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アンラーニングとは?意味とリスキリングとの違い・やり方を原典から解説

アンラーニングとは?意味とリスキリングとの違い・やり方を原典から解説

アンラーニング(unlearning)とは、環境が変わって通用しなくなった知識・スキル・仕事のやり方の使用をやめ、新しいものに組み替えることです。日本語では「学習棄却」や「学びほぐし」と訳されます。この記事では、言葉の意味と訳語の由来、リスキリングとの違い、個人と職場での進め方を整理します。あわせて、よく引用される名言の原文と、研究上どこまで裏付けがあるのかも一次資料で確認します。

まとめ:アンラーニングの意味と進め方の要点

  • 意味:古くなった知識ややり方を意図的に手放し、新しいものを取り込むこと(松尾睦『仕事のアンラーニング』出版社紹介)。全部を捨てるのではなく、効かなくなった部分だけを入れ替えます。
  • リスキリングとの違い:リスキリングは新しいスキルを身につけることで、アンラーニングは古い型の使用をやめることです。新しい型を覚えても古い型を使い続けていれば、行動は変わりません。
  • 起源:経営学では1981年のヘドバーグの論文と、1984年のナイストロムとスターバックの論文が出発点です。個人を対象にした研究が始まったのは2000年代からです。
  • やり方:自分の型を言葉にし、効かなくなった部分を特定し、影響の小さい業務で新しい型を試します。松尾氏が紹介した事例には、成果が出るまで数カ月から半年を要したものがあります。
  • 限界:2016年の文献レビューは、「捨ててから学ぶ」型のアンラーニングが起きている証拠は、よく引用される研究のどれにも無かったと結論しています。「捨てる」を独立した工程にせず、新しい型の練習と効果確認に置き換えるのが実務的です。

以下、定義と訳語、起源、関連用語との違い、進め方、限界の順に説明します。

アンラーニングの意味と日本語訳

英語の unlearn は、learn に打ち消しの接頭辞 un- が付いた動詞です。Cambridge Dictionary は「to make an effort to forget your usual way of doing something so that you can learn a new and sometimes better way」と説明しています。いつものやり方を意識して忘れようとする目的は、新しい、ときにより良いやり方を覚えることにあります。

ビジネスの文脈では、松尾睦『仕事のアンラーニング―働き方を学びほぐす―』(同文舘出版、2021年6月16日)の出版社紹介が「古くなった知識やスキルを意図的に捨てつつ、新しい知識・スキルを取り込むことです」と定義しています。「意図的に」と「取り込む」の2語が入っている点が、単なる忘却との違いです。

「学習棄却」と「学びほぐし」の訳し分け

学術的な訳語は「学習棄却」です。一方「学びほぐし」は、哲学者の鶴見俊輔が使った訳です。宮城哲「鶴見俊輔研究序説」(東京大学大学院教育学研究科 基礎教育学研究室 研究室紀要 第40号、2014年)が、鶴見の「Unthinkをめぐって」(1994年)から経緯を引いています。

同論文が引く鶴見本人の回想によると、1941年の夏、ハーヴァード大学の図書館でアルバイトをしていた19歳の鶴見に、ヘレン・ケラーが「I learned many things, and I had to unlearn many things」と語ったそうです。鶴見はこの unlearn を「一度編んだセーターをほどく、ほどいた同じ糸を使って自分の必要にあわせて別のものを編む」感覚だと説明しました。素材を編み直すという比喩は、過去の経験をすべて否定せず、組み替えるという意味を伝えます。

忘却や全面否定との違い

アンラーニングは、自然に忘れることとも、過去の経験を丸ごと否定することとも違います。松尾睦氏は、パーソル総合研究所のインタビュー(2022年9月27日)で「《捨てる》というより、《使うのをやめる》ということ」だと述べています。同じインタビューでは2つのレベルを区別しています。周辺的なスキルやテクニックだけを入れ替える「表層的アンラーニング」と、仕事の型やアプローチそのものを変える「中核的アンラーニング」です。

新しいツールの操作を覚え直すのは表層的なアンラーニングで、指示型から任せる型へマネジメントを変えるのは中核的なアンラーニングにあたります。ここでは、周辺的な技法の変更と、判断や行動の土台となる型の変更を区別しています。

アンラーニングの起源:組織論から個人の学びへ

ヘドバーグ(1981年)とナイストロム、スターバック(1984年)

経営学でアンラーニングを論じた代表的な文献は、ボー・ヘドバーグの「How Organizations Learn and Unlearn」です。この章は、ナイストロムとスターバック編の『Handbook of Organizational Design』第1巻(Oxford University Press、1981年)に収録されています。

編者の2人は、1984年に「To avoid organizational crises, unlearn」(Organizational Dynamics 第12巻第4号、53〜65頁、DOI)を発表しました。この論文には「As their successes accumulate, organizations emphasize efficiency, grow complacent, and learn too little. To survive, organizations must also unlearn.」とあります。成功が積み重なると組織は効率を重んじて慢心し、学ばなくなる。だから生き残るには unlearn も必要だ、という主張です。出発点は個人の心構えではなく、危機に陥った組織の研究でした。

個人のアンラーニングと松尾睦『仕事のアンラーニング』

松尾氏は前述のインタビューで、組織レベルの研究から始まった学問の流れのなかで、個人単位のアンラーニングが研究され始めたのは2000年代に入ってからだと説明しています。同氏の『仕事のアンラーニング』(ISBN 978-4-495-39047-1)は、この個人レベルの研究を職場の働き方に当てはめた本です。前述の表層的・中核的という2つのレベルも、同氏の整理です。

「learn, unlearn, relearn」の名言と原典の話者

「21世紀の文盲とは、読み書きできない人ではなく、学び、学びほぐし、学び直すことができない人だ」という言葉は、アルビン・トフラーの名言として広く引用されています。ところが、原典の『Future Shock』(1970年)第18章「Education in the Future Tense」には、この形の一文がありません。

原文の箇所 話者 内容
learn, unlearn and relearn トフラー本人 教え方の提案
Tomorrow’s illiterate … 心理学者ガージョイ 学び方を学んでいない人

トフラー本人が書いたのは「By instructing students how to learn, unlearn and relearn, a powerful new dimension can be added to education.」という教育論の一文です。「明日の文盲」の部分は、心理学者ハーバート・ガージョイの言葉として引用されています。原文は「Tomorrow’s illiterate will not be the man who can’t read; he will be the man who has not learned how to learn.」で、unlearn という語は含まれていません。巻末の注(414頁分)には、ガージョイの発言は著者によるインタビューだと記されています。流通している名言は、原典の別々の発言を合わせたような表現です。資料や研修では、それぞれの話者と原文を分けて引用してください。

リスキリング・アップスキリング・リカレント教育との違い

用語 やること 典型的な場面
アンラーニング 古い型の使用をやめる 同じ職務でやり方を変える
リスキリング 職業・職務の変化に対応するスキル獲得 職種転換・DX
アップスキリング 今の職務のスキル向上 同じ職務で水準を上げる
リカレント教育 教育と仕事の往復 大学・講座での学び直し

リスキリングの定義としてよく引かれるのは、経済産業省「デジタル時代の人材政策に関する検討会」第2回(2021年2月26日)の委員提出資料です。そこでは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」とされています。定義の出どころとリカレント教育との関係はリスキリングの意味と定義の出典で詳しく扱っています。

リスキリングとアップスキリングは「何を足すか」の話で、アンラーニングは「何の使用をやめるか」の話です。新しいスキルを研修で身につけても、評価される行動や職場の慣習が元のままなら、現場では古い型が使われ続けます。リスキリングの施策を打つ企業ほど、どの業務の何をやめるのかを同時に決めておく必要があります。給付金などの公的な学び直し支援はリカレント教育の定義と2026年の給付金にまとめています。

アンラーニングが必要になる理由と成功体験による「有能さの罠」

アンラーニングが必要になるのは、成功したやり方ほど手放しにくいからです。レビットとマーチの「Organizational Learning」(Annual Review of Sociology 第14巻、1988年)は、この現象を「有能さの罠」(コンピテンシー・トラップ)と呼びました。劣った手順でも良い成果が出ると、組織はその手順の経験ばかりを積みます。その結果、より優れた手順の価値を判断できるだけの経験が得られなくなる、という指摘です。

個人でも同じことが起きます。松尾氏は、若い頃に営業職として勤めた職場の例を挙げています。かつて凄腕だった営業担当の成績が落ちた理由を先輩に聞くと、「昔の売り方をしているからだよ」と言われたそうです。本人はその売り方が通用しなくなったことに気付いていませんでした。こうした思い込みの枠組みはメンタルモデルと呼ばれます。自分のメンタルモデルは自分では見えにくいため、外からの指摘や数字の変化をきっかけにするのが現実的です。

個人で進めるアンラーニングのやり方

  1. 自分の型を言葉にする:仕事の進め方や判断の基準を書き出し、それがいつ、どんな成功体験から身についたかを添えます。
  2. 効かなくなった部分を特定する:成果が落ちた業務、手戻りが増えた業務、周囲と摩擦が出ている業務から、原因になっている型を探します。残す部分と入れ替える部分を分けます。
  3. 小さく試して戻り具合を見る:新しい型は、失敗しても影響の小さい業務から試します。うまく回り始めたら、基本業務にも広げます。

3つ目は松尾氏が「実験」と呼ぶやり方です。同氏によると、切り替えた直後は一時的にパフォーマンスが落ちることがあり、同氏が見てきた事例では、新しい型で成果が出るまでに数カ月から半年かかっています。短期間で成果が見えない場合は、試行を続ける条件と中止する条件を確認し、継続の可否を判断します。1と2の振り返りは、Keep・Problem・Tryで整理するKPT法の形式にすると続けやすくなります。

職場・組織で進めるアンラーニングの方法

個人への働きかけに先立つ職場の「謎習慣」の見直し

松尾氏は、企業で取り組むなら個人より職場のアンラーニングから始めるよう勧めています。上司や人事から「あなたのやり方はもう通用しない」と言われれば、言われた側は反発するからです。例として挙げているのが、誰も読まない日報や皆が嫌がっている朝礼といった「謎習慣」をやめることです。職場の慣習から変えれば、個人の否定にならずに「やめる」経験を共有できます。

中途入社者の違和感の収集と双方向の見直し

入社したばかりの中途社員は、既存の社員が慣れて気付かなくなった社内の不合理に気付いています。松尾睦氏は、入社直後の社員が職場の慣習に慣れてしまう前に、違和感を聞くことを勧めています。入社直後の面談で「やめたほうがよいと思うことは何か」を聞く項目を入れておけば、この視点を失わずに済みます。受け入れ工程の設計はオンボーディングの工程を参考にしてください。中途社員自身にも前職の習慣を持ち込まないアンラーニングが要るため、双方向の問いかけにするのがよいでしょう。

経営層の判断基準の見直しと組織への影響

ナイストロムとスターバックは、組織の学習を方向づけるのはトップの考えであり、そのトップの考えがアンラーニングを妨げるとも書いています(「Top managers’ ideas dominate organizational learning, but they also prevent unlearning.」)。深刻な危機に陥った組織では、古い考えを一掃するために経営陣そのものを入れ替えることが多いとも指摘しています。社員にだけアンラーニングを求め、経営層の判断基準が変わらない施策は、この構造を放置することになります。

アンラーニングの具体例

松尾氏が前述のインタビューで紹介している例を3つ挙げます。

  • 若手社員:入社3年目までは担当業務を8割ほど仕上げてから上司に相談していたが、手戻りが多かった。4年目から、できる先輩にならってアウトプットが2〜3割の段階で相談する方式に変え、手戻りが減って成果までの時間が大幅に短くなった。
  • 管理職:部下にすべて指示していた上司が、部下に任せるスタイルへ切り替えた。新しい型が軌道に乗るまで半年かかった。
  • 広告会社のマネジャー:顧客との関係づくりに接待は欠かせないと考えていたが、2011年の東日本大震災で接待ができなくなっても業績は落ちなかった。その後は接待をケース・バイ・ケースで減らし、仕事の中身を議論する時間を増やして効率と業績が上がった。

接待の例では、古いやり方を一度に全廃せず、必要な場面では残しながら減らしています。この例は、外部環境の変化で強制的に古い型が止まったときが、その型の必要性を確かめる機会になることを示しています。

アンラーニングという考え方の限界と注意点

アンラーニングには研究上の裏付けが弱いという批判があります。ハウエルズとショルダラーの「Forget unlearning?」(Management Learning 第47巻第4号、2016年)は、ヘドバーグ型のアンラーニング(古い知識を捨ててから新しい知識を学ぶ)を扱った被引用数の多い研究を再検討しました。結論は「We find none provide evidence of its existence.」で、その存在を示す証拠はどの研究にも無かったとしています。

この批判は、言葉を使うのをやめる理由にはなりません。ただし「まず捨てる、それから学ぶ」という2段階の手順を前提に施策を組むのは避けたほうがよいでしょう。捨てると決めることより、新しい型を繰り返し使って成果を確かめ、古い型の出番を減らしていく過程のほうが具体的に管理できるからです。研修でアンラーニングを扱うなら、「新しい型を試す業務の割り当てと効果の測定」を優先することを勧めます。体験を通じて振り返る研修形式としてはアクションラーニングが近い考え方です。

次の2つの場面では、アンラーニングという言葉を使わないほうが安全です。

  • 個人の評価面談:「アンラーニングしてください」は、これまでの努力の否定として受け取られやすい言い方です。やめる業務と試す業務を具体的に決めるほうが伝わります。
  • 安全手順・法令順守・品質基準:「古いやり方だから」という理由だけで使用をやめてはいけません。必要な変更は、適用される法令や基準を確認し、承認・改訂の手続きを経て行います。

よくある質問

アンラーニングを日本語で言い換えると何ですか?

学術的には「学習棄却」、より柔らかい訳として鶴見俊輔が使った「学びほぐし」があります。松尾睦氏は、立命館大学の高橋潔氏が使う「知の断捨離」という表現も紹介しています。英語の動詞形は unlearn で、「アンラーン」とも書きます。

アンラーニングとリスキリングの違いは何ですか?

リスキリングは、新しい職業に就くため、または今の職業で求められるスキルの大きな変化に対応するために、新しいスキルを身につけることです。アンラーニングは、通用しなくなった古い型の使用をやめることです。前者はスキルの獲得、後者は古い型の使用停止に焦点を当てます。古い型が新しいスキルの実践を妨げる場合は、両方を組み合わせます。

unlearn は英語でどういう意味ですか?

Cambridge Dictionary は、新しく、ときにより良いやり方を覚えるために、いつものやり方を意識して忘れようとすることと説明しています。ヘレン・ケラーは鶴見俊輔に「I learned many things, and I had to unlearn many things」と語ったとされています。

リラーニング(relearn)とは何ですか?

relearn は「学び直す」という意味です。トフラーは『Future Shock』(1970年)で、学ぶ(learn)、学びほぐす(unlearn)、学び直す(relearn)方法を教えることを教育の新しい次元として提案しました。リラーニングは、一度学んだことを再び学ぶことを指し、先に古い知識を捨てることを必須条件とはしません。

アンラーニングは何歳から必要ですか?

年齢に関係なく必要です。松尾睦氏は、若手でも仕事のスタイルを作る過程でアンラーンしていると述べています。プロフェッショナル人材の成長を追った同氏の研究では、30代から成長を続ける人、なだらかになる人、止まる人に分かれ、止まる人は自分の型に固執していると説明しています。

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