NPO法人の事業計画書は、設立の認証を申請するときに「設立当初の事業年度」と「翌事業年度」の2年分を添付する法定書類です(特定非営利活動促進法第10条第1項第7号)。様式は所轄庁(都道府県または指定都市)ごとに違いますが、栃木県と兵庫県の作成例はどちらも「事業実施の方針(兵庫県は基本方針)」と「定款の事業ごとの実施内容の表」で組み立て、表の金額を活動予算書と一致させる形です。この記事では、所轄庁の作成例に沿った記載項目と記入例、活動予算書との合わせ方、設立後の毎年度の作り方を順に説明します。
まとめ:NPO法人の事業計画書で押さえる要点
- 設立申請では、設立当初の事業年度と翌事業年度の事業計画書・活動予算書をそれぞれ別に作る(法10条1項7号・8号)
- 事業計画書は受理から2週間縦覧され、インターネットでも公表される。設立後も最初の事業報告書ができるまでは閲覧請求の対象になる
- 記載の中身は「事業実施の方針」と、定款の事業ごとの「事業内容・実施日時・実施場所・従事者の人数・受益対象者の範囲と人数・金額」の表
- 事業名は定款の文言どおりに書き、表の金額は活動予算書の該当欄と一致させる
- 設立後に毎年所轄庁へ出すのは事業報告書等で、毎年度の事業計画は定款に従って決める。事業の種類を変える定款変更では、再び2年分を添付する
作成に入る前に、所轄庁の手引きから事業計画書と活動予算書の様式を入手し、定款案の「事業の種類」を手元に置いておきます。
設立申請で添付する事業計画書の範囲(NPO法10条)
NPO法10条1項は、設立の認証申請に添付する書類として定款・役員名簿・設立趣旨書などと並べて、7号に「設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書」、8号に同じ2年分の活動予算書を挙げています。活動予算書は「その行う活動に係る事業の収益及び費用の見込みを記載した書類」と定義されており、事業計画書の数字の裏付けになる書類です。
設立当初の事業年度の開始日と計画期間
NPO法人は主たる事務所の所在地で設立の登記をした日に成立します(法13条1項)。そのため設立当初の事業年度は「法人成立の日から、定款で定めた事業年度の末日まで」となり、1年に満たないのが普通です。栃木県の事業計画書作成例も、表題の下に「(法人成立の日から○年○月○日まで)」と書く形にしています。
成立日の見込みは、審査の日程から逆算します。所轄庁は申請書を受理した日から2週間縦覧し(法10条2項)、その期間を過ぎた日から2か月以内に認証・不認証を決めます(法12条2項。条例でこれより短くしている所轄庁もあります)。認証後に登記して初めて成立します。事業年度を4月〜3月とする団体の申請が7月1日に受理されると、縦覧は7月15日まで、決定の期限は9月15日ごろで、その後に登記します。決定が期限近くになれば成立は9月後半以降となり、設立当初の事業年度は半年ほどです。初年度の事業計画書は半年分の回数と金額で書き、翌事業年度は12か月分で書きます。
事業計画書の縦覧・公表と設立後の閲覧
所轄庁は申請を受けると、申請年月日と、定款・役員名簿(住所部分を除く)・設立趣旨書・事業計画書・活動予算書の内容をインターネット等で公表し、受理日から2週間、公衆の縦覧に供します(法10条2項)。設立後も、最初の事業報告書等ができるまでの間は、事業計画書と活動予算書が社員や利害関係人の閲覧請求の対象になります(法28条3項1号)。
縦覧期間が2週間になったのは令和2年法律第72号による改正で、2021年6月9日以後の申請から適用されています(内閣府NPOホームページ)。それより前の期間を書いた古い解説(「2ヶ月縦覧される」など)がまだ検索結果に残っているので注意してください。読み手は審査担当者だけでなく、寄付を考える市民や協働先の行政職員も含まれるので、内部の略語や「等」で済ませる書き方は避けます。
事業計画書の記載項目と書き方(所轄庁の作成例に沿う)
様式は所轄庁が手引きで示しますが、栃木県の作成例と兵庫県の作成例を並べると、構成はほぼ共通です。大きく違うのは事業の表で、栃木県は「従事者の人数」欄と「予算額(千円)」=支出の見込みを置き、兵庫県は従事者の欄がなく「収益見込(千円)」を書かせています。自分の所轄庁の様式で金額欄が支出か収益かを最初に確認します。
| 項目 | 書く内容 | 作成例の注記 |
|---|---|---|
| 表題 | ○年度事業計画書・法人名 | 初年度は法人成立の日から |
| 1 事業実施の方針 | その年度に重点を置く事業と理由 | 兵庫県は「基本方針」 |
| 2 特定非営利活動に係る事業 | 定款の事業ごとの実施内容の表 | 定款の「事業の種類」の事業名 |
| 3 その他の事業 | 定款に定めた場合だけ | 行わない場合は記載不要(栃木県) |
| 4 事業実施体制 | 総会・理事会の時期、事務局 | 兵庫県の作成例にある欄 |
表の列は、栃木県の作成例では「事業名・事業内容・実施日時・実施場所・従事者の人数・受益対象者の範囲及び人数・予算額」の7列です。以下、欄ごとに書き方を見ます。
事業実施の方針欄に書く重点事業と理由
方針欄は、定款の目的をもう一度書く場所ではありません。兵庫県の作成例は「法人設立を機に〜実施エリアを少しずつ広げて行きたい」「本年度においては〜を重点事業とします」と、その年度に何を優先するかを書いています。設立当初の事業年度なら「任意団体時代から続けてきた事業を法人で引き継ぐ」「翌事業年度に新規事業を始める準備をする」のように、2年分の計画の役割の違いがわかる書き方にします。
特定非営利活動に係る事業の表の記入例
表は自法人の定款の「事業の種類」に定めた事業ごとに行を立て、1つの事業の中に具体的な取り組みを①②と並べます(定款例では第5条に置かれることが多いものの、条番号は定款によって異なります)。次は、子どもの居場所づくりをする団体の翌事業年度(12か月)を想定した記入例です。金額は支出見込みを書く栃木県型の様式に合わせています。
| 事業名 | 事業内容 | 実施日時 | 実施場所 | 従事者の人数 | 受益対象者の範囲及び人数 | 予算額(千円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 子どもの居場所づくり事業 | ①子ども食堂の開催 | 毎月第2・第4土曜(年24回) | ○○市公民館 | 職員1名・ボランティア5名 | 市内の小中学生 30名/回 | 360 |
| ②学習支援教室 | 原則毎週水曜(休講週を除き年48回) | ○○市公民館 | 職員1名・ボランティア3名 | 市内の中学生 10名/回 | 120 | |
| 2 情報提供事業 | ①活動報告誌の発行 | 年2回 | 事務所 | 職員1名 | 会員・地域住民 500部/回 | 30 |
予算額は積算できる形で決めます。子ども食堂は食材費1回15千円×24回で360千円、学習支援は会場費2千円×48回の96千円に教材費24千円を足して120千円、活動報告誌は印刷費1部30円×500部×年2回で30千円です。合計510千円を、活動予算書の事業費計と突き合わせます。兵庫県の作成例が「通常総会は、事業年度終了後に開催するため、開催月は翌年度になることが一般的です」と注記しているように、体制欄の会議日程も年度の区切りに合わせます。
定款の事業と表の行の対応
栃木県の現行の作成例は、事業名を「定款の「事業の種類」に定める事業名」で書き、「実施予定の事業について、もれなく記載します」と注記しています。定款に定めた事業のうちその年度に実施しないものの扱いは所轄庁で異なり、同じ栃木県でも以前の作成例は事業名と事業内容を書いて実施日時などを「予定なし」とする形でした。行を残すか省くかは提出先の手引きで確かめ、省いた事業がある場合は方針欄で理由に触れておくと読み手に伝わります。
その他の事業の記載条件と会計区分
NPO法人は、特定非営利活動に係る事業に支障がない限り「その他の事業」を行えますが、利益が出たら特定非営利活動に係る事業に使わなければならず、会計も特別の会計として区分します(法5条)。事業計画書でも別の表にし、栃木県の作成例は受益対象者の欄を置かない形で、「その他の事業」を行わない場合は記載不要としています。チャリティイベントや駐車場の管理運営など、目的の事業とは別に収入を得る活動がここに入ります。
なお、NPO法の「その他の事業」と法人税の「収益事業」は別の区分です。NPO法人は法人税法上の公益法人等とみなされ(法70条)、特定非営利活動に係る事業であっても34業種の収益事業に当たれば課税されます。税務の線引きは任意団体の確定申告は必要?不要な条件と収益事業34業種・源泉徴収・消費税【令和8年】で整理しています。
活動予算書と事業計画書の金額の対応
事業計画書と活動予算書は同時に縦覧されるので、片方だけ直すと食い違いが外から見えます。所轄庁の作成例も、栃木県は「予算額の合計は、活動予算書の経常費用のうちの事業費計と一致します」、兵庫県は「見込額は活動予算書の事業収益と合わせましょう」と、どの欄と一致させるかを明記しています。
活動予算書の区分と内閣府の様式例
NPO法人会計基準そのものには活動予算書の様式例がなく、内閣府が活動計算書と揃えた様式例を示しています。経常収益(受取会費・受取寄付金・受取助成金等・事業収益・その他収益)、経常費用、経常外収益、経常外費用に区分し、経常費用は事業費と管理費をそれぞれ人件費とその他経費に分けます。その他の事業を行う場合は、法5条2項に合わせて特定非営利活動に係る事業と列を分けます。
2011年の法改正(2012年4月1日施行)で、設立申請の添付書類は「収支予算書」から「活動予算書」に変わりました。改正法の附則で当分の間は従来の収支予算書でもよいとされていますが、設立後に毎年作る活動計算書と区分を揃えておくほうが、計画と実績を同じ科目で比べられます。古い書籍の様式ではなく、所轄庁の現在の様式を使います。
記入例の510千円と活動予算書の費目
前の記入例なら、活動予算書の事業費(特定非営利活動に係る事業)の合計が510千円になるように、食材費・会場費・教材費・印刷費を科目に振り分けます。記入例の510千円は、従事する職員を無給(役員の兼務など)とする前提で人件費を含めていません。有給の職員を置くなら、その給与を活動予算書の事業費の人件費に計上し、事業計画書の予算額にも同じ額を足して合計を出し直します。栃木県の注記どおり、両者は事業費計で一致させる関係です。
収益側は根拠を書ける数字だけを載せます。会費は「正会員20名×年3,000円=60千円」のように人数と単価で積み、申請中で採択が決まっていない助成金は満額で計上しないのが安全です。事業ごとの予算と実績を毎月並べて見るなら、会計ソフトの部門や事業の区分を設立時から使い分けておくと、年度末の活動計算書づくりが楽になります。仕組みから作り込む場合は会計・経理システム開発のような個別開発も選択肢です。
設立後の事業計画の決め方と定款の確認
設立後、NPO法が所轄庁への提出を求めているのは事業計画書ではなく「事業報告書等」です。内閣府のQ&Aも、事業計画書と活動予算書について「毎年所轄庁に提出したり、閲覧させたりする義務はありません」としています(内閣府NPOホームページ「事業報告書等」)。毎年度の事業計画は、法人内部の手続として定款の定めに従って決めます。
所轄庁へ毎年出すのは事業報告書等
NPO法人は毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書・計算書類(活動計算書と貸借対照表)・財産目録・年間役員名簿・社員10人以上の名簿を作り(法28条1項)、毎事業年度1回所轄庁に提出します(法29条)。3年以上提出しないと設立の認証を取り消されることがあります(法43条1項)。事業報告書は前年度の実績を書く書類なので、事業計画書の表と同じ事業名・同じ単位で書けるように、計画の段階で回数や人数の数え方を決めておくと作りやすくなります。
東京都の定款例にある作成者と議決機関
多くの法人は、所轄庁の定款例にならって事業計画の決め方を定款に書いています。東京都が示した平成24年改正対応の定款例は、第43条で「この法人の事業計画及びこれに伴う予算は、毎事業年度、理事長が作成し、総会の議決を経なければならない」とし、総会の議決事項に「事業計画及び予算並びにその変更」を挙げています。
年度初めまでに総会が開けないときのために、同じ定款例の第44条は、理事会の議決を経て前事業年度の予算に準じて収益費用を講じられる暫定予算を置いています。決算の総会を年度明けに開く法人では、新年度の事業計画を前年度中の総会で決めるか、暫定予算でつなぐかを定款に照らして選びます。自分の法人の定款が理事会議決としている場合は、そちらに従います。
事業の種類を変える定款変更で添付する2年分
設立後でも、事業計画書を所轄庁に出し直す場面があります。定款のうち特定非営利活動の種類と事業の種類(法11条1項3号)や、その他の事業に関する事項(同11号)を変える定款変更は所轄庁の認証が必要で、申請には「当該定款の変更の日の属する事業年度及び翌事業年度の事業計画書及び活動予算書」を添付します(法25条4項)。この認証にも設立時の縦覧と審査期間の規定が準用されるため(同条5項)、新しい事業を始める時期から逆算して定款変更の総会を開きます。
助成金・認定NPOの申請で求められる計画書との違い
「NPOの事業計画書」で検索すると、助成金の申請書と設立申請の事業計画書が混ざって出てきます。両者は目的も単位も違う書類です。
助成金申請用の計画書の対象範囲
法10条の事業計画書は、設立当初と翌事業年度について事業年度ごとに法人全体の事業を並べる書類です。助成金の申請書は助成元が決めた様式で、助成の対象になる事業を中心に、課題・対象者・実施内容・成果の指標・対象経費の内訳を書かせるのが一般的です。法人全体の事業計画書や予算書を別途添付させる助成元もあります。法人の事業計画書をそのまま添付しても審査の問いには答えられないので、定款の事業のどれを助成事業にするのかを決め、その事業の行を掘り下げて書き直します。設立申請の事業計画書は、団体の全体像を示す添付資料として使います。
認定NPO法人の申請における寄附金充当予定事業
税制優遇が受けられる認定NPO法人の申請(法44条)では、設立時のような2年分の事業計画書は求められません。代わりに、寄附者名簿、認定基準に適合することを説明する書類と並んで「寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類」を添付します(法44条2項3号)。寄附金の使い道を事業単位で示す書類なので、設立以来の事業計画書と事業報告書で事業名を揃えておくと、どの事業に寄附を充てるかを説明しやすくなります。認定の有効期間は認定の日から5年です(法51条1項)。
認定を受けるには、パブリック・サポート・テスト(PST)の3基準のいずれかに加え、運営組織や経理などの他の認定基準を満たし、欠格事由に該当しないことが必要です。PSTは、経常収入に占める寄附金等の割合が5分の1以上の相対値基準、年3,000円以上の寄附者が年平均100人以上の絶対値基準、自治体の条例による個別指定です(内閣府「認定制度について」)。将来の認定を見据える団体は、毎年度の事業計画に寄附者数や寄附金額の目標を置いておくと、申請時に実績を説明しやすくなります。
所轄庁の審査で補正になりやすい記載ミス
申請書類の不備のうち、条例で定める軽微なものは補正できますが、それも申請書の受理から1週間を過ぎるとできません(法10条4項)。補正の余地が小さいので、提出前に次の点を確認します。
- 事業名が定款の「事業の種類」の文言と違う(略称や言い換えにしている)
- 定款の「事業の種類」にある事業が計画書に出てこず、実施しない年度の書き方も手引きで確かめていない
- 表の金額が活動予算書の事業費や事業収益と合わない
- 設立当初の事業年度を12か月分で書いている(成立日からの月数で回数と金額を組んでいない)
- その他の事業の規模が大きく、特定非営利活動に係る事業に支障がないと読めない
- 受益対象者が「会員」だけになっていて、不特定多数の利益という目的と食い違って見える
最後の2つのうち、その他の事業の規模は法5条1項の「特定非営利活動に係る事業に支障がない限り」に、受益対象者は特定非営利活動の定義「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」(法2条1項)に関わります。提出前には体裁に加え、定款に定めた事業と計画書の事業名、計画書の金額と活動予算書の事業費計の対応を確認します。
設立前の段階で、そもそもNPO法人という形が合うか迷っている場合は、組合員が出資して働くワーカーズコープ(労働者協同組合)とは?出資金の決まり方とデメリット・評判の実態を制度から解説も比較材料になります。
よくある質問
NPO法人の事業計画書は毎年所轄庁に提出しますか?
毎年提出する義務はありません。設立後に毎年出すのは前年度の事業報告書等(法29条)で、毎年度の事業計画は定款に従って総会などで決めます。ただし、事業の種類やその他の事業を変える定款変更の認証を申請するときは、変更日の属する事業年度と翌事業年度の事業計画書・活動予算書を添付します(法25条4項)。
事業計画書の見本やテンプレートはどこで手に入りますか?
主たる事務所がある都道府県または指定都市の所轄庁が、設立の手引きや様式集で作成例を公開しています。所轄庁によって金額欄が支出か収益かなどの違いがあるので、他の自治体の見本ではなく自分の所轄庁の様式を使います。
翌事業年度の計画がまだ決まっていなくても書く必要がありますか?
必要です。法10条1項7号は設立当初の事業年度と翌事業年度の両方を添付書類にしています。確定していない部分は、初年度の実績見込みをもとに回数や対象人数を見積もって書きます。
設立後に事業計画を変更するにはどうすればよいですか?
定款の定めに従います。東京都の定款例のように「事業計画及び予算並びにその変更」を総会の議決事項としている法人は、総会で変更を議決します。定款にない新しい事業を始める場合は、事業計画の変更ではなく定款変更の手続が必要です。
その他の事業を行う予定がなくても事業計画書に書きますか?
定款にその他の事業を定めていなければ記載は不要です。定款に定めていてその年度に実施しない場合の書き方は所轄庁によって異なり、栃木県の現行の作成例は「その他の事業」を行わない場合は記載不要としています。提出先の手引きの指示に従います。