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AWS Direct Connectとは?専用線接続の仕組み・VPNとの違い・料金と導入判断【2026年版】

AWS Direct Connectは、自社のオフィスやデータセンターとAWSの間を、通信事業者の物理専用線で直結する閉域接続の仕組みです。インターネットを経由しないため帯域が安定し、下り方向のデータ転送料も割安になる点が特徴です。この記事では、専用接続とホスト接続という接続タイプの違い、Private/Public/Transit の3種類の仮想インターフェース、VPNとの通信経路・帯域・料金の違いを、実装者の目線で整理します。そのうえで、専用線を敷くべき要件と、AWS Site-to-Site VPNで十分な見送り場面を条件付きで判断します。クラウド・AWSの全体像を押さえたうえで、ネットワーク層の接続方式を選ぶ材料にしてください。

まとめ:Direct Connectは「帯域の安定と閉域性」を専用線で買うサービス

Direct Connectの本質は、オンプレミスとAWSの間にインターネットを挟まない専用の物理回線を用意することです。VPNがインターネット上に暗号化トンネルを張るのに対し、Direct Connectは通信事業者の閉域網で1Gbps/10Gbps/100Gbpsといった帯域を占有します。混雑の影響を受けにくく、遅延のばらつきが小さいことが最大の価値です。

料金は「ポート時間課金」と「データ転送料(下り)」の2階建てで、下りの単価はインターネット経由より安く設定されます。ただし専用接続の開通には物理配線と通信事業者との契約が必要で、リードタイムは数週間から数か月に及びます。

判断の軸は明快です。安定帯域・低遅延・大量データ転送が業務要件になるなら専用線、通信量が小さく短期・検証用途ならVPNで足ります。両者は排他ではなく、Direct Connectを主系・VPNをバックアップにする冗長構成が実務の定石です。

Direct Connectの定義と専用線で閉域接続する仕組み

まず、Direct Connectが「何を」「どうやって」つないでいるのかを、物理層から仮想インターフェースまで順に見ていきます。

オンプレミスとAWSをインターネット非経由で直結する定義と範囲

Direct Connectは、AWSが指定する「Direct Connectロケーション」と呼ばれるデータセンター内の相互接続ポイントで、利用者側のルーターとAWS側のルーターを物理的に接続するサービスです。通信はインターネットを通らず、通信事業者の閉域網を経由してVPCへ届きます。経路上に公衆網が存在しないため、経路のばらつきや第三者経由の盗聴リスクを構造的に減らせます。

接続の論理的な確立にはBGP(Border Gateway Protocol)を用い、オンプレミス側とAWS側で経路情報を交換します。IPアドレス設計とAS番号(ASN)の割り当てが前提になる点で、通常のインターネット接続より一段ネットワーク設計の知識を要します。

専用接続とホスト接続という2つの契約形態とポート速度の選び分け

Direct Connectの契約形態は、AWSと直接ポートを契約する「専用接続(Dedicated Connection)」と、APNパートナー経由で回線を分けてもらう「ホスト接続(Hosted Connection)」に分かれます。専用接続は1Gbps・10Gbps・100Gbpsのポート速度を占有し、大容量・複数VIF運用に向いた形態です。ホスト接続は50Mbps程度から段階的に速度を選べ、パートナーが敷設済みの回線を間借りする形なので、小さく始めたい場合や開通を急ぐ場合に適します。

観点 専用接続(Dedicated) ホスト接続(Hosted)
契約先 AWSと直接 APNパートナー経由
ポート速度 1/10/100 Gbps(占有) 50Mbps〜(提供事業者で上限が異なる)
仮想インターフェース数 1ポートに複数VIFを作成可 原則1接続あたり1VIF
開通の速さ 物理配線ぶん時間を要する 敷設済み回線を分けるため比較的速い
向く用途 大容量・本番の基幹接続 小規模・短期・検証

速度や上限はリージョンとパートナーの提供状況で変わるため、要件が固まった段階で提供事業者の最新メニューを確認してください。ここでの表は2026年時点の一般的な区分です。

Private・Public・Transitの3種類の仮想インターフェース

1本の物理接続の上に、用途別の論理的な口として仮想インターフェース(VIF)を作ります。VIFの種類で到達できるAWS側の範囲が変わります。

  • Private VIF:特定のVPCにプライベートIPで到達する口。EC2やRDSなどVPC内リソースへの接続に使う。
  • Public VIF:S3やパブリックなAWSサービスのエンドポイントへ、AWSのグローバルIP空間経由で到達する口。
  • Transit VIF:Direct Connectゲートウェイ経由でTransit Gatewayに接続し、複数VPC・複数リージョンをまとめて束ねる口。

複数VPCや複数アカウントへ同時に届かせたい場合は、Direct Connectゲートウェイを挟んでTransit VIFで集約する構成が主流です。1つの物理接続を全社の入口として使い回せるため、拠点増設のたびに回線を敷き直す必要がなくなります。

AWS Direct ConnectとVPNの違い・料金・冗長構成の実装ポイント

Direct Connectを検討する多くのケースで、比較対象になるのはAWS Site-to-Site VPNです。両者は通信経路の作り方が根本から異なります。

通信経路・帯域・遅延・暗号化という観点で比較するVPNとの違い

VPNはインターネット上にIPsecの暗号化トンネルを張る方式で、既存のインターネット回線があればその日のうちに構成できます。反面、経路は公衆網に依存し、帯域や遅延は混雑の影響を受けやすい方式です。Direct Connectは物理専用線を占有するため、帯域と遅延が安定します。VPNの詳しい仕組みはVPNの解説記事で補完してください。

観点 Direct Connect Site-to-Site VPN
通信経路 専用線・閉域網(非インターネット) インターネット経由の暗号化トンネル
帯域の安定性 占有帯域で安定 回線混雑の影響を受ける
暗号化 既定は非暗号(MACsec対応ポートで暗号化可) IPsecで常時暗号化
開通リードタイム 数週間〜数か月 即日〜数時間
下りデータ転送料 インターネット経由より割安 標準のインターネット料金

暗号化の扱いは設計上の分岐点です。Direct Connectは既定で暗号化されないため、コンプライアンス上の要求があれば10G/100G専用接続で使えるMACsec、あるいはDirect Connect上にVPNを重ねる構成を検討します。

ポート時間とデータ転送量という2要素で決まる料金体系の考え方

Direct Connectの課金は主に2要素です。1つはポートを確保している時間に対する「ポート時間課金」で、ポート速度が上がるほど単価も上がります。もう1つはAWSから外向きに出る「データ転送料(Data Transfer Out)」で、Direct Connect経由の下り単価は同一リージョンのインターネット下りより低く設定されます。

したがって、外向きの通信量が大きいほどデータ転送料の差でDirect Connectの相対コストが下がっていきます。逆に通信量が小さい業務では、ポート時間の固定費がVPNの安さを上回り、割高になりがちです。損益分岐は「毎月どれだけ下り転送が出るか」で決まると考えると見積もりの精度が上がります。

単一障害点を避けるためのLAG・複数拠点・VPN併用の冗長構成

専用線は1本だと物理障害でAWS接続が全断します。可用性を担保するなら、次の順で冗長度を上げます。

  1. 同一ロケーション内で2ポートを束ねてLAG(Link Aggregation Group)化し、帯域と片系冗長を確保する。
  2. 異なるDirect Connectロケーションに2本目を敷き、ロケーション障害まで耐える。
  3. Direct Connectを主系、Site-to-Site VPNをバックアップに置き、専用線断時はVPNへ自動フェイルオーバーさせる。

コストと可用性のバランスで、多くの本番環境は「2ロケーション冗長」か「Direct Connect+VPNバックアップ」に落ち着きます。検証や社内利用であれば単一接続でも許容される場合があります。

Direct Connectを採用すべき要件と見送るべき場面

ここからは判断です。専用線は開通に時間と固定費がかかるため、要件に照らして採否を先に決めておくと、後戻りを避けられます。

専用線を採用すべき帯域・大量転送・閉域という3つの業務要件の見極め

次のいずれかが業務要件になっているなら、Direct Connectを前向きに検討する価値があります。

  • 帯域の安定と低遅延が品質に直結する:基幹システム連携、リアルタイム性の高いデータ同期、大容量バックアップの定期転送など。
  • 外向きの転送量が恒常的に大きい:毎月まとまった下り転送が発生し、データ転送料の差が固定費を上回る。
  • 閉域要件がある:規程や取引先要件でインターネットを経由しない経路が求められる。

これらに該当する場合、開通リードタイムを見込んで早めに通信事業者・パートナーへ相談を始めるのが現実的です。要件定義から回線設計・冗長化までを一気通貫で任せたい場合は、AWSを含むインフラ構築の受託で設計から運用まで支援できます。

VPNで十分で、Direct Connectを見送るべき場面

逆に、次のような条件では専用線は過剰投資になりやすく、Site-to-Site VPNで始めるべきです。短期のPoCや検証環境通信量が小さくポート固定費を回収できない業務数時間で接続を立ち上げたい緊急要件——このいずれかに当てはまるなら、まずVPNで構成し、通信量と可用性要件が育った段階でDirect Connectへ移行する順番が無駄がありません。「安定帯域が要るか」を満たさないうちに専用線を敷くと、固定費だけが残ります。

運用でつまずきやすい経路数の上限とBGPの経路集約という設計

Direct Connectの運用で見落とされがちなのが、BGPで広告できる経路数の上限です。1つの仮想インターフェースあたりの受け入れプレフィックス数には上限があり、オンプレミス側から必要以上に細かい経路を広告するとセッションが不安定になります。この「100ルート問題」と呼ばれる制約と回避策は、AWS Direct Connectの100ルート問題の解説で具体的に整理しています。経路集約(サマライズ)の設計を最初に決めておくことが、増設時のトラブルを避ける実務のコツです。

AWS Direct Connectの導入検討でよくある質問

導入検討でよく挙がる論点を、実装の観点で簡潔に答えます。

Direct ConnectとVPNはどちらを選ぶべきですか?

安定帯域・低遅延・大量の下り転送・閉域要件のいずれかが業務要件なら Direct Connect、通信量が小さく短期・即時に立ち上げたいなら VPN が適します。両者は排他ではなく、Direct Connectを主系、VPNをバックアップにする冗長構成も一般的です。まずVPNで始め、要件が育ってからDirect Connectへ移行する進め方も現実的です。

Direct Connectは通信が暗号化されますか?

既定では暗号化されません。経路がインターネットを通らない閉域接続であることで安全性を確保する設計です。暗号化が必須の場合は、10Gbps/100Gbpsの専用接続で使えるMACsec、またはDirect Connect上にIPsec VPNを重ねる構成を選びます。

開通までどのくらいの期間がかかりますか?

専用接続は物理配線と通信事業者との契約が必要なため、数週間から数か月を見込みます。パートナー経由のホスト接続は敷設済み回線を分けるため、比較的短期で開通できる形態です。急ぎで接続が要る場合は、先にSite-to-Site VPNで暫定接続し、並行してDirect Connectを準備する方法があります。

1本の回線で複数のVPCやリージョンに接続できますか?

できます。Direct Connectゲートウェイを挟み、Transit Gatewayと組み合わせることで、1つの物理接続から複数VPC・複数リージョンへ到達させられます。拠点や環境が増えても回線を敷き直さずに済むため、全社の入口として集約する構成が主流です。

料金はどのように決まりますか?

主に「ポートを確保している時間に対する課金」と「AWSから外へ出るデータ転送料(下り)」の2要素で決まります。ポート速度が上がるほどポート単価は上がり、下りの転送単価はインターネット経由より割安です。外向きの通信量が大きいほどDirect Connectの相対コストが下がるため、月次の下り転送量を基準に見積もると精度が上がります。

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