「生計を一にしない」とは、日常の生活費を共通にしていない親族の状態をいいます。判定の分かれ目は同居か別居かという見た目ではなく、財布が一つかどうかという実態です。同居していても別生計と認められることがあり、逆に別居でも常に送金があれば生計を一にすると扱われます。拠り所は所得税基本通達2-47です。
この記事では、共働き夫婦・事実婚・同居の親などのケース別の結論、同居で別生計を示す書類、世帯分離との関係、送金の考え方、相続税・年金での扱い、個人事業主の家族給与(所得税法56条)までを、令和8年分の金額で整理します。
まとめ
以下が本記事の結論です。根拠は各章で確認できます。
- 定義:所得税基本通達2-47は「必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではない」と定めています。生計を一にするかどうかは、生活費を共通にしているかという経済的実態で判定します。
- 同居の扱い:同一の家屋に起居していれば、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、生計を一にするものとして扱われます。同居での別生計は例外で、主張する側が実態を示します。
- 別居の扱い:勤務・修学・療養等の都合で別居していても、余暇に起居を共にすることを常例としているか、常に生活費・学資金・療養費等の送金が行われていれば、生計を一にするものとされます。
- 夫婦:共働きで口座を分けていても、同居の夫婦は原則として生計を一にします。内縁・事実婚の相手は生計の判定以前に税法上の配偶者に当たりません(所得税基本通達2-46)。
- 世帯分離:税務上の判定は住民票ではなく実態で行います。自治体側も、同一生計のままの世帯分離届は受理しない運用があります。
- 令和8年分の金額:同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額要件は62万円以下(給与収入だけなら136万円以下)です。生計別と判定されれば、扶養控除38万円(特定扶養親族63万円、老人扶養親族48万円、同居老親等58万円)や配偶者控除が丸ごと使えなくなります。
- 個人事業主:生計を一にする親族への給与・地代は所得税法56条で必要経費になりません。生計別の親族への支払いは56条の対象外で、青色事業専従者給与の届出なしに、事業に必要な適正額を必要経費にできます。
「生計を一にしない」とは生活費を共通にしていない状態のこと
所得税基本通達2-47の定義|同一の家屋に起居していることは要件外
所得税法には「生計を一にする」の定義規定がなく、実務は所得税基本通達2-47(生計を一にするの意義)に従います。冒頭は次のとおりです。
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
出発点が「必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではない」である以上、住所が同じか違うかは決め手になりません。通達はこのあとに、別居の場合(1)と同居の場合(2)の扱いを分けて示しています。生計を一にしないとは、そのどちらにも当たらない状態、すなわち日常の生活費を共通にしていない状態です。
別居でも生計を一にする2つの場合|帰省の常例と経常的な送金
通達2-47(1)は、勤務・修学・療養等の都合上、他の親族と日常の起居を共にしていない親族について、次のいずれかに当たれば生計を一にするものとすると定めます。
- 勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
- 親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
ポイントは「常例」「常に」という限定です。通達は帰省や送金の最低回数を定めていませんが、継続して生活費を負担している実態が求められ、一度きりの振込ではその実態を示しにくくなります。逆に、継続的な仕送りがあれば生計を一にすると扱われるため、単身赴任・大学進学・入院による別居はそれ自体では生計別の理由になりません。
同居している場合は「明らかに互いに独立した生活」だけが例外
通達2-47(2)は、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、生計を一にするものとすると定めます。国税庁のタックスアンサーNo.1180のQ1も同じ表現を使っています。
同居=生計を一にするという原則を置き、外れる場合だけを例外として切り出す構造です。したがって同居で別生計を主張する側が、家計が実際に分かれていることを示す立場に立ちます。「そう思っている」ではなく「明らかに」独立していると読めるだけの事実が必要です。
「生計を一にする」と「扶養親族に該当する」は別の要件
所得税法2条1項34号の扶養親族は、配偶者以外の親族のうちその居住者と生計を一にするもので、かつ合計所得金額が一定額以下である者です。生計を一にしているかは関係の判定、合計所得金額はお金の判定で、両方そろうことが前提です(青色事業専従者として給与を受ける人と白色の事業専従者は除かれます)。生計を一にしていても所得が多ければ扶養親族ではなく、所得がゼロでも生計別なら扶養親族ではありません。対象者と所得要件の違いは扶養控除と配偶者控除の違い|令和8年分は年収136万円が共通ラインで整理しています。
ケース別の判定|共働き夫婦・事実婚・同居の親・仕送り中の子
通達2-47を典型的な家族の形に当てはめると、結論は次のようになります。「同居」の行はいずれも、明らかに独立した生活を示せない限り生計を一にするという原則が働きます。
| ケース | 原則の結論 | 根拠 |
|---|---|---|
| 共働き夫婦(同居・口座は別) | 生計を一にする | 通達2-47(2) |
| 家庭内別居の夫婦 | 生計を一にする(独立の立証は困難) | 通達2-47(2) |
| 事実婚・同棲の相手 | 配偶者に当たらない | 通達2-46 |
| 同居で年金生活の親 | 生計を一にする(独立の立証で例外) | 通達2-47(2) |
| 完全分離型二世帯住宅の親 | 家計が分かれていれば生計別 | 通達2-47(2) |
| 仕送りを受ける下宿中の学生 | 生計を一にする | 通達2-47(1)ロ |
| 単身赴任中で毎週帰宅する親 | 生計を一にする | 通達2-47(1)イ |
| 就職して自活し、仕送りも常例の帰省もない別居の子 | 生計を一にしない | (1)に当たらない |
| 老人ホームに入所した親 | 費用を常に負担していれば生計を一にする | 通達2-47(1)ロ |
共働き夫婦は財布を分けていても原則「生計を一」
共働きで生活費を折半している夫婦や、家庭内別居の状態でも、同じ家屋に住んでいる以上は通達2-47(2)の原則が働きます。住居費や食費を出し合ってまかなっているなら、口座の名義が分かれているだけでは足りず、生活費の負担の実態から独立した生活かどうかが見られるため、口座が別でも生計を一にすると判定されるのが通常です。
共働き夫婦で結論を分けるのは多くの場合、生計の判定ではなく所得要件です。配偶者の合計所得金額が62万円を超えれば配偶者控除、133万円を超えれば配偶者特別控除の対象から外れ、本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合はどちらも受けられません。
事実婚・同棲の相手と所得税法上の配偶者の範囲
所得税基本通達2-46は、法に規定する配偶者とは民法の規定による配偶者をいい、いわゆる内縁関係にある者は、家族手当等が支給されている場合でも該当しないと定めています。同じ家で家計を一つにしていても、配偶者控除・配偶者特別控除は使えません。
内縁の相手は民法上の親族でもないため、扶養控除の対象にもなりません。
年金で暮らす同居の親の判定と独立した生活の実態
親が自分の年金で食費や光熱費をまかなっていても、同じ家屋に住んでいれば原則は生計を一にします。別生計と言えるのは「明らかに互いに独立した生活」を営んでいる場合で、住まいや水回りの分離、公共料金の契約・支払いの分離は、それを説明する材料になります。親の年金収入と扶養の条件は老人扶養控除の条件と金額|70歳以上の親は年金172万円以下・同居なら58万円【令和8年分】で扱っています。
同居でも「生計を一にしない」と認められる条件と証明書類
二世帯住宅の判定軸は建物の構造ではなく家計の分離
玄関もキッチンも別の完全分離型二世帯住宅は、独立した生活を示しやすい形です。ただし所得税基本通達2-47(2)が見ているのは建物ではなく「明らかに互いに独立した生活」かどうかなので、構造が分離していても食費や光熱費を一方がまとめて負担していれば生計を一にすると判定されます。逆に間取りが一体でも、電気・ガス・水道が別メーターで契約名義も別、家計も完全に分けていれば独立した生活と評価される方向に働きます。
立証に使う書類は契約名義・支払い記録・住まいの資料の3系統
同居で別生計を主張するときに残しておく資料は、次の3系統に整理できます。
- 契約名義:電気・ガス・水道・通信の契約者名と請求先。世帯ごとに分かれているかが分かります。
- 支払い記録:生活費の引き落とし口座、クレジットカードの名義、家賃や住宅ローンの負担者。家計が交わっていないことを示します。
- 住まいの資料:建物図面や登記、賃貸借契約書。玄関・水回りが独立していることを示します。
税務署に提出が義務づけられた書類ではなく、実態を問われたときに説明を裏づけるためのものです。公共料金の請求書は、同じ月のものを双方そろえて残してください。次章の郡山市の例のように、別々の月の請求書では家計が並行して分かれていることの証明として扱わない窓口があります。
年の途中で同居と別居が入れ替わったときは12月31日の現況で判定
扶養親族や同一生計配偶者に当たるかどうかは、その年12月31日の現況で判定します(所得税法85条3項。本人が年の中途で死亡または出国した場合はその時、親族が既に死亡している場合はその死亡の時。ここでいう出国は、納税管理人の届出をしないで国内に住所・居所を有しないこととなることです)。年の途中で同居・別居が入れ替わっても按分はしないので、年末時点の状況を示す記録を残しておきます。
住民票の世帯分離と「生計が別」の関係
住民票の「世帯」の定義と生計の関係
世帯分離は住民票上の世帯を分ける届出です。新潟県三条市の案内「世帯分離の届出について」(2025年12月更新)は、世帯を「居住及び生計をともにする者の集まり、又は単独で居住し、生計を維持する者」と説明しています。つまり住民票の世帯分離は、本来「生計が別になった」ことを届け出る手続きです。生計が一つのまま住民票だけを分けても、届出の前提と合いません。
三条市の例|同一生計のままの世帯分離届の不受理
同じ三条市の案内は、受理しない事例として次を挙げています。
- 医療費、健康保険料、介護保険サービス利用料等を軽減する目的で、同一生計であるにもかかわらず提出しようとした
- 給付金等を受給する目的で、同一生計であるにもかかわらず提出しようとした
- 水道メーターが別ではない住居で提出しようとした(現地調査を実施)
- 他の世帯員の税法上の被扶養親族または扶養親族であるにもかかわらず提出しようとした
あわせて、夫婦は民法上の相互扶助義務があるため原則として世帯分離できないとしています。扶養控除を受けたまま世帯だけ分ける、という組み合わせは窓口の側で止まりうるということです。運用は市区町村ごとに違うため、届出前に住所地の窓口で確認してください。
郡山市の保育手続|同月の光熱水費請求書による同居・別居の確認
保育所の利用や保育料の算定で「同居か別居か」を判定する場面では、自治体が独自の確認手順を持っています。福島県郡山市の「同居・別居確認フローチャート」は、世帯分離していても住民票上の住所が同じなら同居の判定に進み、同一家屋で生計が別であることを書類(例として光熱水費の請求書の写し)で証明できれば別居扱い、できなければ同居扱いとしています。
同フローチャートは書類の条件も具体的で、光熱水費等の請求書写しは同月のものに限り、「6月の電気料金(父)+6月の電気料金(祖父)」は可、「5月の電気料金(父)+6月の電気料金(祖父)」や「6月の電気料金(父)+6月の水道料金(祖父)」は不可と例示しています。同じ月・同じ種類の料金がそれぞれの名義で請求されていることを、家計が並行して分かれている証拠と見る考え方です。保育手続の基準なので税務上の必須書類でも、別生計を認めさせる十分条件でもありませんが、税務署に別生計を説明する材料も、この形でそろえておくと整理しやすくなります。
世帯分離後の税務上の判定|通達2-47による実態判断
所得税法には世帯を単位として控除を決める規定がなく、条文が使うのは「生計を一にする」という関係の言葉だけで、判定は所得税基本通達2-47によります。住民票を分けても生活費が共通なら生計を一にすると判定され、同じ世帯のままでも独立した生活なら生計別と判定される余地があります。届出だけで税務上の結論は動きません。
別居の親・子を「生計を一」として扶養に入れる送金の要件
送金額の基準|通達2-47に法定の下限なし
通達2-47(1)ロは「常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合」とだけ定めており、金額の基準を置いていません。「月いくら以上なら生計を一」という法令上の線引きは存在せず、相手の生活費をまかなう実態があるかどうかで判断します。ただし、相手の生活費に比べて極端に少ない送金や、送金がある月とない月がまちまちな場合は、「常に」の要件を満たさないと見られる可能性があります。
銀行振込・現金書留による送金記録の保存
タックスアンサーNo.1180のQ3は、従業員が地方に住む両親を扶養控除の対象として申告してきた場合の会社の対応について、次のように述べています。
法令上、源泉徴収義務者に対してこれを証明する書類等を提出することまで必要とされているわけではありませんが、正しい扶養控除の計算を行うためには、銀行振込や現金書留により送金している事実を振込票や書留の写しなどの提示を受け確認することをお勧めします。
国内の別居親族について書類の提出は法令上の義務ではありません。それでも銀行振込や現金書留が勧められるのは、日付と金額と相手が一つの記録に残るためです。手渡しや、生活費と区別のつかない口座間の資金移動は、後から「常に送金していた」ことを示しにくくなります。仕送りで扶養控除を受ける流れは別居の親・子への仕送りで扶養控除を受ける条件と仕送りの証明【令和8年分】で詳しく扱っています。
扶養控除等申告書の「生計を一にする事実」欄は非居住者の親族について書く欄
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の「生計を一にする事実」欄は、国内で別居している親族のための欄と誤解されがちです。国税庁の手続案内は、記載を求める場面を次のように限定しています。
非居住者である親族に係る扶養控除又は障害者控除の適用を受ける場合には、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに、その親族と生計を一にする事実を記載した上で提出してください。
国内に住む親族しかいなければ、この欄は空欄のままで構いません。非居住者の親族について生計を一にすると認められる根拠は通達2-47(1)ロの送金なので、書く内容は実際にはその年の送金の状況です。国外居住親族は国内と違って、親族関係書類と送金関係書類(30歳以上70歳未満で留学・障害のいずれにも当たらない人は、その年38万円以上の送金を示す38万円送金書類)の提出または提示が法令上必要です。
生計を一にしないと使えなくなる控除と令和8年分の金額
生計を一にしているかどうかで結論が変わる主な控除と、令和8年分の金額は次のとおりです。
| 控除・特例 | 生計を一にする親族 | 生計を別にする親族 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 扶養控除 | 38万円(特定63万円/老人48万円/同居老親等58万円) | 適用なし | 所法84条・措法41条の16 |
| 特定親族特別控除 | 最大63万円(19歳以上23歳未満) | 適用なし | 所法84条の2 |
| 配偶者控除 | 最大38万円(老人控除対象配偶者は最大48万円) | 適用なし | 所法83条 |
| 配偶者特別控除 | 最大38万円 | 適用なし | 所法83条の2 |
| 医療費控除 | 本人が支払った家族分を合算できる | 合算できない | 所法73条 |
| 社会保険料控除 | 本人が払った家族分も控除できる | 控除できない | 所法74条 |
| 親族へ払う給与・地代 | 必要経費にならない(専従者の枠のみ) | 適正額を必要経費にできる | 所法56条・57条 |
| 小規模宅地等の特例 | 生計一親族が使っていた宅地も対象 | その親族が使う宅地は対象外(被相続人の自宅等は別要件) | 措法69条の4 |
扶養控除と配偶者控除の所得要件は、令和8年分は合計所得金額62万円以下(給与収入だけなら136万円以下)です。
扶養控除は38万円・特定扶養親族63万円・同居老親等58万円
所得税法84条は、控除対象扶養親族1人につき38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は63万円、老人扶養親族(70歳以上)は48万円を控除すると定めます。租税特別措置法41条の16により、本人または配偶者の直系尊属で同居を常況としている老人扶養親族は10万円が上乗せされ、58万円になります。19歳以上23歳未満の子は所得が62万円を超えても、123万円以下なら特定親族特別控除(所得税法84条の2)が受け皿になります。いずれも生計を一にしていることが前提で、生計別と判定されれば控除額が減るのではなく、まるごとゼロになります。
老人ホームに入所した親と同居老親等の判定
同居老親等の58万円は、同居を常況としていることが条件です。国税庁の質疑応答事例「「同居」の範囲(長期間入院している場合)」は、病気の治療のための入院なら1年以上の長期にわたっても同居に該当して差し支えないとしたうえで、次のように述べています。
ただし、老人ホームなどへ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません。
これは「同居」の判定であって「生計を一にする」の判定ではありません。子が施設の費用を負担しているなど生活費を共通にしている実態があれば、親は生計を一にする親族のままで、老人扶養親族の48万円は使えます。失われるのは同居による10万円の上乗せだけです。
令和8・9年分の所得要件|合計所得62万円以下・給与収入136万円以下
令和8年度税制改正により、同一生計配偶者と扶養親族の合計所得金額要件は58万円以下から62万円以下へ引き上げられました。改正後の所得税法2条1項33号・34号(令和8年12月1日施行)が「合計所得金額が六十二万円以下である者」と定め、令和8年分の所得税から適用されます。
給与収入だけの人なら62万円は年収136万円に当たります(改正前は123万円)。給与所得控除の最低保障額74万円による換算ですが、この74万円は所得税法28条3項の本則(69万円)ではなく、租税特別措置法29条の4が「令和八年又は令和九年」の給与収入220万円以下の人に限って定める時限措置です。136万円のラインは令和8年分・令和9年分に限られ、令和10年分以後は本則に戻ります。金額ラインの全体像は基礎控除と給与所得控除の違い|令和8年分は104万円と74万円で年収178万円まで所得税ゼロで整理しています。
配偶者控除・配偶者特別控除も生計を一にしていることが前提
配偶者控除の対象は、同一生計配偶者のうち本人の合計所得金額が1,000万円以下である場合の配偶者です。配偶者特別控除は、所得税法83条の2が「居住者が生計を一にする配偶者」で合計所得金額133万円以下の者を対象と定めています。令和8年分の金額と申告書の書き方は配偶者控除は令和8年分から配偶者の年収136万円まで|戻る税額と申告書の書き方、控除額が段階的に減る範囲は配偶者特別控除の早見表【2026年・令和8年分】満額38万円は年収169万円までで扱っています。
医療費控除・社会保険料控除の家族分合算と支払者の条件
医療費控除は、自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費が対象です。所得要件はないため、所得が多くて扶養親族になれない家族の医療費でも、生計を一にしていれば、その医療費を実際に支払った人が自分の分とまとめて申告できます。家族がそれぞれ自分で払った分を、任意の1人に寄せることはできません。社会保険料控除も、生計を一にする親族が負担すべき国民健康保険料や国民年金保険料を本人が支払えば本人の控除にできます。医療費控除の全体像は医療費控除とは?対象・計算・申告方法と令和9年分の胃腸薬追加を参照してください。
相続税の小規模宅地等の特例で生計一親族が使っていた宅地の扱い
同じ言葉は相続税にも出てきます。タックスアンサーNo.4124の小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)は、被相続人本人だけでなく「被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族」の事業や居住に使われていた宅地等も対象にしています(令和8年4月1日現在法令等)。特定居住用宅地等なら330平方メートルまで評価額を80%減額できます。
たとえば被相続人が所有する別の家に住んでいた子が被相続人と生計を別にしていれば、その家の敷地は「生計を一にしていた親族」の居住用に当たらず、この枠では特例を受けられません。生計を一にしていた子なら、その子が取得して申告期限まで住み続け、保有していれば特定居住用宅地等になります。仕送りの有無という所得税と同じ事実が、相続税の評価額を左右するということです。特例の要件全体は相続税と贈与税はどちらが高い?速算表と1,000万円贈与の税額でも触れています。
「生計を同一とする家族」の意味|税務書類と年金手続の違い
税務書類での「生計を同一とする」の判定
申請書や届出書で「生計を同一とする家族」「生計を同一とする方」と書かれていても、所得税・住民税の控除に関わる書類であれば、判定は通達2-47の「生計を一にする」と同じ考え方で行います。同居なら原則として該当し、別居なら常例の帰省か常の送金があるかで決まります。給付金や補助金の申請書では制度ごとに定義が置かれていることがあり、その場合は住民票の世帯で判定する制度もあるので、申請先の要綱の定義を優先してください。
年金の生計同一関係と住民票の状況別の必要書類
加給年金・振替加算や遺族年金・未支給年金・死亡一時金の請求では、日本年金機構の「生計同一関係に関する申立書」を使います。遺族年金等を配偶者または子が請求するときの様式3(それ以外の親族は様式4)では、状況を次の3つから選びます。
- 住民票上は別世帯だが、住民票上の住所は同一だった
- 住民票上は別住所だったが、実際は同居していた
- 別居しており、住民票上も別住所だった(別居の理由・経済的援助・音信や訪問の状況を記載)
2つ目と3つ目では第三者による証明欄の記入が必要で、証明者は請求者と亡くなった人の民法上の三親等内の親族でない人に限られます(1つ目に当たる場合や生計同一関係を示す書類を出す場合は記入不要)。税法上の生計一がそのまま年金側の生計同一関係として認められるわけではありません。
個人事業主が生計を一にしない家族へ払う給与・地代(所得税法56条)
所得税法56条による同一生計親族への給与・家賃の必要経費不算入
所得税法56条は、居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が、その居住者の営む不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業から対価の支払を受ける場合、その対価は必要経費に算入せず、受け取った側でもなかったものとみなすと定めます。給与に限らず、事務所の家賃や借入金の利息も同じ扱いです。生計を一にする親に事務所の家賃を払っても経費にならず、代わりにその建物の固定資産税や減価償却費など親が負担した必要経費相当額を事業主の必要経費に算入します。
生計別の親族への給与・家賃の必要経費算入と取引記録
56条の対象は「生計を一にする」親族への支払いだけです。生計を別にしている親族への支払いは第三者への支払いと同じ扱いになり、事業に必要な支払いで、労務や賃貸の対価として適正な額であれば必要経費に算入できます。青色事業専従者給与の届出も要りません(給与を払う側の源泉徴収などの手続は通常どおり必要です)。その代わり、生計別であることと取引の実態は納税者側で説明します。給与なら雇用契約書・業務記録・相場に照らした金額・源泉徴収、家賃なら賃貸借契約書と相場どおりの賃料の口座振込が柱で、受け取った親族は給与所得や不動産所得として申告します。
青色事業専従者給与・事業専従者控除との違い
生計を一にする親族への給与を経費にする道が、所得税法57条の専従者の制度です。青色申告者は届出書に記載した方法と金額の範囲内で、労務の対価として相当と認められる額を必要経費にできます(57条1項)。白色申告では57条3項の事業専従者控除となり、配偶者は86万円、それ以外は50万円が上限です。生計を一にする親族は届出や上限のある専従者の枠組みで、生計を別にする親族は上限のない通常の必要経費で扱う、という分岐です。制度の詳細は専従者給与とは?要件・届出といくらまで経費になるか、配偶者控除との損得【令和8年分】で解説しています。
よくある質問
「生計を一にしない(別生計)」とはどういう意味ですか?
日常の生活費を共通にしていない親族の状態をいいます。所得税基本通達2-47は「必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではない」としており、同居か別居かではなく、財布が一つかどうかで判定します。
同居していても「生計を一にしない」と認められますか?
認められる余地はありますが、例外扱いです。通達2-47(2)は、同一の家屋に起居している場合は「明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き」生計を一にするものとすると定めています。公共料金の契約名義(同じ月の請求書をそれぞれの名義でそろえる)、生活費の引き落とし口座、住まいの独立性を示す資料で、家計が分かれている実態を示すことになります。
共働きで財布が別の夫婦は「生計を一にしない」になりますか?
同居している限り、原則として生計を一にします。口座を分けていても住居費や食費を出し合っていれば日常の生活費は共通だからです。共働き夫婦で配偶者控除が使えなくなる典型は、生計の判定ではなく配偶者の所得が62万円(配偶者特別控除は133万円)を超えた場合です。本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合も、両控除とも受けられません。
住民票で世帯分離すれば、税法上も生計が別になりますか?
なりません。税務上の判定は住民票ではなく生活費を共通にしているかという実態で行います。また住民票の世帯は「居住及び生計をともにする」単位なので、同一生計のまま、あるいは扶養控除を受けたまま世帯分離届を出すと、自治体によっては受理されません。
別居の親を扶養に入れるには毎月いくら送金すればよいですか?
国内に住む親なら、法令上の最低額はありません。通達2-47(1)ロは「常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合」とだけ定めており、金額基準を置いていないためです。相手の生活費をまかなう実態が継続していることが要件で、記録の残る銀行振込や現金書留が勧められています。国外に住む30歳以上70歳未満の親は、留学・障害に当たらなければ、その年38万円以上の送金を示す書類が必要です。
扶養控除等申告書の「生計を一にする事実」欄には何を書きますか?
非居住者である親族について扶養控除または障害者控除を受ける場合に、その親族と生計を一にしている事実、実際にはその年の送金の状況を書く欄です。国内に住む親族だけであれば記載は不要です。提出期限はその年最後に給与の支払を受ける日の前日で、あわせて送金関係書類の提出または提示が必要です。