LOTO(ロックアウト・タグアウト)とは、機械の掃除・給油・検査・修理などで人が危険区域に入るとき、エネルギー源を遮断したうえで錠で物理的に固定し(ロックアウト)、札で作業中であることを知らせる(タグアウト)安全対策のことです。目的は、第三者が知らずに機械を動かして作業者を巻き込む事故を止めることにあります。
ただし、日本の法令とアメリカのOSHA基準では、錠と札に与えられた重みが違います。日本の労働安全衛生規則第107条は錠と表示板を「等」でつないで並列に置き、OSHAは施錠できる装置なら原則として錠を要求します。この記事では条文と規格の原文をたどり、何が法的義務で何が自主基準の上乗せなのかを切り分けたうえで、手順書・グループロック・交代時の引き継ぎといった運用の決まりまで整理します。
まとめ:LOTOの要点と、日米で異なる錠の重み
- 定義:エネルギー源を遮断し、錠(ロックアウト)と札(タグアウト)で不意の起動を防ぐ措置。対象は保守・点検・トラブル対処といった非定常作業です。
- 錠と札は役割が違う:錠は装置を物理的に動かせなくし、札は警告するだけです。
- 日本の義務は安衛則107条:機械を止めたら「起動装置に錠を掛け、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等」の措置を取ります。違反は労働安全衛生法119条により6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。
- OSHAは施錠優先:施錠できる遮断装置には錠を使い、札だけで済ませるなら錠と同等の安全水準を事業者が立証しなければなりません。
- 押しボタンは遮断装置ではない:非常停止を押して札を掛けただけでは、OSHAの要件を満たしません。
- 運用の要は手順書と引き継ぎ:機械ごとの手順書、複数人作業のグループロック、交代時の引き継ぎ、年1回以上の定期点検まで決めて初めてLOTOが回ります。
- 優先度は下がっていない:令和7年の死亡災害は700人と過去最少でしたが、「はさまれ・巻き込まれ」は117人と前年比6.4%増えました。
ロックアウトとタグアウトの違いと、日米で分かれる位置づけ
ロックアウトは、電源の断路器や配管のバルブといったエネルギー遮断装置を遮断位置にしたうえで、南京錠などで物理的に固定する措置です。タグアウトは、その装置に「作業中・操作禁止」と書いた札を取り付け、操作しようとした人に警告する措置。決定的な差は、札には人の手を止める力がないことです。
| 観点 | ロックアウト | タグアウト |
|---|---|---|
| 作用 | 物理的に操作不能にする | 警告のみ |
| 破られ方 | 工具による破壊が必要 | 無視・除去が可能 |
| 安衛則107条2項の文言 | 「錠を掛け」 | 「表示板を取り付ける」 |
| 単独運用(日本) | 可 | 条文上は否定されず |
| 単独運用(米国OSHA) | 施錠可能なら原則 | 施錠可能な装置では立証が必要 |
「等」で並べる日本法と、錠を優先する米国基準
安衛則107条2項は、錠と表示板を「等」で並べ、求める結果を「作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止する」ことに置いています。手段は列挙された例に限られません。
OSHAの構造は違います。29 CFR 1910.147の(c)(2)(ii)は、遮断装置が施錠可能な場合、事業者がタグアウトで「full employee protection(完全な労働者保護)」を提供できると立証できない限りロックアウトを使わなければならないと規定し、(c)(3)(i)がその立証内容として、タグアウト計画がロックアウト計画と同等の安全水準を与えることの証明を求めます。さらに(c)(2)(iii)は、1990年1月2日以降の交換・大規模修理・改修・改造と新しい機械の設置では、遮断装置を錠が入る設計にすることを要求しています。
外資系企業の日本工場で「本社基準ではロックアウト必須」と言われたとき、その基準がOSHAに沿ったものなら、日本の法令を超えた恣意的な上乗せではなく、米国で義務づけられた水準をそのまま持ち込んでいるだけです。本社基準の根拠を確かめずに、国内法だけを見て「札でよい」と押し返すのは筋の悪い判断です。
日本の法令が求める措置:安衛則107条と作業別の個別条文
「ロックアウト・タグアウト」というカタカナ語は、安衛則の条文にも、厚生労働省の機械の包括的な安全基準に関する指針の別添にも出てきません。指針の全14ページで「ロックアウト」は0件で、代わりに「動力源の遮断装置の位置から作業を行う労働者が視認できないもの等必要な場合は、遮断装置は動力源を遮断した状態で施錠できること」という条件付きの設計要求が置かれています。日本の法令は同じ中身を「錠を掛ける」「表示板を取り付ける」という行為で書いているため、条文は用語ではなく行為で引きます。
安衛則107条の条文と違反時の罰則
労働安全衛生規則107条(掃除等の場合の運転停止等)は2項構成です。
- 1項:「事業者は、機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りでない。」
- 2項:「事業者は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠を掛け、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならない。」
1項が「止める」義務、2項が「止めたまま保つ」義務で、LOTOに当たるのは2項です。107条は労働安全衛生法20条1号(機械等による危険の防止)を受けた省令の規定で、違反は同法119条1号により「六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」の対象。122条の両罰規定により、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されます。安衛法全体の義務の構造は労働安全衛生法とは?規模別の義務と2025年改正の施行日・記録管理システムの要件で整理しています。
| 条文 | 対象作業 | 求められる措置 |
|---|---|---|
| 安衛則107条 | 機械(刃部を除く)の掃除・給油・検査・修理・調整 | 運転停止+錠・表示板等 |
| 安衛則108条 | 刃部の掃除・検査・修理・取替え・調整 | 運転停止+錠・表示板等 |
| 安衛則150条の3 | 産業用ロボットの可動範囲内での教示等 | 作業中の表示等(錠の明記なし) |
| 安衛則150条の5 | 同・検査、修理、調整、掃除、給油等 | 運転停止+錠・表示等 |
| 安衛則339条1項1号 | 電路を開路して行う電気工事 | 施錠・表示・監視人のいずれか |
107条と108条を分ける「刃部」と対象作業の差
107条は「刃部を除く」と書いており、刃部は108条が担当します。108条の対象作業は「掃除、検査、修理、取替え又は調整」で、給油が無く取替えが入ります。ただし書きも異なり、108条は「機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれのないとき」だけが除外です。107条だけを引いた手順書では、刃物交換が手順の外に落ちます。
施錠・表示・監視人の三択となる停電作業
電気工事では339条1項1号が適用され、開路に用いた開閉器について「作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する所要事項を表示し、又は監視人を置くこと」が求められます。錠でも札でもなく、人を立たせておくことが第三の選択肢として条文にあります。あわせて、電力ケーブルや電力コンデンサー等を有する電路で残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものは残留電荷の確実な放電が、高圧・特別高圧だったものは検電器具による停電確認と短絡接地器具による短絡接地が義務です。
教示と検査で変わる産業用ロボットの要求水準
150条の3(教示等)が求めるのは「起動スイッチ等に作業中である旨を表示する等」で、錠は出てきません。150条の5(検査等)は運転を停止したうえで「起動スイッチに錠をかけ、当該産業用ロボットの起動スイッチに作業中である旨を表示する等」と、107条と同じ構造です。教示なのか検査・修理・掃除・給油なのかを曖昧にしたまま手順を1本にまとめると、検査時に求められる運転停止と錠・表示等の措置が抜けます。導入前の安全要件は産業用ロボットとは?4種類の違いと構成要素・導入可否の判断基準を発注側目線で解説でも扱いました。
LOTOの手順:OSHA 1910.147が定める6段階と解除のルール
手順の骨格として国際的に参照されるのがOSHA 1910.147(d)です。条文は「以下の要素と行為を含み、かつ以下の順序で行われなければならない」と、順序そのものを規定しています。
- 停止の準備:作業者がエネルギーの種類と大きさ、その危険性、制御の方法を把握する。
- 機械の停止:定められた手順で停止させる。急停止が新たな危険を生まないよう、秩序ある停止を行う。
- エネルギーの隔離:必要なすべての遮断装置を物理的に特定し、操作して隔離する。
- 錠・札の取り付け:権限を与えられた作業者が各遮断装置に取り付ける。錠は遮断位置を保持するように、札は操作禁止が明確に伝わるように付ける。
- 蓄積エネルギーの処理:残留・蓄積したエネルギーを解放・拘束するなどして安全な状態にする。再蓄積のおそれがあるなら、作業が終わるまで隔離の検証を続ける。
- 隔離の検証:作業を始める前に、権限を与えられた作業者が隔離とエネルギーの除去を確認する。
3で使う遮断装置について、OSHAは手動操作の遮断器、断路スイッチ、ラインバルブ、ブロック等を挙げたうえで、「押しボタン、セレクタスイッチその他の制御回路型の装置はエネルギー遮断装置ではない」と除外しています。非常停止ボタンは制御回路への指令であってエネルギー源を物理的に隔離しないため、押して札を掛けただけの状態はこの定義を満たしません。
電気以外にも残る蓄積エネルギー
5で見落とされやすいのが電気以外のエネルギーです。油圧・空圧のアキュムレータに残る圧力、コンデンサの電荷、フライホイールの回転、ばね、そして重力。上がったままのシリンダやテーブルは、電源を切っても落ちてきます。機械側の規格であるJIS B 9714:2024(ISO 14118:2017と一致)も、5.4「蓄積エネルギーの消散又は抑制(封じ込め)のための装置」の下に5.4.2「機械要素」と5.4.3「抑制(封じ込め)装置の施錠又は固定のための設備」を置き、蓄積エネルギーの消散と抑制(封じ込め)、その固定の設備までを設計側の要件として扱っています。
解除と再起動前の確認、試運転のための一時解除
作業後の解除にも順序があります。OSHA 1910.147(e)は、作業域から不要な物が取り除かれ機械の構成部品が損なわれていないことの点検、全員が安全な位置にいるか退避したことの確認、錠・札を外した後で起動する前に影響を受ける作業者へ外したことを知らせる、という手順を求めます。
錠と札は「取り付けた作業者本人が外す」のが原則です((e)(3))。本人が不在のときの例外は事業者の指示の下でのみ認められ、手順の文書化と訓練、本人による解除と同等の安全性の立証、本人が事業所にいないことの確認、外した事実を本人に伝える合理的な努力、本人が作業を再開する前にその事実を認識していることの確保が条件です。「班長の判断で切る」運用は、この要件の外にあります。
試運転や位置合わせのために一時的に通電したい場合は(f)(1)が順序を決めています。工具と材料を片付け、作業者を退避させ、錠・札を外し、通電して試験・位置決めを行い、終わったら全系統を遮断して(d)の手順どおりにエネルギー制御をやり直してから作業を続けます。蓄積エネルギーの処理と隔離の検証も、もう一度行うということです。一時的な通電は解除から再隔離・検証までがひと続きなので、手順書では独立した項目にしておきます。
LOTOの管理と運用:手順書・グループロック・引き継ぎ・定期点検
LOTOの管理とは、錠と札を配ることではなく、機械ごとの手順書、複数人作業と交代時の決まり、点検と教育を1つのプログラムとして回すことです。日本の107条には書かれていない部分で、OSHA 1910.147の各項が社内規程の下敷きになります。
手順書に書く4項目と、文書化を省ける8条件
(c)(4)(ii)は、手順書に少なくとも次の4つを具体的に書くよう求めます。
- その手順の使用目的の明記
- 機械を停止・隔離・閉塞・固定してエネルギーを制御する具体的な手順
- 錠・札の取り付け、取り外し、引き渡しの具体的な手順と、その責任者
- 錠・札などの効果を確認するための試験の具体的な要件
逆に、文書化を省けるのは(c)(4)(i)の例外が定める8条件をすべて満たすときだけです。停止後に危険な蓄積・残留エネルギーが無く再蓄積のおそれも無い、エネルギー源が1つで容易に特定・隔離できる、その1つを隔離・施錠すれば機械が完全に止まる、作業中は実際に隔離・施錠している、錠1個で施錠状態になる、錠を作業者本人が排他的に管理している、作業がほかの作業者に危険を生じない、そしてその機械で保守中の予期しない起動による事故が過去に無いこと。エネルギー源が2つ以上ある機械や、過去に一度でも誤起動事故があった機械は、手順書が必須です。
複数人・複数班の作業を守るグループロックアウト
複数人で同じ機械を保守するときは、(f)(3)が「個人用の錠・札と同等の保護を与える手順」を求めます。具体的には、グループ用の錠(オペレーションロック等)の下で働く一定人数について1人の権限保有者に主たる責任を置くこと、その責任者が各メンバーの暴露状況を把握できること、複数の班や部署が関わるときは全体を調整する責任者を指名すること、そして各作業者が作業開始時にグループロックボックス等へ自分の錠を掛け、作業を終えたら外すこと。最後の1人が錠を外すまで機械は動かせません。
外部業者が入る場合は(f)(2)により、発注側と業者がそれぞれのロックアウト手順を互いに伝え、発注側は自社の作業者に業者側の手順の制約と禁止事項を理解させ、守らせなければなりません。
交代勤務の引き継ぎと、運転中の軽微な作業の扱い
(f)(4)は、交代や人の入れ替わりの際に保護が途切れないよう、退出する作業者と入ってくる作業者の間で錠・札の保護を秩序立てて引き渡す手順を求めています。前の勤務者が錠を外してから次の勤務者が掛けるまでの間に、機械が無防備になる時間を作らないための規定です。
生産中の軽い調整には日米とも例外があります。107条1項ただし書きは、運転中に作業しなければならない場合に危険な箇所へ覆いを設ける等の措置を講じれば停止不要とし、OSHAの(a)(2)(ii)も、生産中の軽微な工具交換・調整が日常的・反復的で設備の使用に不可欠であり、実効的な代替措置で行うなら対象外とします。どちらも実効的な代替措置が条件で、それが無ければ例外には入りません。また(a)(2)(iii)(A)により、コードとプラグで接続する電気機器で、予期しない通電・起動の危険をプラグを抜くことで制御し、そのプラグを作業者本人が排他的に管理しているなら1910.147の適用外です。
年1回以上の定期点検と、対象者別の教育
形骸化を防ぐ仕掛けが(c)(6)の定期点検です。少なくとも年1回、点検対象の手順を使っていない別の権限保有者が実施し、逸脱や不備を是正します。点検したことを認証(certify)し、対象機械・実施日・点検に含めた従業員・実施者を記録として残すところまで条文にあります。点検記録を紙からタブレットに移す場合の選び方は点検管理システムとは?紙・Excel点検の課題とタブレット点検・チェックリスト電子化の選び方で扱いました。
教育は(c)(7)で対象者が3区分されます。権限を与えられた作業者にはエネルギー源の認識と隔離・制御の方法を、影響を受ける作業者には手順の目的と使い方を、その周辺で働くほかの作業者には手順の存在と、施錠された機械を再起動したり動かそうとしたりしてはならないことを教えます。担当・機械・工程・手順の変更時と、定期点検で不備が見つかったときは再教育が必要です。作業者の注意力に頼らない仕組みという発想は、フールプルーフとは?語源・意味と身近な例、フェイルセーフとの違いで扱う設計思想と同じ系統です。
器具の選定:錠・ハスプ・札の仕様要件とJIS B 9714の改正
OSHA 1910.147(c)(5)(i)は、事業者が支給すべき器具として錠、札、チェーン、くさび、キーブロック、アダプターピン、自己ロック式留具などを挙げています。現場で使う型は遮断装置の形状で決まります。
- ブレーカー用:配線用遮断器の操作部を覆い、遮断位置に固定する器具。
- バルブ用:ボールバルブやゲートバルブのハンドルを囲い、回せなくする器具。
- プラグ用:電源プラグを箱に収めて差し込めなくする器具。
- ハスプ:1つの遮断装置に複数の錠を掛ける多穴金具。全員が自分の錠を外すまで遮断位置が解けません。
- グループロックボックス:遮断装置の鍵を1つの箱に入れ、その箱に各人が錠を掛ける方式。遮断点の多い大規模保全で使います。
器具の性能もOSHAが定めています。札は湿潤・腐食環境でも文字が読めなくならないこと、錠・札の色・形状・寸法のいずれか1つ以上を事業所内で統一し、札は印刷内容と書式も統一すること、錠はボルトカッター等の金属切断工具を使うような過大な力や通常でない手法でなければ外せない堅牢さを持つこと、そして錠も札も取り付けた作業者が誰かを示せることです。
札に必要な記載と取付具の要件
札の文言として条文が例示するのは「Do Not Start(起動するな)」「Do Not Open(開けるな)」「Do Not Close(閉じるな)」「Do Not Energize(通電するな)」「Do Not Operate(操作するな)」の5つです。取付具は、再利用できない型、手で取り付けられる、自己ロック式で解除機構を持たない、解除強度が50ポンド(約22.7kgf・約222N)以上、一体型の全天候対応ナイロン結束バンドと同等以上の設計と特性、が要件です。結束バンドで代用する運用は現場にありますが、条文が求めているのは「その水準以上」であって「それでよい」ではありません。
機械側の設計要件を定めるJIS B 9714:2024
機械を設計・調達する側の要件はJIS B 9714が担います。2024年12月25日の改正で2006年版(ISO 14118:2000対応)が置き換えられ、現行版は5.2「動力供給の遮断装置」、5.3「施錠(固定)装置」と遮断装置と施錠の設備を分けて規定し、7章「検証のための設計要求事項」に7.2「遮断の検証の規定」を置いています。序文は「人が危険区域に介在する間,機械を停止状態に維持することは,機械類を安全に使用するための最も重要な条件の一つ」と位置づけています。2006年版の箇条番号を引いたままの社内規程や設備仕様書は、番号がずれているので改正版で引き直してください。
はさまれ・巻き込まれの災害統計と死亡事例
厚生労働省の職場のあんぜんサイトは、非定常作業を「保守作業、トラブル対処など、通常の作業と異なる作業をいい、労働災害の中には、非定常作業中のものが多く含まれています」と説明しています。107条が列挙する掃除・給油・検査・修理・調整は、そのまま非定常作業の中身です。
実数で見ます。令和7年の労働災害発生状況(令和8年5月27日公表)は、新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除き、死亡者数が700人で前年比46人・6.2%減の過去最少、休業4日以上の死傷者数が135,333人で0.3%減でした。ところが事故の型別では、死亡災害の「はさまれ・巻き込まれ」が110人から117人へ6.4%増え、墜落・転落、交通事故(道路)に次ぐ3位です。死傷のほうは13,550人から13,047人へ減っており、重篤な側だけが逆行しています。第14次労働災害防止計画は、令和9年までに令和4年比で製造業における機械によるはさまれ・巻き込まれの死傷者数を5%以上減らす目標を掲げています。
米国でも事情は同じです。OSHAの違反指摘件数トップ10では、2026会計年度の速報(2025年10月1日から2026年8月31日)で1910.147が3位に入っています。
元電源を切らず札も無かった天井クレーン点検の死亡事例
職場のあんぜんサイトの労働災害事例No.101134は、LOTOが無いと何が起きるかをそのまま示しています。鋼材倉庫で天井走行クレーン(定格荷重25t)の異常音を伝えられた保全の監督者が、「後で手すきのときに見ておきます」と答えたまま点検計画を伝えずにガーダへ上がりました。元電源は遮断されず、運転台に「点検中」の表示も無く、クレーン運転班は点検に気づかないまま運転を始め、横行してきたトロリーと配電盤の間にはさまれて亡くなっています。
事例が挙げる対策は、クレーンの運転を禁止し(ロックアウト)、操作部分に運転禁止を表示する(タグアウト)こと、そして点検の実施を事前に関係作業者と打ち合わせて周知することです。錠と札だけでなく、周囲への連絡も手順の一部だということです。
錠を掛ける前に機械を止めるのも、残留エネルギーを確かめるのも人です。ヒューマンエラーとは?意味・種類(12分類)と原因、具体例と仕組みで防ぐ対策で扱うとおり、手順が守られなかったときは、本人の注意だけでなく、時間の余裕や連絡の仕組みといった作業の条件まで調べます。錠・札・検証・点検を重ねて1枚の穴が貫通しないようにする考え方は、スイスチーズモデルとは?意味・具体例とハインリッヒの法則との違いをわかりやすくの防護層そのものです。
よくある質問
LOTO(ロックアウト・タグアウト)とは何ですか?
機械の保守・点検・修理などで人が危険区域に入るとき、エネルギー源を遮断したうえで錠で固定し(ロックアウト)、作業中である旨の札を取り付ける(タグアウト)安全対策です。英語のLockout/Tagoutの頭字語で、米国のOSHA基準29 CFR 1910.147が体系化しました。
ロックアウトとタグアウトの違いは何ですか?
ロックアウトは遮断装置を錠で物理的に固定し、操作そのものを不能にします。タグアウトは札で警告するだけで、装置を動かす力を止めません。OSHAは教育項目としてこの限界を明文化しており、札は「本質的に警告装置であり、錠が与える物理的拘束を与えない」と教えることを求めています。
ロックアウト・タグアウトは日本の法律で義務ですか?
「ロックアウト・タグアウト」という名称の規定はありませんが、実質的な義務はあります。労働安全衛生規則107条2項が、機械を停止したときに起動装置へ錠を掛ける、表示板を取り付ける等、作業者以外が運転することを防止する措置を義務づけています。刃部は108条、停電作業は339条、産業用ロボットは150条の3・150条の5が別に規定します。
タグアウトだけで運用してもよいですか?
安衛則107条2項は錠と表示板を並列に置いているため、他人の運転を防止できるなら、条文上は札だけの運用も否定されません。ただしOSHA基準では、施錠可能な遮断装置に札だけを使う場合、錠と同等の安全水準が得られることを事業者が立証する必要があります。海外拠点や外資系の親会社を持つ事業所では、後者を前提に手順を組むほうが安全です。
LOTO管理とは何をすることですか?
機械ごとの手順書を作り、錠・札の取り付けと取り外し、複数人作業のグループロック、交代時の引き継ぎ、外部業者との手順の共有を決め、年1回以上の定期点検と対象者別の教育で維持することです。OSHA 1910.147は手順書に使用目的・停止と隔離の手順・錠札の取り扱いと責任者・効果の確認方法を書くよう求めています。