Burp Suiteは、ブラウザとWebサーバーの間に割り込んでHTTP通信を止め、中身を書き換えて送り直せるローカルプロキシです。開発者ツールと違うのは、送信前のリクエストを保留して改変できる点にあります。ここでは傍受の仕組み、2026年時点の製品構成、内蔵ブラウザを使った最短の初期設定、そして各ツールの使い分けを整理します。
まとめ|Burp Suiteで最初に押さえる要点
- Burp Suiteは自分のPC上で動くプロキシです。既定のリスナーは
127.0.0.1:8080で、ブラウザの通信をここへ通します。 - 2026年の製品構成はCommunity・Professional・DAST(旧Enterprise Edition)・Burp ATの4本立てです。
- 内蔵ブラウザを使えば、プロキシ設定もCA証明書のインストールも不要です。外部ブラウザを使う場合だけ証明書を入れます。
- 自動スキャン(Scanner)はProfessional以上の機能です。Communityは手動ツール中心で、Intruderもデモ版です。
- 他人が管理するサイトへ向けた診断は、書面の許諾なしに実施できません。技術的な可否と法的な可否は別です。
Burp Suiteとは|通信の間に割り込むローカルプロキシ
傍受の仕組みとInterceptの扱い
ブラウザのプロキシ設定をBurpのリスナー(既定は 127.0.0.1:8080)へ向けると、すべてのHTTP通信がBurpを経由します。ProxyタブのInterceptをオンにすると、リクエストはサーバーへ送られる前に一時停止し、その画面で書き換えてからForwardできます。
実務では、Interceptは常時オフで使うのが普通です。オンのままだと画像やスクリプトの取得まで一つずつ止まり、操作が進みません。まずオフのままサイトを一通り触ってHTTP historyに通信を溜め、そこから対象のリクエストを選んでRepeaterやIntruderへ送ります。
できることの範囲
Burpが扱うのはHTTP/HTTPSとWebSocketです。TCPレベルのパケットや、HTTP以外のプロトコルは対象外で、そこはWiresharkの守備範囲になります。逆に、ブラウザの開発者ツールでは見えない「送信前のリクエスト改変」「同一リクエストの反復送信」「レスポンス差分の比較」がBurpの領分です。
2026年の製品構成|Community・Professional・DAST・Burp AT
| エディション | 位置づけ | 主な範囲 |
|---|---|---|
| Community Edition | 無料 | Proxy・Repeater・Decoder・Sequencer・Comparer+Intruder(デモ版) |
| Professional | 個人の診断者向け | Communityの全機能+Scanner・Intruderフル版・プロジェクト保存・検索・OAST |
| Burp Suite DAST | 組織向け(旧Enterprise Edition) | 継続的な自動スキャンとCI/CD連携 |
| Burp AT | Professional向けの追加機能 | 設定した検証目標をAIが自らBurpのツールで追う |
製品名の変更に注意してください。組織向けの「Burp Suite Enterprise Edition」は公式サイトの製品一覧から消え、Burp Suite DAST として掲載されています。古い日本語記事の「Enterprise版」はこの製品を指しています。
Burp ATは2026年7月16日の2026.7で追加されたエージェント型AIの機能で、Professionalが対象です。最新版は7月30日リリースの2026.7.2です。
無料のCommunityで実務を回せるかは、用途で分かれます。手動での確認、学習、CTFなら足ります。自動スキャンが要る、あるいは作業を中断して再開したい(プロジェクトファイルの保存が要る)場合はProfessionalが前提です。価格は改定されるため、購入前に公式の購入ページで確認してください。
初期設定|内蔵ブラウザなら証明書の作業が要らない
内蔵ブラウザで始める
Burpには設定済みのChromiumが同梱されています(2026.7.2時点で150.0.7871.187、Linux版は150.0.7871.186)。Proxyタブの「Open browser」から起動すると、プロキシ設定もCA証明書のインストールも不要な状態でHTTPS通信を傍受できます。初回の検証はこれが最短です。
外部ブラウザを使う場合の証明書
普段使いのブラウザで傍受したい場合は、そのブラウザのプロキシをBurpへ向けたうえで、Burpの認証局証明書を信頼済みに登録します。証明書は、プロキシ経由で http://burpsuite(またはリスナーのURL、例 http://127.0.0.1:8080)を開くと表示される画面から取得します。「http://burp」と紹介している解説が多いのですが、公式ドキュメントの表記は burpsuite です。
この証明書は、自分のPCのHTTPS通信をBurpが復号できるようにするものです。作業が終わったら削除するか、少なくとも普段使いのプロファイルとは分けてください。導入したまま放置すると、そのPCのHTTPS通信を第三者が傍受できる余地を残します。
スコープを最初に絞る
Targetタブでスコープ(診断対象のホスト)を設定し、Proxyの記録をスコープ内に限定します。設定しないままだと、広告配信や解析サービスへの通信までHTTP historyに混ざり、対象外のサイトへリクエストを送ってしまう事故につながります。
各ツールの役割と使い分け
| ツール | 役割 | 典型的な使いどころ |
|---|---|---|
| Proxy | 通信の傍受・記録 | まず全体の通信を溜める |
| Repeater | 1本を手で編集して再送 | パラメータを変えて挙動を確認 |
| Intruder | 1箇所をリストで自動置換 | ファジング・列挙・総当たり |
| Scanner | 脆弱性の自動検出 | Professional以上での一次スクリーニング |
| Decoder / Comparer | エンコード変換・差分比較 | Base64やURLエンコードの解読、レスポンス比較 |
| Sequencer | トークンのランダム性解析 | セッションIDの予測可能性の評価 |
| Extensions | 拡張機能(BApp)の導入 | 足りない検査の追加 |
手順としては、Proxyで通信を溜める→怪しい箇所をRepeaterで手で確かめる→パターンが決まったらIntruderで反復、という流れが基本です。攻撃タイプの選び方とリクエスト数の見積もりはBurp Intruderの使い方|Sniper・Battering ram・Pitchfork・Cluster bombの選び分けで扱っています。
OWASP ZAPとの使い分け
継続的に自動で回すならZAP、人が深く掘るならBurpです。 ZAPは無料で、CI/CDへ組み込むための自動化インターフェースが整っています。対してBurpは、CommunityではScannerが使えず自動化の入口が狭い代わりに、手動での掘り下げに必要な機能が揃っています。
診断業務でBurp Professionalが標準的に使われるのは、手動テスト中心の作業でツールの完成度が効くからです。一方、開発チームがリリースのたびに機械的な検査を回したいのであれば、Burpを買うよりZAPをパイプラインへ入れるほうが費用対効果が高くなります。両者は競合というより担当領域が違います。CI/CDへ組み込む設計はDASTとは?SASTとの違い・ZAPでのCI/CD組み込みと導入判断を実装視点で解説を参照してください。
実施前に必要な許諾
Burpの操作そのものは通信の傍受と再送ですが、他人が管理するサイトへ向けて実行すれば、受け手のログでは攻撃と区別がつきません。日本では不正アクセス禁止法に触れる可能性があります。自社サービスであっても、共用ホスティングやSaaS上で動いているなら事業者の規約確認が必要です。
学習目的なら、PortSwiggerが提供する練習環境や、自分で立てた検証用アプリケーションを使ってください。診断業務では、対象URL・実施時間帯・想定リクエスト数を書面で合意してから着手します。
よくある質問
Burp Suiteは無料で使えますか?
Community Editionが無料です。Proxy・Repeater・Decoder・Sequencer・Comparerが使え、Intruderはデモ版として含まれます。自動スキャン(Scanner)とプロジェクトファイルの保存はProfessional以上の機能です。
HTTPS通信が傍受できないのはなぜですか?
CA証明書がブラウザに信頼済みとして登録されていないためです。内蔵ブラウザを使えばこの作業は不要です。外部ブラウザの場合は、プロキシ経由で http://burpsuite を開いて証明書を取得し、信頼済み認証局へ登録します。
Burp SuiteとOWASP ZAPはどちらを選ぶべきですか?
人が手で掘り下げる診断ならBurp、CI/CDで継続的に回す自動検査ならZAPが向きます。無料で自動スキャンまで使いたい場合もZAPが選択肢になります。
Enterprise版はなくなったのですか?
名称が変わりました。組織向けの自動スキャン製品は現在「Burp Suite DAST」として提供されています。古い解説にある「Enterprise Edition」はこの製品を指しています。
脆弱性診断はBurp Suiteだけで完結しますか?
完結しません。Burpが見るのはHTTP層の挙動で、ソースコードの問題はSAST、依存ライブラリの既知脆弱性はSCAの領分です。設計上の欠陥も自動では検出できないため、手動のレビューと組み合わせます。