たす構成です。AWS Config用とCloudTrail用のS3バケットが分離され、SNSトピックもサービスごとに作られます。マニフェスト自体も任意になったため、Organizations連携とコントロール有効化だけの最小構成を選べます。

予防的コントロールと検知的コントロールはどう使い分けますか?

予防的コントロールはSCPやRCPで違反操作そのものを拒否し、検知的コントロールはAWS Configで違反状態を後から検出します。絶対に許可したくない操作は予防的で止め、状態として監視したい項目は検知的で追う、という切り分けが基本です。加えて、デプロイ前にリソースを止めたい場合はプロアクティブコントロールを併用します。なお検知的コントロールは2025年6月からサービスリンクConfigルールで配られ、独自の修復設定は追加できません。

既存のAWSアカウントをControl Towerに取り込めますか?

取り込めます。既存アカウントはControl Towerに「登録(Enroll)」する形で管理下に入れます。ただし登録時にコントロールが適用されるため、現行運用を妨げるルールが含まれないかを事前に確認し、段階的に本適用するのが安全です。既存のOU構成やSCPとの衝突点検も先に済ませておきます。3.1以上なら自動登録を有効にして、OUへ移すだけで取り込む運用にもできます。

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