インフラストラクチャとは?ITインフラの構成要素とオンプレミス・クラウドの違いを実装目線で解説
インフラストラクチャとは、ITシステムやサービスを動かすための土台となる設備・機器・ソフトウェアの総称です。略して「インフラ」、IT分野に限定して「ITインフラ」とも呼ばれ、サーバーやネットワーク機器といった目に見えるものから、OSやミドルウェアのような基盤ソフトウェアまでを含みます。普段は意識されない裏方ですが、ここが止まればWebサイトも社内システムも一斉に動かなくなる、システムの生命線にあたる部分です。この記事では、インフラストラクチャという言葉の意味と、ITインフラを構成する4つの要素を整理します。あわせて、オンプレミスとクラウドというインフラの持ち方の違い、仮想化やIaC(Infrastructure as Code)で様変わりした現在の作り方、そして自社のインフラを自前で構築すべき場面とクラウド・外注に寄せるべき場面までを、インフラを設計・運用する担当者の視点で掘り下げます。
目次
まとめ:インフラストラクチャの意味とインフラ構築の判断軸
インフラストラクチャの核心は「アプリケーションやサービスが乗る土台」という位置づけにあります。私たちが直接触れるのは業務アプリやWebサイトですが、それらは必ず何らかのサーバー上で動き、ネットワークを通じて利用者に届けられ、OSやミドルウェアに支えられています。この見えない土台の一式がITインフラであり、ハードウェア・ネットワーク・ソフトウェア・ファシリティ(電源や空調などの設備)という層の重なりで捉えると全体像がつかめるでしょう。
実装で判断が要るのは、この土台をどう持つかです。かつては自社でサーバーを買って自前で構える形(オンプレミス)が主流でしたが、現在はクラウド事業者のインフラを必要な分だけ借りる形(IaaS)が広く選ばれ、仮想化やコードによる自動構築で調達のスピードも大きく変わりました。自前で持つべきか、借りて外部に運用まで委ねるべきかは、扱うデータの性質・求められる性能・社内に運用体制を持てるかで決まります。まず何を土台に求めるのかを決める――以下で、定義から構成要素、形態、そして構築の判断までを順に見ていきます。
インフラストラクチャとは何かITインフラの定義と社会インフラとの違い
まず言葉の意味から押さえます。インフラストラクチャは元々ITの用語ではなく、社会を支える基盤設備を指す言葉でした。その考え方がそのままIT分野に持ち込まれ、システムを支える土台を指すようになっています。
インフラストラクチャ(インフラ)の語源とITインフラの意味と定義
インフラストラクチャ(infrastructure)は「下部・下位」を意味する infra と「構造」を意味する structure が組み合わさった語で、日本語では「下部構造」「基盤」と訳されます。道路・電気・水道・鉄道といった、暮らしや経済を下から支える設備を指す言葉として使われてきました。
これをIT分野に当てはめたのがITインフラストラクチャです。定義としては、業務アプリケーションやサービスを動かすために必要な、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークなどの基盤一式を指します。利用者が操作するアプリケーションが「上物(うわもの)」だとすれば、それを載せて動かし続ける土台が「インフラ」にあたる、という上下の関係で捉えると理解しやすいでしょう。単に「インフラ」と言う場合も、IT分野の会話ではこのITインフラを指すのが通例です。
社会インフラとITインフラの違いと両者が重なり合う領域の広がり
社会インフラとITインフラは、どちらも「基盤」という点で発想は同じですが、支える対象が異なります。社会インフラが人々の生活や物流という物理的な営みを支えるのに対し、ITインフラは情報システムやデジタルサービスの動作を支えます。
もっとも、両者は年々重なりを増しています。電力網や交通、金融、行政の窓口といった社会インフラそのものが、ITインフラの上で制御・運用されるようになったためです。こうしたシステムでは、ITインフラの停止がそのまま社会サービスの停止に直結するため、止まらない設計が強く求められます。本記事で扱うのは、この後者――企業や組織が自社のシステムを動かすために構える、ITインフラのほうです。
ITインフラの構成要素をハードウェアからソフトウェアまで分解する
ITインフラを漠然と「サーバーのこと」と捉えると全体を見誤ります。実際には複数の層が重なって土台を成しており、どの層が欠けてもシステムは動きません。ここでは代表的な構成要素を分解します。
ハードウェア・ネットワーク・ソフトウェア・ファシリティの4要素
ITインフラの構成要素は、大きく次の4つに分けて捉えると整理できます。
| 構成要素 | 役割 | 代表例 |
|---|---|---|
| ハードウェア | 処理と保存の実体 | サーバー・ストレージ |
| ネットワーク | 通信の経路と制御 | ルーター・回線 |
| ソフトウェア | 基盤の動作環境 | OS・ミドルウェア |
| ファシリティ | 機器を支える設備 | 電源・空調 |
ハードウェアは、計算処理を担うサーバーやデータを保存するストレージ、それらを収めるラックといった物理的な機器です。ネットワークは、機器どうしや外部とをつなぐ通信の部分で、ルーターやスイッチ、ファイアウォール、回線がここに含まれます。ソフトウェアは、ハードウェアの上でアプリケーションが動くための基盤であるOSやミドルウェアを指します。そしてファシリティは、これらの機器を安定して動かすための電源・無停電電源装置(UPS)・空調といった設備で、データセンターが担う領域です。
OSとミドルウェアが基盤ソフトウェアとしてアプリを支える役割
4要素のうち、実装で見落とされがちなのがソフトウェア層です。ハードウェアという「箱」を用意しただけでは、業務アプリケーションはそのままでは動きません。間に入ってアプリの動作環境を整えるのが、OSとミドルウェアという基盤ソフトウェアです。
OSは、CPU・メモリ・ディスクといったハードウェア資源をアプリケーションに割り振り、その土台を管理します。ミドルウェアは、OSとアプリケーションの中間に位置し、データベース管理やWebサーバー、アプリケーションの実行環境といった共通機能を提供する層です。たとえばWebサービスなら、OSの上でWebサーバーやデータベースが動き、その上に業務アプリが乗る、という積み重ねになります。この中間層がどう働くかはミドルウェアとは?OSとアプリの間で働く3種類と選定・運用の判断を実装者向けに解説で詳しく扱っており、インフラを構成要素まで分解して理解する際の要になります。
オンプレミスとクラウドというインフラ形態の違いと現在の作り方
同じ構成要素からなるインフラでも、それをどこに置き、誰が持つかで形態が分かれます。自社の設備として持つオンプレミスと、事業者から借りるクラウドという二つの持ち方、そして両者に共通する現在の作り方を見ていきます。
オンプレミスとクラウド(IaaS)でインフラの持ち方はどう変わるか
オンプレミスは、自社でサーバーやネットワーク機器を購入し、自社またはデータセンターに設置して運用する、従来型の持ち方です。機器の選定から構築、保守まで自社で握れる反面、初期投資が大きく、容量を増やすにも機器の調達に時間がかかります。
これに対してクラウドは、事業者がデータセンターに構えた大規模なインフラを、必要な分だけ借りて使う形です。とりわけサーバーやストレージ、ネットワークといったインフラそのものをサービスとして借りる形態を、IaaS(Infrastructure as a Service)と呼びます。使った分だけ支払う従量課金で、数分で仮想サーバーを立ち上げ、負荷に応じて台数を増減できるのが持ち味です。両者はどちらが優れているという話ではなく、コスト構造・セキュリティの責任範囲・拡張性の性格の違いです。この違いの詳細はオンプレミスとクラウドの違いとは?コスト・セキュリティ・拡張性で比較し選び方まで解説で比較しており、インフラをサービスとして借りるIaaSの仕組みはIaaSとは?PaaS・SaaSとの違いと責任共有モデル・自動スケールから採用判断まで解説で掘り下げています。クラウドという形態そのものの全体像はクラウドコンピューティングとは?仕組み・NISTの5つの特徴からサービス/実装モデルと採用判断まで解説で整理しています。
仮想化とIaC(Infrastructure as Code)で変わったインフラの作り方
クラウドの柔軟さを支えているのが、仮想化とIaCという二つの技術です。仮想化は、1台の物理サーバーの上に複数の仮想的なサーバーを作り出す技術で、ハードウェアとその上で動く環境を切り離すものです。これにより、物理機器を買い増さずに必要な数のサーバーをソフトウェア的に用意でき、クラウドが「借りたいときに借りる」を実現する土台になっています。仮想化の種類や仕組みは仮想化技術とは?種類・仕組みからサーバー仮想化の採用判断まで実装目線で解説で詳しく解説しています。
もう一つがIaC(Infrastructure as Code)です。従来は管理画面をたどって手作業で構築していたサーバーやネットワークの設定を、設定ファイル(コード)として記述し、その通りに自動で構築する考え方です。コードにしておけば、同じ構成を何度でも寸分違わず再現でき、変更の履歴も残せます。手作業に起因する設定ミスやばらつきを抑え、同じ環境を複数用意する作業を機械に任せられるため、クラウド時代のインフラ構築を大きく効率化しました。仮想化とIaCによって、インフラは「機器を組み立てる物理作業」から「コードで定義し自動で払い出すもの」へと性格を変えつつあります。
インフラを自前で構築すべきか、クラウド・外注に寄せるべきかの判断
ここからは判断を言い切ります。インフラを自社で抱え込むか、クラウドや外部の専門家に寄せるかは、好みではなく、扱うデータの性質・求める性能・社内に運用体制を持てるかで決まる話です。玉虫色にせず、条件を切って結論します。
オンプレミスでインフラを自前構築するのが見合う条件の見極め方
次のいずれかに強く当てはまるなら、自社設備としてインフラを持つオンプレミスが見合います。第一に、法規制や社内規程でデータを社外に出せない場合。第二に、極めて低い遅延や特殊なハードウェア要件があり、汎用クラウドでは要件を満たしにくい場合。第三に、構成がほぼ固定で稼働が長期に一定なため、買い切りのほうが借り続けるより総額を抑えられる場合です。
ただしオンプレミスは、機器の選定・設置から日々の保守、故障対応、更新の計画まで、運用を自社で背負う前提が付いて回ります。これを担える人員と体制が社内にあることが、自前構築を選ぶ条件です。裏を返せば、そこが手薄なまま設備だけ持つと、更新の遅れや障害対応の遅延という形で跳ね返ってきます。
クラウド・外注に寄せるべき場面と過剰な自前主義を避ける見極め
一方、多くのシステムでは、インフラをクラウドに寄せ、構築・運用を外部の専門家と組むほうが理にかないます。負荷の増減が読みにくいサービス、短期間で立ち上げたい新規事業、あるいは社内にインフラ専任を置ききれない組織では、必要な分だけ借りて使うクラウド(IaaS)が費用と速度の両面で有利です。まず求める性能とデータの制約を洗い出し、その要件を満たす最小の構成をクラウド上に組む――この順で考えると、過不足のないインフラに落ち着きます。
失敗パターンも挙げておきます。多いのは、要件を詰めないまま「自社で持つほうが安心」と設備を抱え、更新も保守も回らずに老朽化させてしまうケースです。逆に、クラウドへ移したものの、料金体系や責任範囲を理解しないまま使い、想定を超える費用や設定ミスによる事故を招く例もあります。どちらの形態でも、設計の段階で要件を数値と条件に落とせるかが分かれ道です。自社のシステムにどの形態のインフラが見合うか、その設計から相談したい場合は、AWS・Google Cloud・Azureを用いたインフラ構築・運用の相談窓口で、要件の整理から設計・構築・運用までをあわせて依頼できます。
インフラストラクチャの意味・構成・形態に関するよくある質問と回答
インフラストラクチャの検討でよく挙がる疑問を、実装と判断の観点から5つ取り上げます。
インフラストラクチャとインフラは同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われます。インフラは、インフラストラクチャ(infrastructure)を略した言い方です。IT分野の会話では、単に「インフラ」と言えばサーバーやネットワークなどのITインフラを指すのが通例で、両者を厳密に区別せずに用いて差し支えありません。社会インフラなど別の文脈を含めて広く言う場合に、正式な「インフラストラクチャ」が使われる傾向があります。
ITインフラとサーバーの違いは何ですか?
サーバーはITインフラを構成する一要素にすぎません。ITインフラは、サーバーに加えてストレージ・ネットワーク機器・OS・ミドルウェア、さらには電源や空調といった設備までを含んだ土台の全体を指します。サーバーだけを用意しても、それらをつなぐネットワークや動作環境を整えるソフトウェアがなければシステムは動きません。サーバーは土台の中心的な部品、ITインフラはその部品を含む一式、という関係です。
オンプレミスとクラウドのインフラはどちらが良いですか?
一概にどちらが良いとは言えず、要件で決まります。データを社外に出せない、特殊な性能要件がある、構成が固定で長期一定といった条件が強ければオンプレミスが見合います。負荷の増減が読みにくい、短期で立ち上げたい、運用体制を薄く保ちたいならクラウドが有利です。多くの新規システムは、必要な分だけ借りられるクラウド(IaaS)から始め、制約のある部分だけ個別に検討する形が現実的です。
インフラエンジニアはどんな仕事をしますか?
ITインフラの設計・構築・運用を担う技術者です。求められる性能や可用性の要件をもとにサーバーやネットワークの構成を設計し、それを実際に構築し、稼働後は監視・保守・障害対応・容量の見直しまでを受け持ちます。クラウドの普及にともない、物理機器を組む作業よりも、クラウド上の構成をコード(IaC)で定義し自動化する比重が増しています。土台を止めずに動かし続けることが職務の中心です。
インフラをコード化するとはどういう意味ですか?
サーバーやネットワークの構成を、手作業ではなく設定ファイル(コード)として記述し、その通りに自動で構築することを指します。これはIaC(Infrastructure as Code)と呼ばれる考え方です。コードにしておくと、同じ構成を何度でも同じ品質で再現でき、変更の履歴も残せるため、手作業による設定ミスやばらつきを抑えられます。複数の環境を用意したり、同じ構成を作り直したりする作業を機械に任せられる点が利点です。
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